水 難
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ピリリー!
真っ青に晴れ渡った真夏の空に、ホイッスルの音が響きわたった。
「はーい、みんな集合よー!」水泳部部長のハルカがメガホンを手に大声をあげた。
思い思いに練習していた10名ほどの部員たちが、水着から水を滴らせながらプールサイドに集まってきた。
「みんな、夏休み中の練習おつかれさま。きょうで休み中の部活は終わりよ」
部員たちから、やったあ、とか、やれやれ、といった囁きが漏れる。
「じゃあ、きょうの当番はサヤカとマイね。後片づけだけよろしく。
あ、そうそう、コバヤシ先生ね、気分が悪いって準備室のソファで横になっているわ。帰る前に挨拶していってね」
それをきいていた少女たちの間から、クスクス笑いがいくつか聞こえたが、ハルカは黙殺した。
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水泳部顧問のコバヤシは太り気味のうえ短躯の男で、夏冬問わず、
ふうふういいながら額や首の後ろの汗をタオルで拭っているようなうっとおしい男だった。
だが、彼があまり生徒に好かれていないのはその容姿のせいではなく、
その分厚い眼鏡のレンズの向こうから、少女たちをじっと見つめるあやしげな挙動にあった。
伝え聞くところによると、水泳部の顧問にもすすんで名乗りを上げたらしい。
だが、夏の長期休暇期間中にすすんで登校してくれる物好きな同僚を、他の教諭たちが歓迎しないわけはない。
少なくともその一点に関しては、なかなか顧問がつかない水泳部員たちにとっても同じことだった。
水着の少女たちをプールサイドのディレクターチェアから舐めるように見つめる視線には
みな嫌悪感を隠さなかったが、部活動には顧問は必須だ。
というわけで、コバヤシは(おそらく)趣味と実益を兼ねた、立場を満喫しているのである。
でもきょうは部活がはじまってまもなく姿を消したので、みなのびのびとしていたのだが。
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「ああ、あたし約束があるの、いそがなくっちゃ!」
長い髪を束ねながら、マイが校舎の時計を見上げた。
「ふうん、デートだな。また、おにいちゃんだろ」
サヤカはからかうように聞いた。マイは2つ上の同じ学校の高等部に通う兄ととても仲がいい。
美形の兄妹が肩を寄せ合い歩く姿は、知らないものには似合いのカップルのそれに見える。
「いいよ、きょうはたいして片づけるものもないし、後はあたしがやっておくから」
サヤカはいった。焦りからか、水泳器具を乱暴にカゴに押し込めていたマイの顔がパッと明るくなった。
「ほんと?ごめん、当番っていうの忘れて、アニキとお祭りに行く約束しちゃって。必ずこの借りは返すから!ごめん!!」
語尾まで言い終わらぬうちに、マイはダッシュで更衣室のある校舎へと走っていった。
「こらこら〜、プールサイドを走ってはイケマセンよ〜。ふふふ」
あんなかっこいい兄弟があたしもほしいなあ。
などと思いながらサヤカは片づけをはじめたが、じっさい、たいしたものはない。
ものの30分あまりで水泳用具をプール脇の倉庫に納め終わってしまった。
サヤカは部活中は禁じられている可愛らしい髪留めでまだ濡れたままの髪を留めると、
顧問のコバヤシに報告に行くことにした。
たいして使われることもない水泳部の準備室は、プール地下にあるポンプ室の隅に、
どこからか持ち込んだ事務机とソファが置かれているだけの名目だけのものだった。
ふだんでも水泳の出欠簿が置いてあるぐらいのものだ。
真夏の太陽の下からポンプ室へと続く階段のドアをくぐると、
スクール水着のままのサヤカの肌にひんやりとした空気が触れた。
階段を20段も下りると、ポンプ室のドアがある。
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「センセー、片づけ終わりました」
サヤカはドアをノックしながら声をかけた。しかし、返事はない。
そういえば、部長のハルカが、先生は具合が悪くて・・・といっていたっけ。
いけ好かないコバヤシだが、気になることは気になる。
ちょっと様子だけ見ていこうかな、とドアを開けて室内に入った。
とたんにむっとする、生臭さが鼻についた。
なんだろう、この臭い?と思いながら、ごそごそ動く気配がするソファの背もたれの向こうをのぞき込んだ。
「センセー、だいじょうぶで・・・・?!」
そこには、サヤカがかつて見たことのない異形の生物の姿があった。
くすんだ肉の色の身体は、見ている間にも爆発的に成長する骨格にあわせ、見る見るうちに大きさを増していく。
そして、黄色に不気味に光る複数の目が見開き、体中から醜悪な形状の触手が無数に伸びてくる。
あまりのことに声も出せないサヤカだったが、事態が尋常ではないことはすぐにわかる。
まるで雲を踏むように頼りない左右の脚を必死に動かし、そっと階段を戻りはじめた。
20段あまりの階段を一気に登りきり地上にでた瞬間、サヤカはへたり込みそうになった。
もうここまでくれば助けを呼べる、それにしてもあれは一体なんだったんだろう・・・
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「?!」
