ガコンッ!!
初号機がカタパルトで地上に出た音である。
初号機の前およそ数百mには深緑の使徒がすでに待機していた。
EVAサイズで言ったらこの距離はかなり近い。
こんな所にいきなり出すミサトの正気を疑うが、それでも使徒は攻撃してこなかった。
・・・・・・・・・意外と律儀なやつである。
発令所が静寂に包まれる。
太公望もタオルで頭を拭きながら使徒の様子を凝視していた。
人類の運命を分かつ最初の戦いがいよいよ始まるのだ。
「シンジ君、準備は良い?」
双方向回線に向かって確認するミサト。
そしてこの初号機の当のパイロットと言えば・・・・・・・・・
「ZZZzzz・・・・・ムニャムニャ・・・・うみゅ・・・・・・」
・・・・・・・泥酔して熟睡していた。
ズコッ!!
緊張に包まれた発令所の雰囲気が一気に崩れ去る。
オペレーターの皆様方が一気に椅子からコケた。
「起きんかコラァ!!」
「あきゅっ!!」
双方向回線からミサトの怒声が響き、シンジはビクッと身を震わせた。
どうやら目を覚ましたようだ。
「シンジ君、準備は良い? 寝てるとほんとに死ぬわよ!?」
「うみゃ・・・・・・おい〜〜っすぅ。」
寝ぼけ眼をこすりつつ、緊張感の無い声で返事をするシンジにミサトは深い溜息をついた。
「・・・・・・・最終安全装置解除、EVANGELION初号機リフトオフ!!」
気を取り直してミサトが声高らかに叫ぶ。
その声に反応して、初号機の肩を固定していた拘束具が音を立てて外れた。
人類VS使徒。
この二つの命運を分かつ最大級の戦争の火蓋が切って落とされたのである。
仙界伝封神演義異聞奇譚 来視命縛幻想記 第五回 必殺、泥酔八仙拳!! |
「シンジ君、まずは歩いてみて。」
あんまりといえばあんまりな指示を出すミサトにシンジは少々表情をゆがめる。
「敵のまん前に出しといて歩けは無いんじゃないですかぁ〜?」
呂律が回っていない口調で顔を赤らめながら抗議するシンジ。
その台詞にミサトのこめかみに血管が浮かぶ。
「良いからとっとと歩かんかいっ!!」
泥酔している人間に正論を言われれば、人間誰でもムキになるものだ。
それはミサトとて例外ではなかったようだ。
「へぃへぃ、わ〜かりましたよ〜〜んっ・・・・・っと。あっるけ〜〜、れっつらご〜〜。」
シンジめんどくさそうな呟きに呼応して、初号機は大地にその一歩を踏み出した。
ただし、千鳥足で、だが。
こんな足取りをしていれば、当然足をもつれさせる。
ズデンッ!!
初号機はそのまま自分の足につまずいて地面さんと熱いキッスをかわした。
「ありゃりゃ〜? 世界が回って見えるのら〜?」
完璧にへべれけになっているシンジに発令所の皆様方は真っ青になる。
これで俺たち(私達)の人生終わっちゃうの?
思考はこんな所だろう。
もっとも、某変態グリズリーさんや太公望は平然としているが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その様子をじって見ていた使徒は、ゆっくりと右腕を初号機に向けた。
何か申し訳なさそうな雰囲気がうかがえる。
さすがに泥酔しているような存在に攻撃を加えるのは気が引けるようだ。
しかしこれは一応命運をかけた戦いなのである。卑怯と言われたって手段を選んで入られないのだ!!
・・・・・・っと、使徒は自己完結して開き直った。
もし言葉が喋れるのなら、
「悪いけどコレ、戦争なのよね!!」
と、ビグ○ムに突っ込んだス○ッガーさんみたいに呟くだろう。
・・・・・・・・アディオス、我が永遠のライバルよ。
そんなノリで、使徒は光り輝くパイルを初号機の頭めがけて打ち放った。
「シンジ君、よけてぇ!!」
まだなれもしていない人間にそりゃあ無理だろな感じのミサトの怒号が響く。
そして光のパイルは初号機の頭をつらぬ・・・・・・・・・
くねっ♪
ズガアアアアアアアン!!
・・・・・・・かなかった。
体をクネッとくの字に曲げて、使徒の攻撃をかわしたのだ。
「よ、よけたの!?」
ちょっと・・・・・っと言うかかなり不恰好な格好でよける初号機の姿に唖然としながら呟くミサトの横で、
太公望は微かにほくそえんだ。
「・・・・・・・・やっとやる気になりおったのう・・・・・・・・・」
モニターにフラフラしながら立ち上がる初号機の姿が映る。
「だ、大丈夫なの!?」
「ま、シンジのやる気次第というとこかのう。めんどくさがって寝てしまったらわしらは全員あの世行き。」
太公望の呟きを捕らえていたミサトの質問を気だるそうに答える。
「まあ大丈夫だとは思うが・・・・・・・わしの変な所が移ったのか
かなり怠け役になってしまったからのう、シンジは。
それでもシンジの実力は保証するよ。」
そう言ってモニターを見る太公望の瞳には、フラフラしながら構えを取る初号機が映っていた。
何だコイツ? 何だコイツ? 何だコイツ? 何だコイツ?
