フェイレン・ラン×ユーラム 著者:10_304様

あの戦いが終わって…もう二年がたつ。
終戦の歓喜。高揚。そして、特別な事態。

それも大分収まり、復興への兆しも順調で。
ローズレイクなどは周辺のはげた木々への再植林が完了。
5年前。
あの時以前の状況を取り戻している。

住民があのときを忘れないように、と水のない時期と同じ服装をしてはいるが。

所は変わり…サウロニクス。

その街の一角、そこでは商店の前で土下座をしている男が一人。
20代過ぎだろうか。
細面で一見は育ちがよさそうに見える。
しかし着ているものはどこか煤けて。そして、やせ細っているかのように。
冬場、寒さがこたえるだろう男は土下座を繰り返す

「どうか、どうか御願いします!レインウォールの!レインウォールの商人が来たときに、話を聞いてやってくださいっ!」

時節柄だった。
二年と言う間に、ファレナのなかに物資がそれなりにいきわたったのだ。
物資がなければ、あらゆるところから買い付けようというものがでる。
たとえそれが、いい意味を持たない名前の場所であっても。
しかし、いきわたってしまえば?
商人たちはよりいいイメージのところから買い付ける。
たとえば、エストライズ。ソルファレナ。
そして真っ先にその理論で切られたのが、レインウォールだった。

ばしゃぁあぁあっ!!

土下座を繰り返していた男。そこに水がぶっ掛けられ、その木のバケツですら投げつけられる。
商売の迷惑。
客が寄り付かない。
そんなことを怒鳴りつけられても、男は引かない。

「話を、話しを聞くだけでいいのです…機会を、我らレインウォールの民に、機会をおあたえください…」

その風景を見ていたラン、そしてフェイレンは口元を押さえつつある。

「あれ…もしかして…」
「…だとは思うけど。あそこまで変わる?」

男は言葉を続けている。
土下座。頭を擦りつけたままで。

「いえ…レインウォールの民に責はないのです…
 本来とがめられるべきは、まとめ役にあったバロウズのみ。
 レインウォールの民は、与えられた条件で商売に精を出していただけ…
 確かに、傲慢になった部分もあったでしょう…
 あつかましかった部分もあったでしょう…
 しかし…いま、レインウォールはもう一度…まっとうな形で…立ち上がろうと…」

商人。
一応このあたりのまとめ役になっている男は腕組みをして、一言。3日そうしていたらかなえてやる。
その言葉に一言、ありがとうございます、といい。
男は、土下座を開始した。
地面に額をつける寸前でとめ、冬の寒空の下、ずぶぬれの姿で。

「拙いんじゃない?一応、ルセリナに…」
「やめといたほうがいいかも。本人だという確証はないし。それに、何を言っても届かないよ。」
「…様子は見にこようか。ラン。」
「死なれちゃ…こまるしね。」

少女二人は離れていく。
男の名前は、ユーラム・バロウズ。
ある意味では、二年前の戦い、その発端を作った人間である。

時折ユーラムの様子を二人は見に行った。
土下座をずっと、一心に続けているその男の姿を。
レインウォールの人間だというのが。そして、顔つきでそれなりに上の立場だったと認識されたのか、けられたり、石を投げつけられたりもしていた。

…しかし。ユーラムはそれに一切抵抗しなかった。

翌日。
ランが目を覚ますと、外は白く染まっていた。

「えっ!!!」

叫び、声を上げる。
入り口の扉を開けると、ちょうどフェイレンも自室から飛び出したところで。

「…行かないと。」

兵舎の入り口にアックスたちがいたがパス。
そのまま駆け抜けて、ユーラムが土下座を続けているはずの商人の家の前へ。

人の多い。
普段相手をしている子供たち。
人間たち。
それらを全てパスしていく。
それらは全てがほぼ笑顔で。
しかし。あの男はそれらに背を向けている。
共にだれかと歩もうとすることを望まず。
レインウォールの民、自分の妹の前に立ち、罵声を、非難を、一身に浴び僅かなりとも平坦な道を歩かせようとしている。
まず悪意を取り除かねば。
どんな方法でも、偏見を取り除かねばいけない。
まるで、その方法に、自分の体を、存在を犠牲にしているかのように。