プールサイドを急ぐサヤカの足首に、そのとき、なにかヌルッとしたものが巻き付いた。
それは、あの醜悪な形状の触手。そのものがびくっびっくと不規則に脈打ちながら、
サヤカの脚をまさぐりながら太股まで這い上がろうとしていた。
「ひっ!ど、どうして?」
ポンプ室のドアはしっかりしめた。それなのに・・・
瞬くうちにサヤカは触手に手足の自由を奪われてしまった。
それだけでなく、触手はサヤカの水着のままの全身をいとおしげにまさぐりはじめた。
「い、いやっ!はなして!!」
サヤカは大声で叫んだ。だが、その声に応えたのは、まったく意外な方向からだった。
プールの水の中から。
「ああ、この身体は・・・そうか、きみか、サヤカくん」
奇妙に甲高く増幅され、ハウリングを起こしているようにも聞こえるが、
それはまちがいなく、水泳部顧問のコバヤシの声だった。
「先生・・・ですか?どこにいるんですか!たすけて!!」
「ワ、私はさっきからきみに触っている、ここニいる」
ざざざ・・・ 水面が波立ち、腐食した肉塊のようなものが姿を現した。
その一部には、変わり果ててはいたが、あのコバヤシの顔が張り付いていた。
それが・・・ニヤリと笑った。
「せ、せんせい?」
「アあ、やっパりきみだったね、まあこの身体の感触はマチがいないと思ったが」
サヤカは、気が遠くなりそうな意識を必死に堪えた。
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陽光の下に姿を現した異形のものは、サヤカをさらに多くの触手で弄びはじめた。
そして、その何本かは水着の上や、あるいはその隙間を無理矢理押し広げて、乳房や下腹部をまさぐりはじめた。
「い、いやああ!だめ、お願い、そんなところ触らないで、センセーやめて!」
自由に動かない手足だが、それでも身をよじりながらサヤカは必死に懇願した。
だが「おおお、これがきみの乳房かこのもみぐあいの弾力のよさといったら・・・、
乳首の感度はどうかね?おお、反応はいいようだね、かわいらしいよ」
異形のものとなったコバヤシは、サヤカの身体に思うがままに己の欲望をぶつけるのみである、聞く耳など持たない。
水着の隙間から胸へと達した触手は、年頃の少女の成長過程にある少し固さの残るバストをいとおしげにもみしだき、
その意志とは別に刺激に膨らむ乳首を舌で舐めあげるように転がした。
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昼下がりの眩しい陽光に晒された、少女の白い肢体。
ぴちゃぴちゃと少女のなめらかな肌を汚す粘液の音と嗚咽だけが響くプールサイド。
さっきまでのうるさいほどの蝉時雨さえ、息を止めたように見守る静寂。
そして、触手群の中でも極太のものが、ついに処女の入り口に達した。
それは人間の男性器と同様、くびれた雁首をもち、幹の所々に不規則に蠢く醜い瘤をもつ、
まさに女を思うままに犯すために生まれたような一本。
「ああ、これが夢にまで見たサヤカくんの股間か、さあ、先生のものを入れてあげるよ」
すでに触手の先端からは待ちきれないように、べたべたした液体を滴らせている。
まだ男性を知らない固く閉じたスリットにそれを潤滑液にして、
ゆっくりと極太の触手は押し入っていった。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、と異種の生殖器が交わる音。うっと呻くサヤカ。
「!!!いたいいたい!!!やめて、いやいやいや!いたいよお!」
めりめりと身体を貫く激痛にサヤカは泣き叫ぶ。
異形のものと化したコバヤシの口から、おう、おう、と恍惚の声が漏れる。
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「いや・・・いやだよお・・・うっうっ・・・」
儚い抵抗を続けるサヤカに構うことなく、触手は膣の奥深く、子宮の入り口まで達した。
そしてこんどは、激しくピストン運動で膣をかきまわしはじめた。
「あぅ、う、う、う、うあういたいいたい!せ、せめてやさしくして、、、お願いです、、、、」
「サヤカくん、きみのここがきついからだよ、先生はいつもきみにはやさしいよ・・・
さあ、なかにたっぷりと先生のものを注いであげるよ」
「!!!いや!それはいや!!お願いやめて!!だめ、だめえ」
おおおおおお!咆吼する声が響く。一瞬触手がひとまわりも膨張したようになった。
そして、サヤカの膣の中に、まるで人間の精のような、白濁液をぶちまけた。
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「水の事故には気をつけろ、って、せんせいいつも言っているだろ?サヤカくん」
白濁液にまみれて放心するサヤカをなお大小の触手で弄ぶ。
そして・・・ ずっ!
浅く喘いでいた唇に、粘液とサヤカ自身の純潔の証にまみれたままの触手が押し込まれる。
「う、う、うぐ、うぐ、うぐ」
「ちゃんと返事をしてもらいたいなあ、このかわいらしい口で。これは補習だね」
かつて聖職者の仮面をつけていた化け物は、抑圧されていた欲望を解放し、
再び少女の華奢な身体にのしかかっていく。
照りつける夏の太陽の下でつづけられる、禁断の課外授業。
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