ヴィルヘルム×リオン 著者:前野199様

「ん、ふぅっ…」
できるだけ、声を、吐息を漏らさないよう、枕に顔をうずめる。
まっさらなシーツの中、か細い指は己の胸へ、そして秘所を刺激する。
その動きは未成熟な身体と同様につたないものだったが充分に効果はあった。
くちゅっ。
「!!」
卑猥に響く音に思わず身を固める。
その音も、指に絡みつく愛液も自分から出ているのだと思うと、耳まで熱くなっていった。

はしたない。

理性はどこまでも自分を罵るが、指を、身体の疼きを止める事はできない。
安静中の女王騎士見習いは医務室のベッドの中で理性と欲望にさいなまれていた。

その日、医務室は彼女を除けば誰もいなかった。
リオンが多少歩けるようになってからこの部屋を独り占めするのは初めてかもしれない。
王子をはじめ、要人達はストームフィストへ遠征中。
本拠地に重病人が残っていなかったため、シルヴァ達も医療班に加わっていた。
リオンはかえって安心した。治りかけの自分より、確実に死と隣り合わせの戦場にこそ
医療技術は必要なのだ。
本拠地にも必要最低限の軍人は残っている。医務室のドアの向こうにも衛兵は配置されていた。
(何か、久しぶりかも…)
ただ、ただ、静寂だった。
自分が護るべき人、大切な仲間たちは戦場にいるというのに。
(…王子)
もう少し。あと少しでこの傷も癒える。
お傍で、お守りしたい。
王子も、ロイも、仲間たちはいつも自分を気遣ってくれた。
本当はそんな時間も余裕も無いほど情勢は慌しかったのに。
だからこそ何もできない自分が歯痒くて仕方が無かった。
(…王子)
足手まといになんて、なりたくないのに。
「おうじ…」

「おうじ…ぃ…」
想いは昂ぶり、欲望は膨れ上がる。
(だめ、こんなこと…)
誰の目もない空間。一度火のついた想いは正直に、身体を熱くさせる。
「ハッ…ア…」
(だめ、なのに…)
衣の上からそっと、脚の付け根に指を伸ばす。
「ああっ…」
(からだが、あつい…)

時の流れすら把握できずに、リオンはそれでも欲望と戦っていた。
生真面目すぎる性格が、身体に湧き上がる本能を抑えようと努力する。
(こんなの、だ、め)
ぐちゅり。
「ふぁ…っ!!」
抑えつければつけるほど、そこの疼きは膨れ上がり、快感という痺れが下腹部を駆け巡る。
しかし、リオンは全く予想しない形で性欲を抑えつけることになった。
いや、ふっ飛んだという方が正しいか。

「なあ、ねーちゃん」

「っっ!!!!!!!!!!!!!」
その驚きは彼女の人生において最大だったかもしれない。
リオンが横たわっていた寝台の足元、下の手に声の持ち主はいつの間にか立っていた。
「起こしちまってわりいな。センセー手製の塗り薬って知ってるか?
 紋章で治したんだから構わねえのに、ウチの隊員達がうるさくってよー」
リンドブルム傭兵団の支隊長、ヴィルヘルムが頭を掻きながら面倒くさそうに辺りを見回す。
「ああ、あの、何で、ここに」
無意識に胸元にかけていたシーツをかき集める。
さして着衣が乱れてないとはいえ、あまりにも無防備すぎた自分に混乱し
自分が何を言っているのかも理解できていなかった。
「いや、だから薬」
「あっ、えっと、ごめんなさい、じゃなくていつから」
「はぁ?この部屋に入ったのはついさっきだが??」
いくら療養中とはいえ。敵ではないとはいえ。全く気づかなかったなんて。
リオンは軽い眩暈に頭を抱える。
「前によ、ここに来た時にやかましいだのうるさいだの散々説教くらっちまって
 しかも廊下で正座だぜ!?他の奴らの笑いモンにされるし、ったく…
 まぁそんなわけで今日は気ぃ使って静かに来たんだ。驚かせちまったか??」
いつも豪快な振る舞いだが、彼もいずれ劣らぬ歴戦の戦士。
ある程度の気配を消して近づくのも不可能ではなかった。
まあ性格上、そのような行動も長くはもたず、あっさりリオンに声をかけてしまったわけだが。
「でよう、ねーちゃん。塗り薬ってのしらねーか?」
「あっ、はい、ムラードさんが調合してくださったものでしたら、その白い棚の…」
着衣が乱れてないか確認して、寝台から降りようとしたところをヴィルヘルムが制す。
「おう、ねーちゃんは寝ててくれ。ここかぁ?」
リオンは上半身は起こしたまま、寝台からアドバイスをした。
「確か右の引き出しです。青い容器なんですが…」