初号機の奇妙な動きに、眼をパチクリさせながら使徒は思考の渦にとらわれる。
それもそのはず、目までへろ〜と垂れてしまっている初号機がフラフラしながら構えをとって、
ちょいちょいと指で手招きしているのだ。
・・・・・・誘ってるの?
どう見てもそうとしか思えない初号機の動き。
しかしその足元はまだふらついていて、動くたびに道路にヒビを入れている。
頭にネクタイ巻いた姿がものすごく良く似合っていると言っても過言ではない初号機の挑発に、
当然使徒はムカッと来た。
キュピ〜ン!!
突然使徒の瞳から光の束が打ち出される。
くねっ♪
ズガアアアアアン!!
再び体をくねらせ、使徒のビームをよける初号機。
目標を失ったビームは、地面に激突して十字型の火柱を上げた。
そのまま初号機は隙の出来た使徒の懐に大きく踏み込む。
「破っ!!」
シンジの掛け声と同時に、初号機がふらついたまま回転して連撃を打ち込んだ。
ドガガガッ!!
いきなりの高速回転による裏拳と肘撃ちが一気に使徒のコアを襲う!!
さらにその回転のベクトルを変えてクルリと空中を一回転。
そのまま強烈な二つの踵を使徒の脳天に落とした。
ゴンゴンッ!!
めちゃめちゃ痛そうな音が二つ、辺りに響く。
さらに水面蹴りで使徒の体を浮かせた後に、強烈なローキックを顔面(?)に見舞った。
ズガアアン!!
使徒の体が思いっきり吹っ飛ばされてビルに叩きつけられる。
「・・・・・・・・・・・・・マジっすか?」
その様子をモニターで見ていたミサトがあんぐりと口をあけた。
やはり今でも初号機の千鳥足は続いている。
「泥酔拳。わしの得意技の一つをシンジに教え込んだのだ。飲めば飲むほど強くなる。
仙桃を持ち込んだのが良かったようだのう。あやつは泥酔拳を自己流で発展させてしまったし。」
顔をポリポリ掻きながら太公望はそう言った。
「師父より受け継ぎさらに練り上げた必殺拳。
仙桃を食えば食うほど、酔えばようほど二乗二乗に強くなる・・・・・名付けて、泥酔八仙拳!!
酒がこの世にある限り、僕に敵は居ないのだぁあああ!! か〜かっかっかっか!!」
双方向回線から聞こえるシンジの笑い声。
モニターにはまだ下半身に溜まっている酒を手ですくって飲む姿がばっちりと映っていた。
使徒にしてみればこれ以上悲惨なことは無い。
泥酔している存在に吹っ飛ばされたのだ。情けないにも程がある。
やばい・・・・・こんなのにコテンパンにのされちゃったらママンに怒られる!!
実際にママンとやらが居るかどうかは解らないが、使徒の思考はこんな所だろう。
こんな奴、早くやっつけてお兄ちゃんを助け出すんだぁ!!
使徒の瞳に光がともった。
カッ!!
両岸から光の束が無数にほとばしり、初号機に殺到する!!
くねっ♪ くねっ♪ くねくねっ♪
ズガ〜ン! ドガ〜ン! ドガズガ〜ン!!
体をくねらせてビームをよけ切る初号機の後方では、十字架型の火柱が次々に上がってゆく。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!! か〜かっかっかっか!!」
頭に金のコロネでも乗っけて隣に透けてる人型の物体でも置いたら非常に様になる台詞を吐きながら、
体をくねくね曲げて使徒に突進する初号機。
その移動速度たるや尋常ではなく、
くねくねくねくね動きながら凄いスピードでサイドステップして、
それで居て千鳥足で移動している。
・・・・・・・・・考えてみて欲しい。
あの無表情な鬼の顔で柔軟に体をくねらせながら自分に高速で向かってくる初号機の姿を。
当然使徒の次の行動は・・・・・・・・
だずけで、おがあぢゃああああああああん!!!
怖いのが迫ってくるんだよおおおおおお!!!
