ザジ×ユーリ 著者:17様

惑乱の時。
―彼の髪色と同じ闇の中で、行われる儀式。
彼が彼女のところに戻ってきて以来、それは夜が来るたび行われていた。

ぴちゃ……じゅぶ…………。
「………もっと、丁寧に舐めて」
「はぁむっ……むっ……」
咽喉まで達しているそれを噛まない様に気を付けながら唇を動かし、裏筋を辿るように舌を這わせた。
たらたらと涎が滴っているが彼女は気にもしていない。
彼の出す臭いと苦い味がもう口の中に充満していたが、ただ一心不乱に彼女は奉仕を続けている。
「……そう。いいですよ………だが、手がおろそかになっている」
彼は四つんばいに這って彼に奉仕をしている彼女の波打った金髪を一房掴み絡めとるように引っ張った。
 彼に言われるまま彼女は彼の根元を扱き、玉も包み込む様に撫ぜる。
 彼女が漏らす水の音がその部屋を支配していた。
 彼は黙ったまま彼女に任せていたが、しばらくして立ちあがった。
口淫を続けていた彼女は思わず口を離してしまう。
「誰が離してもいいと言いましたか?」
「………………ごめんなさい………だってあなたが急に立ちあがるものだから」
「そんなことは関係ないでしょう?」
 咥えなさい、と言われ彼女は曲げていた腰を伸ばして再びその小さな口を開き、堅くそそり立った肉棒を口に含んだ。

すると、彼が彼女の頭を押さえ腰を動かし始めた。
「ふぐっ………ふ…うぅっ、ふ……ふ」
 彼女もそれに合わせようと舌を肉棒に絡ませる。 ぴちゃぴちゃと一層音が漏れた。
 ややあって彼が口を開く。
「出しますよ。飲みなさい」
 堅く、大きいそれが一瞬膠着し、彼女の腔内に大量の白濁した液を注ぎこんだ。
彼女は何度も咽喉を鳴らしたが、あまりに大量の精液のために口の端から白い筋が流れる。
 彼はその筋を拭い取り、彼女に舐めさせた。
 彼女は荒い息遣いのまま精液の伝う彼の骨ばった指を舐め取る。
「頑張りましたね。今ので汚れてしまったので綺麗にしてください」
 そう言って彼はフェラチオを再開させた。
 すぐに肉棒の堅さがさっきと同じ位に堅く大きなものになる。
「もう、いいですよ」
 ようやく彼女は口を離す。陰茎には涎が絡んでいて、それが彼女の桜色の口と繋がっていたが、やがて重力に逆らいきれずに涎の糸が切れた。
 彼女の白い肌は上気して赤みを帯びている。
「私だけの花は、何を望みます?」
「……っ、……ぅ、………」
 彼女は息を整えるのが精一杯で答える余裕がない。

彼はおや、と屈んで彼女の秘部を覗きこむ。愛液が溢れ出ていて、それが太腿の内側を伝っていた。
「露で溢れてますね。こんなに溢れていては枯れてしまうでしょう。栓でもしましょうか?」
「……ぁ……っ!ひぁあっ!!」
 中指と人差し指を一気にそこに突きいれた。くっと曲げるとびくんっと彼女が強張る。
抜いては差し、時に気まぐれを起こし指を曲げる。
 彼女は嬌声を隠したくても隠せない。彼がそこから指を動かすたびに蜜が漏れる。
「おかしいですね、栓をしても蜜が溢れてくる」
「………意地悪、……しない、で……あなたが、私をそういう風にさせたのでしょう…もう、お願いだから………」
 彼女は彼の名前を呼んだ。
 性交の快楽を教えこまれたのは生きて戻ってきてくれた彼によってだった。―兄に殺されたはずの。
 夜毎に引き起こされる最初は痛かっただけの行為も、今では快楽に溺れるものとなった。「ええ、そうですよ。あなたは私好みの花になった。花泥棒の言うことを聞いてくれる、ね……それではそろそろいきましょうか」
 そう言って彼は眼鏡を外し、サイドボードに置いた。
 彼女の細い腰を掴んで一息に突き入れる。
「ふあぁぁぁあぁぁっ!!」

ぱん、ぱん、ぱん……
 彼の腰が動くたびに彼女はメゾソプラノの声を漏らす。
 彼等の結合部はぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てていた。
「………はぁっ!……ぁ、ん……あっ……ぃやぁ、」
「嫌なんですか……?あなたはこんなに感じているのに?」
 そう言って彼は深く突きあげた。
 びくんと彼女は白い背中を弓なりに反らせ、ベッドの背を掴んでいる手の力が強くなる。
「ふあぁぁっ!」
「………どうなのです?はっきり仰いなさい。嫌なのか、いいのか」
わかりきっている癖に彼は彼女に尋ねた。
腰を動かすのを止め、更に後ろからピンクの乳輪の周りを指でそっとなぞる。
一番感じるその頂には手を出さずに。
「んぅっ…、っ…ぃ」
まったく動かない彼を求める様に彼女は腰を動かす。
「嫌なのですか?」
「ぃいの…っ………ぁあっ!!」
「御褒美ですよ。ちゃんと言えた」
そう言って彼は腰を動かし始めた。前よりも早く。
目の前で揺れている金色の髪が白い身体が一層扇情的に蠢いた。
より快感を求めているように彼女の中の襞は彼の怒張を締めつけつつも最奥へと導こうとしている。
四つんばいにされて獣のように身体を貪り、そして食まれていく。
彼は彼女の肩に頭を載せ、その白い胸を揉みしだきつつ腰を動かしつづける。
「ぁっ………もぅ………ダメ……っ!イクっ!!………ぁああああああっ!!」
彼女の膣内がびくびくと痙攣する。
その刺激に耐えられなくなり、彼も彼女の中で射精した。
彼が陰茎を引きぬくと、花から白濁の蜜がとろとろと溢れ出ていた。

彼女が目を覚ました時にはもう日が高く昇っていた。
気だるげに彼女は顔にかかった髪を掻きあげる。柔らかな髪の毛が絡まって指が引っかかった。
彼はベッドの側で立ったままネクタイを首にかけ、シャツの袖のボタンを留めていた。
いつもなら目を覚ますと大きな寝台に一人きりなのに、彼がまだいた。
珍しいと感じながら、婚約者に尋ねた。
「どこに行くの?」
彼は散歩に行くというような何の気負いも無い口調で答えた。
「これから、あなたの兄上を殺しにいきます」
「!!」
彼女が目を見張った。
「ラトキエの花はいつまでも庭師のものではないということを彼はわかっていないらしい。……私が生きていることを知ってクリスタルバレーに戻ってきますよ。もうすぐね」
彼の腕を掴み、碧い瞳を涙で一杯にしながら彼女は必死で訴える。
「…………やめて、ザジ………そんなこと、やめて………兄さんを殺すのは」
「ユーリ」
彼は腕を振り払った。彼の眼鏡の奥の瞳が輝いた様だった。暗い暗い闇色の炎。
「それは聞けない。あなたの兄上がいる限り、私達は共に生きることはできないのだから」
(―あなたの兄上がいる限り、私の野望が叶うことはないのだから)
彼は上着をはおり、ドアに向けて踵を返した。
「…………それでは、行ってきます」
「待って!ザジ!!」
彼は振り向きはしなかった。

それから、彼は戻ってこなかった。              ―そして、彼女の兄も。

<了>

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