俺は,そのホモだと言う日高君にまずは、率直な意見を聞く事にした。人気の無い喫茶店に事情を正直に話して誘う。
内緒で、偶然をよそおって,隣にレイちゃんにも喫茶店に言ってもらう事にした。もしかしたら今回の依頼の切り札になるかもしれない。
「で、そう言うわけで,お母さんのほうは心配してるんだが,君は率直にどう思ってるんだい?」
「と、言われると?」
「日高君が、お母さんが、ホモをやめて欲しいと思うのは迷惑なのかって事だよ。」
「そうですね・・・。」
さすがに、母親の事を悪く言うのはためらうのか、日高君は口をにごす。
「ここで聞いた話しは誰にも言わないよ。・・・お母さんにも、その辺は言ってあるからね。」
隣の席ではレイちゃんがこの前、別の店でも頼んだショートケーキをほおばっていた。どうやら、けっこう気に入ったようだ。
「・・・はっきり言って、うっとおしいです。僕は鈴村の事が好きなんですから、構わないじゃ無いですか。」
しばらく、日高君は口を閉ざし、言葉をまとめて,再び話し始める。
「別に万引きやってるわけじゃないし・・・人に迷惑掛けてませんから。」
やっぱり、こう来たかぁ。・・・今じゃ、ホモやレズの偏見を無くそうって事で運動も盛んになってるし、反論のしようがないからなぁ。
・・・参ったぁな。仕方ない、ここはもっと日高君の考えを聞くとするか。
「じゃあ、鈴村君との関係はこのまま進めるつもりなの?」
「はい、僕はあいつの事、好きですから。」
「じゃあ、女の子に興味は無いわけ?ほら、あそこにかわいい女の子がいるけど?」
俺はレイちゃんに、ピースして合図を送った。レイちゃんは、日高君の方を向くと、にこっと微笑む。とりあえず、笑顔作戦は成功だ。
「別に興味もてないんです。女なんて・・・。なんか生意気で。」
あっ、それはちょっと言えてるかも・・・。ここで無理に反論しても日高君の信頼、損ねるだけだな。俺の負けだな,こりゃ。
「まぁ、できたら、この本読んでくれると嬉しいなぁ。じゃあね。」
「えっ、もう終わりなんですか。てっきり、まだ説得される・・・」
「日高君の考えが間違ってるなんて,俺に言う資格は無いよ。今は世の中、こういう関係認めなくちゃいけない方向に来てるしね。それじゃぁ。」
俺はジュース代だけ払うと,そのまま喫茶店を出ていった。お母さんには説得が失敗したことだけ伝えた。
「・・・もっとしっかりやってくださいよ。あなたプロなんでしょ!」
確かに新米とは言え俺はプロだ・・・。クライアントの依頼に答えられないでは、怒られても仕方ないだろうう。
その後も続いた強烈な文句に、俺は、ただひたすら、お母さんに謝る他無かった。
家に戻ると、さすがに気分が沈んでしまった。事実上の初仕事でいきなりカウンセリング失敗である。
レイちゃんは今日はEVAと言うロボットの訓練だった。俺も今日からはその訓練を見る事になった。
しかし、ずっとそのロボットに乗ってるだけのようで、シンクロとかハーモニクスとか、先輩達の言ってる事がわけわからん。
2時間もすると,今日の訓練は終わった。レイちゃんは疲れた様子で家に戻った。その日の夕飯。
「で、どうだった学校は?」
「・・・まだ、よくわかりません。でもあの先生の言ってる事間違ってます。」
「あの先生って誰?」
「担任の先生・・・。セカンドインパクトの原因は隕石の衝突じゃ無い・・・。」
セカンドインパクトと言うのは、2000年に世界的規模で起きた大災害の事で、その原因は隕石のはずなんだが・・・
「えっ、それってどういう事?」
「・・・セカンドインパクトの原因はアダムとリリスだから。」
「アダムとリリス・・・レイちゃんそれって何?」
「使徒・・・。」
「使徒?・・・なんなのレイちゃん使徒って?」
「人間のもう一つの可能性・・・。」
「いったい、レイちゃん、そんな話しどこから・・・・・・、あっ答えないで!」
先っきも言ったように、政府の公式見解によれば、2000年に起きたセカンドインパクトの原因は隕石の衝突とされている・・・。
でも、それは政府の虚偽の報告だったって事か。レイちゃんは重要なパイロットだから,それを知ってたんだろう。
・・・と言う事は、この話しが漏れたら,殺されかねない。
「ね、レイちゃん、今の話しは二人だけの内緒にしといてね・・・。他の誰にも言っちゃダメだよ。」
「・・・分かったわ。」
レイちゃんは何故?と言う顔をしているが,とりあえずは了承してくれた。・・・まだ、死にたくないんだよ俺は。
次の日の放課後、日高親子が俺を訪ねて保健室にやって来た。どうやら、お母さんが無理やりひっぱって来たらしい。
「先生!この子、男同士でセックスまでしたって言うんですよ!もう、私は・・・。」
「別に言いじゃ無いか!好き同士なんだから。妊娠の危険も無いし・・・。」
いくらなんでも、それは俺もついて行けない・・・。しかし、日高君が間違っていると言う根拠はまったくないのであった。いや、待てよ・・・
「日高君・・・。男同士のセックスはまずいぞ。エイズになるかもしれない。」
「えっ、エイズ・・・。そんなだだの男女差・・・」
「いや、これにはしっかりとした科学的根拠があるんだ。男同士の・・・(以下、危ないので略します。ただこれは差別じゃなくて、科学的根拠はあるんですよ本当に)」
日高君、顔が青くなっていった。俺はかなり誇張して言ったが・・・、一応これは本当の事だ。だが、日高君これでも目げない。
「鈴村君は、浮気して無いから、そんな病気持ってるはず無いよ!僕は今のまま続けるからね。」
これも失敗か。正直,もうどうしようもないよなぁ、俺にも。あっ、待てよ・・・
「ところで、日高君、君バレンタインにチョコレート貰った事ある?・・・女の子に。」
「毎年3,4枚貰うけど・・・。」
「う、うらやましいなぁ・・・。俺なんか1個も、貰ってないぞ。」
「先生、もてないんですね。」
うぅ、日高君、俺はどうせもてませんよ!まあ、日高君は女の子にも、そこそこもてるようだ・・・。もったいない。
・・・だが、その後,俺はさんざんお母さんに怒られた上,強烈な親子喧嘩を見せられるのであった。
ああ、今日は酷く疲れた。男同士のセックス・・・・勘弁して欲しい。まったく俺に譲ってくれよチョコレート。
家に戻った俺は適当に料理を作って、レイちゃんとメシを食いながら会話する事になった。これ、だんだん日常の光景になっている。
「友達とか・・・できた?」
「・・・まだ、よくわからない。」
「そっか・・・。じゃあ、よく話しかけてくる子とかいる?」
「洞木さん。」
「ああ、確か委員長の。・・・で、今日の食事はどう?」
「おいしい・・・。」
まあ、何とか会話が成立するようにはなってきた。
さて、問題は日高君の方だよなぁ。今度はレイちゃんにちと手伝ってもらいますか。
後書き
本当に久しぶりの最新話です綾波レイ成長記。…まだまだカップリング希望受付中ですメール等でぜひどうぞ。
<前原進×レイ シンジ×レイ シンジ×アスカ>