アンネリー×2主 著者:11様

ゆさゆさ……ゆさゆさ……。

 「あの……起きて下さい……朝、ですよ……。」
誰かが僕の身体を揺すっている。
控えめな揺れが疲れた身体に心地良い。
いつまでも揺られていたい気分だ。
 「あの……起きて…、あぁ……どうしよう……。」
か細い声が聞こえる。
何か困っているみたいだ。
次第に揺れが大きくなってきた。
僕はまだこの状態でウトウトしていたくて、声の主に話し掛けた。
 「ん……もう少し寝かせて……。」
ピクリと僕の身体を揺らす手が反応して、止まる。
そしてそのまま手が離れていった。
 「あ、はい……わかりました……。もう少し、ですね……。」
そして僕はまた眠りにつく…。

 「ん…?」
あれ?誰か僕を起こしに来たような……気のせいかな?
枕に突っ伏していた顔を上げる。
視界がぼやけたまま周りを見回す。
 「あ、起きましたか…?良かった…。……おはようございます。」
ニコリとこちらに笑顔を向ける女の人がいる。
少し茶色がかった短めの髪が、朝の陽を浴びて綺麗に透けている。
整った目鼻立ちをした顔は、はっきりと美人だと言える。
白い半袖のブラウスから見える腕はその服よりさらに白く、身体の前で組まれている。
 「あ、あれ…アンネリーさん……おはよう…。」
少しびっくりした……アンネリーさんが起こしに来るなんて初めてだ。
そう言えば今日の起こし方はなんだか優しかったなぁ…。
今まで起こしに来てくれた人と(起こしに来てくれるだけでありがたいんだけど)、
随分違っていたけど……。
 「…アンネリーさん、そこで何してるの?」
 「え……あの、起こしに来たんですけど……。」
その割には、僕のベッドから少し離れたところに立っている。
アンネリーさんの声じゃ、そこから呼んでも目覚まし代わりにはならないと思うけど…。
 「……僕、起きた……?」
 「え…えと……、さっき起こそうと思ったら、”もう少し寝かせて”って……」
 「…それで、ずっとそこに立ってたの…?」
 「はい……。」
 「…………ごめん。」
もう少し朝には強くないといけないと思い直した朝だった……。

僕は起こしに来てくれたアンネリーさんと一緒に食堂で朝食を取り、
食休みがてらに何気ない世間話をしていた。
アンネリーさんは僕が話す事に相槌を打ったり、微笑みかけてくれたりした。
話しをふってくることはほとんど無かったが、彼女は真摯に僕の話を聞いてくれていた。
ちょうど話題が尽き、沈黙が漂ったその時、アンネリーさんから話しかけてきた。
 「あの…、少し聞きたいんですけど。」
 「何?」
ずっと聞き手だったアンネリーさんが僕に聞きたい事があるらしい。
僕はなんだか嬉しくなって、前のめりになって彼女の言葉に耳を傾けた。
 「私、この軍の方達の役に立っているでしょうか……?」
 「え?」
おかしな事を言う人だな。
 「毎日ステージで歌わせてもらっているのに、私、お礼もできなくて…。」
 「お、お礼だなんて考えなくて良いよ!
  それに、アンネリーさん達には逆にお礼を言わなくちゃ。」
 「え…どうしてですか?」
 「だって、皆すごい気に入ってるよ、アンネリーさんの歌。
  戦ってる時だって、口ずさむ人もいるぐらいなんだよ?」
 「……本当ですか?」
 「ホントだって!毎日そんな素敵な歌を聞かせてくれてるんだから、
  お金払わないといけないかなって思ったりもするんだけど…。」
 「そんな!私の方こそ、寝るところや食事までお世話してもらって……。」
 「そんなの気にしないでよ。ここ、お城だっただけに部屋の数は多いんだよね…ははは。」
少し照れて、笑って見せる。
でもアンネリーさんを笑わせることはできなかった。
 「では……、あなたのお役に立ててるでしょうか……?」
 「ぼ、僕の役?」
うーん……。直接アンネリーさんに何かされたって事はないけど、
軍の皆を楽しませてくれてるし、間接的だけど助かってる事は確かだよな。
 「う、うん。ストレスを溜めない事が兵の士気を維持する事だってシュウさんも言ってたし、
  そういう意味じゃすごく助かってるよ。僕にはそういう事は出来ないから…。」

