■ 密室劇場 ■


 

● 第一場 ラウンジ

 

 

 ナミが一人で本を読んでいる。

 そこにゾロが入ってくる。

 

「なんだ…コックいねぇのか。」

「ちょっと、あんた、何でずぶ濡れなのよ。雨? …のわけないわよね。」

「あー、ちょっと泳いだ。」

「ルフィがまた海に落ちでもした?」

「いや、俺が勝手に海に入っただけだ。」

「何で?」

「別に何でも…………いや…、」

 

 ゾロ、しばし考え込む。

 

「ナミ、次の島にはまだつかねェのか?」

「気候が安定してないから、次の島の領海にはまだ入ってないわね。」

 

 ちっと舌打ちするゾロ。

 

「なによ、なんか足りないものでもあるの?」

「…いや…。」

 

 ゾロ黙り込む。

 

「…例えばだが…、お前、姦らせろっつったら姦らせてくれるか?」

 

 ナミ、鉄拳制裁発動。

 床にめり込むゾロ。

 

「いきなり何言ってんのよ、このバカ!!」

「仕方ねェだろうが!!こっちも切羽詰ってんだ!!でなきゃ誰がお前なんかに」

 

 ナミ、怒りの鉄拳制裁再び。

 再び床にめり込むゾロ。

 

「口の利き方に気をつけないと海王類のエサにするわよ。」

「…ごべんなさい…」

 

 ゾロ、既に瀕死の状態になっているが、ゾロなので無問題。

 

「何が切羽詰ってる、よ。そんなもん、てきとーに自分で処理すりゃいいでしょう!」

「自分で何とかならねェから切羽詰ってるんじゃねぇか。やばくてしょうがねぇから人がわざわざ目に入らねェように遠くで昼寝してやってんのに、あのバカが、いちいち寄ってきて煽ってきやがって、強姦されなきゃわかんねぇのかってんだ。」

「ちょっと待って、あのバカって誰?」

「コックに決まってんだろうが。大体あのバカは薄着しすぎなんだ。何か着ろって言ってんのに話を聞く気もねェ。」

「…サンジ君はこの船で一番厚着だと思うけど…。」

「どこがだ! 尻の形が丸見えだろうが! あんなちっせぇケツで平気でそこらじゅう歩き回りやがって、一体どういうつもりなんだか。」

「どういうつもりって…」

「あんなケツ毎日毎日見せ付けられたらおかしな気分にもなるだろうが。仲間強姦すんのはさすがにまずいだろうと思って離れてりゃいちいちいちいち俺を探し出してまで絡んできやがる。頭冷やすかと海で泳いだんだが効果はないし、いいかげん切羽詰ってきたから女買うかなんかしようかと思ってたんだが、島がまだならお前かロビンかにでも頼むしかないだろう?」

 

 尊大に言い放つゾロ。

 ナミは目を丸くしている。

 

「………………なるほどねぇ…。納得したわ。」

 

 呆れた顔で頷くナミ。

 ちょっと感心すらしている。

 しばし考えてにっこりとした笑顔をゾロに向ける。

 ゾロ、心なしかビビリ気味。

 

「いいわよ。相手してあげる。」

「マジか?」

「マジよ。そのかわり避妊はちゃんとしてね。」

「…あ、ああ…。」

「今すぐでもいいわよ? ここでいい?」

「…い、いや…、ここは、まずいだろう、コックが毎日綺麗に掃除してるんだ、汚すわけにはいかねェ…。」

「そう、じゃあ私の部屋に来る? 夕飯の後で?」

「…わかった…。」

 

 暗転。

 

□  □  □

 

 

● 第二場 女部屋。

 

 

 ナミが一人でベッド腰掛けている。

 ロビンはいない。

 

 ノックの音。

 ナミが歩いていってドアを開ける。

 ドアの外の人物を室内に促す。

 入ってきたのはゾロ。

 

「…ロビンは?」

「ラウンジに行ってもらったわ。サンジくんにお茶でも入れてもらってるかもね。」

 

 一瞬、妙な間。

 