ドドドドドドドドド・・・・・・・・・・・・
全速力で初号機から必死に逃げる事であった。
目からは溢れんばかりの涙が流れている。
当然と言えば当然の結果であろう。
これで恐怖に駆られない存在が居たらぜひ見てみたいものだ。
某変態グリズリーと世界恐怖選手権でワン・ツー・フィニッシュを決められる勢いである。
「逃がすかぁ!!食らえ、アイ○ラッガー!!」
シンジの叫びに呼応して、初号機の両手が額に伸びる。そして・・・・・・・
ポキィッ♪ ビュ〜〜〜ン・・・・・・・・・・・・サクッ♪
・・・・・・・・・・・・何が起こったかはあえて語るまい、効果音だけで十分に想像出来るだろう。
後に残ったのは両腕を前にしたまま技の余韻に浸っている何故か角の無い初号機と、
その角が何故か後ろから貫通されてコアから突き出ている、
逃げた体勢のまま倒れた哀れな使徒の姿であった。
その顔(?)は恐怖のまま凍りつき、目(?)からは涙の後が残っている。
こんなんじゃ死んでも死に切れない事請け合いだ。
ち〜ん、なんまんだぶ、アーメン、ラーメン、イカソーメン。
「・・・・・・・・・パターン青、沈黙。使徒の殲滅を確認しました。」
オペレーターが告げるその台詞に、誰もあり難がらなかったのは言うまでも無い。
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
暗い空間に満たされた広い一室。
一つのテーブルを囲み皆で会議したという円卓の騎士のごとく、
そこには各国の老人たちが近未来的なデスクを囲んでいた。
その中には某変態髭メガネ仕様グリズリー・・・・・・・・・失敬、
世界でトップ争いしそうなくらい怪しい組織の・・・・・・・・もとい、
国連の非公開組織NERVの総司令、碇ゲンドウの姿があった。
「忌むべき存在、仙道の出現。これは計画に無かったイレギュラー。
中国において神よりも高貴とされる存在、仙人。
しかも出て来た存在が伏羲、さらにサードチルドレンの師だとは・・・・・碇、この修正、容易ではないぞ。」
「左様。サードチルドレンの失踪をあえて探索しなかった事が仇となった。
最重要なサードチルドレンの精紳崩壊が至難の技となった事、探索を放棄した我々にも積がある。」
「しかし太公望、伏羲は始祖の1人。3千年前の戦いにおいて消えたはずだ。偽者の可能性は?」
「否。太極図と打神鞭の所持が確認されている。本物と見て間違いない。
しかし、それまで表はおろか、歴史の裏舞台にさえ3千年間名を聞かなかった。
その伏羲が出て来た理由・・・・・・・・・我々の存在と『アレ』に気がついたか?」
「・・・・・・・可能性は高いが正確には把握していないはずだ。
しかし現時点で最も危険視すべきは伏羲の存在に新仙界が気付く事。
もしそうなったら我々の計画が破滅しかねない。今のうちに伏羲の始末は出来ないものか?」
「おそらく、暗殺は可能であろう。しかし今はその時ではない。
伏羲はサードの精紳崩壊の生贄に必要だ。」
「・・・・・・・・・シナリオを練り直す必要があるな・・・・・・・・・」
「幸いサードのおかげで予算がかなり浮いている。
兵装ビルおよび道路と初号機の角の修理のみだ。シナリオの練り直しは容易だろう。
しかし・・・・・・・・・・碇よ。」
「・・・・・・・・・・・・なんでしょう?」
ここで始めてゲンドウが声を上げる。
バイザーをした老人がゲンドウの反応を見て溜息をつきながら言葉を進めた。
「・・・・・・・・・・・・初号機の角、本当に直す必要があるのか?」
「アレがなければただの紫な参号機です。」
即答するゲンドウにまたもやバイザーの老人が溜息をついた。
「・・・・・・・・・・・・・・まあ良い。予算については一考しよう。」
「ありがとう御座います。」
「情報操作はどうなっている?」
「ご安心を。すでに対処済みです。」
「そうか・・・・・・・それではこの後は委員会の仕事だ。ご苦労だったな、碇。」
そう言って、老人たちの姿がどんどん消えてゆく。
どうやらホログラフィーだったようだ。
そして最後にバイザーの老人が残る。
「碇・・・・・・・後戻りは出来んぞ。」
そう言った後に、老人も鈍い電子音を残して消え去った。
「・・・・・・・・・・・・解っている。もう私たちには時間が無いのだ。
シナリオの練り直しを早急に行わねばならない・・・・・・・・・」
そう呟いて踵を返したゲンドウは、そのままその部屋を後にした。
ただいま大スランプ突入中。こんな量の少ないものも4日かかりました。
電波がぜんぜん来ないのです。何時もはネタとかが電波に乗ってキュピ〜ンと来るのに・・・・・・・
戦闘シーンもひどい事この上なかったり。
泥酔拳やる時点でギャグになってるもんなあ・・・・・・・・面目ないです。
ちなみに最後の委員会の会議の内容は
この後へ続く太公望の行動と使徒の正体の伏線となっていきます。
更新、最近遅いですが見限らないで見てもらえると幸いです。
それでは、感想お待ちしております。
以上、アンギルでした。
よく、4日で書けますね、アンギルさん…。俺なんてぶつぶつ…。
>「・・・・・・・・・・・・初号機の角、本当に直す必要があるのか?」
>「アレがなければただの紫な参号機です。」
いったい、碇司令あなたは何者ですか!?
「・・・・・・・・・・・・・・まあ良い。予算については一考しよう。」
それにゼーレの皆さんも冷静に了解しないでください(汗)
もう、どこからどう見てもギャグ小説になってるこのアンギルさんの作品に感想メールを!
アンギルさんの作品はご自身のホームページであるWing of Seraphimで読めます。
今、飛べば10万アクセスをGETできるかも知れません!