5主人公×ビッキー 著者:8_648様

 ソルファレナを奪還し、太陽の紋章の化身などを倒してから数日後の深夜、
セラス湖の城の一室で、僕、ファルーシュはベッドに横になっていた。
ここ数日、無事にすべてが終わったことを祝して。ということでパーティーが開かれているのだが、さすがに疲れてくる。
だから一足先に休もうと思い、リオンと別れて自室に戻ってきて横になった、というわけ。
「すべて終わったよ。父さん、母さん…。いや、これでやっと始まり、なのかもしないね。」
失ったものはたくさんあり、どれも大きかったけれども、それでも平穏は取り戻せた。最後の肉親である妹のリムスレーアを取り返すことはできた。
これから彼女は女王として、大変な仕事をこなしていかなければならないだろう。そして僕は彼女の盾になることを選んだ。
「あー、大変そうだなあ、これからも。まあ、なんとかなるだろう。これまでもなんとかなったんだしね。」
と、どこか楽観的にこれからのことを考えていたらコンッ、コン。と、部屋のドアがノックされる音を聞いた。
こんな時間に誰だろうか?少しだるいがベッドから起き上がりドアを開けにいった。
「はい?どちら様?」と言いながらドアを開けるとそこにはこのセラス湖の城からあっちこっち行くときにとてもお世話になった少女、ビッキーが立っていた。
「どうしたの?こんな時間に。」
「パーティーで姿が見えないから、具合でも悪くなったのかなー。と思って見に来たの〜。」
 屈託のない笑顔。今思うと、この笑顔に癒されてきたのかもなぁ。と思う。
彼女が仲間に入ってからほとんど一緒に行動していたような気がする。
これといって理由があったわけではないのだが、たまに撃ってくれる連続魔法が強かったから。
それでずっと一緒に行動していた。あとムードメーカーだったから。彼女が入ればどんなときでも和んでいた気がする。
「心配してくれたんだ。どうもありがとう。少し疲れただけだから心配しないで。」
こちらも笑顔で返してみる。彼女がいると自然に笑える、気がする。
すると彼女は少し顔をしかめて、
「無理は駄目だよぉ〜。王子さまはまだまだこれからが大変なんだからね〜。」
「うん、わかってる。大丈夫だよ、大丈夫。」
「そう?それならいいんだけどね〜。 あ、そうだ、ちょっとお邪魔してもいいかなぁ〜?」
「え?別にかまわないけど、どうしたの?」
「少しお話したいだけー。」

こんな夜遅くに女の子が男の子に訪ねてくる。というのはなんというか、如何わしい気がしてしょうがない。
カイルあたりに見つかると、からかわれそうだな。と思いつつ、部屋に明かりをともし、ビッキーを中に招き入れた。
「まあ、掛けて。お茶煎れるから少し待っててね。」
「あ、いいよういいよう。お茶なんて、そんな気を使ってもらわなくてもいいよう。」
「あ…、そう。じゃあ、煎れないね。それでお話したいって言っていたけど、どうしたの?」
何もわざわざこんな時間に話、だなんて。いつも彼女はこの時間にはもう幸せそうに夢の中へ旅たっているはずなのだが…。
「そうそう、お話しよう!…私、瞬きの紋章を宿しているでしょ〜?それで私てばドジだから、たまに失敗しちゃうんだぁ…。」
「瞬きの紋章っていうのはテレポートできるあれのことだよね?」
「うんそうそう!あれのことだよ〜。それで、たまに失敗しちゃって過去とか未来とかに飛んじゃうの!
 今回この争いごとが起こっている最中に、あの遺跡のところへ、しかも王子さまたちの目の前に飛んでこれたのも
 偶然中の偶然、奇跡みたいなものだったんだよ〜。」
「つまり、あそこへいきなり現れたのは、別の時代にいた君が瞬きの紋章を使って失敗してそれでたまたま。ってことなんだね。」
「うん、そう!それで、今度またいつ失敗してどこかへ行っちゃうかわからないから、後悔する前に気持ちを伝えておこうと思ってね!
 王子さま!好きです、大好きです!」
「そうなんだ好きなんだね。え…?好き?ええええぇえぇええぇぇぇ!?!?」
今、この娘なんて言った?好き?えぇっと、ビッキーが僕のことをだよね?
話跳躍しすぎだろ…。でも彼女の一生懸命さもわかる。早口で言い切ってゼーハーゼハーしている彼女の様子を見れば、
がんばって、勇気を振り絞って言ってくれたのだろう。
「うん…。やっぱ駄目だよね?リオンさんやミアキスさんがいるのに…。」
「え…、いや、リオンやミアキスと付き合っているわけではないし。
 それにその、面と向かって真剣な気持ちで好きって言われたことがないから、ごめんね、
 なんか、すごく動揺しちゃって。うれしいよ。とっても。」

 実際はどうなのだろうか。僕は彼女のことをどう見ていた?
最初会ったときは変な子だなぁ。って思っていたけど、
一緒に行動させていた理由はただ単に連続魔法が強いから、ムードメーカーだったから。だけじゃない気がする。
僕は彼女に惹かれていたのかもなあ。
冷静になって考えてみると、思いあたる節はある。
一度無意識のうちに彼女の姿を目で追っていたことがあったらしく、
ミアキスに「さっきからずっとビッキーちゃんを見てますけどビッキーちゃんに気があるんですかぁ。リオンちゃんが可哀想ですぅ。」
などと言われたことがあった。あの時は、軽く流しておいたが…。
 あぁ、なるほど。彼女に惹かれていたんだ。
一度目で追っていたぐらいで理由付けするのは少しむちゃくちゃかもしれないけれども、
これから彼女と過ごしていくうちにはっきりと自分の気持ちに気づくことができるだろう。
「うん、僕も好きだよ、ビッキー。」
「え?ほんと?やったー。」
ブイっとこっちに笑いながらやってくる彼女の姿が可愛くて、
僕は机ごしに座っている彼女の顔に自分の顔を持っていき、
キスをした。ただ触れ合うだけのものだったが、今はこれで十分だ。
これから先にいくにはもう少し時間が必要。
顔を離して、彼女の顔を見てみると、まるで熟したトマトのように真っ赤になっている。
ビッキーはガタンッ!と勢いよく立ち上がり、
「そ、それじゃ!お、おおおおやすみね!!王子さま!」と言って部屋を出て行こうとした。
「うん、おやすみ。それと王子さまじゃなくてファルーシュでいいよ?」
「おおおやすみなさい、ファ、ファルーシュ、さん。」
そういうと彼女は部屋を飛び出していった。

 それからソルファレナの城に戻り数日間、彼女と日向ぼっこしたり、なんだかんだしてすごして、
といったものの女王護衛の訓練とかあったからあんまり時間はなかったけれども、
楽しい時間をすごせた。
「たとえ過去や未来、どこに行ったとしても、絶対にファルーシュさんのことを忘れないよ〜。」
こんなようなことを言われた次の日から、ビッキーの姿は見えなくなった。
リオンやミアキス、その他の城にいた者たちはみんな驚いていたが、僕だけは事情を知っていた。
テレポートを失敗してしまったのだろう。
そしてまたどこか遠い過去か未来に行ってしまったのだ。
彼女が消えた理由は誰にも教えてあげる気にはなれなかった。
だってこれは二人だけの時を越えた秘密なのだから。
END

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