 「あ、あの……、そういう事じゃなくて、その……直接、お礼がしたいんですけど……。」
 「え?……どうして?」
 「……私、サウスウィンドウであなたが声をかけてくれた事、一生忘れません…。
  だって、この軍に誘ってくれたおかげで、ピコやアルバートと再会できたし、
  私、あのままだったら、お腹空いちゃって倒れてました……。」
アンネリーさんと初めて出会った頃を思い出す。
宿屋で食事代が払えなくて、市庁舎の横でうなだれていたっけ。
僕が歌を聞いてあげると、すごく喜んでくれたなぁ……。
あの時聞こえたアンネリーさんのお腹の音、可愛かった……。
 「あの…?」
 「え?あ、ごめん。何だっけ?」
 「だから…、直接、お礼がしたいって……」
 「気にしないで。僕にも歌を聞かせてくれたら、それで十分だから。」
 「でも……ステージに来る暇がないんじゃないですか?全然来てくれてないし……。」
うっ……確かに行ってない。
最近いろいろあったから、すっかり忘れてた……。
 「あ、そ、そうだね…ごめん、今度必ず行くから!
  その時はゆっくり聞かせてもらうよ!」
 「……じゃあ、明日、来てくれますか…?」
 「え…明日?」
ん〜、まぁ大丈夫かな……ルカ・ブライトを倒してから、王国軍も目立った動きは無いし、
ちょっと顔を出すくらいなら……。
 「うん、わかった…明日だね。絶対行くよ。」
 「約束ですよ?」
アンネリーさんと約束を交わした直後、僕らの後ろから大きな声が聞こえてきた。
あの声は……。

 「あ、ここにいたぁ!もう、探したんだからね!
  ね、ね、最近忙しかったでしょ?ゆっくり街を見てまわる事もできなかったから、
  ちょっとお出かけしようよ!」
 「え、あ、ちょっと……」
 「あ、アンネリーちゃん、おはよう!この子借りてくね!」
 「え……」
ナナミが強引に僕の腕を引っ張って、連れて行こうとする。
何かそわそわしていて、周りが見えていない様子だ。
 「ごめんねアンネリーさん、僕ちょっと……あああぁ」
 「あ、はい……いってらっしゃい……。」
アンネリーさんの不安そうな表情がやけに印象に残った感じがした。

あの日、ナナミに強引に連れて行かれた街でハイランドの使者という人に会った。
それから次々といろんな事が起きて、昨日ティントから戻ってきたばかりだ。
 「うぅ……疲れた。今日はもう寝よう……。」
僕はもう何もやる気が起きず、ベッドの中に潜り込むと、泥のように眠りについた。

ちゅ。ちゅ。

……。

ちろ。ちろ。ちろ。

……ん。
なんだ…?
僕はどこか柔らかく、生暖かい感触を覚え、気怠さの残る身体を起こす。
 「あ、お、おはようございます…やっと起きました。」
アンネリーさんが僕のモノに舌を……舌を!?
 「え!?……え!??」
スースーする下半身に目をやると、トランクスは膝の位置まで下ろされていて、
毎朝恒例の屹立を起こしている僕のモノに、アンネリーさんが可愛い舌を這わせていた。
 「何してんですか!?」
 「あ、ご、ごめんなさい……。」
思わず大きな声を出してしまった僕に、びくっと身体を震わせてアンネリーさんは身を起こした。
 「ちょっと…あの…、え?……・え!?」
まだ頭の中が混乱している。
以前もこういうことがあったような気がするけど、今回は事情が違う。
だって、まさかあのアンネリーさんが…、こんなシモ関係には無縁そうな彼女が、
僕のモノを朝からペロペロしてるなんて信じられない……。
とりあえず脱がされたトランクスを上げようとする。
が、端をぎゅっと握られていて上げられない。
 「ア、アンネリーさん、手…離してくれませんか?」
 「ダメです……」
彼女にしては珍しく、少し強めの口調で否定してきた。
 「な、なんで?」
 「だって……、約束、守ってくれませんでした……」

