坊×エリ 著者:5_702様

ある日、ルカを倒した後突然倒れたリオウはシュウや仲間に安静を言いつけられてから一週間たち、そろそろ外に出たいと考えていたのでちょっとバーナーの村まで出かけてみることにした。旅のお供はバレリア、ローレライ、ビッキー、メグテンガアールと美女、美少女ぞろいである。
「私も行くよ!!」「え、ナナミも来るの?」「ワタシモイマスヨ」「ごめん、女の子以外目に入らないんだ」
そんなリオウがバーナーの村を女をはべらせながら目的もなく歩いていると村はずれの細い道の真ん中に赤い髪をした少女が立っているのが見えた。近付いてみるとそれがなぜか自分のコスプレをしてるコウとかいう少年の姉で、宿屋の娘でもあるエリとかいう子であるのに気づいた。田舎娘と一時のアバンチュールもいいかなと思い話し掛けようとした矢先むこうがこちらに気付いたらしく、なぜか手を広げて道を遮るようにして立つと
「あ、だめよ、この先にいっちゃだめ。あの人には休息が必要なのよ。だから、今は静かにしてあげたいの。」
と言い出した。リオウはそうですかそれはいいから僕とお茶でも飲みにいきませんか?と聞こうと思ったがナナミが「え〜なんでだめなの〜〜〜?」とか言い始め、「奥にいるのは誰なのよ〜!!」とか言い出し、エリにどちらも無視されると「う〜ぜったい通ってやる〜〜!!!」と実力行使の構えを見せたのであわてて止めに入った所をノックダウンされたので聞くことの出来ないまま、ナナミと一緒に仲間に引きずられて行くはめになった。

リオウが目を覚ますとナナミが笑顔で覗きこんでいた。話し掛けてみるとどうやらあの道の奥に行く方法を見つけたらしい。リオウが、そんなことよりエリちゃんとデートしたいと言うより早くナナミ引きずられて元の場所まで戻る最中そのエリが走ってわきを通りすぎていった。どういうことだ?ナナミめ放せ!!と思っていると本当に放した。元の場所まで来たようだ。奥まで行くと池があり、そこで赤い服を着た少年が釣りをしていた。
お前が「あの人」か、一体エリちゃんのなんなんだ!とリオウが掴みかかろうとした時、今まで完全にモブキャラだったはずの後ろの五人からなぜか歓声が上がった。

ふと誰かに呼ばれた気がして振り返ってみたが誰もいない。どうやら気のせいだったようだ。
気を取り直して釣りを続けようとしたがどうも集中できない。さすがに飽きたかな?あの戦いから3年家族と別れ、友を失い、一人世界にとり残されてさまよう内に、この村に着いたのがひと月ほど前。のどかな雰囲気に居心地のよさを憶え村人の好意に甘えて釣り三昧の日々だったが、どこか物足りなさを感じずにはいられなかった。昔は唯過ぎていくだけの時間があんなにも満ち足りたものだったのに……段々暗くなっていく思考に、これではよくないと思い直し、楽しかった思い出を思い出してみた。
―そういえばあの頃もよくテッドと釣りに行ったっけ…2人でグレミオの所に釣った魚をもって行って……実は釣りが大の苦手な父さんを皆で笑ったものだった………マズイこれでは逆効果だ…もうやめよう。どうも変なことばかりが思い浮かんで一向に釣れる気配はない。せっかく気を使ってもらっているのに。今いるこの池は村のはずれにあるとても静かな所だ。普段は子供達の遊び場でもあるのだが、村の宿屋に居るエリという子が今だけ通れないようにしてくれているらしい。わざわざいいよと断ったのに。…今日もいるのかな?なぜ彼女はここまでしてくれるのだろう?ふとそんなことが気に掛かる。グレッグミンスターに居た頃、自分の周りには自分を可愛がってくれる大人が何人も居たが、彼らが世話を焼いてくれるのは彼らがいわば家族であり、自分を実の子供のように思ってくれていたからでありほとんど他人同然である彼女の行動の理由とは違うように思える。では一体なぜ?そんな事を考えているとなんだか足音が聞こえるような気がした。また気のせいか?だが今回は気のせいではなかったらしい。歓声に振り返るとそこにはかつての仲間がいた。
「ティルさん!!!」

