ジャック×アイラ 著者:17様

「う〜ん、やっぱり着辛いなぁ」
 アイラはピンク色の上着をつまんだ。伸縮性のある生地がびよ〜んと伸びる。
 本当はこんな洋服なんて着たくなかったが、拒否できない事情があった。
 ことの発端は12小隊引きいるゲドがゼクセン連邦首都、ビネ・デル・ゼクセへ行くと言い出したことに始まる。
 ゼクセンとグラスランドは現在情勢が緊迫している。
 12小隊だけならゼクセンに行くのになんの支障もなかったが、カラヤクランのアイラがいることでこの旅に都合の悪い展開が広がるかもしれない。
 せめてものカモフラージュにとアイラは洋服を着ることになったのだ。
 不快そうに背中に手を入れて、ぽりぽりと背中を掻く。が、それを阻むものがあり上手く背中が掻けない。
「このぶらじゃーっていうのも何か背中を締めつけるし……カラヤの服の方がやっぱりよかったよ」
 洋服着るには女の子はこれをつけなきゃ駄目だよ!とクイーンに力説されて選んでもらったものだ。
 下着を買う時、エースは店から追い出されたにも関わらず、エースのお金で買わされたので、二重の意味で泣いていた。
「部屋の中ならいつもの服でも構わないよね」
すぽっと上着を一気に脱いだ時に、ノックの音がした。

「あれ、ジャックどうしたんだ?」
「………………!」
ごんっ!
 ジャックが開きかけたドアの角に頭をめり込ませる。耳が真っ赤になっていた。
「ジャックは間抜けだなあ、ドアに頭をぶつけるだなんて」
「……………」
 ジャックはドアに頭をぶつけたまま微動だにしない。
「今、物凄い音がしたぞ。頭から血は出てないか?私に見せてみろ」
「…………………大丈夫だ」
 大丈夫だと言いつつ、ジャックはドアを頭から離そうとはしない。
「大丈夫じゃないだろう!いいから私に見せてみろ」
「……………大丈夫じゃなくなる、からいい………」
「頑固者だな、怪我でもしていたらどうするんだ!」
 アイラがジャックの肩を掴んで振り向かせる。
「………………………!!」
 ジャックの顔面が一気に赤く染まる。そして、何も言わずに顔を後ろに背けた。すると、ドアが開きっぱなしなのに気がつき、慌てて女性部屋の中に入りドアを閉める。
ドアノブを握り締めたまま、何故か荒い息をしていた。
「ジャック、人と話す時はちゃんと顔見て話せと子供の時言われなかったか?それとも、どうかしたのか?」
「………………………俺は…………………イヤらしいんだ」
「?」
「…………………………………むっつり、なんだ…………」
「??」
「………………………だから、その格好でいてくれるのはやめてくれないか?……でないと……」
 後ろ向きのままのジャックに言われ、改めて自分の姿を見てみる。
 白いレースのブラジャーにミニスカートにスパッツ。
「変なのか?この格好が」
「…………………………」

「だったら、今着替える。ちょうど脱ぎたくてうずうずしていたんだ」
 そう言ってアイラはブラのストラップに手をかける。慌ててジャックが振り向いてそれを止めた。
「何で止めるんだ?変なんだろう、この格好」
 きょとんとしてアイラはジャックを見上げる。
(俺には……変どころか……その、嬉しい格好だが理性が持ちそうにない。
だから俺は頼むから上着を着てくれないかと言うことを言いたかった……アイラは何で全部脱ごうとするんだ?)
 ジャックにしてはかなり饒舌だが、心の中で叫んでいるだけなので、アイラにはジャックの考えがまったく伝わっていない。ただ、口をぱくぱくさせているだけだ。
 それに、それを話せば、どうしてジャックにとって嬉しいかとか突っ込まれるのが目に見えている。下半身事情とか男心なんてものをどう口に出して伝えればいいかかわからない。
しばらく考えた末に出た説得するための言葉が……
「…………………………男は、狼なんだ……」
「狼か?カラヤの伝説で狼は寂しがりやのいい奴だ。間違って森に迷い込んでしまった子供を猪どもから守ってグラスランドの草原まで送り届けてくれた」
「…………………………」
 カラヤとジャックが生きている文化圏とはかなり狼に対しての認識の違いがあるらしい。
 ジャックが言いたかったのは、勿論『男は狼のように獰猛で性欲もある、女の子は無防備でいるといつ襲われるかわからないから気をつけろ』ということだ。
(言葉は…………………難しいな………)

