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生と死…それはひとつのカードの表裏かもしれない。
しかし…いつの間にかカードは裏返ったりする。
裏返ったカードは二度と戻らない…。
友引町商店街
あたる:「ねぇ、彼女〜♪僕と遊びにいこーよv」
ラム:「ダーリン!遊ぶんだったらうちと行くっちゃ!」
季節は冬。その冷たく飲まれそうな雪の積もったアスファルトの上に彼がいた。
もうあの鬼ごっこから4つの季節が流れていった。その少女と少年は相変わらずどたばたを繰り返していた。
あたる:「ええかげんしつこいなお前は!」
ラム:「しつこいのはダーリンのせいだっちゃ!」
あたる:「勝手に人のせいにするな!いいから何処かいけ!ガールハントができんじゃないか。」
ラム:「もう!ダーリンの馬鹿!もう知らないっちゃ!」
バババババババババババババ!
あたる:「ぎゃああああああぁぁぁぁ!」
…………………………。
何時間気絶していたのだろうか。俺は立ち上がって時計をみてみる。まだ三分しか経ってない。
あたる:「おかしいな?長く寝てたみたいなんだが…?まぁ帰るとしよう。」
諸星邸前
あたる:「ただいま。まったくも………?あれ、父さんなにしてんの?会社はどうしたの?」
あたるの声に反応してあわただしくあたるに近寄る父。
何か様子がおかしい。そして、あたるに信じられないことを告げる。
あたる父:「あたる!やっと帰ってきたか!早く病院へ行こう!ラムが危険なんだ!」
あたる:「なんだって!嘘だろ?!」
あたる父:「本当だ!信号無視した車に轢かれてしまったんだ!」
あたる:「そ、そんな…」
二人はタクシーに乗り、急いで病院に向かった。
病院
二人が到着し、急いで病院内に入った。するとそこには母の姿があった。あたるは母に聞く。
あたる:「母さん!ラムは?!」
あたる母:「この下の階の一番奥の部屋にいるわ。行ってきなさい…。」
悲しげに答える母。まさか…。最悪の事態を脳裏に浮かべ、ラムのいる部屋に向かっていった…。
その階段を下りると上の階とは違う、何か恐ろしい感じがあった。
あたるはその恐怖とラムのことが心配なのとで一番奥の部屋まで走っていき、荒々しくそのドアを開けた!
あたる:「ラム!…………そ、そんな…」
そこには赤い血が体全体に飛び散り、顔に白い布が被せてある人がベットの上に横たわっていた。
その髪は緑…。あたるはすでに動かないラムに近づく。
あたる:「……。はは、嘘だよなぁ、ラム。」
もう何も言わないラムに話しかけるあたる。返事が聞きたくてさらに話しかける。
あたる:「またみんなで俺を騙そうって事だろ?また仮死状態になる薬を飲んどるんだろう、ラム。」
話しかけても答えるはずもない。やがて眼から頬へ涙がこぼれ始めた。
あたる:「…嘘だろ?おい!返事をしてくれよ!ラム!!」
あたるは顔にかけてある白い布を掴んで投げた。そこにはラムの笑顔があると思ったから。
しかしその代わりそこにはすっかり血の気が失せ、青白くなったラムの顔があった。
あたる:「…嘘だ、こんなの嘘だ!ラム!ラム!」
突きつけられた現実を否定し続けるあたる。それは誰が見ていても哀れとしかいいようがなかった。
あたる:「うわああああああああああああああああああああああ!!」
…何十分が経っただろうか。そこに面堂やメガネ、しのぶ達がやってきた。
面堂:「諸星!ラムさんの様態は………」
誰もが様態を聞くこともなく、ラムの元へ来た。メガネと面堂が愕然としている。しのぶがあたるに聞いた。
しのぶ:「…ねぇ、あたるくん。どうしてこんな事に…。」
そう言われたあたるは二つの物を目の前に出した。
しのぶ:「角?角がどうしたのよ?」
不思議そうに聞くしのぶ。それをきいたあたるはみんなに事情を説明した。
ラムは電撃をあたるに浴びせてどこかに行ってしまった。
電撃を受けていたあたるがまだプスプスを音を出して倒れていた。
ラム:「ダーリン…なんでうちを見てくれないんだっちゃ…そんなにうちが嫌なのけ…?」
ラムはボーっとしていた。
そろそろ商店街を抜けて大通りに出ようとしたその時、赤なのに信号無視した大型車がつっこんできた。
その車はラムのほうへ進んでいる。
ラム:「危ないっちゃ!うちが飛べなかったらどうするつも…あれ?と、飛べないっちゃ!」
ポロ…
ラムの頭から二つの三角の物が落ちてきた…角だ。ラムが状況を把握したときにはもう車は目の前にあった。
もう避けられない!