「あ!!!!ティルさん!!」「こんな所にいたんですか!!」「奇遇だね、こんな所で会うなんてさ」「こんな所にいらっしゃったのですか大統領も心配しておりましたよ」「こ、こんにちは!!!!!????????」
さっきまでモブだったはずの5人に詰め寄られたティルとかいう男は、最初すごく驚いた顔をして、次に身振りで気持ちを表そうとして失敗し、ようやく「久しぶり」という言葉をひねり出したはいいけれど、そのまま質問を矢継ぎ早にされ、少し苦笑を浮かべてこちらを見た。その時こちらではナナミの「その人だれ〜」という質問が無視され、「ねえねえどういう関係〜〜」という呼びかけも無視され、「話しを聞きなさ〜〜〜い!!!」と実力行使の姿勢を示したのでからくり丸に止めに行かせた所だったので、それはいいからエリちゃんは何処に行ったと聞こうとした間際、ティルが「こんな所で立ち話もなんだから宿にでも行こう」と言い出しので、少し壊れたからくり丸を引きずって宿まで行くことにした。宿屋に着くとそこには辛気臭い顔したおっさんどもの巣窟だったので、皆が座ったテーブルを、おっさんはいい女の子をだせ!とリオウがバンバンと叩こうとした所で誰かが宿へ駆け込んできた。エリたんだ!!ヒャッホー!!!とリオウが叫ぶ前に「大変誰か!コウが山賊に攫われた!!」と叫ばれた。一瞬にしてその場は凍りつき、リオウは話しかけるタイミングを逃した。すぐさまティルが立ち上がり、落ち着いて説明するように言った。エリはティルの方に視線を向けると、二度頷いてから話し始めた。説明の最中、後ろの方で「あんなに森の方には近付くなと言ったのに…」とか「ここんところ戦が続いたから…」とかいう話が聞こえ、うるさいエリたんの声が聞こえないんだよ!!!と怒鳴ろうとした所でエリが「おねがいティル様、コウを、コウを助けてください」と言った。ティルが頷き、一歩進んだ所で急に右手を押さえ、片膝をついた。誰かが息を呑む音がした。それを見たエリは一度俯き、意を決したような表情で顔を上げて言った。
「おねがいします、ティル様、私…私知ってるんです。」
「あなたがあの時の英雄だってことを」

突然の再会の喜びも、その一言で束の間のものとなった。
宿にある円形の大きなテーブルを囲みとりあえず久方ぶりの再会を祝いあったあと、先ほどの続きとばかりの質問攻めにあい、懐かしさとうれしさ、それに戸惑いと少しの寂しさを憶えた。3年ぶりに会う彼女達の変わらぬ好意と、3年の月日がもたらす成長が、もう変わることのない僕の体と、変わってしまった僕の心には酷く相応しくないものに感じられた。彼女達は未だ敬愛の眼差しを僕に向けるが、はたして今の僕がそれに値するだろうか?
3年前のあの時まで、僕には確かなものを持っていた。そのためにすべを投げうって、たとえ命を捨てても惜しくはなかった。自分の大切な、自分以外の誰かのために生きること。誰かが自分を必要としてくれること。誰かがいつも傍に居てくれること。遠い昔、僕には父さんがいた。グレミオやテッドがいた。3年前、彼らを失ってもまだクレオやパーンがいてくれた。それに大勢の仲間もできた。それぞれの思いは異なっていたけれど、誰もが僕に希望を託してくれた。喜びも悲しみも共有し、思いを一つにして新しい世界を切り開くことができた。希望はかなった。そして僕はいらなくなった。
オデッサの願いはかない、人々は圧政から解放され、仲間も皆それぞれの生活に戻っていった。
もちろんまだ僕に対する新たな希望もあったし、帰っていく家もあった。けれどそれは僕に相応しいものではなかった。禍を呼ぶもの。そして一人世界を漂うことになった。
そんな自分に今も変わらぬ思いを抱いてくれている仲間をうれしく思う反面、彼女達ともいつかは別れが訪れることも再確認させられた。自分と関われば、いつかは…
そこへエリが来た。コウが攫われたと。まさか、そんなことは…説明を聞き終え喉の奥までせり上がってくるものを飲み込み、助けに行こうと一歩踏み出した瞬間、右手にあの忌まわしい激痛が走った。目の前が暗くなった。やはり僕のせいで…僕はもう、一つの場所には留まれない運命だったのに!!
片膝をつき、首をふる僕にエリは意外なことを言い出した。