 もっと即物的な言い方をすればわかってくれるだろうか?
「………………………抱きたくなるから、その格好はやめてくれ……」
「抱き締めるのはカラヤでは親愛の証だぞ。ほら、おまえにもしてやる」
「…………………………!」
 ぎゅっと下着姿のままアイラはジャックを抱き締めた。
 赤らんだジャックの顔が熟れたトマトの様に真っ赤になり、湯気が出そうになった。
「我と共に旅を共にしている勇敢なる射手、ジャックに風と大地の精霊の加護を」
 胸に押しつけられる柔らかな胸の感触に動悸が激しくなる。
 アイラは抱くという言葉をそのままの意味として捉えてしまったらしい。
「………………そうじゃないんだ……………」
「精霊の加護のことではないのか?」
 昼間のブラス城でのやり取りを考えると、「イヤらしい」とエースに言っていたのはおそらくクイーンを真似しただけだろう。
 おそらく、抱く、寝る、押し倒すの意味はそのままの意味として受け止めてしまう。
(アイラにも意味のわかる言葉は何だ……)
 ジャックはしばらく黙っていた。そして、ぽんと閃いた。
 この言葉ならきっとわかってもらえる。

「アイラ………………子作りだ……………」

「ジャック、おまえ子作りがしたかったのか?」
「…………………………!!」
またも誤解された。
(……違うんだ。子作りしそうになるから、服を着てくれと言いたいのに……)
「いいよ。しよう」
ぽかんとジャックは口を開ける。
あまりといえばあまりの展開だ。
「カラヤでは子作りは大人の誉れ高い行為だ」
「だからって、俺では」
「ジャックの子なら逞しくいい子になる。それに、命を大切に扱ってくれるいい子供だ。今日、鉄頭に襲いかかろうとしたあたしを止めてくれたように」
「…………………………」
 ジャックがアイラの部屋を訪れた本来の目的は、昼間ブラス城下でゼクセン騎士に襲いかかろうとしたアイラを止めたことで、アイラが落ち込んでいるのではないかと思ったからだった。
 アイラは無くしてしまった村のために敵討ちをしたかっただろう。
『…………俺は、アイラを死なせたくはない』
 そう言ったのは本心からだった。その思いから武器に手を伸ばそうとするのを止めた。
「生きていて欲しかったんだ、アイラには」
ぎゅっとジャックがきつく抱き締めた。
「うん。……そう思っていたんだ、カラヤのみんなにも。生きていて欲しかった。だから、鉄頭達が許せなかった。だから、あの時仇が取れれば死んでもいいと思った」
 腕の中のアイラの目から静かに涙が零れ落ちる。救えなかった悔しさがそこから溢れていた。
 それをジャックはくちびるで拭い取った。ジャックの熱い吐息がアイラの頬を直に震わす。
「死んじゃだめだ………」
「うん……そうだ。……ジャック、……っ、止めてくれて、ありがとう」
 ぎゅっと抱き締めかえす。そして、少し屈んでいるジャックにくちづけた。
「ジャック、っ、……しよう?」
 嗚咽で震えるアイラをそっとベッドに横たえさせて、ジャックは上着もズボンも脱ぎ、隣のベッドに放り投げる。
包み込む様にアイラに覆い被さった。

ジャックは嗚咽を漏らすアイラの褐色の肌を優しく撫ぜる。
 泣いて熱を持った肌がジャックの手に吸いつくようだった。女の身体はこれほどまでに柔らかいものだったんだ。とあらためてジャックは驚いた。
 ついばむような優しいキスをアイラに降らせる。堅い金髪がその度に肌に触れ、くすぐったさにアイラは身を捩った。
「くすぐったいよ、ジャック」
 ジャックは草の匂いがした。グラスランドの人達と同じ風でなびく草の匂い。
安心できるその匂いに委ねるようにアイラはジャックにその身を任せる。
 白いレースのブラもスパッツも邪魔だからと取り払われ、それほど大きくはないが形のいい胸がジャックの手で優しく包み込まれた。
「………ぅん」
 無言のままジャックは乳房に指を埋める。押し返されるような弾力があるのに吸いつくようなその感覚は不思議だった。気持ちいい。
つんと立った乳首をこねくり回したり、優しく乳房をなぞったりして丹念にジャックは胸を愛撫する。やがて、アイラもその快感に声を漏らし始めた。
「…………ぁあ……ん」
ジャック自身もアイラに刺激を受ける様に徐々に分身が大きくなってくるのを感じる。
もう既に先走りの液が漏れていた。
 アイラの足をM字に折り曲げさせ、秘部を見ると褐色に近いピンク色の花が露に濡れていた。