前に、たどり着く。
姿は、ないちがう。

「ユーラムッ!!」

以前、ラフトフリートに帰ったとき、彼女は母であるキサラから相談を受けた

『長い間ユーラムが戻らない。出会ったら教えて欲しい。』

そう、ルセリナから頼まれたと。
元々民に信頼されていたルセリナはレインウォールをよくまとめているらしいが。

二人は雪の中にためらいなく手を入れ、倒れこんでいたユーラムを抱き起こそうとする。
ひんやりと、そして濡れた体がしみてくるが、関係ない。

「ねーちゃんたちどーしたのー」

ニックがアックスと共にやってくる。
さっきの様子がおかしいので追ってきたらしい。

「ニック!ユーラムを兵舎へ!…フェイレン。先生を。頼める?」
「(こくっ)」

フェイレンは頷き、すぐに走り出した。
ランもアックスと一緒に走る。
確信を得たのがよりにも夜って就寝前だったなんて…そんなことを、色々思いながら。

大体の場合、サウロニクスに存在する兵舎の医務室は空きがない。

突発的に竜馬があばれたり。
突発的にラニアに呼び出された竜馬に轢かれたり。
突発的に来ていたミアキス用のお菓子にレッドペッパーを仕込んだリューグなどが詰め込まれているからだ。

そんなわけで、ランがユーラムを運び込んだのは、自分の部屋だった。
先生、医者も其方のことは認識しているらしく…そのことには何も言わなかった。
毛布を何枚かアックスに乗せ運んできたニックは容態を聞く。

しかし。
「なんじゃい…これは…」
ユーラムの服、とりあえず脱がせて着替えさせようとした医師がうめき声を上げた。
贅肉がほとんどない。
内臓のふくらみが見えるような、そんな程度ではないが。
それであったとしても…酷い状況だった。
「どうして…こんな…」
ランも同様にショックを隠しきれない。
彼女が知るユーラムバロウズと言うのは自信にあふれ、己がバロウズが正義と信じ、王子を害してきた存在。
しかし、父親によって、己の足で立ち上がることを決断してきた。その程度だ

それであっても。
「どれだけ無理を…死に掛け…死んでいてもおかしくない…」
「ユーラム!起きろっ!なぜお前はここにいる!お前のこのざまは何だっ!」
ランは叫び、ユーラムにすがろうとする。
薄く、目を開けた。
ユーラムはこの場所がどこだかわかってはいない。
しかし。
「……私を…あの場所へ…まだ…3日には…たっていない…」
そういって身を起こそうとする。
それを無理やり押さえつけるかのように。
「無茶しないで。」
フェイレンも同様だ。ユーラムをランが横から、その様子を見ながら、顔を覗き込もうとする。
「…私が…食べなければ…一人ぐらい…食べられない人の下へ…その分……・回るかもしれないだろう?」
すう、と。
そのまま目を閉じた。気を失ったかのようだ。
かも知れない。
不確定の要素だけで、この男は最低限しか食べていないのだろう。
どうして?
ランも、フェイレンも。
外から見ていたニックやアックスさえも。それは思ったようだ。
ランは呟く。
「先生…傷の手当て。それだけ御願いします。何かあったらお呼びしますから。」
時間をかけて暖める。それが適当なのだろう。
「私も、やる」
フェイレンも言う。
彼女にしても部屋は隣。何かするには適当だろう。
ランはニックのほうを振り返り、微笑みつつ
「きっと大丈夫だから。ニックはもどりな」
「…本当に?」
「本当だ。」
ニックは頷き、医師も手当てをして戻っていく。
外を見れば…風が出てきた。珍しく、吹雪になったようだ…

 がちゃん

勘違いをされないために、だれにも見られないために部屋に鍵をかけ、それで、どうしよう、と思う。
毛布のストックはまだある。
着替えのストックは…ない。
元々自分たちが運び込んでしまったのだ。
男物の着替えなんかあるわけがない。
ここにいる、男性となるとラハルが思い浮かんだが、たまに兵舎内でも女装をしているので無理だろうと思った。

