日記


11 目撃

 買い物帰りの路地裏で、僕は事故に遭いました。接触事故。十字路で、僕の自転車の前輪に自動車がぶつかって。

 ハンドルとかがずれちゃったので直していると、周囲で結構人が見ていることに気がつきました。そんなに大きな音がしたのでしょうか。ここにこんなに人間が存在したのかってくらい皆で見てて、だけど手伝ってくれたりする人は一人もいなくて、もしも僕が死んでたら、ちゃんと届け出てくれますか。


12 いつまでも子供

 早見さんには、海斗くんという甥御さんがいます。早見さんに子供がいないこともあって、海斗くんをとてもかわいがっているようです。もうすぐ訪れる黄金週間も、もちろん海斗くんと遊ぶんだと今から張り切っています。

 そんな早見さんは当然、毎年海斗くんにお年玉を上げていて、一年間の海斗くんの出来事を僕に教えてくれたりします。もう小学校に入学した。運動会で一等賞をとった。中学校に入学した。テニスの試合に勝った。通信簿に5があった。晴れて高校に入学した。

 毎年の出来事が、お年玉に上乗せされて、僕にはそれが重過ぎるような気がするのです。海斗くんは今年、係長に昇進したそうです。


13 年輪

 小学生の隆弘くんは、5月生まれで、それはつまり、後少しで一つ年をとるわけです。誕生日にはもちろんケーキやプレゼントが用意されて、友達を呼んでのパーティーがあって、隆弘くんは最近なんだかうきうきしています。

 それはそうと、この間はおばあちゃんの誕生日があって、今は施設のお世話になっているものの、今年もまた元気な姿を見られたと、また一年生きることが出来たと、皆でうれしく思っています。少しでも多くの誕生日を迎えて欲しいと、いつも思います。

 だけどなんだかその中で、僕自身は誕生日を迎えたくなくて、このまま年老いていくと思うとなんだか沈んできて。それでも気付けばベランダのサンダルは小さくなって、隣の酒屋のおじさんの腰は曲がっていって、時間は経過してるって、痛感するんです。


14 とらうまさるかに

 さるかに合戦で、かにの仲間といえば、クリ、ハチ、うす、牛のふんでした。なのに泉さんたら、それは違うと言うのです。自分が聞いたさるかに合戦に、牛のふんなどいなかったと、そんなことを言うのです。

 いやいやそれは違うでしょう。牛のふんは、誰もが知ってる常識でしょう。僕は確かに絵本で読んだし、みんなでそう、幼稚園のときに学芸会で演じたじゃん。しかもそのとき、牛のふん役だったのが泉さん自身……

 とその瞬間、大声で叫んだかと思ったら、泉さんは気絶しました。


15 死ぬ気

 ペンフレンドのマックインくんはアメリカ人で、日本人の僕なんかじゃ及びもつかないくらいタフな男です。彼は過去、トンネル事故に遭いまして、地中に閉じ込められながらも自らトンネルを掘って脱出したことがあったそうです。それを聞いて僕は、

「僕だったら絶対あきらめちゃう。救助を待ちながら死んじゃうんだ(英語で)」

 といったところ、マックインくんは、

「死ぬくらいだったら苦しくてもがむしゃらに生きた方がましさ。死ぬ気になれば何でもできるよ(英語で)」

 なんていうので、やっぱマックインくんはかっこいいなあと、僕は彼をリスペクトすることに決めたのです。

 つまり、死ぬ気になってあの娘に告白大作戦です。僕は持ちうる私財をなげうち、親友をも利用し、ライバルを蹴落とし、ついに告白したところ振られました。死ぬ気で告白してしまったので、僕はもう、経済的にも心情的にも生きていける気がしません。