ラム:「そ、そんな…ダーリン…」
ドン!……………。
その聞きたくない音はあたりに響き渡った…。
あたる:「…というわけだ。まぁ、ラムがいなくなったからガールハントがのんびりと出来るぞ♪」
その言葉を聞き、面堂とメガネ達が怒りに満ちた表情であたるを睨む。
面堂:「貴様…、今なんと言った?今のセリフもう一度言ってみろ!」
メガネ:「そうだな。聞き間違えかもしれん。さあ、言ってみろよあたる…」
これを聞いてあたるは面堂達に背を向けてもう一度言った。
あたる:「ガールハントが出来るって言ったんだ!!」
面堂&メガネ達:「この外道!」
ドカ、バキ、ベキ、ビシ…
殴られる音が部屋の中に響く…俺は…殴られてるんだよな…。
あたるが薄れゆく意識の中で最後に思ったこと…。
あたる:(あんな事…しなかったら…)
数日後…
しのぶ「………あたるくん!あたるくんってば!!」
あたる:「は!!」
あたるはしのぶに起こされた。そこは体育館の中…。そうだ、今日は卒業式だ。
しのぶ:「あたるくん!卒業証書貰う番よ!」
あたる:「あ、しまった!」
…あの事件から数日が経った今日、俺は卒業式に出ていた。
この春からは大学に行くことになっている。まぁ三流大学だが…。
面堂は事件のあと、この学校から退学した。ここにいるのが辛かったんだろう。
今はもう面堂財閥の跡取りとして頑張ってるらしい…。
メガネも事件のあと、放浪の旅としてこの街を出た。
そしてラムは…。
町はずれの丘の上
あたる:「…ラム、今日卒業式があったよ…。とうとうお前との思い出の学校とも、おさらばになっちまった…。」
ラムは夕日のきれいなこの丘の上で静かに眠っている。あたるは事件のあと、一度も来なかった日はない。
あたるはラムの角を箱に入れ、いつも持っている。そしてあたるがカバンから筒を取り出した。
あたる:「…ほれ、お前の卒業証書だ。温泉に無理言って作ってもらったぞ。」
あたるはラムの墓に卒業証書が入った筒を置く。そして静かに泣き始めた。
あたる:「俺が…あんなこと言わなければ良かったんだ…。そうすればこんなことには…。」
強く角を握りしめ、顔をぐしゃぐしゃにして話す。
あたる:「なぁ、もう浮気もしない。お前以外見ない。お前だけをいつまでも愛し続けるから…」
あたる:「…頼むから、戻ってきてくれー!!」
ラム:「今の話ホントけ?」
あたる:「は?」
驚いて振り向いてみると、そこには死んだラムの姿があった。
あたる:「ラ、ラム!お前死んだんじゃ………。」
ラム:「うん、この世界はそうなってるみたいだっちゃね。」
あたる:「この世界?」
不思議そうに聞くあたるに対してラムは説明を始めた。
ラム:「ここはウチ達の世界ではないパラレルワールドだっちゃ。」
あたる:「パラレルワールド?そんな所になんで俺たちがいるのだ?」
ラム:「それをいまから話すっちゃ。」
話によるとこうゆう事だった。
ラムが電撃を食らわしたときに俺の足下で空間がゆがんでその中に落ちてしまったらしい。
それで俺がここに来てしまい、あのようなことになったのだ。
あたる:「なんだ、そうだったのか…。」
ラム:「そうだっちゃ。ウチもダーリンの顔が見れて安心したっちゃ。さぁ早く帰るっ…。」
あたる:「待て。」
帰ろうとしたラムにあたるが止める。
ラム:「ダーリン、どうしたっ…」
がし!
あたるがラムを抱きしめた。いきなりだったため少々戸惑うラム。
ラム:「ダーリン…」
あたる:「ラム、俺はな…。」
ラムが話している途中に打ち切って自分の話をしだすあたる。その顔は少し泣いている…。
あたる:「この世界でお前が死んでお前の大切さというものがよく分かった…。この間はゴメン…。」
いつもなら絶対に言わないことを言ってきて嬉しさがこみ上げるラム。
あたる:「もう…、何処にも行かないと約束して…くれ…。」
ラム:「大丈夫だっちゃ、ダーリン…」
二人の顔がゆっくりと近づいていく…。
現実世界数日後…
ラム:「ダーリン、待つッちゃー!!」
あたる:「馬鹿!待てと言われて待つ馬鹿が何処にいる?!」
その後もあたるとラムは相変わらずどたばたやっている。
しかし、以前よりも二人とも楽しそうにやっていた。そしてこれからも…。
…完…
〜一言感想〜
展開の意外性にびっくりしました。始めはどうしようかと思いました。
あんまり悲しくて読むのをやめようかというところでパラレルワールドであったことがわかり、心のそこからほっとしてしまいました。
死というかなり重いテーマを実にうまい具合に扱ってあり、読んだあともじぃんと心に残るものがありました。
ありがとうございました!
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