「…は、あいつはあいつでよろしくやってるわけか。」

 

 小馬鹿にしたような、いやな言い方。

 

「あんたじゃないんだから、サンジ君は一晩中一緒にいたって何もしないわよ。」

「何でてめェにそんなことがわかる。」

「わかるわよ。だってあたし、あれだけサンジ君に好きだ好きだ言われてるのに、一度も本気で口説かれたことないのよ? 手一つ握ってきたことないわよ?」

 

 再び妙な間。

 

「…まじ、かよ…。」

「おしゃべりはいいからさっさとしましょ。キスする?」

 

 ナミ、色気のかけらもない言い方。

 ゾロ、たじろいだような気配。

 

「いや…キスは…好きじゃねェ…。」

「ふぅん、即物的なのね。脱ぐ? 全部脱いだ方がいいかしら。それともパンツだけ脱ぐ?」

 

 ナミ、つっけんどんな言い方。

 ゾロは戸惑いを隠せない。

 

「…いや…、」

「何よはっきりしないわね。せっかくヤらせてあげるって言ってるのに。」

「………お前……、本当にいいのかよ…。」

「いいって言ったわよ? 何? その気になんない?」

 

 どこか面白そうなナミ。

 ついに観念してため息をつくゾロ。

 

「…………悪い。そうみてぇだ。」

 

 ふっと笑うナミ。

 

「“まがいもの”じゃ意味がないって気がついた?」

 

 驚いたようにナミを見るゾロ。

 まんまとしてやられたことに気づき、苦々しく笑う。

 

「……………ああ。」

 

 やれやれ、と言った感じのナミ。

 ベッドに腰を下ろす。

 座れ、という風に、自分の隣をぽんぽんと叩く。

 ゾロ、促されるままにナミの隣に座る。

 

「サンジ君じゃないとダメなんでしょ?」

「…ああ。」

「勃たないんでしょ?」

「…それはお前がわざと色気のかけらもなくさっさとヤろうとか言うからだろ。」

 

 ナミ、呆れた、という風にゾロを見る。

 

「まーだそんなこと言うのね。」

 

 やにわにゾロの首に抱きつくナミ。

 そのまま後ろに倒れこむ。

 強引にゾロがナミを押し倒すような体勢に持っていく。

 

「ゾロ…。」

 

 ナミ、色っぽい声。

 

「ねぇ、抱いて…?」

 

 色っぽく迫られて、一瞬たじろぐゾロ。

 間。

 ゾロ、ため息を付いて体を起こす。

 

「…わかった。悪かった。勃たねェのはお前のせいじゃねェ。俺のせいだ。」

「でしょ。」

 

 してやったり、という顔のナミ。

 ふてくされた顔のゾロ。

 もうここには用がない、とばかりにベッドから降りて立ち上がる。

 

「…やっぱ強姦しかねェか…。」

 

 ぼそっと呟くのを聞いて、ナミが仰天する。

 

「ちょっとちょっと何言ってんの、あんた!!!」

 

 部屋を出て行こうとするゾロの腕を、ナミ、慌てて掴んで、部屋の中央に連れ戻す。

 

「何でいきなり強姦になっちゃうのよ!!」

「俺は限界なんだっつってんだろうが!!」

「だからって強姦はないでしょ!」

「アイツが掘らせてくれっつって、はいどうぞなんて掘らせてくれるわけねぇだろうが!」

「だから何でいきなり“掘らせてくれ”なのよ!ふつーは“好きだ”とか“惚れた”とか、告白からでしょう?」

 

 一瞬、間。

 

「あァ? “惚れた”? 誰が?」

 

 ゾロの言い方にナミが息を呑む。

 

「………好きなんでしょう? サンジ君の事。」

「あァ? やりてえっつう話だろ、何で惚れたとか言う話になる。」

「はあああ?!」

 

 ナミ、思いっきりバカにしたように。

 

