白萩鐶 Original Novel WebSite "猫がいってしまったので 1.1"
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桜宵 

「ああっ!」
勃起して包皮から頭を覗かせている淫核を細い指が小さく円を描くようになでる。同じ器官を持つ同姓故か、強くもなく弱くもない絶妙なタッチで薫の快感を煽り。男の熱くぬめる舌がその上から、横からあるいは指を押しのけるようにうねうねと這い回る。
快楽の為に存在する性器を二人がかりで攻められ、薫は堪えきれずに声を上げた。
「んっ…ふうっ…はっ……」
薫自身も驚く程に甘く淫らな声に、慄くように息を吐く。

手足の先がじんじんと熱くなってくる。強すぎる快感に薫の体に硬直したように力が入った。きゅ、と締まる括約筋を押し分けるようにして、再び男の指が侵入して来た。
舌と唇は襞と淫核を攻め続け、少女の柔らかな指が繊細な動きで勃起した淫核をつまんで転がす。
「く…ぅっ……あっ」
苦しげにゆがむ薫の顔が恍惚にゆるんでいく。半開きに開いたままの唇から喘ぎ声が零れ、桜の花びらを揺らす。
「声、我慢してね」
「そうね、邪魔されないように」
愛撫の手を休めずに二人がささやく。男の声は低くて小さくてもよく通り、女の子の声は甘く耳朶にかかる。
薫はコクコクと頷き、歯を噛みしめる。堪えきれぬ喘ぎが吐息に混じってやや強い春風に散った。
手首ごとひねるように出入りする男の指に加えて、少女の細い指がぬるりと入ってくる。押し広げられる圧迫感よりも、3本の指がばらばらに動きそれぞれに性感帯を刺激する、その快楽があまりに強くて。
乱れた息がさらに引きつったように止まっては、吐く。
「ィあ……だめ…だめぇ!」
訳も解らず否定の言葉を繰り返して、薫の思考が白くなっていく。考えられるのは体を包む暖かな体温と耐え難い程の快感のみ。
視界を埋める桜が淡紅に霞んでいく。

膣壁が無意識に胎内の指を締め付け始める。熱く吐く息が荒くせわしなく、切羽詰まった喘ぎ声が細く漏れる。
その様を見遣りながら少女が薫の耳朶を噛んだ。舌先でチロチロと舐めながら、薫の耳朶に注ぎ込まれる囁きが、優しく、甘く。
「気持ちいいの?…いいよ、イっても」
囁かれる声ととぎれる事なく執拗なまでに与えられる愛撫に、薫の背筋をぞくぞくとした感覚が這い昇る。
「…っ!………っ!!」
声にならない悲鳴を上げ、あっけなく達した薫の体がびくびくと痙攣する。背後から抱きかかえる少女の肩に頭を押しつけるようにして背筋を反らせた。
ぷしゃ、と小さな音を立てて透明な液体が迸る。排泄感ともむずがゆさとも違う快感が駆け抜け、やがてくたりと脱力する体を、背後の少女が優しく受け止め。
「すっごくイイ顔。気持ちよさそう…」
「だってほら、こんなに濡らして、潮まで吹いてるから」
目の縁を真っ赤に染め、薫は熱に冒されたように潤んだ瞳でぼんやりと二人を見遣った。


