掲示板小話+1


〜YAHOOだね!〜 

ある晴れた日の二人の会話・・・ 

「ねえねえダーリン。」 
「何だラム」 
「YAHOOに登録されるのって凄いことなの?」 
「どうしてそんなことを聞く?」 
「面堂邸がYAHOOに登録されたって皆が騒いでいるから、 
それってどれだけ凄いのかなぁーって」 
「それはわしが教えて進ぜよう」 

ちゅどーん!!! 
いきなり現れるチェリー。 

「いきなり現れるなチェリー!お前が現れることによって烏はガアガア、鼠はチュウチュウ、牛がモーッとないてしまった
日にはお隣の島田さんちはハワイに旅行だぞ!いいのかこんな季節にハワイなんかに行かせて!」 
「いかん!あたるが暴走しおった!」 
「そうだっちゃダーリン、ハワイは今でも温かいっちゃよ!」 
「・・・その突っ込みもなんか間違うておるぞ、ラム」 

あたるは立ち直り、咳を一つすると、チェリーの方を睨んだ。 

「んで、チェリー。教えてもらおうか、そのYAHOOの凄さって奴を」 
「うむ。まあ、簡単に言えば、高嶺の花のあの子が振り向いてくれた、というところかの」 
「何!高嶺の花のあの子が振り向いてくれるだと!こうしてはおられん!早速町へガールハントに行かなくては!」 

どひゅん! 
あたるが外に信じられないスピードで出て行く。 

「あっ!まつっちゃ、ダーリン!」 

ピュ―! 
ラムもあたるを追い外に出て行ってしまった。 
あっという間に部屋に残ったのはチェリーただ一人。 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・運命じゃ」 



〜小説の中に〜 

暮れも押し迫ったある日の二人・・・ 

「ダーリン、なにしてるっちゃ?」 

ラムがあたるに話し掛ける。 
あたるは机に向かって何かを書いていた。 

「見て分からんのか。小説だ小説。」 
「小説だったらこの前投稿したばっかじゃないっちゃ?」 
「馬鹿もん、人はいついかなる時でも歩みを止めてはいかんのじゃ。 
それに面堂邸ももう二万ヒットだからな。お祝いがてらに書いているのさ」 

そういうとあたるはまた机に向かって小説を書き始めだした。 
ラムは構ってもらえずちょっと不満そうな表情をしていたが、 
何かを思いついたのか急に明るい顔になった。 

「ねえダーリン♪」 

語尾に音符をつけるほど弾んだ声でラムがあたるに話し掛けた。 

「なんだ?」 

口調の変化にいぶかしみながらもあたるは返事をした。 

「前の原稿ってまだあるっちゃ?」 
「ああ、あるが・・・。それがどうかしたか?」 
「ちょっと貸してほしいっちゃ」 
「ふーん、まいいか。ほれ、これだ」 

そういってあたるは引出しから原稿を出し、ラムに渡した。 

「ありがとうだっちゃ」 

ラムは原稿を受け取ると胸から何かを取り出した。 
それは瓶詰め胡椒のようなものだった。 
ラムはまずそれを原稿にかけた。それを受けて原稿が白く輝きだす。 

「なんだなんだ!?」 

光に驚いてあたるが振り向く。 

「ラム!お前何をしたんだ!?」 
「これは{小説の素}だっちゃ。これを小説にかけると、 
小説の中に入ることができるっちゃ。で、人にかけると・・・」 

そこでラムは一旦言葉を切ると小説の素をあたるにかけた。 

「うわっ、やめろ・・・ってわああああああ!!!」 

あたるは小さくなったと思ったら、そのまま原稿の中に吸い込まれてしまった。 

「人にかけると、その小説の登場人物になれるっちゃ。 
さ、うちも早く中に入ってダーリンとらぶらぶするっちゃ♪」 

ラムは自らにも小説の素をかけると、あたるの後を追うように小説の中に入っていった・・・。 



〜心〜 

暮れの面堂邸、ただっぴろい庭で俺は無駄とも思える見回りを行っていた。 
普通のサラリーマンなら家でぬくぬくやっている所だろうが、 
サングラス部隊には休みはない。いや、先輩達はちゃんと有給があるのだが、 
新人の俺にはそんなものは存在しない。 

「ふぅ―――、寒い・・・」 

吐く息は白く、擦る手は悴んでいる。 

「何でこんなところで一人歩いてなきゃいけないんだろうな・・・」 

と俺がそんなことをぼやいてると前方に人影があるのを見つけた。 
よく目を凝らして見ると・・・若!? 