約束?………あ!
 「あ……ステージ見るって約束だよね…。ご、ごめん、あの後に急に忙しくなっちゃって…」
 「はい、わかっています……。それで私、考えたんです。」
アンネリーさんが僕をじっと見つめる。
 「考えたって…何を?」
 「やっぱり忙しいみたいだから、ステージまで来るのも大変なんじゃないかって…。
  それで、何か出来る事がないかってピコやアルバートにも相談したんですけど……」
あの人達が彼女にこんな事やれって言ったのかな?
それは考えにくいな……だって、あの2人は彼女の事、本当に大事に思っているみたいだし…。
 「何て言ったの?彼らは…」
 「あの…、『僕らに出来る事をやっていれば良いんだよ』って……。
  それって、歌を歌うって事ですよね……。」
なんだ……。やっぱりあの2人は僕と同じ事を考えてくれていたんだ。
彼らの歌が僕らを癒してくれているって事。
しかし、アンネリーさんは言葉を続ける。
 「でも、あなたはステージに来れないから、私、いつまで経っても恩返しできないし……。
  ステージが終わってからも、その事で困っていたら、いつも聞きに来てくれている
  お客さんが……、その……、こういう事を、教えてくれたので……。」
な、何て事を言うんだ、その人は……。
て言うか、それを間に受けて実行するアンネリーさんもスゴイけど……。
 「だ、誰ですか!そんな事言う人は!」
 「あ、そ、それは言えません……。だって、約束したから……」
約束。その言葉は、なんだかすごく重く感じた。
僕がそれを守らなかったために、こんな騒動になっているのだから…。
 「だ、だから……、その……私に、させて、ください……」
そう言って、アンネリーさんは再び僕のモノに触れようとする。
 「い、いいよ!こんな事しなくても!」
 「あ……、や、約束破ったんですから、言う事を聞いてください……」
 「ほ、他の事なら聞くからさ、こういうのは良くないよ…っ!」
僕は無理矢理トランクスを上げる。ずるずるとアンネリーさんがこちらに引っ張られてくる。

 「ダ、ダメ……お、お姉さんの言う事、聞いて……!」
 「えっ?」
意外な言葉に僕の動きが止まる。
お姉さん?……そりゃアンネリーさんの方が年上だけど……、
1つか2つしか変わらないじゃないか。それに今までそんな事言ったことも無いのに…。

ぺろ…。

 「はぅぁ!」
訳がわからないまま、僕のモノがアンネリーさんの愛撫を受ける。
亀頭の部分をちょんちょんと舌先をつけて刺激する。
触れるかどうかのわずかな刺激が、なんだかもどかしい。
くまなく舌先で頭の部分を触れ終わってから、アンネリーさんの舌は裏筋の方へと降りていった。
 「う!」
舌をつけたまま、そのまま下方へ降りていく。
それの通った道に残った唾液が空気に当たって、熱くなった僕のモノを冷ます。
アンネリーさんの舌が僕の袋の部分に辿り着いた。
竿の真下をまっすぐ、つつつ、と舌が通る。
感じたことのない感覚に、僕の力が抜けていく……。
 (あああ…なんか、屈辱的だ…)
僕が顔をしかめて、襲い来る刺激に耐えていると、
それを見て心配になったのか、アンネリーさんが声をかけてきた。
 「あ、あの……やっぱり、迷惑でしたか……?」
 「え…いや、………」
迷惑なんてことは全然ないんだけど、アンネリーさんがこんなことをする意味が解からない……。
しかし、ここで止めてって言い切れるほど僕は強くなかった……悲しい。
アンネリーさんが少し安心した表情を浮かべ、また舌の動きを再開させた。
袋の部分からまた上方へ移動を始める。
舌先が僕のモノの裏を上がっていく。
その道筋をなぞる度にぞくぞくと快感が頭の中を駆け上がり、ピクピクとモノを震わせる。