「あんた、サンジ君のこと、強姦しそうなほど切羽詰ってるのよね?」

「ああ。あいつがエロいのがいけねぇ。」

「クルーの中で一番サンジ君がエロいカッコしてると思ってるのよね?」

「エロすぎんだろ、ありゃ。」

「女が二人も乗ってるってのに、サンジ君のお尻にしか目がいかないのよね?」

「コックのケツはエロいんだ。」

「そんなになるのはサンジ君だけなのよね? あたしでもロビンでもないのよね?」

「お前やロビンよりコックの方がエロいからな。」

 

 ナミ、ため息をつく。

 

「……………………あんた、バカ?」

 

 心底あきれた顔。

 

「うるせぇな、何でだよ!」

「なんでそこまでサンジ君しか目に入ってないのに惚れてないと思ってんのよ!!」

「だからなんでそこで惚れたっつう話が出てくんだよ、わけわかんねェ!」

「わけわかんねェのはあんたの頭よ!!」

 

 睨みあう二人。

 

「…………いいわ、わかったわ。じゃあ言い方を変えてあげる。」

 

 ゾロ、なんなんだよ、という表情。

 

「“キスは好きじゃない”って言ってたわね、さっき。」

「あ? …おう。」

「サンジくんだったらどう?」

「…あァ?」

「あんたたちよくケンカしてるじゃない。サンジ君の方があんたより舌が回るから、よくやりこめられてるわよね。ちょうどいいじゃない、口塞ぐのに。」

「…………そう…だな。」

「あんたの口でサンジ君の口塞いじゃえば、うるさくないわよね。」

「…………いい考えだな。」

「キスは好きじゃないんじゃなかったの?」

「………や、コックなら平気みてェだな。むしろ……。」

「あっそ。」

 

 あーばかばかしい、という顔のナミ。

 

「でも強姦するんでしょ?」

「あ?」

「強姦にキスは必要ないわよね。」

「…そう…か?」

「だって強姦でしょ。暴力だものね。」

「…………。」

「いつするのかしらね。ああ、みんなが寝静まった後がいいから、今なんておあつらえ向きね。」

「そうだな。」

「あんたがここから出ればロビンが帰ってくる。そしたらラウンジはサンジ君だけだもんね。」

「そうか。」

「あんたがラウンジに行く。サンジ君はきっとキッチン片付けてるわね。」

「そうだな。」

「あんたをチラッと見て、“なんだ、酒か?”かしら?」

「“酒なら一番上の段のを持って行け”だな。」

「ふーん。サンジ君はあんたの好きな酒はちゃんと一番上にキープしてあるんだ。」

「そういうわけでもねェだろ。」

「そういうわけでしょ。サンジ君がどれだけ厳密にお酒管理してるか知らないの? サンジ君が“一番上の段持ってけ”って言ったんなら、一番上には全部あんたの好きな酒だけがあるはずよ。」

 

 ゾロ、やや動揺を見せる。

 

「まあでもそんな事はどうでもいいわね。あんたはこれからサンジ君強姦するんだもんね。」

 

 うろたえる様子を見せるゾロ。

 

「まずどうしようかしら。足払い? それとも頭掴んで床に押し倒す? サンジくん、頭もちっちゃいもんね。あんたなら片手で鷲掴みに出来そうよね。」

 

 思わず自分の手を見るゾロ。

 どこか焦った様子。

 

「当然サンジ君は足を使ってくるから、足を封じなくちゃね。ラウンジには縛るものなんてないから、どうする? 折っちゃう?」

「………折……る……?」

「サンジ君だもの、そのぐらいしないと押さえ込めないわよ?」

「………っ……」

「ああ、それとも手を人質にとるのもいいわよね。あんたの刀でサンジ君の手を斬るぞって。」

「あいつの……手を……斬る?」

「手を人質にすればサンジ君はおとなしくなるかもよ? まあその後は嫌われるかもしれないけど強姦するんだもの、どっちみち嫌われるからいいわよね。」

「…………」

「首尾よく押し倒したら次は服よね。サンジ君、着込んでるから脱がすの大変よね。ああ、でも突っ込めばいいんだから、上半身はいいか。脱がさなくても。」

「…………」

「上はねー、脱がしてもサンジ君、男だもんね。おっぱいあるわけじゃないし。乳首もきっとちっちゃいわよね。色白だからねー、乳首の色もうっすいんだろうなあ。」

「……ピンクだ。」

「…何で知ってんの、あんた。」

「アラバスタの風呂で見た。」

 

