2003.06.20 update
 FanFiction Novel 「オーディン風の吹くところ」: FINAL FANTASY XI


その人とはセルビナで出逢った。
ウィンダスから船に乗ってやって来て、初めて降り立ったクォン大陸の、冒険者達で賑わう街で。待ち構えていた知り合いたちが組んだパーティに、彼がいたのだ。
名前はジェネシス。金髪の、エルヴァーンの戦士だ。

最初は粗暴な言動が鼻についた。
船旅で一緒になって、忘れられない思い出をつくった、二人のエルヴァーンとはあまりにも印象が違ったからかも知れない。
彼等はとても優しくて強くて格好よかったから。
ジェネシスは彼等ほど強くなかった。一緒にパーティを組んで砂丘の蟹や魚に苦戦するくらいなんだから、当たり前といえば当たり前なんだけど、それでも敵を挑発してタゲを取るのは上手で。あんな汚い言葉で罵られれば、そりゃモンスターだって腹がたつとは思うけど。
でも、何度も砂丘でキャンプを張って、狩りを続けるウチに、好きになった。
もともとリーダーの資質があるのか、いまいち気の弱いリーダーを尻目に、連係を仕切り、リンクした時には適確な撤退指示を出し、時間に応じて狩り場の移動を提案し。乱暴で言葉が汚くて大雑把だけど、カッコよかった。
だから、いよいよパーティを解散して、皆がそれぞれの目的地へ旅立つ時、バストゥークに帰ると言う彼に強引に頼んだのだ。自分も連れてって欲しいと。

「バストゥークってどんなところ?」
「うっせぇ黙れ。砂丘抜けるまでは気ぃ抜くな」
「むぅ…」
バルクルム砂丘に徘徊する敵でアクティブなのはゴブリンとグールとボギィだけだ。どの敵も回復役もなく二人で倒すには手にあまる。となれば、敵の目をすり抜けて慎重に進むしかない。
解ってるけど冷たい反応にがっかりする。
半日かけて砂丘を横断し、難所の洞窟を抜け、深い峡谷を抜ければ、そこは一面の草原だった。
遠くに霞む山のほうまでずっと、緑の原が続いている。吹き抜ける強い風に淡い色の花がなびいて、すごく奇麗だ。サルタバルタの野原とは緑の濃さが違う。
「わぁーー♪」
思わず歓声をあげると、彼もほっと力を抜いたのが解った。
「奇麗だろ? コンシュタット高地だ。少し行けば名物の風車が見えるぞ」
少し得意げに彼が言った。
岩の壁が立ちはだかる木立の近くで、その日は野宿になった。

「見張っててやるから休め」
岩壁に寄り添い、ちくちくと肌を刺す草の上に座り込んだあたしと微妙に距離を取って、彼は石に腰掛けた。
「ジェネシスさんは? 寝ないの?」
「いいから寝ろつってんだよ。俺は大丈夫だ」
「じゃぁ、あたしも起きてる」
想いを伝えたかったのもあったけれど、それよりも彼とゆっくりと話をしてみたかった。夜明けまではまだ随分時間もあるし。けれど、彼は。
「いっちょまえに警戒してんのか?」
細い眉を器用につり上げ、皮肉そうな口元を更に歪めて、せせら笑う。
「けっ、誰がお前みたいなガキンちょ襲うかよ。馬鹿にすんな」
ぐっさり、と言葉が突き刺さった。まったく相手にされてなかったんだ。そりゃ、エルヴァーンにとってミスラなんて子供に見えるかも知れないけど。でも。
頭をよぎるのは、船旅で一緒だったエルヴァーンのカップル。彼も、あの女戦士みたいな奇麗でかっこいい同族の女性が好きなんだろうか。だとしたら、たしかにあたしはただのがきんちょだ。
唇を噛んで俯いた。悔しくて、切なくて思わず泣きそうになる。
「がきんちょじゃないよ!」
「お、おぃ、何泣いてんだよ」
驚いた顔で立ち上がり、こっちへ歩いてくる彼に、あたしは思いっきり抱きついていった。

本当にサマにならないと思う。
彼の胸に抱きついていきたかったのに、気がつけば彼の腰にしがみついていた。
無性に腹がたって、はるか上のほうにある彼の顔を見上げて怒鳴る。
「座ってよっ!」
「ちょっと落ち着け、な?」
「いいからっ!」
だむだむと地を踏みならすあたしに、彼は困惑の表情を浮べてその場に座る。
ようやく身長差がなくなって彼の顔が見える。あたしはボロボロと止まらない涙を思いっきり彼の胸に押し付けて、抱きついた。
突き放されると思ったのに、彼は意外にも軽く抱き返してくれた。
「どーしたってんだよ一体……」
「がきん、えぐっ、ちょじゃ、えぐっ、ないぉ、えぐっ」
悔しくて、鼻がつまって上手く喋れない。
「わかったわかった。謝るから泣きやめ。な? 腹減ってんだろ。山串食うか?」
全然わかってないじゃんよ。
まるで子供扱いのその態度にあたしはますます苛立つ。だけど、抱き寄せてあやすようにぽんぽんと背中を叩いてくれる彼の腕はあったかかった。

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