Presented by spud for mai yunoki





・・・ん?


あれ?



・・・すげ―のどかわいた。



ってかなんでこんな腰が痛いんだ?



あ、俺寝てたのか・・・。



ってか、ここどこだ?



三村信史が目覚めたのは、爆音が鳴り響くクラブのテーブルだった。
久しぶりに飲んだアルコールが、信史を眠りに誘ったのだ。
鳴り響く音楽がこもって聞こえた。
まだ、完全には覚醒していなかった。
すうっと深呼吸をして、テーブルの上にあったコーラの缶を取り上げる。
誰が飲んだかもわからないコーラを一口飲むと、気の抜けた甘ったるい液体が喉をつたう。
まずいコーラをもとあった場所に戻すと、もう一度深く空気を吸い込んだ。
タバコの香りが鼻につく。
ひどい空気だな。
さてさて、俺はここにどうして寝てたんだっけな?
信史はまだ寝ぼけた頭に体操でもさせるように、ここまでの経緯を整理し始めた。

始まりは先輩の電話だ。
信史が一年の時の3年生。
ハンサムで口が上手い、確信犯的モテモテ君。
突然(一年くらい音沙汰なかった)電話をかけてきて、クラブでイベントやるから遊びにコイよ。
との、誘いだった。
信史はすぐに
「ふーん。パー券さばけなかったんすか?」
と切り返してやると
「おいおい、あんまいじめんなよ。」
と、受話器の向こうで苦笑していた。

何はともあれ、最近クラブにも遊びに来ていなかったし、女の子をナンパすることにも遠ざかっていた。
学校じゃ流石に有名になりすぎて、同級生はおろか下級生にだって警戒されてしまう。
「モテル男は辛いぜベイベ」なんて強がっても退屈した気持ちは晴れなかった。
それが、この急な誘いにのった理由。
(すいませんねー軽いおとこで)

いくらか頭はすっきりとしてきた。
時計を見ると夜12:30。
しまった・・・。
すでにフロアで踊っている女の子には男が張り付いている。
飲み始めたときに隣にいた高校生のお姉さんは、どこかに行ってしまった様で姿が見えなかった。
これじゃ、今日はぼうずかな?
と溜息をつきながらすばやく財布を取り出し中身を確認する。
1万札が2枚と、千円札が2枚。
リッチとは言い難いが、女の子とホテルに行って一晩明かすくらいの金額にしては充分だ。
本腰を入れて今夜の獲物を探すため、ざーっとフロアを見渡した。
残念ながらすでにかわいいお姉さんにはもれなく男がついていた。
ふんと、鼻を鳴らし今度はカウンタを物色してみる。
一人で飲んでる子は二人いた。
一人は少し足が・・・というか全体的に太すぎた。
信史の趣味ではない。(当たり前でしょ?)
その4つ離れた席には、長い髪をふわっとかきあげるすらっとした手足の女の子がいた。
イエス!と小さく指を鳴らし少し観察してみる。
一人の男がよって来た。
あら?男連れか?
しかし、そのすらりとした手足の女の子は適当に男をあしらう。
ふーん。相当レベルが高そうですね?
信史の位置からははっきりと顔を確認できなかったが、相当魅力的な女性であることはその身のこなしから存分に漂っている。
スリットの入ったスカートから伸びる足が、信史の目を輝かせた。
相手に不足なし。
信史は帯を締めなおし(気持ちの中で)ソファを後にした。
カウンターに向かう足取りは軽い。
わざとらしくカウンターのスツールに、さっと腰をかける。
(決まった・・・完璧だ)
女性も信史に気付きすっと信史の顔を見た。
信史もやはり顔を女性に向ける。(ごたーいめーん)












信史の口は約20秒間、閉じられる事はなかった。




















「そ、相馬?」








目の前にいる、すらっとした手足の、レベルの高そうな、魅力的かと思われる、その女性は、信史が机を並べてお勉強しているクラスメイト。
相馬光子だった。








「・・・。」
光子もやはり驚いたらしく、頬杖をついたまま動かない。
うっすらと化粧をし、少し派手なピアスが照明に反射している。
私服を着るだけでここまで大人びて見えるのか。と、信史は妙に感心していた。
肩が大胆に露出したぴたっとしたキャミソールからは、教室では気付かなかった胸の大きさが目立つ。