 ナミ、唖然とする。

 

「あんた、お風呂でサンジ君の裸見て欲情してたんだ?」

「そんなこたねぇ。ただ…あんまり白いから…ちっとびっくりしてただけだ。」

「ふーん。でも今回は舐め回したくても諦めてね。強姦しなきゃなんないんだから、いちいち優しく舐めてる余裕はないから。」

「…………」

「上半身は諦めるとして、ズボンは脱がしちゃえばいいから簡単よね。脱げない時は刀で斬っちゃえば。」

「…………」

「脱がせたズボンで足縛っちゃえば一石二鳥だわね。あんたのだーい好きなサンジ君のエロいお尻も堪能できるしね。」

「………そうだな。」

「でも強姦だし、慣らしてる暇はないから、お尻の穴に指突っ込んでてきとーに広げたら、一気に挿入。」

「……いや…それは…痛ェだろ……。」

「優しい強姦がどこにあるのよ。」

「……そんな…無理に挿れたら…ケツ裂けねェか…?」

「裂けちゃうでしょうね。でも強姦だから。裂けた方が血がいっぱい出て姦りやすいかもしれないわよ。」

 

 信じられない、という目でナミを見るゾロ。

 

「お前……仲間相手によくそんな……。」

「何言ってるの。するのはあんたでしょ。」

 

 ゾロ、絶句。

 

「好きなだけ強姦して満足したら、サンジ君はそのまま放っておけばいいわ。どれだけお尻裂けちゃってても、足が折られてようと手が斬られてようと、放っておいて大丈夫。」

「そ…んな状態のコックを放っておく…のか…?」

「じゃどうするの? 強姦しといて甲斐甲斐しく手当てするの? 大丈夫よ、サンジ君はプライドにかけて自分の事は何とかするはずよ。痛かろうが辛かろうが、ラウンジを綺麗に掃除して、何の痕跡もなかったようにして、自分は辛い体引きずってお風呂に行って、あんたが中出しした奴を自分でかきだして、翌日には平気な顔をしていつものサンジ君でいてくれるわ。例えどんなに歩くのもしんどいほどだったとしてもね。あんたのしでかした事は誰にもバレない。ルフィにもね。」

 

 うろたえて、落ち着きがなくなるゾロ。

 明らかに挙動不審に部屋を歩き回ったりしている。

 ルフィの名前が出たときには思わず全身を硬直させる。

 

「………………強姦ってそういうものよ、ゾロ。」

 

 静かに言うナミ。

 呆然と立ち尽くしていたゾロ、やがて、脱力したように女部屋のソファに座り込む。

 空を仰いで顔を覆う。

 その様子を見ていたナミ、バーカウンターに行き、グラスに酒をついで戻ってくる。

 ゾロにそのグラスを差し出す。

 ゾロ、受け取り、一気に呷る。

 

「……強姦はしねェ………。」

 

 ぽつんと言う。

 

「そう……。」

 

 沈黙。

 ゾロは背もたれに背を預けて片手で顔を隠している。

 かなり落ち込んでいる様子。

 

 ほんっとしょうがないなあ、と言う感じにため息をついて苦笑するナミ。

 

「じゃあ、今度は違うことを想像してみましょうか。」

 

 ゾロ、心底嫌そうな顔をナミに向ける。

 もういい、という素振り。

 ナミ、それを完全に無視。

 

