第3話「日高君」

俺は,そのホモだと言う日高君にまずは、率直な意見を聞く事にした。人気の無い喫茶店に事情を正直に話して誘う。

内緒で、偶然をよそおって,隣にレイちゃんにも喫茶店に言ってもらう事にした。もしかしたら今回の依頼の切り札になるかもしれない。

「で、そう言うわけで,お母さんのほうは心配してるんだが,君は率直にどう思ってるんだい?」 

「と、言われると?」

「日高君が、お母さんが、ホモをやめて欲しいと思うのは迷惑なのかって事だよ。」

「そうですね・・・。」

さすがに、母親の事を悪く言うのはためらうのか、日高君は口をにごす。

「ここで聞いた話しは誰にも言わないよ。・・・お母さんにも、その辺は言ってあるからね。」

隣の席ではレイちゃんがこの前、別の店でも頼んだショートケーキをほおばっていた。どうやら、けっこう気に入ったようだ。

「・・・はっきり言って、うっとおしいです。僕は鈴村の事が好きなんですから、構わないじゃ無いですか。」

しばらく、日高君は口を閉ざし、言葉をまとめて,再び話し始める。

「別に万引きやってるわけじゃないし・・・人に迷惑掛けてませんから。」

やっぱり、こう来たかぁ。・・・今じゃ、ホモやレズの偏見を無くそうって事で運動も盛んになってるし、反論のしようがないからなぁ。

・・・参ったぁな。仕方ない、ここはもっと日高君の考えを聞くとするか。

「じゃあ、鈴村君との関係はこのまま進めるつもりなの?」

「はい、僕はあいつの事、好きですから。」

「じゃあ、女の子に興味は無いわけ?ほら、あそこにかわいい女の子がいるけど?」

俺はレイちゃんに、ピースして合図を送った。レイちゃんは、日高君の方を向くと、にこっと微笑む。とりあえず、笑顔作戦は成功だ。

「別に興味もてないんです。女なんて・・・。なんか生意気で。」

あっ、それはちょっと言えてるかも・・・。ここで無理に反論しても日高君の信頼、損ねるだけだな。俺の負けだな,こりゃ。

「まぁ、できたら、この本読んでくれると嬉しいなぁ。じゃあね。」

「えっ、もう終わりなんですか。てっきり、まだ説得される・・・」

「日高君の考えが間違ってるなんて,俺に言う資格は無いよ。今は世の中、こういう関係認めなくちゃいけない方向に来てるしね。それじゃぁ。」

俺はジュース代だけ払うと,そのまま喫茶店を出ていった。お母さんには説得が失敗したことだけ伝えた。

「・・・もっとしっかりやってくださいよ。あなたプロなんでしょ!」

確かに新米とは言え俺はプロだ・・・。クライアントの依頼に答えられないでは、怒られても仕方ないだろうう。

その後も続いた強烈な文句に、俺は、ただひたすら、お母さんに謝る他無かった。

家に戻ると、さすがに気分が沈んでしまった。事実上の初仕事でいきなりカウンセリング失敗である。

レイちゃんは今日はEVAと言うロボットの訓練だった。俺も今日からはその訓練を見る事になった。

しかし、ずっとそのロボットに乗ってるだけのようで、シンクロとかハーモニクスとか、先輩達の言ってる事がわけわからん。

2時間もすると,今日の訓練は終わった。レイちゃんは疲れた様子で家に戻った。その日の夕飯。

「で、どうだった学校は?」

「・・・まだ、よくわかりません。でもあの先生の言ってる事間違ってます。」

「あの先生って誰?」

「担任の先生・・・。セカンドインパクトの原因は隕石の衝突じゃ無い・・・。」

セカンドインパクトと言うのは、2000年に世界的規模で起きた大災害の事で、その原因は隕石のはずなんだが・・・

「えっ、それってどういう事?」

「・・・セカンドインパクトの原因はアダムとリリスだから。」

「アダムとリリス・・・レイちゃんそれって何?」

「使徒・・・。」

「使徒?・・・なんなのレイちゃん使徒って?」

「人間のもう一つの可能性・・・。」

「いったい、レイちゃん、そんな話しどこから・・・・・・、あっ答えないで!」 

先っきも言ったように、政府の公式見解によれば、2000年に起きたセカンドインパクトの原因は隕石の衝突とされている・・・。 

でも、それは政府の虚偽の報告だったって事か。レイちゃんは重要なパイロットだから,それを知ってたんだろう。

・・・と言う事は、この話しが漏れたら,殺されかねない。

「ね、レイちゃん、今の話しは二人だけの内緒にしといてね・・・。他の誰にも言っちゃダメだよ。」

「・・・分かったわ。」

レイちゃんは何故?と言う顔をしているが,とりあえずは了承してくれた。・・・まだ、死にたくないんだよ俺は。

次の日の放課後、日高親子が俺を訪ねて保健室にやって来た。どうやら、お母さんが無理やりひっぱって来たらしい。

「先生!この子、男同士でセックスまでしたって言うんですよ!もう、私は・・・。」

「別に言いじゃ無いか!好き同士なんだから。妊娠の危険も無いし・・・。」

いくらなんでも、それは俺もついて行けない・・・。しかし、日高君が間違っていると言う根拠はまったくないのであった。いや、待てよ・・・

「日高君・・・。男同士のセックスはまずいぞ。エイズになるかもしれない。」

「えっ、エイズ・・・。そんなだだの男女差・・・」

「いや、これにはしっかりとした科学的根拠があるんだ。男同士の・・・(以下、危ないので略します。ただこれは差別じゃなくて、科学的根拠はあるんですよ本当に)」

日高君、顔が青くなっていった。俺はかなり誇張して言ったが・・・、一応これは本当の事だ。だが、日高君これでも目げない。

「鈴村君は、浮気して無いから、そんな病気持ってるはず無いよ!僕は今のまま続けるからね。」

これも失敗か。正直,もうどうしようもないよなぁ、俺にも。あっ、待てよ・・・

「ところで、日高君、君バレンタインにチョコレート貰った事ある?・・・女の子に。」

「毎年3,4枚貰うけど・・・。」

「う、うらやましいなぁ・・・。俺なんか1個も、貰ってないぞ。」

「先生、もてないんですね。」

うぅ、日高君、俺はどうせもてませんよ!まあ、日高君は女の子にも、そこそこもてるようだ・・・。もったいない。

・・・だが、その後,俺はさんざんお母さんに怒られた上,強烈な親子喧嘩を見せられるのであった。

ああ、今日は酷く疲れた。男同士のセックス・・・・勘弁して欲しい。まったく俺に譲ってくれよチョコレート。

家に戻った俺は適当に料理を作って、レイちゃんとメシを食いながら会話する事になった。これ、だんだん日常の光景になっている。

「友達とか・・・できた?」

「・・・まだ、よくわからない。」

「そっか・・・。じゃあ、よく話しかけてくる子とかいる?」

「洞木さん。」

「ああ、確か委員長の。・・・で、今日の食事はどう?」

「おいしい・・・。」

まあ、何とか会話が成立するようにはなってきた。

さて、問題は日高君の方だよなぁ。今度はレイちゃんにちと手伝ってもらいますか。


後書き

本当に久しぶりの最新話です綾波レイ成長記。…まだまだカップリング希望受付中ですメール等でぜひどうぞ。 

<前原×レイ  シンジ×レイ  シンジ×アスカ>


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