大きな背中の向こうで明らかに引き出しの中身をごちゃ混ぜにする音がしばらく続いた後、
「おっ、こいつか?そういやリヒャルトがこんなやつ使ってたな」
リオンの側に引き返し、確認を求めるようにリオンにそれを見せる。
「はい、切り傷ならそれでいいと思います。私もお世話になっているので」
「なら大丈夫だな。邪魔したなねーちゃん、まあ俺に構わず続きに耽ってくれや」

ビリィィッ!!!

リオンの手元にあったシーツが途中まで裂け、それを握りしめている拳はぶるぶると震えている。
負のオーラを纏ったリオンを先の発言者は特に顔色を変えるまでもなく、きょとんと見守っていた。
「…ヴィルヘルムさん?ま さ か…」
奈落の底に引き込まれるかのような響き。されど傭兵隊長はいつもの豪快な笑いで返す。
「まだあんたも若ぇんだ、そういうときもあるさ!
 性欲が湧くのは体力が戻ってる証拠だ、結構なことじゃねえか!!」
(やっぱり、見られてたっ…!!)
途端に全身から脂汗が吹き出した。

こんなことが皆に、王子に、知れたら。

枕元に忍ばせておいた長巻に無意識に手を伸ばす。
「おい!!」
少女の刃が自分に向けられていないのを瞬時に判断したヴィルヘルムは強引に長巻を叩き落す。
「くぅっ!」
「バカ野郎っ…ったく…」
冗談が通じない相手とわかっていたが、まさか自決しようとは。
さすがのヴィルヘルムも謝罪の言葉を考えた。
「あー、その、何だ、悪かったな」
「…」
頭を垂れたまま、反応の無いリオン。そっと彼女の頭に手を置き、そのまま寝台の端に腰を下ろす。
「最初は夢にでもうなされてると思ったんだ、だから声掛けちまったんだが…
 別にこんなこと話のタネにしようなんざ思ってねえからよ、な?」
本能のまま行動する彼にとって、例え女でも自慰行動くらい些細なものだった。
空腹で腹が鳴ったところで誰が咎めようか。その程度のレベルである。
女にちょっかいをかけることが生きがいだが、追い詰めるのは彼の趣味ではなかった。
「…いつ、気づいたんですか」
小さく、鼻にかかった声が聞こえた。
「あんたが跳ね起きた時かな。…あー、怒らないで聞いてくれよ。
 ニオイがしたんでな。こればっかりは男として敏感に反応しちまうものだ」
大抵の男が気づけない、わずかな匂いを感知した男はぽんぽんと頭をなで腕を戻す。
「はしたない、女ですね。私…」
「誰もいなかったからだろ?頼むからそんな自分を追い込むんじゃねえよ」
でも…と自嘲気味につぶやくリオンにヴィルヘルムは溜め息をひとつ。
「なあ、ねーちゃん。あんた戦うことは好きか?」
「え…?」