「若!こんな所で何をなさっているのです!?」 

声に反応して人物がこちらを向く。 
邸の光に照らされたその人物は若―面堂終太郎その人であった。 
いつもの白の制服を着こなし、腰には愛刀「村正」を携えている。 

「若、こんな所に一人でいらっしゃっては風邪をひかれます。中にお入りください」 

俺はそう進言するが若に動く様子はない。 

「若・・・」 
「なあ」 
「は?」 

もう一度言おうとした矢先に話し掛けられてしまった。 
返事をする声が少しばかり上擦る。 

「{不変}というものは存在すると思うか?」 
「{不変}・・・ですか?」 
「そうだ」 

何故若がこんな質問をされたのかはわからないが、 
サングラスとしては答えなくてはならないだろう。 

「不変は存在しません。万物は流転します。 
その中で何もかも壊れ、そしてまた新しいものが誕生するのです」 

よく言う輪廻の思想である。 

「そうか・・・」 

そう言った若の横顔はどこか寂しげだった。 

「しかし・・・」 
「ん?」 
「人の心だけは別です。どんなに生まれ変わっても愛する人のことを想い続ける・・・。 
その人を想う心だけが唯一不変であると言えましょう」 

私の言葉に若は驚いたようであった。 
そして物悲しそうだった顔が段々と微笑みに変わっていく。 

「・・・ふふふ・・・、そうか、人の心か。確かにそうかもしれん、しれんが・・・」 
「?」 
「おまえ、くさいぞ」 

そう言った若の顔は茶目っ気たっぷりであった。 
それにつられて私の顔からも笑いがこぼれる。 

「よく言われます」 

若と会ったのはこれが初めてである。しかし俺は若の心に触れたような気がした。 

「ところで・・・」 
「は?」 
「お前の名前を聞いてなかったな・・・」 

これはすごいことであった。 
いままでサングラス隊員の中で名前を知ってもらった人はいない。 

「私の名前は・・・」 

こうして俺は若に名前を知ってもらったのである。 



〜惚れたのは?〜 

下校途中の二人・・・ 
空は一面の白、そして零れ落ちる白い欠片が二人の姿さえも白く染める。 

「わぁ〜♪雪だっちゃよダーリン!綺麗だっちゃねー」 
「朝から寒い寒いと思っていたがやっぱり降りおったか・・・。くそ、やなもんじゃ」 
「どうしてだっちゃダーリン?雪を見てるとなんかうきうきしてこないっちゃ?」 
「お前だけだそんな感性の持ち主」 
「そんなことないっちゃよ、テンちゃんも雪は好きだって言ってたっちゃよ?」 
「テンは幼稚園児だろうが!」 
「それにしてもほんとに綺麗だっちゃねー」 

ラムはそんな俺の突っ込みを聞き流して雪に夢中になっている。 
はしゃぐその姿はとてもではないが高校生には見えない。 
そんなラムを見ながら俺はふと思った。 

・・・いつ俺はラムに惚れたんだろう 

一目惚れじゃあない。それは確かだ。最初俺はラムを単なる邪魔者としか見ていなかった。 
勘違いからプロポーズされたと思い込み、勝手に女房気取りで家に住み着いた。 
しのぶとの仲を裂こうとした時なんかは本気でいなくなって欲しいと思っていた。 
でも、あの日。 
帰り道でラムのほんのりと紅く染まった頬を見た時俺は―。 
そして気付くと雪の舞う空へ飛び立とうとしていたラムの腕を掴んでいた・・・。 

「ダーリン、何ボーっとしてるっちゃ?」 

考え事をしているうちに立ち止まっていたらしい。 
ラムが目の前で気遣わしげに俺の事を見ている。 

「いや、ちょっとな・・・」 

まさかラムのことを考えていたなんて言えるわけがない。 
俺は曖昧な言葉ではぐらかしそのまま早足で歩き始める。 

「変なダーリン」 

ラムはいぶかしりながらも後れまいと飛んでついてくる。 
俺は横目でラムをちらりと盗み見た。 
・・・ラムは俺のこんな気持ちに気付いているだろうか? 
かけがえのないものとに思う気持ちを。 
雪を見て無邪気に笑っている様子からしてそんな風には見えない。 
・・・きっとこいつは俺が言わなければわからないんだろうな。 
そう想うと自然に笑みがこぼれてきた。 

