日記


1 のび太の結婚前夜

 お正月だからと家でのんびりすごしていると、一匹の猫が迷い込んできました。ご存知の通り僕も猫好きでここまで来た男です。餌をあげたり餌をあげたり。とても人間なれしているようで、この辺りを根城にして家々を回っている野良猫かなと思ったのですが、首にはしっかりと首輪がついていました。

 見ると住所がかかれていました。それほど遠くありません。自転車で30分ほどでしょうか。ご存知の通り僕も猫好きでここまで来た男です。届けてあげようと、立ち上がりました。

 地図を見ながら自転車を走らせ、なんとかその住所を見つけ出しました。そこには女の子とその父親らしき人がいて、丁度帰宅するところだったみたいです。その瞬間、猫がさっと走り出し、二人の下へ駆け寄ります。感動の再開ですよ。

 様子を覗き見ると、女の子はもちろん、父親も滅多やたらなテンションで喜んで、「お前!一人でここまで帰ってきたのか!」なんて言っていて。何があったのかは知りませんが、折角の夢を壊すのもなんなので、そっとその場を去る僕なのでした。


2 イノッチ

 僕はずーっと昔からそこにいて、ずーっと昔から君を知っている。毎朝決まった時間にやってくる君に、ポカリスエットを渡しお金を受け取る。ほんの少しだけ触れるぬくもりが、ずーっと昔から好きだった。

 君がやっていると言ったバレーボールもずーっと昔から知ってるし、好きだと言ってたドリカムもずーっと昔から知っている。好きな映画も、好きなドラマも、僕は君と知り合うずーっと昔から知っている。だから僕と君は、必然なんだ。

 そんな自分を演じ始めたのは、つい最近のことだけど、きっと君は、気付いていない。


3 飛蚊症

 自己紹介小西さんとは、とある僕の研究を通して知り合いました。街で会うとよく声をかけてくれて、世間話に花を咲かせます。土手に座って二人、あの政治家がどうだとか、あの事件がどうだとか、そんなことをしゃべりつつ、空を見上げます。

 冬の空はとても健やかで、流れる雲は白く、包み込む空は青く。だけど小西さんは、俺、飛蚊症でさ、と。目の前に黒い蚊のような物が見えて、この雄大な空の景色に集中できないのだそうです。近眼の人がよくなる症状で、網膜はく離の前兆でもあるそうで、そのうちこの青さも感じられなくなっちゃうんだろうな、と悲しげに言うのです。

 うん、だけど小西さん、それは本物、ていうかハエですけど。


4 将来を考えた仕事

 実は僕、紙を破る仕事をしています。紙といっても、お菓子や薬の入った箱などです。それを小さく破いては捨て、破いては捨てる仕事です。

 仕事を決める上で考えるのは、やっぱり将来性なんです。どこでもいいからと就職すると、すぐに止めちゃうのは目に見えているんです。だから、きちっと将来を考えて、一生続けていくべき仕事を見つけることです。

 しかし、どんなに仕事を頑張っても、歴史に僕の名前が刻まれることはきっとないでしょう。死ねばきっと、すぐに忘れられる存在です。だけど、それでも、この国や子孫たちのために、僕は紙を破り、ごみの少量化を量り、未来を残したいと思います。例えどんなに手首が炎症を起こそうとも……


5 因果

 例えば史上最高の映画を決めるとして、それはきっととてつもない作業だと思います。これまでどれだけの映画が世に輩出されたのか知りませんが、単純に動員数や興行収入といったもので導き出されるものではありませんから。

 思うに、こういうときに重要とされるのは、歴史的な意味なのではないでしょうか。その手法や思想が、どれだけ後の世に影響を与えたか。世界的に大ヒットをしたAという作品があったとして、しかしAを生み出すためにはBという作品の影響が不可欠だとしたら。

 いかに新しいものを生み出し、後世に発展をもたらしたかというのは、かなりの難題なだけにそれ相応の評価が必要なんです。つまり、「人類史上最も偉大な人物は」というのなら増川くん、最初にセックスをした人という結論になるんじゃないですか。

 と答えたら、途端に白い目がぐさり、ぐさり。


6 助手と博士

 百瀬くんのおじいちゃんは、わが町のエジソンです。充実した時間をもてあまして生まれた数々の発明品は、どれも身近な生活に密着した、痒いところに手が届くものばかりです。

 例えば眼鏡の上からもう一つ眼鏡をかけてしまうようなお茶目なお年寄りにはメガーネをお勧めします。このメガーネは、横の棒の部分が従来のものより長く作られているんです。だから眼鏡の上からかけてしまっても安心のピッタリフィットってあんまりですよね。

 だけど、そんなおじいちゃんの発明品のことを話す百瀬くんはとても生き生きとツッコミを入れていて、それだけで僕が博士の助手という職業に憧れるには、十分だったんだと思います。


7 流出

 噂好きのクラスメイトに、倉敷くんという人がいるんです。誰が何階でうんこしたとか、誰が誰を好きだとか、とにかくそういう話ばっかしてるんです。

 だもんだから、何かしたら倉敷くんに広められちゃうってんで、恐怖政治です。人々はよりおしとやかに、より倉敷くんに接しないように暮らしました。

 しかし、それでも僕は家が近いってんでよく一緒に帰ったりして、500円のラーメンをおごってもらったりしてました。そこで倉敷くんは「瀬地の噂はもらしてないから」なんていうんです。ちなみに倉敷くんは450人分の噂を持つと言われ、わが校の生徒は全部で380人。それで何を信じろと言うのですか。


8 うんち

 僕みたいに正直な人間は、よくなんの気もなしに思ったことを口にしてしまうことがあるんです。だからついついかわいい女の子を前にすると、「かわいいね」なんてことを無意識に言ってしまうクールガイなんですけど、女の子に勘違いさせてしまうのが玉に瑕ですね。

 だけどこの「かわいい」という言葉、少し知識のある女性に使うときは注意が必要です。軽く使うと「所詮外見しか見てないの?」なんていわれかねません。なぜなら、「かわいい」という言葉は、もともと「顔はいい」という文章が縮まって使われるようになった言葉だからです。


9 レシーブ

 お花見のどんちゃん騒ぎは嫌い。瀬地です。こんにちは。こんな僕でも、桜並木を眺めるとやっぱりきれいだなと思うんです。その風景はまさに春であって、舞う花びらを見ると、ほっとしている自分がいます。

 辺りを見回してみれば、寄り添い歩くおじいちゃんとおばあちゃん、ベンチで読書する女の子、草むらで寝転がるカップルなんかがいて、それはとてものどかで静かで、とても平和な日常で。

 あー、世界が滅びればいいのに。


10 セブンイレブン

 いきつけのコンビニで働いている山岸くんは色黒です。僕は彼の名前しか知らないし、もちろんしゃべったこともありません。だけど、どんな時間帯に僕が買い物に行こうと大体彼はいて、一年の大半をそのコンビニ内ですごしているに違いないのです。

 そんな彼が今日、店員の女の子二人と談笑をしていました。女の子達はきっと高校生で、きっとこの四月から入った新人なのでしょう。僕は山岸くんのしゃべっているところを見たことが無いし、声も記憶に無いので非常に興味を持った次第なんです。

 だから僕は慎重に、マガジンとコーヒー牛乳をもってレジに近づきました。するとそれまでしゃべっていた三人が突然、「いらっしゃませー」ってハモった。僕は笑顔をもらった。






































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