突拍子の無い質問に、思わず顔を上げる。
「殺戮の話じゃねえ。戦場に身を置き、強い相手を求めて戦うことを純粋に楽しんでるか?」
今まで考えたことのない質問にリオンは思いを巡らせる。
「楽しむも何も…王子をお守りするのは私の役目です。そのためなら」
「じゃあ戦うことより、王子を守ることの方が楽しいんだな?」
「楽しいとかと、次元が違う気もしますが…」
話の先が見えないが、リオンは正直に答える。
「今、王子を守れなくてストレス溜め込んでないか?」
「…」
ストレス、なのだろうか。この歯痒い想いは。
「身体も自由にならねえ。自分の役目は果たせねえ。イヤにもなるさ。
 だがな、ねーちゃん。そのストレスのはけ口にナニをしたって別にいいだろ。
 さっきも言ったが、体力が戻ってなきゃそんな気も起こらねえ。
 たらふく食えるようになった、よく眠れるようになった、ってのと同じで体が回復してる証拠だ」
そうは、言われても…素直に納得することはできない。
何より本能で女を追いかけるヴィルヘルムが言っても説得力が無い。今度はリオンが溜め息をついた。
「いっそのこと、王子に頼んでみるか?」
「なっ!ふざけないでください!!」
頬を紅くして叫ぶリオンに、ヴィルヘルムはいつものようにゲラゲラ笑う。
「まっ、体に負担かけてまで我慢するなってことさ。
 あと、王子が必死につなぎとめた命だ。自決なんて馬鹿なこと考えんなよ」
そして最後にもう一度、すまなかった、と頭を下げた。
「…もう、いいですから。確かに私も馬鹿な真似をしました。止めていただいて、ありがとうございます」
弾かれた手首はまだ痛むが、逆に頭が軽くなった。
「なんだか、1人でもやもやと思いつめてたのがすっきりしました」
「体のモヤモヤはすっきりしてねーだろ。何なら手伝ってやろうか?」
「なっ…!!」
さっき頭を下げたことも忘れたのか。リオンが再びつっかかろうとしたが、
「―っ」
ヴィルヘルムの瞳に息を呑んだ。
そこには、先程の冗談も、豪快な笑いのときにもなかった真摯の光が宿っている。
慈愛でも、狂気でもない。その瞳にリオンの記憶の片隅で何かが動いた。

誰かに、に、て――――。

「ねーちゃん」
「あ…」
豪胆な戦士は少女の瞳の奥の揺らぎを見逃さなかった。
「んな顔すんな。何も無理に取って食おうなんざ思っちゃいねえよ。
 あんたは生真面目すぎるからな、自分で吹っ切れられるか?」
「わたし…は」

下品なことを平気に口にして、悪気も全くなくて。
こんなひと、こんな人なんかに。

ぬる。

「…っ」
下着に残る先程の名残を改めて感じ、今さら顔が熱くなる。
いつの間にか息がかかるほどにヴィルヘルムは接近していた。
リオンはそれでも彼の眼差しから逃れることはなかった。汗と、血の染み込んだ匂いがリオンの鼻腔をくすぐる。
普通の女なら拒絶する匂いだが、リオンは同じく戦場に立つ者として知っていた。
それは戦を駆け抜け、生き抜いてきた戦士の証。
信じて、いいのだろうか。
こんなことを王子はもちろん、ミアキスやロイに相談するなどありえない。
自分の中にそんな欲望あること自体浅ましいと思っていたのに。
封じたい思いを目の前の男はあっさり笑い飛ばした。
「嫌なら拒め。ただ、我慢はするな。何も考えんなよ」
頑強な腕がリオンの背にまわる。いつもの物騒な振る舞いはそこにはなく、悠然とリオンを抱きとめた。
リオンの傷に響かない様に。彼女の思いを汚さない様に。
リオンの首筋に顔をうずめる。リオンも自然にヴィルヘルムの首に手を回し、しがみついた。
頬に、うなじに無精髭が刺激を与える。少し痛いが、不快ではない。
「傷、痛まねえか?」
返事の代わりに、少しだけ腕に力を込めた。
本当にこれでいいのか。リオンは正直、まだ答えを出せないでいた。
しかしこの男の存在を身体は拒絶していない。
自分のことを何も知らない。そしてこれからも。
だからこそ、さらけ出してもいいのだろうか。

