2003.03.31 update
 FanFiction Novel 「守りたい」: FINAL FANTASY XI


白い嶺峰を遠く見渡す岩棚を、風が吹き抜けていく。
「ここに来ると思い出すわ」
岩の縁に危なげなく立って、彼女は言った。
言いながら、戦士しか身につける事ができない鮮やかな赤と黒の装備を、ぽんぽんと脱ぎ散らかしていく。あっというまに全裸になって、湯気をたてる温泉に身体を沈めた。
透明な湯が、引き締まった彼女の長身を揺らめかせる。
「あんときのお前は酷いありさまだったよ」
「まったくね。貴方に助けられなかったらどーなっていたやら」
言うまでもない。犯られて殺されて、食われるだけだ。俺は応えず、装備を脱いで彼女の隣に滑り込んだ。腰をつかんでその身体を引きよせ、手をまわす。弾力のある筋肉質な肌が、戦士として積み重ねた月日を物語る。
遠慮なく俺の身体に体重を預け、彼女は身体を伸ばした。
彼女が首をひねってキスを求める。それに応え、俺はゆっくりとその柔らかい唇を吸った。


                    ***


それが再会だったことを、彼女は覚えていなかった。
金ぴかの白鎧をまとった戦士と、作業着にまさかり担いで木こりの真似事をやっていた俺と、結びつかなかったのも無理はない。
初めて会った時、彼女は冒険者の登録を受けたばかりだった。勝手が解らずに、モグハウスの前をうろうろしていたのを案内してやったのだ。
それが今は、巨大な斧を背負い、仲間を護り敵を倒す戦士の自覚に胸を張る、いっぱしの冒険者になっていた。

手足と胴がふぞろいな、それでも精一杯の装備をつけた若々しい女戦士は、オークの険悪な視線を尻目に斧を振るう俺に、道を訪ねた。
そして心配そうに、オークに気をつけて、と忠告をした。何かあったらすぐ逃げるようにと。真剣に弱い者を気遣うその表情は、俺が冒険者であるコトすら気づいてないようだった。
熟練した戦士ならば、物腰ひとつで相手の力量など察しがつくものだが、未だ駆け出しの彼女にそれを求めるのは酷だ。
ともあれ、俺は
「俺は大丈夫だから。あんたたちも気をつけろよ」
そういって四人編成の冒険者たちを見送った。
もう少し、後輩達を気遣ってやるべきだったのだ。俺はその事を、後になって死ぬ程悔やんだのだから。

しばらく経ってから、俺はそのことに気づいた。
道を訪ねたという事は地図を持っていないということではないのか。
ミッションで砦や野営陣に行くならば多少迷ったところで、彼らでも充分対応できるだろう。バッドギットの野郎は戦闘隊長のくせにお山のてっぺんから出て来る事はまずないし、戦車にさえ気をつければ問題ない。
しかし、もしも彼らがユグホトの岩屋に迷い込んだとしたら。
嫌な予感がした。
俺は材木とまさかりをまとめて隠し、近くの木に立て掛けてあった帯剣をつかんだ。

天井が低く、薄暗い。ゴツゴツとした岩盤むき出しの洞窟を俺は走った。見通しの効かない、ぐねぐねと曲がった通路を抜ける。
群れと言うのに相応しい数のオーク共は、威嚇のうなり声を上げながらも襲ってはこない。本能から、勝ち目がないと解っているのだ。
冒険者たちの姿は見当たらなかった。杞憂か。
息を吐きつつもオークの小屋を抜けて奥へと進む。ゲルスバはけっこうな高さの山岳地帯だ。かつてはサンドリアの北の護りであった切り立った山を登り、再び洞窟へ踏み込み、俺は戦慄した。
そこに充満していたのは嗅ぎ慣れた匂い……血臭だった。

出口を求めて逃げまどったのだろう、点々と、三つの死体が倒れ伏していた。どれも酷く痛めつけられ、傷つけられ、血塗れだった。
無惨にはらわたをまき散らして息絶えていた、白魔道士と思しきヒュームの青年。女神に祝福を乞い、獣人共の怒りを一身に受けたのだろう。その見開かれた瞼を、そっと下ろしてやる。
彼女の死体だけがなかった。
俺はわずかな望みを求めて、彼女を探した。望みは、別の意味で裏切られた。

