--本当の出会い Said・乾--



三年生も引退し学園に入学してはじめての夏休み。部活をしているとぞろぞろと小学生たちが保護者同伴で門をくぐっていた。きっと体験入学とか学園見学とかに来たらしい。


「にゃー、乾。今日なんであんなに小学生がいるの?」
玉拾いの間に隣に立っていた菊丸が聞いてきた。なんで俺に聞くんだ?って問うとあの分厚いノートには何でも書いてありそうだからだとさ。
「へぇ〜…暑い中大変そーだねぇ〜」
菊丸はそう言うと小学生たちをぼけーっと眺めていたがやっと目を離すと俺のほうを向き話を続けた。
「あの中の誰か、テニス部入るかにゃぁ〜…?」
「一人くらいは入るだろ〜。データから言えばテニス部は毎年10人前後の入部があるからな…。」
2人で話をしてたらその横にいた手塚に怒られたので少し離れて玉拾いを続けた。
(誰かテニス部にはいるかにゃ?…かぁ…)
英二がそんなことをいうもんだから乾はその一年生たちがどうしても気になって仕方がなかった。俺も去年、あの中に居たって事も手伝って。
ふとフェンス越しにその一団を見ていると一人の少年と目が合った。すこし目つきの悪いバンダナを巻いた少年だった。
なぜか俺はその少年から目が離せなくなっていた。すでのその少年の目線の先には俺ではなくコートで打っている先輩たちなんだけど、そのことが分かっていてもその少年を追っていた。
「・・・・っ!ねぇ!乾ったら〜〜。どこ見てるにゃ〜〜??」
横に立っていた英二がその姿をみて話しかけてきた。最初の半分は聞こえてなかったが。
「すげーーこのテニスコートみてる子が居てね。見いちゃったよ。」
英二の声で我に返るとその目を少年から外した。その少年もお母さんに諭されたのかその場から離れ小学生の一団に混ざっていった。

すごい目線。 すごい眼力。 目が離せない。

俺がその少年のことを海堂薫ってことを知るのはまだ先のことだったけど。


★END★



---後記----------------------------
乾の中1なんて犯罪的にキモイよね。

 ・悠来摩琴・
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