風邪でも引いたのかもしれない。
ユーラムの体は汗をかいて、しかも寒がっている。

着替えさせなくてはならない。

ランはユーラムにかけられていた布団を剥く。
そして、その体を見る。
がりがりにやせたその姿。
少し前、医師がいたときにも見た姿だ。
「みんな。希望を抱いているのに…お前だけ…」
戦争が、戦いが終わったのに。
やっと貴族の言いなりにならないでもすむ状況ができたのに。
みんなが希望を抱いて、あかるいほうを見られるようになったっていうのに。
なのに。
なのに。なのに。
この男は…

「がんばってる。間違ってるのかもしれないけど。けど…がんばってる。
 全部の人の悲しみを。
 全部の人の嘆きを。
 全部の人の苦しみを。
 この人は…受け入れようとしてる。この男は。」
フェイレンは、呟きつつ、色々思っている。
こちらのほうはある意味複雑。
ロイのこと。
ロイにこの男が、余計な頼みごとをしなければ、まだ山賊だったかもしれないけど、
ロイと。兄と。自分と。それなりに楽しい日々だったんじゃないかと。
けど、今のこの男の姿を見て。何もいえない。
違う。
何かが、決定的に違っていたのだ。
あの城にいたほかのみんな、そして、この男は。

「…フェイレン?提案があるんだけど」
「……?なに?」
「あの…さ。
 男をあっためるときって、人肌がいいって聞いたことがあるんだけど。
 いや、あのさ。チサトさんにさ、あの城で聞かせてもらった話があったんだ。
 無人島に男と女二人がボロ船で流れ着くんだけど、女を島まで運んだあとに男は力尽きちゃって。
 がたがた震える男に暖める方法がなくって自分の体温を使おうとしたら同じ船で密航していたネコボルトに見つかるって話。」
「っていうことは、誰か乱入するんじゃ?」
「だれが?」
「ミアキスさん」
ランの疑問にフェイレンは即答する。
やりかねない。
ランはそんなふうに思いつつ深く息を吐く。
けど。
「他に方法はある?」
「…何か飲ませるとか…」
「調理場を使うのは…ねえ。バレそうだし。ここ一応、女部屋だよ?
 男を連れ込んだってばれたらそれはそれで…」
「ニックに口止めしておいたほうがよかったかもね。」

…まあいいや。
その辺の懸念をランは放棄した。
「女は度胸。」
そういって、ランは服を脱ぎ始める。
身につけているのは元々、ラフトフリート時代に来ていた服。現在は私服扱いのそれ。
少々寒かったりする。しかしその辺も度胸。
一枚、一枚衣服を脱いでいけば、その、かつてより豊かに育った胸元が露になる。
母親譲り。
そう表現される胸、決め細やかな肌。
一般団員が憧れる、その裸身をあらわにしていく。
フェイレンのほうは、やや小ぶり。
しかし、しなやかに引き締まった体。それはまた、別方向の魅力を引き出す様子。
なおこの二人が本格的にサウロニクスで活動するようになってから、一人、アイドルっぽい立場にいたのが蹴落とされている。

女性二人、傍らで一糸まとわぬ姿に脱いでいるのにも気がついていない。
めくった布団。ユーラムそしてユーラムの衣服も、全て脱がせてしまおうとしている。

「…こ。これは…」
「え、えと。あの。いわゆる、生存本能ってやつでは?」
どもりながらも、下を脱がせた結果、そこにあったものにランは驚き、フェイレンはおぼろげな記憶を引き出そうとしている。
「(王子様より大きい…)」
「(ロイよりも大きい…)」
そんな内心を表には決して出さず。女たちは好奇心を満たそうと、一つ言葉を放つ。どちらともなく。