 びくっ。
ヴィルヘルムの空いている手がリオンの腰に置かれた。
その箇所から瞬時に熱が拡がる。
「ふぁっ…」
女特有の体のラインをゆったりと、武骨な指がなぞっていく。
そしてそのまま、そっと胸元へ、ゆるやかな膨らみにふれる。
「っ、はあっ…!」
衣の上から、ゆっくりと、撫で上げる。
リオンはしがみつく腕にさらに力を込めた。ヴィルヘルムはあくまでただ、抱き止める。
リオンが拒絶する様子がないのを見止めると、指の腹で膨らみの先端を探し当てる。
「っ!!」
それは衣の上からも判るほど突起し、武骨な指が与える刺激を幾重にも増幅させリオンを痺れさせた。
「ああ…っ、ああっ…!!」
自分以外の、初めて他人に触れられる、甘い刺激。
未知の感覚に、今まで踏み入れた事のない世界は果てしなく白くて。
現実に追いすがるようにリオンはしがみつき、救い上げるようにヴィルヘルムは彼女を支える。
「ほら、深呼吸でもしとけ」
一度、自分にしがみついてくるリオンを抱き上げ、寝台に横たわらせた。

自分も寝台に膝をかける。ぎしり、と寝台が軋み、リオンは身体を強張らせた。
赤みがかった白い頬をそっと撫でる。それは彼女を落ち着かせるというよりも、少しでも怯えさせないように。
空いた利き手は、ゆっくり、衣の下に侵入していった。
防具など身につけているはずも無く、衣擦れの音とともに白磁の肌が空気に触れる。
上衣を鎖骨まで寄せ上げると穢れを知らぬ白い肢体が晒される。緊張で僅かに震え、桜色に色づいた。
ヴィルヘルムは眩しそうに眼を細めて見入っていると、リオンはそろりと胸を隠す。
「あ…あんまり、見ないで…恥ずかしい、です」
「あまりに綺麗で見惚れちまった」
さらりと真っ直ぐな言葉にリオンはますます顔を赤らめた。
胸を隠す細い腕をとらえる。力を込めなくともリオンの手は誘導されるままヴィルヘルムの肩に置かれた。
「触るぞ「あっ」
今度はリオンの反応を待たないまま胸に手をやる。
吸いつくような肌触りを手の平で堪能した後、先端にある桜の蕾を摘んだ。
「ひゃうっ…」
置いてきぼりのもうひとつの蕾にヴィルヘルムの顔が迫る。
「え、まってくだっ」
気づいたときには既に手遅れ。ぬちゃっ。
「……っふわぁああっ!!」
幾多の女性を悦ばせた舌が蛭のごとく卑猥に蕾を弄ぶ。
 ぬちゅ、ちゅぷ、ぬる、ずちゅ。
「はう、うあっ!、ああ、ああっ、ひゃん!」
わざと卑猥な音を立て、リオンの聴覚までも刺激していった。
やっと解放されたかと思えば公平にもうひとつの蕾にしゃぶりつく。
 くちゅ、ちゅぱ、にりゅっ、ちゅぴん。
先程まで考えを戒めていた理性などどこにいったのだろう。
リオンは初めて感じる甘く、痺れていく刺激を受け止めるので精一杯だった。
下腹部から下着に手が差し込まれても抵抗する余裕もない。
 ぐちゅり。
愛液が溢れて下着が哀れなほどに湿り、太腿まで下げればつう、と糸を引いていた。
当然ながらヴィルヘルムも自慢のモノがはちきれんばかりに怒張していたが
今回に限り自分の欲情をリオンにぶつけることは一切なかった。
全てはリオンが壁をぶち破るための手ほどき。
彼にとって欲情の捌け口などいくらでも道がある。だがこの少女は実直すぎる性格が災いして自ら道を塞いでいた。
真面目で不器用なオンナが泣いているのだ。助けずには(=ちょっかいを出さずには)いられない。
固く閉じられた腿も次第にゆっくりとほぐれていき、指が少しずつ繁みの奥へと入っていく。
男を知らない秘裂はどれだけ濡れそぼっていてもいまだ異物の侵入を拒んでいた。
愛液にまみれた指を裂け目をなぞるようにゆっくり往復させる。
「…り、っ…さまっ…!」
不揃いな呼吸と途絶え途絶えの嬌声の中、ヴィルヘルムは自分以外の名を聞いた。

