--本当の出会い Said・海堂--



「おいおい、海堂〜!!俺、昨日テニス教えてももらっちまったぜ!!」
小4の夏、もうすぐ夏休みだという時に俺はクラスメイトのタケシにそう話しかけられた。
教室に入ってくるとタケシは真っ先に俺の元へやってきてテニスの話しを続けた。
まぁ友達だったが親友と言うまでも行かない俺になんで話しかけたのは室内を見渡せば一目瞭然だった。
窓際には先生のお気にいりのおとなしい女の子。海堂の斜め2.3個後ろの机には小学校のお受験にしっぱいして仕方なく公立に入学したガリ勉野郎。あとはカバンだけあるが室内には居ないやつ、話しが盛り上がってる数人の女子生徒。この中で1番話し掛けやすいのは俺だって訳だ。
タケシの勢いにおされ俺も思わずテニスの話しに聞き入ってしまった。
「で、誰に教えてもらったんだ?」
「誰…?えっとな、となりのとなりの小学校の人だよ。6年生だって。5〜6人で教えてくれたんだよな〜。
 っつーかお前も今日教えてもらいに行かねぇ?すっげー楽しいからよ。」
「俺行っても平気か?」  「おぉ、平気だと思うぜ。大勢居たし。」
結局俺とタケシと同じクラスの男子4人の6人でテニスを教わりに行ったんだ。ラケットも持ってないのにな。

自転車でそのテニスコートにつくとすでに数グループ、教わりに来てるヤツらが居た。タケシはテニスコートの中に歩いて行き一人の男に話しかけた。
「ゆうや君、また教わりにきちゃったよ〜。あと、友達連れてきたぜ。」
昨日も教えてもらった人なのかタケシは親しげに話すと俺らのことを紹介した。
「で、教えてくれるのがゆうや君。テニス上手いんだぜ?」
一通り紹介が終わりテニスをやり始めた。もちろん俺らはへたくそだけどそのゆうちゃんはラケットも貸してくれていろいろ教えてくれた。
その時、となりのコートでおぉ〜という歓声が上がった。その中には頭一つ分以上飛び出しているメガネのヤツが立っていた。
「すっげーよ、連続何本サーブ入ってるんだよ。」
歓声と拍手が生まれるとそのメガネのヤツは頭を掻くともう一本ボールを打った。
その時俺の中で何かが弾けた。打ったとたんあっという間にボールは反対コートへと行く。俺もあんなサーブを打ってみたい、俺もテニスが上手になりたいって。
その時誰かがメガネのヤツに言った。
「なぁ、お前青学行くのか?テニスあそこめっちゃ強いジャンか。」
「うん、そのつもり。」
メガネのヤツもそう答えた。
俺も行ってみたい、『セイガク』ってやつに。
その後もゆうや君に教えてもらっていて、結局あのメガネのヤツとは話せなかった。だけど俺の中でテニスっていうのが特別な存在になっていたのは明らかだった。

「母さん、俺『セイガク』に行ってテニスがやりたい!!」
こう伝えたのもその日だった。

★END★



---後記----------------------------
薫の小学生時代って絶対に犯罪的にかわいいよね。

 ・悠来摩琴・
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