「例えば。あんたがルフィに出会わなかったとして、海賊にはならなかったとする。」

「…あァ?」

「海賊になろうがなるまいが、あんたは大剣豪を目指すはずよね?」

「そうだな。」

「旅をするとしても拠点は必要よね。メリー号みたいな。」

「…そう…か?」

「おうちを建てましょう。」

「あァ? なんで俺が…」

「いいから! 想像する! あんたのおうち!!」

「…したぞ。それがなんだ?」

「強い奴らと戦って、疲れて帰ってくるわね。」

「…ああ。」

「疲れて疲れて、やっと眠れる、と思いながらあんたはおうちに帰る。」

「…ああ。」

「おうちのドアを開けると、お嫁さんが“おかえり”って言って出迎えてくれる。」

「あァ?」

「いいから! お嫁さん! 疲れたあんたが帰ってきて真っ先に見る顔!!」

「…………」

「お嫁さんは、お部屋の中をあったかくしてくれていて、ご飯を作ってくれてるの。」

「…………」

「あんたが帰ると、笑って出迎えてくれて、“お風呂が先? ご飯が先? それともあ・た・し?”」

「なんだ、そのベタな新婚家庭は。」

「いいわねぇ、新婚! 思わずあんたはお嫁さんをぎゅっと抱きしめる。お嫁さんもあんたをぎゅっと抱き返してくれる。二人はご飯もそこそこに玄関先で熱いキス…。」

「するか、ばかばかしい。なんで俺とコックが玄関先でいちゃつかなきゃいけねェ。飯が先だろ、普通。」

 

 ナミの口角が上がる。

 魔女の笑み。

 

「ゾロ。」

「なんだよ。」

 

「あたし、お嫁さんがサンジくんだなんて一言も言ってないけど。」

 

 ゾロ、愕然。

 

「そ…れは、今までさんざんコックの話してたから、そういうつもりなんだろうと…!」

「ふーん。」

 

 にやにやするナミに、ゾロは露骨に憤然とした様子。

 

「じゃあ、別にサンジ君をお嫁さんにしたかったわけじゃないのね?」

「当たり前だろうが。男だ、アイツは。」

「でもその男を強姦したいと切羽詰るほどなんでしょ。女のあたし達でなく。」

「それはアイツがエロいからだっつってんだろうが。」

 

 またあきれたような顔をするナミ。

 

「そんなにエロいかしらねぇ、サンジ君。」

「お前は鈍感なんだ。あいつのエロさは尋常じゃねェぞ。」

「そうなんだあ。じゃあ他にもサンジ君に懸想してる男がいるかもしれないわね。」

「ああ?」

「サンジ君、女の子には紳士で変な事出来ないし、男嫌いとか言いながら人懐こいから、本気で口説く男が出たりしたら案外簡単によろめくかもね。」

「……………」

「中にはあんたみたいに姦りたいだけじゃなく、サンジ君とそれこそ恋人同士になりたい奴もいるかもしれないし。」

「……あほか。あんなアホコック、姦り捨てられるのがオチだ。」

「あんたを筆頭にね。」

「……………」

「サンジ君は、すっごく身内に対しては甘いでしょ。メリー号のみんなをとっても大切にしてくれてる。」

「…そうだな。」

「仲間ですらそうなんだから、だから恋人が出来たら、その人をすっごくすっごく大切にしてあげると思うのね。」

「…ラブコックだからな。」

「恋人が例え男でも、サンジ君は同じだと思うの。」

「……………」

「まあ、あたし達にみたいなメロリンはしないと思うけど、きっと大切にしてくれるのは変わらないわね。」

「……………」

「きっと傍で幸せそうに笑ってくれると思うのね。」

「……………」

「恋人を幸せにしようと頑張ってくれて、自分も幸せになっちゃうと思うのね。」

「……………」

「サンジ君は甘いから、例えばあんたが、正直に“本気で切羽詰ってるから姦らせろ”って言えば、意外とやらせてくれるかもしれないわよ。」

「……………」

「でもそれは、サンジ君を傷つける行為だと思うわ。」

「……………」

「サンジ君は、相手が男でも女でも、“体だけ”って無理だと思う。」

「……………」

「あんたは? そういうサンジ君と、本当に“やりたいだけ”なの? 本当に?」

 

 ゾロ、答えない。

 俯いていて顔も見えない。

 

 長い沈黙。

 

 やがて大きくため息をつく。

 