「ダーリン、何笑ってるっちゃ?」 

ラムが訳がわからないと言った様子で聞いてくる。 

「いや、おまえらしいなぁ〜、と思ってたのさ」 
「なにがだっちゃ?」 
「なんでもないなんでもない。さ、早く帰ろうぜ。このままここにいたら凍えちまう」 

俺はあの時のようにラムの手を握った。 
ラムの手はこの寒さにもかかわらず俺の手にぬくもりを伝える。 

「ダーリン!?」 

俺の行動にラムが驚く。無理もない、俺が自分から手を繋ぐなんて滅多にないことだ。 

「なっ」 
「・・・うん」 

ラムの顔は心なしか赤くなっていた。 
それが寒さのせいなのか恥ずかしさのせいなのかはわからない。 
俺はラムの手を握ったまま家に向かって歩き出した。 
俺の目の前で雪が舞う。 
この世で最も愛しい存在を気付かせてくれた雪が・・・。 



〜憎しみと哀しみと〜 

途切れることのないせせらぎの音を聞きながら、つばめは川原を歩いていた。 
右手には小川、左手には無機質なコンクリートの防波堤がある。 
そよ風にマントを揺らしながら歩いていると、前方に男が立っているのが見えた。 
年は四十ほどか、土方焼けの浅黒い肌と顎にある無精髭が働く男の渋みを感じさせた。 
つばめが近づくと男はふとつばめの方を向いた。 
顔が赤らんでいる。少々酔っているようだ。 

「なあ、兄ちゃん。俺の家って何処にあったっけ?」 

何処となく発音がおかしい口調で男に話し掛けられ、つばめは立ち止まった。そしてー 

「あなたの家ならほら、あちらにあるでしょう」 

つばめがやって来た方向を指差した。 

「そうか、悪ぃな」 

男はつばめに礼を言うとつばめの脇を頼りない歩調で通り抜けた。 

「気をつけてくださいよ!」 

思わずつばめが一言注意すると、 
男は振り向かずに手をあげてそれに答え、そのまま歩いていった。 
再びつばめが歩き出すと後ろから声をかけられた。 

「あの〜、すいません。俺の彼女を知りませんか?」 

振り返るとそこには二十代前半の青年がいた。彼女にあげるプレゼントなのだろう。 
かわいらしいリボンがついた小さな包みを大事そうに持っている。 

「ああ、茶色い長い髪の可愛い女性だろう?彼女だったらあっちに行ったよ。」 

青年が来た方向を指す。 

「そうですか!ありがとう!」 

青年は包みをポケットにしまうと来た道を戻っていった。 

「頑張れよ!」 

つばめが声をかけると青年は照れくさそうにはにかみ、駆け出していった。 
その後姿を見送っていると不意に女の子の声が聞こえた。 

「お兄ちゃん、あたしのお母さんとお父さん見なかった?」 

声のしたほうを向くとそこには少女がいた。 
もう少しで川に入りそうな場所に立ちながらつばめを見ている。 
長い髪のせいで顔は良く見えないが、12、13歳といったところだろう。 
つばめが黙っていると少女は顔を俯かせ、感情のこもらない声で話し始めた。 

「あたしのお母さんとお父さんね、あたしのことをぶつの。 
痛い痛いって叫んでいるのに、止めてくれないの。あの日もあたしを殴ったわ。 
そしてあたしをこの冷たい川の中に放り込んだの、腕と足を縛ってね」 

ポタッと、水滴の落ちる音が聞こえた。いつの間にか少女の全身はずぶぬれになっていた。 

「引き上げてくれるのをずっと待ったわ。でもあの人達は助けてくれなかった。 
もがいている私を当然のような顔をして見ていたの。 
あの人達だけじゃない。誰もこなかった。誰も助けてくれなかった。 
あたしがどれだけ苦しかったか、どれだけ助けを待ちわびていたか・・・ 
お兄ちゃんにわかる?」 

言い終えないうちに少女の髪が信じられないほどに伸びた。 
そしてその髪はゆらゆらと動きつばめに近づいてくる。 
少女が顔をあげ、つばめを睨んだ。その目は紅い、血の色をしていた。 