「あなたがあの時の英雄だってことを」 とエリが言った瞬間、リオウは英雄?英雄といえば僕もデュナンの英雄なんですよと言おうとしたが続けてエリが喋り続けたので言えなかった。
「赤月帝国のあの戦いの時、私、父さんやコウたちとはぐれてしまって…でもマリーさんて人が私の面倒をみてくれて」
「宿屋で働いていたんです。だから、あの戦いを、私も一緒に戦ったんです。だから…」
「あなたにとって、私は大勢のうちのひとりだったのでしょうけど、私にとって、あなたはかけがえのない人だったんです」
「お願いします、ティル様。コウを…コウを助けてください」
エリの話をじっと聞いていたティルは立ち上がると力強く頷いて言った。「君があの時の仲間だったというなら、僕も君の頼みを断るわけにはいかないな」リオウは格好つけやがってと思ったが空気をよんで黙ってた。ナナミは「あの人誰〜〜?」と本日十数回めの空気を読めない発言をしたのでメグとテンガに説明をうけていた。そうこうする間にティルが寄ってきてリオウの肩に手を置いた。一緒に行こうの意味らしい。リオウはなんだお前こっちはまだまともに紹介も受けてないんだよと思い、後ろを振り向くとなぜか5人ともやる気満々の顔をしてたので、うんざりしながら断ろうと思って口を開いた「私も!!私も行きます!!!」所でエリの声が割って入った。「なにを言ってるんだ、エリ、お前まで…」「大丈夫よ父さん、こう見えてもティル様と一緒に戦ったこともあるんだから。ね、いいでしょ…」とエリが父を説得し、リオウに向かって「えっと…リオウさんね。いいでしょ?リオウさん」と言ったので、「うん、行こう!」と答えた。それが、エリとリオウの初めての会話だった。「すごーい、あの人トランの英雄だったの!!!」ナナミの声が聞こえる。リオウは話聞いてろよ、遅すぎだよと思った。もちろん口には出さなかった。結局、10人という大人数でコウ捜索が始まった。

後悔と懺悔の念に沈む僕を救ったのはそんなエリの言葉だった。3年前の、あの戦い…あの時、僕は皆の心がひとつになっているの確かに感じた。皆が自分を信じていると信じることができた。僕のために命をかけてくれる仲間がいたから、僕もすべてを捨てて戦うことができた、迷うことはなかった。皆を幸せにすることだけが、僕の生きる目的だった。僕を好きでいてくれる人を幸福にしてあげたかったし、僕を信じてくれる人がいたなら、希望を叶えてあげたかった。
今、彼女は自分のことを英雄と、かけがえのない人だといった。おそらく彼女は僕の呪われた紋章のことは知らないし、そのためにコウが死にかけているとは夢にも思わないだろう。彼女は信じているのだろう。僕ならば、3年前のあの時のように、自分達を助けてくれる、願いを叶えてくれると。そうであるならば…
僕は立ち上がった。あの時の仲間の、僕を信じて疑っていない彼女の前では、情けない所はみせられない!!!僕は入り口まで進んで、そこに立っている少年の肩に手をかけた。まだ名前も聞いていない彼に、助力を頼むのは厚かましいだろうか?彼は後ろを振り向いた。そこには僕のかつての仲間がいた。皆決意に満ちた目でこちらを見ていた(ビッキーだけは不思議そうにしてたが…)。彼はこちらに振り返ると、悩んでいるのか難しい表情をしていたが、エリの話しを聞き、決意に満ち溢れた顔で承諾してくれた。さすがはかつての仲間達と行動を共にしてるだけはある、素晴らしい表情だった。彼の先導によるコウ捜索が始まった。エリの証言をもとに、からくり丸の協力で山賊の拠点に当たりをつけると、彼は猛然と進み出した。道中話しを聞いてみると彼の名前がリオウ、ヘアバンドをした女の子が姉のナナミで、なんと北の都市同盟の軍主をしているらしく、メグたちはその協力をしているらしい。僕とよく似た境遇にあり、戦闘中もなぜかリオウとは息があうので、彼にはとても親近感を覚えた。しばらく進むと山賊の根城があり、踏み込んでみるとコウをさらった山賊がいたが、こちらの顔ぶれを見てすぐに観念したようだ。しかしコウはモンスター襲われという。なんてことだ!!!彼らにはバレリアにお灸をすえてもらったあと、僕たちはすぐに出発した。