少しずつ胎内に入ってくるそれは、熱の固まりの様で、経験の浅い薫には快感よりも圧迫感のほうを強く意識させる。
狭い粘膜を押し広げながら侵入する先端が最奥にこつんと当たった。胎内を直接刺激される言いようのない感覚を耐え、薫は唇を噛む。
「あまり慣れてないみたい。お兄さん、ゆっくりね?」
「解ってるよ、鴇こそ、手加減して」
薫を真ん中に挟んで、よく似た二人が会話を交わす。
親しげに頷きあい、くすくすと笑う様は一対の人形のようだ。見ほれそうな綺麗な顔を彩る白い髪がほんのりと淡紅を帯びている事に気づいた。まるで桜みたいに。
「緊張しないでください。力を抜いて…?」
頷く薫の脚を両手で抱え、男が腰をうねらせる。ゆっくりと出入りする男根が膣内粘膜をこすりあげる刺激が心地よく、最奥を突き、抜けるぎりぎりまで引く耐え難い感覚が、快楽へと変わっていく。
「あンっ…ァ…んぁ…ン……」
鼻にかかった甘い声を漏らし、薫が喘ぐ。背中にからまわされた手のひらが、揺れる乳房を弄ぶように揉み、尖った乳首を扱く。
「こうやってると解る…お兄さんが、貴女の奥まで入ってるの、ようく解るの。襞が擦れて、ぐちゅぐちゅいってる。あそこが熱くて、とろけそうになってる。ねぇ…お兄さん、もっと、もっと突いて?」
熱を帯びた声には興奮の色が滲んでいた。少女は男の動きを薫の体ごしに感じながら、薫の体を共有しているかのように艶っぽく喘ぎ、甘い息を吐きながら耳元で囁く。
「本当? 鴇の言う通りに…もっと激しくして欲しい?」
ぐっと腰を押しつける様に最奥を突き上げて動きを止める。上体を倒して男は薫に顔を近づけ、至近の距離から覗き込む。優しげな声で低く低く囁き、そのままの姿勢でごりごりと腰を回して薫の中をかき回した。
「ふぁ……あっ……あっは……!!」
背筋を突き抜けるような快感に、一度達した体は易々と昂ぶっていく。
リズミカルに突き上げられるごとに快感が増していき、圧迫感ゆえに胎内の異物を締め付ける己を自覚する。
「ィ…ァ…はっ……あはっ……!!」
「ああ、よく締まります…イきそうですか?」
「うん、ほら…こんなに乳首も勃ってる。もうすぐ…この声も聞こえないくらい。頭が真っ白になる…」
二人の声に追い立てられるように、薫は再度達した。痙攣が体を支配し、何も考えられなくなる瞬間。胎内に熱いものを感じて更に背筋を反らせた。
己が震えているのか相手が震えているのか、駆け抜ける快感と共に薫の中を満たしていく熱。
桜の花びらが風に揺れるざわめきと、耳朶に触れる少女の吐息が混じり合う。その柔らかな体に薫はくたりと体をあずけた。

「イった後の男って、本当に気の抜けた顔をするの」
「そうかな?」
「お兄さんは特にそう」
苦笑する男に少女が絡む、その可愛らしい声。
親密なやりとりに薄らと瞼を開ければ、いつのまにやら二人の位置が入れ替わっていた。薫は男の膝に背後から抱かれて、少女がその脇にちょこんと座っている。
身じろぎすると、二人の視線が薫へと留まる。
「気がついた?」
「お兄さん、強引に押し倒したのね? ごめんなさい」
同時に話しかける二人は、おそらく兄妹なのだろう。よく似た顔を寄せるようにして微笑む。
「毎年、桜を見に来てくれていたでしょう? だからどうしても、今年こそはね」
「いつも見てくれてありがとう。また、来年会えたらいいね」
膝に乗せていた薫の身体を下草におろして、二人が立ち上がる。慌てて立ち上がろうとして、薫は腰からへたりと座り込んだ。力がはいらない。
ザァ、と音を立てて桜がざわめく。強い春の風にたくさんの花弁を散らし、花吹雪となって舞踊る、刹那。

桜舞う堤防沿いの斜面に、薫は独り、座りこんでいた。夢でも見ていたのかと呆然と周囲を見渡して。
内股に滑る快楽の名残に。ふと息をついた。
「来年も、また会おうね」
萎えた腰を引きずるようにフラフラと起き上がり。薫は家に帰る。
桜の花弁に抱かれながら。
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