『触ってみる?』

「だ、大丈夫かな…うわ…」
ランは軽く触れていく。
それだけでひくつくように反応を見せているユーラムのそれ。
フェイレンはフェイレンで
「えと、こうだよね…」
指先で竿を包み込んで、しごき始めようとしている。
たどたどしい指使いその刺激がユーラムを襲っていく、割と容赦なく。
「フェイレン、違う。たしか…こうするんだよ。」
そういって胸で彼の肉棒を挟みこんでいく。
ランの豊満な胸はユーラムのそれの大半をつつみ込んでいく。
そのまま、胸で挟み込むようにしつつ、ランはしごき始め、時折その先っぽ。そこに舌を這わせていく。
「ン…チュ…ン…フェイ…レン?」
「あたし…も。」
そういってフェイレンはよりにもよって仰向けに寝るユーラムの顔のほうをまたぐようにして、彼の肉にすがっていく。
両側から胸肉に挟みこみ、女二人はしごきたてていく…
「(これは…やっぱり…)」
「(気持ちいいかも?)」
二人は思う。そして思いが彼女たちの中で膨らんでいく。
徐々に、徐々に。
「ン…ム…ウン…ユゥ…ラム…」
「は…ぁ…ああ・・なんか…へんに…」
奪い合うかのように。
ランの、そしてフェイレンの挟み込んだ胸元。
ある意味それは、互いの胸をこすり付けあうかのような行為で。

それを続けていけば…やがて結末が訪れる。
「う”あぁぁぁあああぁぁああぁぁあっ!!!」

それはユーラムの叫び。
ある意味では、断末魔の。
そして、ちょうど咥えていたランの…
「む、むぐううっうう!!ん、んうっう!!ん…んうう…」
「らん、こぼしてる…」
そういってフェイレンは、上向き、ユーラムのを飲もうとしているラン、そのこぼれたのを舐めとっていく。
「ゆーらむ?」
「あれ?」

ユーラムが白目をむいている。

まずい。

「フェイレンッ!早く後始末っ!あとあと、あと!!ニーック!」
「なんすかっ!」
ほとんど瞬間単位で入ってくる鼻血をたらした少年を殴り飛ばしてから
「早くせんせいっ!あとは…あとは…まかせたっ!」

大慌てで大きくパニくりながらもその夜は深けていく。

次にユーラムが目を覚ましたとき、目の前には緊急で呼び出されたシルヴァがいた。

「もう大丈夫だろう。後は栄養をとらせることだ。」
「はい…」
部屋の隅で正座してるランとフェイレンを見もせず、シルヴァは去っていく。
その返事のみを聞いて。
ユーラムが周囲を見ると、何人かがいた。
まずグレイグ、ラハル。ここにいるはずの人。
そして一応はなからみていたニック。本当に最初から。
グレイグの手の中を見れば…紙があった。
そして、手に取り、こちらにみせてくる。
「辞令。竜馬騎兵見習い、ラン・フェイレンの両名をレインウォール統括補佐ユーラム・バロウズの一連の行程の同行を命ずる…」
ユーラムはそのまま読み上げ、驚き、グレイグのほうをみる。
「今回の件は彼女らの不始末。それに、見方が変わった状態で、あなたが見ようとしている裏側を見るのも…悪くはないだろう。
 ユーラム。
 君は気負うべきではない。一人ではないのだから。」
「しかし…私しかいないのですよ。
 ロヴェレ卿、ゴドウィン親子、先代陛下・騎士長殿。あのロードレイクその一連にかかわった人は、
 父の含め、みな、もうここにはいません。
 あえてあげるとすれば、タルゲイユ殿。そして、私です。
 少なからず、罪を背負うべきです。私は。
 少なからず、引き金を引いているのですから」
「私は何も言わないよ。
 何を言っても、君はその意志を曲げないだろう。
 ただ、妹は大事にしてやるべきだ。家族は、大事に。」
そういって、クシャリ、とユーラムの髪をグレイグはなで、他の二人を連れて出て行った。
出る間際に一言。
「二人を頼んだ。
 …それと、手を出しすぎんようにな。」

後日。
川の中程にあるがけ。その根元近くの岩場に、一席の船が止まっている。その中では…

「んあぁつう!ふああっああっ!ゆぅうらむうっう!!!もっとぉ!!」
「…あんたなんでそんなに乱れてるんだ」
船の中、騎乗位でユーラムの上で腰をふるラン。
そしてその傍らにはフェイレンもいる。
「ラフトフリートでいろいろあったんだっけ?あれ?ちがった?」
「おうじぃいさまにぃい……あああぁっう!!!」

大変だったんだろうなあとユーラムは思考を打ち切った。
自分の上で交代が始まっている。正直、ためる時間をくれといいたいのだが。

外の空を見る。青いなあと。なんとなく思った。

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