早速エリにいい所を見せようと先頭を切って進むリオウだが、コウが何処にいるのか解らないのでどうしようかと思い振り向くと、エリの説明を受けたティルが地図を見ながらいくつか怪しいところにチェックを入れていたので、リオウがロッカクの里に協力してもらおうと提案する前に、からくり丸がエイセイからのジョウホウによるとチェックされた場所の一つにアヤシイタテモノがあるというので、そこに行くことになったが、リオウはせっかくまたカスミちゃんに会えるチャンスだったのにと思った。そこに向かう最中、リオウとティルはお互い自己紹介をし合ったので、やはりティルはあのトランの英雄と呼ばれる人だと確認できたが、リオウにはそれよりも、自分の取り巻きの面々がやけにティルに話しかけたがるのと、エリがティルになにやら熱の篭ったような視線をむけていることのほうが気になった。ここはなんとかいいとこ見せようと思いリオウが敵に突っ込むと、なぜかティルも合わせるように横につけてくるので、なんて邪魔やつだと思っていると、どういうわけか笑いかけられたので、なんだこいつ気色悪いと思った。しばらく行くと山賊のアジトを発見したので乗り込むと山賊がいた。始めはいきがっていた奴らも、ティルやリオウの正体に気付くとすぐに降参した。話しを聞くとモンスターに襲われコウを見捨てて逃げてきたらしい。人間の屑だなと思ったが、メグやテンガに罵られ、バレリアにおしおきを受けているのをみると少しうらやましいなと思わないでもないリオウだった。アジトを出てモンスターがあらわれた場所まで行くと、コウが倒れていた。急いでコウの元に駆けつけた時、モンスターが咆哮と共に突っ込んできた。
中略。
そしてついにグレイモスにとどめをさした。会心のガッツポーズをきめて振り返ると、エリが泣きそうな顔でティルに抱きついた。リオウは思わずすっころびそうになったが、どうやらコウの容態があまりよくないのでエリが取り乱しているだけなようなので踏みとどまった。ティルがグレックミンスターのリュウカンの所に行けば大丈夫だろうと言ったので、エリも落ち着きを取り戻した。リオウはビッキーに送ってもらおうと言おうと思ったが、病人がいるのにビッキーのワープは危険すぎると思い直した。

病身のコウに気を使いながら進んでいる内に国境の関所まで辿り着いた。関所に近付いていくと中から懐かしい顔が出て来た。「おい、お前ら、ここから先は、トラン共和国の………ま、まさか…ティル殿!!!ティル殿じゃないですか!!!戻られたのですか!!!」バルカスは僕に気付くと顔に驚きの表情を浮かべて走りよってきた。挨拶もそこそこにエリがコウの状態を説明すると、「な、なんと!!よし、わかった。すぐにもグレックミンスターへ送りとどけよう!!!」と言ってすぐに手配してくれた。