「あたしがどんな思いをしたか、お兄ちゃんにも教えてあげる」 
「・・・悪いが遠慮させてもらうよ」 

やんわりと、しかし確固たる意志を持ってつばめは少女の申し出をはねのけた。 

「君は不幸だった。本来なら君は救われるべき子なのかもしれない。 
でもだからと言って無関係の人を巻き込んでいいという理由にはならない」 

つばめは懐から一枚の護符を取り出すとそれを少女に向かって放った。 
護符は生き物のように動くと、襲い掛かる無数の髪をかいくぐって少女の胸に取り付いた。 

「グワアアアアア!!!!!」 

少女は断末魔の悲鳴を上げ、護符の中に吸い込まれていった。 
つばめは地面に落ちた護符を拾うと悲しげな瞳を向けた。 

少女の家庭は荒んでいた。父親は毎日飲んだくれ、母親は他に男を作って遊んでいた。 
少女は父親や母親の不満のはけ口として毎日のように折檻をされていた。 
ある日少女は両親に冬の冷たい川の中に放り込まれた。 
体温の低下は死を招く。少女はそのまま重い肺炎にかかり死んでしまった。 
その後両親は殺人の罪で捕まったが少女の無念は晴らされなかった。 
少女は憎しみを増大させ、その対象を無関係の人々まで広げていった。 
先に会った男や青年がそれである。 
彼等は少女の助ける声に呼ばれそのまま少女によって溺死させられたのだ。 
そして死んでから後もこの場所に捕らえられていたのだった。 

「哀しいことだ・・・」 

男が、青年が、そして少女が哀れであった。 
人の心には闇がある。闇が闇を呼び人の心を侵していく。 
この少女の場合もそう。両親の心の闇に捕えられてしまったのだ。 

「君の犯してしまった罪は消えることはない。だが誰にだって幸せになる権利はある。 
君が罪を償い終えたとき、その時はまたこの世に生まれておいで。 
そうしたら一緒に遊ぼう。大丈夫、僕には愉快な友達が一杯いるんだ。 
君のこともきっと好きになってくれるよ」 

つばめが言い終えると同時に護符はその輝きを増し、天空へと飛び立っていった。 
つばめは天に上っていく護符を見届けると、川原から離れていった。 
頭の中に様々な考えが去来する。もっといい形で少女を助けられたのではないか、 
自分の力が足りないばかりに彼女を苦しめてしまったのではないかと。 

・・・いかんな。こう暗くなってしまっては。 

つばめは頭をふりそれを追い出した。 
不幸な者、哀しい者ばかり相手にしているからといって、 
自分まで暗くならなければいけないという理由は何処にもない。 
むしろ逆である。望まない死を押し付けられた者の分まで、 
生きている者は幸せにならければならない。 
そしてそれが唯一心の闇に対抗する手段なのである。 

「・・・さてと、護符もなくなったことだし、サクラの所に行くとするか」 

サクラとはしばらく会っていない。 
お互いの仕事が忙しくなかなか予定がかみ合わないからだ。 
だが今回は一段落ついたので会いにいけそうだ。 
つばめは友引町へと続く道を歩いていった。 
自分にとっての光に会うために・・・。 


p.s この作品は冴木忍様の作品を参考にさせていただきました。 



〜あとがき〜 

いつも掲示板に書かせてもらっている小話を一つにまとめてみました。 
まあそれだけでは新鮮味がないのでつばめを主人公にした新しい話を書いてみました。 
つばめの真面目な所を見たことのない私にとっては妄想モード爆発のお話です。 
・・・くらいっすね(爆)。 
本来なら他に書かなきゃならない話が一杯あるのですが(なるみさまごめんなさい!)、 
何故か他の話が思い浮かんできてしまう駄目な自分(馬鹿!)。 

最後に読んでくださった皆様に。 
あなたの「光」を大事にしてください。その「光」は必ずあなたに幸せをもたらします。 
皆様に「光」あらんことを―。 


〜一言感想〜
旧掲示板のほうに投稿していただいていた素敵な小話たち、ここに集結です!
最後の『心』は掲載にあたって新たに書き足してくださいました。
どれも短い物語の中にぎゅっと面白いもの、深いものが詰っていて、一話一話非常に読み応えがあります。
ありがとうございました!



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