「……………………ナミ。」

「なぁに?」

「………俺の負けだ。」

「何が?」

「………体だけとか…たぶん、俺も無理だ。」

「そう。」

「………コックとしかやりたくねぇ。コックにしか勃たねェ。嫁を想像すりゃコックの顔だ。コックしか浮かんでこねェ。他の奴が俺が見てるみてぇにコックを見てるのかと思ったら誰彼構わず斬り刻みたくなった。コックを姦りたくて切羽詰ってるが、コックが……」

 

 ゾロ、一瞬つまる。

 

「もし、コックが、俺の傍で幸せそうに笑ってくれるんなら………………………………コックとやれなくたっていい。」

 

「それってどういう意味なのかしら。」

 

「………俺はコックに惚れてる。」

 

「やっと出たわね。」

 

 ナミ、ほっとしたように笑う。

 ゾロも薄く笑って、ソファを立つ。

 

「夜遅くに邪魔した。」

 

 ドアに向かう。

 

「どこ行くの?」

「仕方ねェからコックに告ってくる。まあ、だめだろうけどな。」

 

 だめだろうと言いつつゾロの顔は明るい。

 ドアノブに手をかけようとするのをナミが呼び止める。

 

「ゾロ。」

 

 ゾロ、振り向く。

 

「あたし、あんたに、一つ告白しなきゃならないことがあるの。」

「何だ?」

 

 ナミ、部屋の隅のクローゼットに向かう。

 

「ここにサンジ君、いるのよね。」

 

 クローゼットの扉を開ける。

 中に真っ赤な顔をしたサンジが座っている。

 ゾロが目を見開く。

 

「………………よう。」

 

 片手を挙げて、ゾロに気まずそうに挨拶するサンジ。

 ゾロ、絶句したまま。

 

「そんなわけで、あたしはしばらくラウンジに行ってるから。まあ今日はロビンとラウンジで寝てもいいし。」

 

 ナミ、すたすたと早足で部屋から出て行く。

 後に残されるゾロとサンジ。

 

 気まずい。

 

 決まり悪そうにクローゼットから出てくるサンジ。

 

「………何で………。」

 

 小さく呟くゾロ。

 サンジ、気恥ずかしさを隠すためにかタバコを咥える。

 火をつけようとマッチを取り出して、女部屋であることを思い出し、マッチをしまう。

 タバコは咥えたまま。

 

「ナミさんに呼び出されて、この中入ってろって言われてた。」

「………ナミの奴…。」

 

 舌打ちするゾロ。

 

 サンジ、ゆっくりと部屋を横切り、ソファに腰を下ろす。

 それを目で追うゾロ。

 

 すぐに開き直ったように、ゾロは大股でサンジに近づく。

 近づくゾロの気配にびくりと顔を上げるサンジ。

 尊大な態度のゾロ。

 

「聞いたとおり、俺はてめェに惚れてる。諦めて俺に掘られろ。」

「何言ってんだ、てめェ!!! さっきと言ってっこと違うだろうが!!!」

 

「さっき?」

「俺が隣で幸せそうなら犯れなくてもいいとか言ったじゃねぇか!! うっかり感動したさっきの俺はバカか!!」

「ああ。」

「ああ、じゃねぇよ!!」

「さっきは確かにそう思ってたんだが、実際にてめェ目の前にしたら、“姦らせろ”つっとくのもありかと。」

「なんで“あり”になっちゃうんだよ!!」

 

「…………俺の隣でてめェが幸せそうに笑う、なんてな、どう転んでもありえねぇだろうが。」

 

 ゾロの言葉にサンジ息を呑む。

 

「てめェの答えなんざ百も承知だ。だから一回だけでいいから犯らせろ。そしたら諦める。」

 

 唖然としたようにゾロを見上げるサンジ。

 

「………あの……なあ、ゾロ……。」

「なんだ。」

「………何でナミさんが、俺をクローゼットに隠してたと思う?」

「あの魔女の考える事なんか俺が知るか。」

「ナミさんを魔女とかいうんじゃねぇって。…ナミさんはなー、俺の秘密を知ってたからだよ。」

「なんだ、てめェの秘密ってな。」

 

