神谷明氏講演会

某大学で行われた、面堂終太郎の声優さんである神谷明さんの講演会レポートです。


☆講演会の始まり 〜講演会ではなく座談会〜

午後3時30分。会場の照明がパンとおち、ざわついていた会場は一気に静まり返りました。
間もなくベージュのスーツにに身を包みオシャレなネクタイを締めた神谷さんが舞台袖から颯爽と登場し、
わっと一斉に拍手が巻き起こります。拍手を浴びながら、神谷さんは笑顔で演説台の前に立ちました。
私は神谷さんのことをこれまで写真でしか見たことがなかったのですが、
実際に目の前に現れた神谷さんは写真よりもずっと輝いていて、そしてとても優しい顔の方でした。
「こういう時、私は自分の会を講演会ではなくて、座談会と呼んでいるんです。
 ですからみなさん、今日は最初から最後まで楽しんでいただけると思います。」
神谷さんのお話は、こんな言葉から始まりました。その爽やかな響きに、私は早くもすっかり大興奮です。


☆最近のお仕事 〜「トリビアの泉」出演とCM〜

まずはじめに神谷さんがしてくださったのは、最近のお仕事に関するお話です。
ご存知の方も多いかと思いますが、神谷さんは先日の『トリビアの泉』に声の出演をされました。
収録時、どのようなトリビアなのか詳しい説明を受け、ケンシロウ声で様々な言葉を言わされたそうです。
また、神谷さんは様々なCMのナレーションを担当されておられるのだそうです。
小林製薬やマヨネーズのCMなどなど、私達がひごろなんとな〜く見ているCMのナレーションを、
びっくりするほどたくさんやっておられることを知りました。


☆七色の声 〜感激!面堂終太郎と三鷹瞬〜

声優さんは七色の声を操るといわれています。
そこで神谷さん、自分はいったいどれくらいの声がでるのかを、実演してみせてくださいました。
まずは神谷さんの地声。ここで神谷さんは、シティーハンターの冴羽遼とYAWARAの風祭さん、
そして、我らが愛するめぞん一刻の三鷹瞬をやってくださいました。
「五代君じゃあなたを幸せにできません。音無さん、ぼくと結婚してください」
といった台詞だったのですが、この口説き、生で聞くとテレビ以上にカッコいいです。
私が響子さんだったら、即効で「はい」と答えてしまいそうなほど色男声でした。
神谷さんは、三鷹さんのことをこんな風におっしゃっていました。
「彼はとてもいじらしいんですよ。犬恐怖症を治すためにポメラニアンを飼って恐怖症を克服したんです。
でも報われなかったんですよね。だけど、私はどちらかというと明日菜さんという女性がとても好きなので、
明日菜さんと幸せになれてよかったなと思っています。」
神谷さんが三鷹さんの声で三鷹さんを語っているその様は、夢のようでありました。
夢中で聴いていた私は、神谷さんを見つめながらうんうんと頷いてしまっていた気がします。

それから次にやってくださったのがちょっと高めの声です。
この声は主に少年を演じるときに使うのだそうで、まず最初にバビル二世をやってくださいました。
そして、面堂はもうやらないのかぁ・・と、私が半分諦めかけていたその時です。
「それから、こんなのもありましたねぇ・・・」
と、神谷さんはおもむろに姿勢を正し、ぐんっと偉そうに胸を張りました。
『もしやこの体制は・・・!』すぐにピンときた私は、思わず身を乗り出しました。
神谷さんの右手がバッと高く水平に上がり、一瞬の静寂が流れます。
「1番!面堂終太郎!ロッカーに入ります!わーん!暗いよせまいよ怖いよ!」
それは確かに、他でもない面堂終太郎の声でした。
彼の声が直接リアルタイムで私の耳に響いたこの瞬間を、私は決して忘れないでしょう。
会場には笑いと拍手が巻き起こり、私はとっさに両手で口を押さえていました。
もう嬉しくて感激して、手の平の感覚が麻痺するほどバッチバチバッチバチ拍手をしました。
きっとそのときの私は、目を見開いて泣き笑いしているような、かなりへんてこな表情だったと思います。
数分たってから自分の顔が笑顔のまま固まっていることに気づき、とっさに真顔に直しました。

私がやっと真顔に戻ったころ、神谷さんはすでに低い声の実演へとうつっていました。低い声といえばこれ。
「おまえはもう、死んでいる・・・」
北斗の拳のケンシロウです。これにはみんな随分感動していました。私も生ケンシロウにぞくぞくしました。
それから低い声を潰した声の実演として、名探偵コナンの毛利小五郎もやってくださいました。
実演されたあと、「彼はホントめでたい人ですよね」とぼやいておられたのにはウケました。
その後も、高い声を濁らせた声や、おすもうさんのような声などなど続々登場し、
裏声で「おい、鬼太郎」と、目玉親父のものまねなどもやってくださいました。