「三村・・・。」
信史は光子にそういわれるまでぼーっと光子の中学生離れしたボディを堪能していた。
もしかしたらよだれが出ていたかもしれない。
「その口、とりあえず閉じたら?」
信史ははっとして、手を口元に当てた。
光子はまるで、赤ん坊をみるようにくすっと笑った。
気持ちを落ち着けるように、一つ咳払いをして信史は光子に問い掛けた。
「なんで?こんなところに?」
光子は臆せずすばやく切り返す。
「それはお互い様なんじゃない?」
まさにそのとおり。
信史は言葉を失った・・・。
上ずった声でやっとこさ声を絞り出す。
「・・・清水達と一緒か?」
「比呂乃?もうお持ち帰りされたみたいよ?」
「・・・。随分ススんでらっしゃるんですね・・・。」
「そういう三村も、お持ち帰りの女の子探してたんじゃないの?」
「・・・はい。」
信史は完全に萎縮していた。
はっきりいって相馬光子とは関わりあいを持ちたくなかった。
援助交際だとかそういうことは当たり前、その辺の不良や暴力団とも繋がっている、なんて噂さえも飛び交っている筋金入りの不良娘だ。
どこかしら、悟りきった表情は大人びてるという表現を飛び越え、見るものを寄せ付けない独特の怖さがあった。
面倒はごめんだ。
信史はそう思い、すいーっとスツールをまわした。
逃げ出すためだ。
「どこ行くの?」
信史はびくっと肩を振るわせた。
「えーっと・・・トイレとかね。いろいろ・・・。」
「ふーん。割と退屈な人なんだね、三村って。」
かちーん。
それは言いすぎではないでしょうか?
信史のプライド、スケコマシの名にかけて退屈なんていわせてしまうのは我慢ならなかった。
再びすいーとスツールを回し、バーテンのお兄ちゃんにビールを注文する。
「ところで、相馬さん。お相手は?」
幾分はっきりとした口調でそう訊ねた。
光子のほうへ顔は向けなかった、またよだれが出てしまいそうになるからだ。
「なんでそんな堅くるしいしゃべりかたなの?もしかして・・・」
光子は信史に谷間が見えやすいよう低い姿勢で擦り寄った。
「お姉さんにビビッてんのかな?」
信史の目は丸く見開かれた。
おいおい、お姉さんサイズは・・・
と、聞きたくなるのを必死にこらえ、くぎ付けになった谷間から目を引き剥がした。
光子はそんな信史の仕草をみて、爆笑した。
まさに爆笑。
豪快に肩を叩かれ笑われた。
完全に信史を手玉に取っている。
屈辱。
信史は運ばれたビールをぐいっとあおった。
悔しさをぶつけるように。
一瞬でも欲情した俺がバカだった。無理だ。俺には手におえない・・・。

「ところで三村は何でこんなとこにいるわけ?」
「俺がこんなとこいちゃいけないか?」
「いや、瀬戸とかともっとお子ちゃまな遊びをしてるもんだとね・・・」
「豊を悪く言うのはいただけないな。」
「ふーん。義理と人情ってやつ?」
「俺は先輩に誘われただけだよ。第一これって身内のイベントだろ?何で相馬がいるんだよ。」
「私も誘われただけ。パー券さばけなかったみたいでね・・・」
「へー。割と義理堅いのは意外だね。」
「お礼を言うべきかしら?」
「いえいえ、お気になさらずに・・・」
「でも、もてもて三村君が女にあぶれてるなんてね・・・いい物みれたわ。」
「・・・。寝ちまったんだよ。」
「お子ちゃま全開ね。」
「・・・そういう相馬は?相馬光子に似合う男はいらっしゃいませんでしたか?」
「残念ながら、いらっしゃらなかったみたいね・・・」

会話は途切れた。
二人の頭に、話を次にすすめることで導かれる選択肢が見えてきたのだ。

おいおい、相馬と一晩・・・。それは危険すぎるだろう?
信史はそう思った。
三村と一晩・・・?冗談でしょ?
光子もそう思った。

沈黙が流れた。が、幸いここは爆音鳴り響くクラブ。
ウーファーの低音がふたりの沈黙を埋めてくれていた。
目の前のグラスをまた一口あおりながら、信史はもう一度光子へ目をやった。
ナイスバディ!!
と、相馬光子でなければおおはしゃぎするほど、光子のスタイルは良かった。
とても中学3年生には見えない。
その容姿に"あの噂”がまとわりついていなければ真っ先に口説いていた事だろう。
なんだか悶々とした気持ちで、信史はカウンターに置かれたお絞りをたたんでいた。

「・・・なに、してんの?」
「おしぼりを・・・畳んでるんだよ・・・。」
「ふーん・・・。」

会話が途切れる。
正直、信史にはきつかった。
針のむしろってのはこれか?
と貴重な体験を身に染み込ませつつ、いい加減この状況を打破するため、ようやく話を前に進めることにする。

「で、どうするわけ?」
「なにが?」
「俺は今日はタクシーで帰ろうかと思ってる。」
「あらリッチマン。」
「相馬は?」
「お金ないからね。どうしようかな・・・」
「ま、時間はあるし、ゆっくり考えて。」
信史はすっと席を立ちあがった。
われながら、ちょっと冷たい言い方だけど相手は相馬、
情けは無用。