グレックミンスターに着くとすぐにコウはリュウカン先生に診てもらった。結果を待合室で待ったあと、僕たちは王座の間へ通された。王座の脇で待つリュウカン先生に話しかけると、「多少、毒を吸い込んでおったが、もう安心ですぞ」と答えてくれた。皆が口々にお礼を言うと、少し照れ笑いをうかべた後、「なぁに、これがわしの生業じゃて、それでは失礼させてもらうぞ。世に病の尽きる日はないのでな」と去っていった。リュウカン先生が退室した後、大統領のレパントが前に進み出てきて言った。「ティル殿。ご無事でなによりです。そして、成り行きとはいえ、貴方がこの地に戻られたのをうれしく思います。このトラン共和国大統領の席は、もとより貴方のもの。どうぞ、こちらへ。」僕は首を横に振った。
「ティル殿、なにゆえ……」レパントは納得いかないといった表情でさらに続けた。
「そもそも、何故この地をお去りになったのですか?このトラン共和国は、貴方が戦い、貴方が血を流し、貴方が作った国です。この席は貴方にこそふさわしい」僕はまた首を振った。見かねたアイリーンが助け舟を出してくれた。「あなた…無理を言ってはいけないわ。ティルさんは、男の子…そして、男の子はみんな遠い地平の向こうを見つめてるのよ。こんな息苦しい部屋に閉じ込められて“大統領”と呼ばれることより、大事なことがあるのよ。あなただって、おんなじじゃない」レパントは悲しそうにそれを聞くと、
「…………………そうですか……それでは無理は申しません。しかし、いつかこの地にもどると約束してください」と言った。「それなら約束できるよ、レパント」

「ティル殿……それでは、おひきとめするのもこれぐらいにしましょう。あなたを待ちかねている人々は、他にもたくさんいますからな」
レパントのそんな言葉に送られて外に出ると、そこには懐かしい顔ぶれがそろっていた。
「ぼっちゃん!!!! ぼっちゃん、おひさしぶりです!!!それにしても良かった。予感がしたんで、ここにもどってきていたんです。そしたら、ぼっちゃんが戻ったって聞いて…」「なに言ってるんだい。お金がたりなくなったから戻ってきたくせに。」
「あ、そ、それは、 ぼっちゃんの前で言わなくても…」「おひさしぶりです、ぼっちゃん。 どうでした、そのの世界は面白かったですか?」
パーンにクレオ、相変わらずだな。2人は僕の数少ない、最後の家族だ…元気でよかった。
「よく帰ってきたねぇ、ティル。 急にいなくなるもんだから みんな心配したんだよ。」
小さな頃からお世話になったマリーと、
「よう、ティル。今日は三年間磨いた私の料理のウデを見せてやるよ」
今そこで働いているセイラ。皆、一緒にあの戦いを戦い抜いた大切な仲間だ。

その日、久しぶりに帰った僕の家でパーティーを開いた。リオウ達にマリーとセイラ、それにロッテやミーナやカミ―ユにミルイヒなどを招いたパーティーは大いに盛り上がり、僕も久しぶりに心の底から笑うことができた。けれどふと部屋の脇を見ると、エリが所在なさげに立っていた。理由を聞くとどうも知り合い同士の話し輪の中に入ってきずらいらしい。同じ境遇のナナミとリオウはびっくりするぐらい馴染んでいるのだから遠慮する必要はないのにと思ったのだが、そうもいかないらしい。そんな時、ちょうどミーナがやって来て関係を聞かれたので、僕は彼女が3年前のあの時、マリーの宿で働いていた解放軍の一員で僕の大切な仲間だと説明すると、なぜか皆に冷やかされて、ミーナには「私とどっちが大切?」とらちもないことを聞かれた。エリは顔を真っ赤にして部屋に引き上げてしまい、僕はますます冷やかされ、酔っ払ったローレライやセイラやミーナやメグに絡まれるはめになった。