☆ゆりかごから墓場まで 〜魔法のような朗読〜

さまざまなアニメの声をやってくださったあと、神谷さんは芥川竜之介の杜子春という作品を朗読されました。
といっても、普通の朗読ではありません。赤ちゃんの声で文章を読み始めて、
読み進めるにつれてだんだんだんだん声が大人の声に変わってゆき、そして老いてゆくのです。
これには驚きました。本当に少しずつ少しずつ、曲線を描くように滑らかに声の調子がかわってゆくのです。
私は神谷さんの朗読の声が、幼少時代の面堂→面堂→三鷹瞬→毛利小五郎・・と変わってゆくのを、
ひたすら感心しながらぽかんと口をあけて聴いていました。
最後のほうになると、本当に老人のような声になり、力いっぱい拍手せずにはいられませんでした。
この読み方は、「ゆりかごから墓場まで」と呼ばれているのだそうです。
声優ってすごいです。七色の声どころじゃありません。本当に魔法みたいに自由自在に声を操っています。


☆『北斗の拳』裏話 〜千葉繁さんと神谷さん〜

私は残念ながら『北斗の拳』をちゃんと見ていないのでわからないのですが、
悪者役として千葉さんが大活躍されているのですよね。神谷さんは千葉さんのことを、
「うる星やつらでも貧血をおこしながらメガネを熱演していた千葉さんです」
と紹介されました。私はここで、ついにやけてしまいました。
千葉さんはやっぱり北斗の拳の収録でも「血を吐きながら収録していた」そうです。すごすぎです。
『北斗の拳』の悪者役が死ぬときに出す声は、「あべし」「ひでぶ」「たわば」が有名ですが、
実は他にも様々な言葉があるんだそうで、そのお話もとても面白いものでした。
断末魔なので普通に聴いただけでは何を言ってるのかわからないのですが、
実はあれ、「あーかーのーはーなーおー!(赤の鼻緒)」だとか、
「れーばーにーらーいーたーめー!(レバニラ炒め)」とか言いながら死んでたりするのです。
これには爆笑してしまいました。自分の苗字を叫んで死んだ敵もいるそうです。
また、カタカナで「アタ」と書かれていてもどうも間抜けで気持ちが入らないと思った神谷さんは、
「アタ」に自分で漢字を当てはめて雰囲気を出していたんだそうです(たしかアは亜だった)。
そして、「アタタタタタタオアタ!」の最後の「オアタ!」の部分は、
「(これで今日の収録が)終わった!」という気持ちで言っておられたそうです。
これはなかなかナイスなアイデアだなと思います。やっぱりプロは考える事がすごいです。


☆質問コーナー 〜自分に厳しく他人に優しく〜

講演が一通り終わると、質問コーナーというのがありました。
時間がなかったためほんの数名しか質問はできなかったのですが、
ひとりひとりの質問に神谷さんは心を込めて真剣に答えておられました。
その中で一番私が印象に残っているのは、
「風邪をひいたらどうするんですか?」
という質問に対する神谷さんの答えです。神谷さんは、
「私は風邪は引きません。声優が風邪をひくことはとても恥ずかしい事なんです」
と言っておられました。こういうところがやはりプロなのだなぁと感動しました。
これくらい自分に厳しくなければ、プロとしてやっていくことはできないのでしょう。
それから、「一番自分のお気に入りの役はなんですか?」
という質問もありました。神谷さんが役柄として気に入っているのは冴羽遼、
そして、作品としてとても気に入っているのは名探偵コナンなんだそうです。
名探偵コナンの製作現場はとてもチームークがよく家族のようなのだそうです。
なんと、あのコナンが使う時計型麻酔銃の針がでないバージョンを、
神谷さんはもっておられるのだそうです。私もかなり欲しいです。
それからもうひとつ、どんな質問だったのかはっきり覚えていないのですがこんな話もありました。
神谷さんが声優になるまえ所属していたプロの劇団には、
ルパン、銭形、アッコちゃん、ハイジ、サリーなど優秀な声優さんがおられ、
そのことが神谷さんを声優の道へと導くきっかけとなったのだそうです。
神谷さんは声優業について、「私の天職です。巡り会えて幸せです」と言っておられました。


☆最後に 〜素敵な人〜

質問のコーナーも終わり、とうとう終わりの時間です。
神谷さんは、最後に私達にこんな言葉を下さりました。
「夢を持ったからって夢がかなうわけじゃありません。だけど、夢を持たなかったら、絶対にそれは叶わないんです。夢
を持ちましょう。そしてその夢を、大好きになりましょう。夢を大好きになれば、そのためにする努力も、努力だなんて感
じずに、あたりまえのように楽しんで持続できます。あきらめないこと、あせらないこと、あきないこと。これが大切。」
私はこの講演を最初から最後まで拝聴し、神谷さんのことが大好きになりました。
はじめの宣言どおり最初から最後まで私達を楽しませ、笑わせ、そして感動させてくださった神谷さんの素晴らしさに感
動し、心から感謝しています。始終温かい笑顔を絶やさず、惜しみなく様々なお話をしてくださっている姿を見ていて、あ
ぁこの方は朗らかで懐が大きくて、それでいて芯の通った強い方なんだなぁと思いました。
声優業にとって一番辛いのは、どんなに努力してもできない役にぶつかったときなのだそうです。
きっと神谷さんは、何度も何度もその辛い壁を努力で打ち破ってきた強い方なのでしょう。
だからこそ、あんなに素敵に面堂終太郎や三鷹瞬を演じる事ができるのでしょう。
ますます面堂終太郎のことを深く好きになった一日でした。

                  2003.11.01
<神谷さんと終太郎☆chunさんが描いて下さいました>

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