アンネリーさんはそんな僕の反応を見て、その部分を重点的に愛撫し始めた。
彼女の可愛い舌が、ちろちろと何度も裏筋を往復する。
アンネリーさんは舌を動かしながら僕の顔を見て、反応を確かめている。
彼女の綺麗な栗色の瞳が僕を見つめる。
頬を桃色に染めて一生懸命奉仕してくれる彼女を見ているうちに、
腰の奥に溜まっていた欲望がせり上がってきた。
 「ア、アンネリーさん……っ、くっ……あ!」
 「えっ?」
アンネリーさんが口を離した瞬間、僕のモノの先から白濁液が跳んだ。
彼女の綺麗な顔にそれが降りかかる。
 「きゃ…」
思っていたよりも勢い良く跳び出たそれにびっくりしてアンネリーさんは身を起こした。
顔にかかった粘液を指ですくって、不思議そうに見つめている。
 「あ、これが、男の人の……」
 「わ、ゴメン!」
僕が慌てて謝ると、彼女はニコリと笑って、
 「私、お役に立てたでしょうか……?」
と問いかけてきた。
 「え……う、うん……」
彼女の笑顔に一瞬見とれてしまって、呆けた返事を返してしまった。
 「それじゃ、私、失礼しますね……あの、お暇があれば、ステージの方にも来て下さい…。」
アンネリーさんはポケットから取り出したハンカチで顔をふきふき、
何故か晴れやかな顔をして部屋を後にした。
下半身の清清しさとは裏腹に、何か罪悪感に包まれた朝だった……。

その日の昼、僕はステージを見に顔を出した。
またあんな事をやられちゃ溜まらない……もとい、堪らない。
アンネリーさんが僕の役に立ってると自覚できるようにもっと頻繁に通ってあげよう。

ぱちぱちぱちぱち………。

あ、始まるみたいだ。
ピコさんとアルバートさんが楽器を構える。
アンネリーさんが客席に向かって、ペコリとお辞儀をする。
彼女が顔を上げた時、ちょうど僕と目が合ったような気がした。
一瞬の静寂の後、演奏が始まった。
 「Corro nel vent della landa desolata
  E in quesro momento sento qualcosa……」
美しい音色に乗って、アンネリーさんの歌声が流れてくる…。
あ、これ、あの時の……、サウスウィンドウで初めて会った時の曲……。
あれからたくさんの時間が過ぎた。
辛い事もたくさんあったけど、僕達は確実に前へ進んでいる。
それはこの戦争が終わりに近づいていると言う事だと信じたい。
でも、それはあの時、あの瞬間が積み重なった結果なんだ。
僕は流れてくる歌を聞きながら、そんな事を考える。

ぱちぱちぱちぱち………。

曲が終わり、僕は拍手を心から送る。
僕が余韻に浸っていると、隣から声をかけられた。

 「よぉ兄弟。珍しいなぁ、こんなところで会うなんて。」
 「あ…ホイさん。」
僕と似たような服装をした、ちょんまげの男の人が座っていた。
 「どういう風の吹き回しだ?」
 「あ、アンネリーさんに誘われたんですよ。」
僕がそう言うと、ホイさんはひひひ、と薄ら笑いを浮かべた。
 「へぇ、俺のアドバイスが効いたみたいだな…。」
 「え?」
ホイさんが何か気になる事を言った。
 「いやね、アンネリーが何か悩んでいるみたいだったからさ、
  相談にのってあげたんだよ。それで……アンタの部屋に行ったんだろう?」
 「………。あれを教えたのはホイさんですか?」
 「そんな顔するなよ兄弟。良い思いしたんだろう?」
バンバンと僕の背中を叩く。
ちょっと周りに迷惑だ。
 「なに、男なんてチンポを舐めてやりゃ誰でも嬉しいって教えただけさ。
  言う事聞かないようだったら、年上ぶって命令してみりゃ楽勝だぜって。
  アンタは礼儀正しいからそれで言う事聞くだろうって思ったんだが、どうだったよ?」
 「…………。」
よくもそんな事を、あの人に……。
僕は何も言わず、ホイさんの腕を掴んで会場を出た。
そのまま2人で城を出る。
何も言わずにブラブラと目的もなく歩いた。
途中、モンスターに何度も襲われたけど、僕は後方でじっとしていた。
無理矢理前衛に押しやられたホイさんは、モンスターにボッコボコにされて
泣きながら助けを求めてきたけど、僕は一度も助けなかった。

ふん。自業自得だよ。

                   完

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