酒も入り久しぶりの再会に盛り上がり執拗にからんでくる女性陣をなんとか振り切り、一足早くパーティーを引き上げるのに成功したのは、それでも深夜に入ってからだった。ホストが先に引き上げるなんて!と文句も言われたが、明日もやると言ったらすぐに見逃してくれた。明日にはエルフの村など遠方に住んでいる仲間も参加する予定になっているので、きっともっと大変なことになるだろうな…そういえば、と、ふと気になることを思い出した。エリのことである。大事には至らなかったとはいえ、弟があんな目にあったその日にパーティーだなんて、少し配慮に欠けていたかな?途中で引き上げてしまったことも気に掛かる…ちょっと様子を見てきた方がいいかと思い、深夜に女性の部屋を訪ねるだなんて失礼かなと思いながらも、エリの部屋をノックした。「僕だけど、まだ起きてる?」と聞くと、中から「どうぞ…」と返ってきた。部屋に入ると、エリはベットの上に座っていた。心なしかまだ顔は赤いようだ。
「こんばんは、エリ。さっきはなんだか悪いことしちゃったみたいだね。大丈夫かい?」と聞くと「大丈夫です」と返ってきた。「そっか、途中で戻っちゃったから気分を悪くしたかと思って…余計なお世話だったかな」長居するのも良くないと引き上げる前にエリが「そんなことはないんです。ただ…」といった。「ただ?」聞き返すとエリは俯いてしまったので「なんだい?言ってごらん」と続きを促した。「ちょっと隣りに座っていいかい?」と断ってベットの隣りに腰を落とし、エリの言葉を待った。隣りで見るエリの顔はほのかに赤く、メグ辺りに飲まされたお酒がまだ抜けてないのかな、などと考えている内にエリが口を開いた。「ただ…その…ティルさんが、私のこと大切な人だって言ってくれて…それで、皆さんが、その…」段々小さくなっていく声を聞きながら、そういえばメグだのテンガだのが恋人だなんだと言っていたのを思い出した。あの年代の女子というのはどうもそういう話しを好むらしく、3年前もカスミがなんだアップルと怪しいだとかさんざん言われてきた僕はなんとも思わなかったけど、エリの方は気にしていてもおかしくないと思い、苦笑しながら「ああ、あれね。変なこと言われて気に障ったならゴメン、あれは…」酒が入った上での悪ふざけだからと続けようとした僕の言葉にエリの声が重なった。

「違うんです!!!」いきなり話しを遮るように入ってきたエリの声に驚いて思わず言葉につまった僕に、エリは言った。「違うんです、私…私嬉しかったんです。ティルさんの恋人だなんて言われて、ティルさんにそんなつもりはないと知っていながら、嬉しかった。そして、そんな自分が恥ずかしくて…」エリは僕の方を見て、一瞬言いよどんだあと、思い切ったように口を開いた。
「ずっと好きだったんです、私。3年前初めて会った時から…貴方が私の村を訪れた時までずっと!!!」そのまま、僕とエリは無言で向かい合う形となったが、暫くするとエリはふと我に返ったような顔で慌てていった。「ご、ごめんなさい!ティル様!私何言って」段々泣きそう顔になりながら「私、寝る前にと思ってお酒を少しもらってそれで!!」と続け、最終的には両手で顔をおおってしまった。僕はそんなエリの手に僕の手を置いて、「エリ、手を除けて」と言った。小さく首を振るエリに僕は「一方的に告白しておいてそれはないんじゃない?」と言って、ビクっと体を震わせて指の隙間からこちらを見つめるその体を抱き寄せた。
「ティ、ティル様!」「僕に向かってそんなことを言ったのは君が初めてだよ」そう言ってエリの手首を掴んで開かせ、あっ!と言って身をよじるエリに「僕もエリのことが好きだよ」と告げた。「それとも本当は僕のこと好きじゃない?」エリは最初信じられないといった感じだったがやがて泣笑いの表情になり「本当ですか?」と言って抱きついた。 僕は頷いて、少し恥ずかしかったが「キスしてもいい?」と聞いてみると、頬を髪の毛のように赤く染めた彼女もまた、恥ずかしそうに頷いたので、彼女の顔に手を添えてあげると、そのままお互いの唇を合わせた。「っん」「んぅ…」僕たちは舌先をからませあいながら相手の体を抱き合い、ベットへと倒れこんだ。そのままエリの服へ伸ばした手をエリに掴まれたので、唇を離して「イヤ?」と聞いてみた。「嫌じゃないんですけど…」エリは両頬に手をあてて、「こうなるなら、もっとおめかししてくれば良かった…」と恥ずかしそうに呟いた。

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