 サンジ、困ったように一瞬笑い、すぐに目を伏せ、またゾロを見上げる。

 ためらうような間。

 

「………俺が、ワインラックの一番上の段に、惚れた奴の好物の酒並べてる事だよ。」

 

 ぽかんとするゾロ。

 

 沈黙。

 

「……ずいぶん…前から一番上の段…は俺の酒…だったよな…。」

「……そうだな。」

「……そんなに…前から、そう…だったのか?」

「……あー、まあな。ちなみにナミさんには速攻でバレてた。」

 

「……マジでか。」

「……マジだな。」

 

 はあーっと大きな長いため息をついて、サンジの隣に腰を下ろすゾロ。

 

 間。

 

 何となくお互い顔を見合わせる。

 苦笑。

 ゾロがサンジの首に手を回して引き寄せる。

 

 長いキス。

 

「………やっぱやらせろ、てめぇ。………強姦じゃないやつ……。」

 

 言いながら、ゾロ、サンジをソファに押し倒す。

 サンジ、思わず笑いだしてゾロを抱きしめる。

 

 

 

 暗転。

 

終幕

2007/02/10

 


【千腐連コメント】

フカ:サンジ、隠れてたのね。w
玉:これね、洗濯物干してる最中に思いついて30分くらいで書いた
きぬ:これもやっぱりゾロが馬鹿ですね
きぬ:おばかさん、て感じか
玉:バカですね
フカ:やっちゃえ、って思うところがさ。獣よね
玉:ばかっていうか、ナミさんに丸め込まれてますね
きぬ:鈍感でおばかさん、と言えば聞こえはかわいいけど
きぬ:ヤっちゃえって思うあたりが魔獣
フカ:このあと、どんだけナミさんに借金増やされるかがみもの。(笑)
きぬ:ナミさんが軌道修正してくれなかったら、今頃…(ガクガクブルブルですよ
玉:ガクブルですね
きぬ:血で血を洗う戦闘状態でしたね
きぬ:でも、クローゼットの扉を開けた瞬間のサンジのかわいさといったら
きぬ:もうそのままフィギュアとして売り出したいぐらいですね
フカ:フィギアー!!
玉:えへっ♪って。クローゼットの中で。
玉:やあ♪って
きぬ:そりゃあ、ゾロの息子だってビッキビキですよ
きぬ:ズボンの腹んとこから、えへっ♪やあ♪って顔出しますよ
きぬ:おさまりきれませんよ
玉:まあお下品
きぬ:クローゼットの奥に押しつけてヤっちゃってもかまいませんよ
きぬ:ナミさんの服にシミがついちゃうかもしれませんけど
フカ:ナミさんに冷静にドアを閉められちゃうのね
フカ:当然、借金上乗せですね。
きぬ:クローゼットが揺れる
きぬ:倒れる
きぬ:破壊される
きぬ:そしてナミさんに怒られる(笑
玉:当然ロビンちゃんは見てます(笑)
きぬ:うふふ、って<ロビンちゃん
フカ:シミひとつにつきいくら、って絞りとられますね。
フカ:いちいち匂いかいで、確かめられたりして。w
きぬ:でもほら、サンジはがまん汁が多いってのが定説だから<シミひとつにつきいくら
フカ:かわいいわね、って笑うんだわ。>ロビンちゃん
きぬ:匂いかぐのもチョッパーに任せるナミさん
きぬ:「なんであたしがそんなもん嗅がなくちゃいけないのよ」って
きぬ:わかいわね、って言うんだわ>ロビンちゃん
フカ:もったいないわ!私なら喜んで嗅ぐのに!!>サンジの、、、
フカ:ゾロのはいらない。って区別つかないか。(笑)
きぬ:シャツに鼻つっこんで体臭は嗅ぎたいけど、シミの匂いは嗅ぎたくない
玉:嗅げよ、そこは
フカ:くんかくんか
きぬ:ふんかふんか

 


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