「……………か?」
「………え!?」
「挿入れて……大丈夫か?」
「…………ぅ、うん………ジャックなら平気」
あまり痛くないように自らの精液で肉棒を濡らし、ジャックはそっとアイラの中心へと入れた。
ぬぷ。
「ひぅ………っ!………い、痛いぃっ!!」
 入ってくるものの大きさに、引き裂かれるような痛みにアイラは顔を顰めた。
 ジャックは腰を押し進めるのをやめ、じっとアイラの様子を見た。
「…………痛い?」
「う、うん…………」
「……………息吐いて、力を抜いて。しばらく動かないから」
 子供を宥める様に何度も何度も頭を撫ぜる。
 しばらくして痛みが薄れてきたのでアイラはジャックの白い背中に腕を伸ばす。
「もう、大丈夫。痛くないよ」
「………痛かったら、言うんだ」
 こくりとアイラが頷いたのを確認し、ジャックは再び腰を動かし始めた。
膣内はまだ、開かれてはなく拒絶する様に締め付けてくる。
一方、アイラの方はまだ少し痛みは続いていたが、我慢できないことも無い。
 やがて、引っかかるようなものを感じたが、ジャックはそのまま腰を進める―ぷつりと音がした。

「大丈夫か?」
こくこくと黙ってアイラが頷く。息を止めて歯を食いしばり必死に耐えているようだった。
ジャックは無言でアイラの鼻を摘む。
「…………っ!ぷはっ!ヒャック、ふぁにふるのふぁ!!」
「………息を吐くんだ。身体が強張っていると痛いだけだ」
ぶーたれながら渋々言われるとおりにする。
ジャックを締めつける力がふっと緩む。それを見計らって腰を浅く引いて最深まで突き刺した。
「あああああああああっ!」
「やはり、駄目、だな」
そう言ってゆっくりとジャックは腰を引いた。だが、アイラはジャックの腕を掴んで止めた。
「……だ、いじょうぶ。いいから、お願いだから動いて」
緩やかにジャックは動き始めた。じゅくじゅくと淫水が漏れる音がし、だんだんと中を押し進めるものが堅く大きくなってくる。
アイラも最初は痛がっていたが、熱いものが結合部から押し寄せて全身に広がってくるのを感じた。より、感じたいためにジャックの首に腕を絡ませて密着させる。
「んぁ……っ、ぁ、……」
だんだんとジャックの腰の動きが速くなってきて、浅く出し入れされていたものがより深く突き入れられた。
安物のマットレスもその動きに合わせてぎしぎしと軋む。
彼の動きに伴い目の前が霞かかってきたようになり、変に熱いものが襲いかかってくる。
「ぅ……、ふっ……ぁあん、じゃ、ジャック……何かっ、ふ、わふわして、変な感じがくる!」
ジャックも苦しげな声を漏らした。
「……すまない、アイラ…………もう、持ちそうもない……」
「ぁ……っ!」

弾けるようなその感覚が二人に襲いかかった。

翌朝。
「…………………………」
 顔を洗うために井戸にきたゲドはその珍しい光景に、僅かに目を見開いた。
 泡まみれになったジャックが、洗濯板片手に大きな白い布をごしごしとこすっている。
「………………………ジャック、何をしている」
「…………………………!!」
声をかけられ、ジャックはびくっと反応し、振り向く。
「…………………………」
「…………………………」
二人の間に沈黙が流れる。
真っ赤になってぽつりとジャックは返事をした。
「…………………………………汚してしまったから…………洗濯………」
ゲドは空を見上げる。
「…………………………そうか………」

雲一つ無い青空―今日はいい洗濯日和である。

<了>

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