16 僕の寝方

 いつもはうつぶせに寝ています。だけど最近やけに首が痛く、きっとこの寝方がいけないのだと思った僕は、寝方を変えることにしたのです。

 まず仰向けに寝てみたところ、なかなか寝付けないこと以上に、ケツのなんとも微妙な位置にぢがありまして、痛くてとても寝られません。

 次に横向きですが、先日自転車で転んだときの傷が右腕に残ると共に、左腰にも青あざが残っているので、こちらも痛くて寝られません。

 かといって、もううつぶせも限界なんです。だから僕は立って寝ます。SMAPの中居くんがやってた番組にヒントを得ました。


17 勝手に改造を読んだ

 大学時代にお世話になった先輩、深山くんにはもう7年も付き合っている彼女がいます。この間、久しぶりに飲みにいくと、そろそろプロポーズをしようという話になったんです。

 だけど深山くんたら、その意志はあるんだけど、なかなかタイミングがつかめずにグダグダやってるみたいなんです。長年付き合ってるくせに、そんなことがあるんですね。

 言ってもプロポーズなんて簡単なわけですよ。要は相手を感動させ、涙を流しながら頭を縦に振らせるような、そんなプロポーズができれば成功なのです。

 それにはまず、二人で北極か南極に行きます。無理なら冬の北海道でも構いません。とにかく、寒い中でギターを抱え、精一杯の気持ちを載せた歌を歌いましょう。それがどんなにくだらなく、相手を引かせ、恋の魔力を無効にする歌だとしても、きっとまわりの寒さが助けてくれますから。

 寒さから来る体の震え、そして鳥肌の立つあの感覚を、人は感動によるものだと勘違いしてしまうのです。そんな体の条件反射が、心を勘違いさせるのです。後はもう、涙が暖めてくれますから、ゲレンデが溶けるほど燃え上がれば宜しいのではないでしょうか。


18 紳士

 上塚さんを乗せて車の運転をしていると、外国では車の運転も紳士的で、入ってくる車によく道を譲るなんて話になったのを覚えています。日本人は冷たいよねえ、なんて。

 ところで、よく上塚さんと一緒に歩いていると、僕は上塚さんにどんどん引き離されちゃって、先を行く上塚さんはいっつも怒るんですけど、僕が遅れちゃうのは、横から来る人たちに道を譲ってるからなんです。


19 確認作業

 よく自転車などで十字路を渡るとき、信号が無ければスピードを緩め或いは停止し、横から出てくる自動車が無いか確かめることになります。しかしこの行為、狭い路地などで繰り返すにはなかなか億劫なものです。

 そのため、裏技的に前を行く人についていくと言う手があるわけです。つまりは、前の人が道路の安全を確かめてくれますから、自分は堂々とスピードを緩めることなく十字路を渡れるというわけです。

 なので僕はうきうき気分で十字路を渡ろうとしたんですが、なぜかでてきたトラックに衝突。みなさんも、自殺志願者には注意しましょう。


20 健康ブーム

 夏も本番な今日この頃、久しぶりに柳瀬くんに会いました。同窓会です。中学の頃、いつも同じグループで遊んだり、けんかしたりしてましたっけ。だけどそんな懐かしの柳瀬くんは、僕と同じくらいの痩せ型だったのに、今では見る影も無くたくましくなっていました。

 あの頃の僕たちは、まだ若くて元気があって、集まればスポーツをしたりゲームをしたりしてました。そしてやっぱり勝負事には罰ゲームがつき物で、何かに呪われたかのように毎回罰ゲームを受けるのが柳瀬くんでした。

 比較的穏健派の僕たちの罰ゲームにそう過激なものは無く、青汁を始めとしたなんだかわけのわからないけどとにかくまずいものを飲んだり食べたりといったものでした。今思い返せば、漢方薬が多かったかもしれないね、と柳瀬くんは振り返ります。

 おかげで中学三年間で、柳瀬くんは徐々に健康な体になっていったのだそうな。僕たちと別れてからも柳瀬くんはいろんなものを飲みつづけ、今のような体格になったのだとか。熱く語る柳瀬くんの目はギラギラ輝きとても怖かったのを覚えています。





























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