「三村って結構薄情だよね。」

後ろ髪ひかれる思い、というよりは脅迫される思い。

「えっと・・・それは・・・脅してます?」
信史は背中を向けたまま、立ち止まりそう聞いた。
「そうとりたければどうぞ?」
「・・・。」
信史は空を仰いだ。
ま、見上げても見えるのはコンクリート剥き出しの汚い天井だけだが。

再びカウンターに戻り
「俺にどうしろと?」
と、聞いた。
「退屈なの。」
光子は答える。
少し潤んだような目で信史をみた。
上目遣い。
信史の頭をよからぬことがよぎる。
誘ってんのか?こいつ・・・。
少しアルコールが入ってるせいか、信史の心臓はいつもよりも早く動いている。
セクシーダイナマイト。
信史の人生の中で間違いなくそう呼べるボディに出会ったのは初めてだった。
噂をこのさい置いといて、おいしく頂いてしまうのも一興・・・。
「俺は・・・相馬を楽しませる事が出来そうかな?」
「・・・さぁ?」
小首を傾げ、そう言う光子の悩ましい目で信史は目的をはっきりさせる。
口説く。
酒の席の若気の至りですます。
「なぁ・・・相馬。」
「なぁに?」
「静かなところ行こうか?」
「ん・・・結構古臭い誘い方するんだね・・・。」
「そうかな?」
「いいよ?」
信史ガッツポーズ。
目の前のグラスをぐいっと飲み干し、スツールから降りる。
光子もすっとスツールから降り、信史の腕にそのほっそりとした腕を絡ませた。
ビンゴ。






















「なぁ・・・相馬・・・」




「なぁに?」




「ここって・・・」




「ん?・・・」






「ゲーセンじゃん・・・」

信史と光子は仲良くゲームセンターのメダルゲーム(競馬)のペアシートに座っていた。
「静かでしょ?クラブに比べれば。」
光子はひょうひょうと答える。
ええ、たしかに静かなところですね・・・。
信史のお財布から合計7000円分の現金がメダルに交換されていた。
まぁまぁ、焦るな、焦るな。
叔父さんだって、言ってたさ。
モノには順序ってな・・・。
まずは仲を深めよう。
一夜限りだとしても、それが礼儀だな。
うん、そうだ。
きっとそうだ。
時刻は1:30・・・。
メダルも残りわずか・・・。
「な、なぁ・・・。」
「なに?」
「今度は・・・イイところに行かないか?」
「え・・・?・・・いいよ・・・。」
このためらいがちな返事。
今度こそビンゴ。
信史はすっとペアシートから立ち上がれば、光子も後に続いた。
そして再び腕を絡ませる。
信史の肘に、光子の胸が当たった。
おいおいベイベ。
お楽しみはこれからだぜ。
信史の目に粘着質な光が輝いた。




























「三村、違う・・・






そこじゃない・・・






あ、違うってば






もう、違うって・・・





入れるのはそこじゃないってば・・・」














信史はカラオケのリモコン相手に四苦八苦していた。
「どんくさいね、結構。」
光子は冷ややかな目で信史を見下ろしていた。
くそっ、カラオケかよ!
確かにいい所かもしれないが・・・くそっ。

光子は歌いつづけた。
信史もうまいこといい雰囲気を作るようにバラード中心の構成で迫るが、光子はその流れを断ち切るがごとくアッパーなノリノリで切り返す。
更には熱唱する信史の横で、様々なフード、ドリンクを注文し倒す。
「こいつ・・・できる!」
と信史も唸らざるを得なかった。

光子が何か注文する度、信史は財布の中身をチェックした。
おいおい、ホテル代がなくなっちまうぞ?
ついでに時間も・・・。
あ、そうか。
ここでやるんですね?
大胆だな光子さん!!



・・・。



・・・静かになった。



あれ?暗くするの?



いやぁ、いざって感じですね!!



三村信史、今日はがんばります!!



あ、そうだ!



コンドーム・・・あ、あるある。




3個あるよ。




じゃぁ・・・いざ。


























zzzzzzzzz




























寝てるんですかっっ?!(泣



















ジーザス・・・。

















午前5:00。
すずめがうるさい・・・。
朝靄がかかる繁華街を歩く二人の影。
信史は真っ赤に目を腫らしていた。
光子はすっきりとした顔で歩く。
結局、百戦錬磨の信史は初めての敗北を喫する。
一度もそのカラダに手を触れることが出来なかった。
寝込みを襲うには、光子は後が怖すぎた。
信史は結局、光子のお財布と化し、一睡もする事が出来ずに悶々としたものを抱え家路に付く事になった。

駅につくと光子はさっさと自分の切符を買い
「また、学校でね?」
といい、階段を駆け上がっていった。

信史はがっくりと膝をついた。
朝の日曜日の駅で。





【残り1500円】

 



信史ファンすまん!(笑






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