なぜ、思い出したのだろう。少しも似ていないのに。

耐えることのない快楽は、もはやリオンの意識をも奪いとろうとしていた。
波のように時に激しく、時にやわらかに、甘い痺れは身体中を支配する。
白い世界の中、先程ヴィルヘルムの瞳に見つけた真摯な光。
男の匂いも、抱きとめてくれる腕にも、不快はなかった。むしろ記憶のどこかで既視感を感じていた。
それはやがて記憶の片隅で動いたパーツと融合し、輪郭をみせる。
しかしどれだけ腕を伸ばしてもがいても、そこに届くことはなかった。

その名が何を示すのか、彼の相方である副長ならば気づいただろう。
しかし今、リオンを抱いているヴィルヘルムの脳味噌に男の名を記憶するという観念は存在しない。
「うあ、っ、はあっ!…ど…さ、あ、フェリドさまあっっ!!」
リオンを現実に引き戻さないようにヴィルヘルムは口を閉ざした。今は自分を求めて欲しいわけではない。
誰かは知らぬがそいつが絶頂に導いてくれるよう、指の動きを速める。
裂け目をなぞり、愛撫で肥大した粒を指の腹で押し、引っ掻くように弾き、摘む。
胸を舐め上げた時より高く、水音が淫靡に響き渡る。
  ぴちゃり、くちゅ、ちゅくちゅくちゅくちゅくちゅぷくちゅっ。
「あうん、あう、あっ、あっ、あ、あ、は、あっあっあっ!!」
水音の速さにそって絶頂が近づく。リオンの肢体がビクンと跳ねた。

「あああ―――――――っっ!!!!」

意識の途切れる寸前、「お疲れさん」と聞こえた気がした。

目が覚めたときには、陽が沈みかけていた。
リオンは上半身を起こし、ぼんやりと記憶を巡らせる。
服は乱れていない。まっさらなシーツがかかっている。
「あ」
寝台の脇にはシーツが雑然と落ちていた。破れた裂け目に覚えがある。
隣の寝台を剥ぎ取ってかけてくれたのだろう。一箇所だけベッドメイクされていない。
身体も拭いてくれたようだが下着の湿り気までは拭き取ることはできなかった。それが何よりの証。
「…」
現実とかけ離れた時間。
ぽすん、と枕に顔をうずめる。よみがえる記憶は顔から火が吹き出すようなものばかりだったが、
今は何も考えずにただあのときの記憶を反芻することしかできなかった。
なにも、かんがえずに。

同時刻、本拠地内某所。
「あ〜〜…」
「隊長、暇だからってトンズラしないでくださいよ。今ここで指揮をとれるの隊長だけなんスよ?」
傭兵旅団の隊員が溜め息をついた。
本拠地の指揮官を任された上司が数刻ほど行方知れずだったのである。
「王子はまだ帰ってこねーのかぁ?この俺様に留守番させといていい度胸だなあ」
アリバイを作るように慣れない魚釣りに格闘していた所を部下に見つかり、引き戻されたのだ。
「…無償奉仕ってのも、面倒なもんだな」
珍しく不機嫌なヴィルヘルムに部下達も遠巻きにしてたため、そのつぶやきは誰にも届かなかった。

「っっぉおおっしゃあおめえらああ!!!」
突然の雄叫びに隊員達が一斉に振り向く。
「王子たちが帰ってきたら、ヤシュナの娼館までついて来い!!!!
 留守番なんてうぜえ仕事こなしたんだ、俺が全部奢ってやらあ!!!!」
「オオオオオーーーーッッ!!」
「隊長かっけぇー!!」
「一生ついていくぜー!!」
「ヴィルヘルム隊ばんざーいっ!!」
旅団の金にまで手をつけて後に帰還したミューラーに殺されかけることは予想せず、
王子が確実に勝利して帰還する確信を持って、ヴィルヘルムは部下達と娼館ツアーの打ち合わせを開始した。

END

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