悪臭が漂う奥まった一画だった。そこはつまりオーク共の便所だ。垂れ流しの糞尿を餌にコウモリが群がる。
興奮する十数匹のオークの中にかすれた悲鳴を聞いた。
彼女の、その無惨な姿だけが、強烈に目に焼き付いた。さらけ出された肌が、薄暗い洞窟のオークの濁った緑の皮膚の中で、奇跡のように白かった。
奇妙に突き出された脚が、ゆらゆらと揺れていた。
「ふざけやがって!」
俺は怒りの咆哮を上げて、群れの中に突っ込んだ。幾重にも突き出される無数の刃など目には入らず、鈍く光る刃が一振り事にオークの首を腕を脚を斬り飛ばす。
馬鹿のように腰を振るオークの首を一撃で刎ねる。びしゃびしゃと音をたてて吹き出した血が傷ついた肌に降りかかった。
「おい! 大丈夫か? しっかりしろ!!」
獣人どもを皆殺しにし、横たわる同族の身体を抱き上げる。何かを呟く口元に耳をよせた。
「大丈夫、大丈夫よ。わたしは平気。大丈夫、こんなのどうって事ないわ。大丈夫、だいじょうぶダイジョウブダイジョウブダイジョウブ……」
虚ろな視線を彷徨わせながら、彼女は唱え続けていた。

血と汗と薄汚い粘液にまみれ、異臭を放つ彼女の身体を抱いて、俺はユグホトを上っていった。
一番奥の通路を抜ければ、そこにはホルレーと呼ばれる岩峰だ。オークにとっては聖地であるらしいそこは、遥かに北の山脈を見渡す岩棚に滾々と温泉が湧き出ている。
懐からお守り代わりに持ち歩いていたハイポーションを取り出し、飲ませた。
ボロと化した装備を剥ぎ取り、彼女の裸身をそっと湯に浸ける。
運ぶ間も朦朧としては、思い出したように「大丈夫」と唱えていた彼女は、湯に傷がしみるのだろう、顔をしかめて呻いた。
「本当に、もう大丈夫だ。今、きれいにしてやるから」
ここの温泉は傷によく効くと言われている。少しでも効果があればいいが。
裂けて血を流し、黄ばんだ粘液を溢れさせる陰部を、慎重に洗う。うめき声とともに、彼女がぎこちなく首を巡らせた。
「安心しろ。傷も洗ったし、すぐ医者に見せてやるからな」
微かに赤味がさしてきた頬を軽く叩く。
「あれぇ、キレイな銀髪だぁ。おかしいな、オークはハゲなのにぃ」
妙に間延びした声で呟いた彼女を、俺は抱き締めてやることしかできなかった。


                    ***

オークに犯されて死にかけていた無力な女戦士は、幾多の時を戦い抜き、歴戦の猛者となって俺の腕の中にある。
歓喜と快楽の声をあげて仰け反るそのしなやかな肢体に刻まれた傷を癒し、共に戦い護るために、俺は戦士の道を捨て騎士となった。
荒く息をつく汗ばんだ背中の、その滑らかな曲線を横切る一筋の裂傷痕。俺は回復呪文を唱え、その傷痕を指先でなぞった。柔らかい光と共に傷が消えていく。
「んっ……」
イったばかりの脱力した身体を震わせてレイヴンが甘い息を吐いた。
「癒しても癒しても、傷があるなお前の身体は」
「だって冒険者だもの」
「うわ……」
くるりと身体の向きを変え、彼女が抱きついて来る。不意打ちに受け止めそこねて後ろにひっくり返り、派手な水音と飛沫があがった。
「溺れる溺れる」
苦笑しながら起き上がった目の前に、彼女はずいっと顔をよせる。
「貴方が癒して。グランセス」
その淡い瞳には、あの頃とは違う強い光を宿している。
「俺はずっと、お前の騎士だよ」
目を細めて、彼女が微笑った。





end


書きあがってきら気がついたんですが...エロないぢゃん!(爆)
うがぁっすみませんすみませんっ 次こそはねっちりこゆいエロ話をー!
小説って難しい...。


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