3.〜出発〜
ずん
ずん
ずん
暗い森の中を黙々と歩いている一団。
がざっ
一人が望遠鏡で目的の地を見定める。
「あれだ・・・第三新東京市は。」
傍らの男もうんうんと頷いている・・・滂沱の涙を流しながら(^^;
「ううっ、遂にここまで来たんですね!」
「あぁ、そうだともゼーレ残党F!」
「Aの親方っ、あっしは嬉しいでやんす!
正月どころかクリスマスも返上して、山道を歩いた甲斐があったってもんですよね!!」
「はっはっは、Jよ、感動するのは解るがせめて鼻水と涎は拭こうな。
それに作戦はようやくスタート地点に立ったばかりだ。
気合入れるのはこれからだぞ!!」
「おお!」×25
この妙なテンションで盛り上がっているのはゼーレ残党の面々。
『ウナゲリオン』ことゼーレエヴァが倒され、その後展開されたゼーレ包囲網の目をかい潜って落ちのびていた者たちだ。
お互いをアルファベットで呼んでいるのは、誰かが捕まっても素性を知られないための対策だろう。
決して作者の気まぐれでは無い。
因みに作者は大嘘つきだ(^^;
彼らは対人戦闘においては無双の強さを誇る。
生けるモノリスと化したゼーレトップのジジィ共を護るのは、生半可な戦闘能力では務まらない。
それを見事にこなしていたのだから、強さの程は折り紙付きだ。
「それにしても・・此処まで長かったっすね・・・少佐。」
そこに草笛をフッと飛ばして呟く影。
「Rか。うむ、お前にも苦労をかけたな。
だがそれも今日までだ・・・・・・どちらに転ぼうともな。」
哀愁漂う雰囲気で渋く決める隊長A。
彼らは確かに強い。
が、惜しむらくは彼らの属する、いや属していた組織は今やこっぴどく嫌われている事だろう。
再びかつての栄光を取り戻すことは出来そうも無い。
しかし彼らはそれでも進む。
そう、『大儀』の為に(^^;
「えい えい おー!!」×26
☆
そんな事が起こっていようとは露ほども知らないシンジたち。
おせち料理も美味しくいただき、今は一息ついている所だ。
「えっと、レンはマナちゃんたちが迎えに来るんだよね。」
座椅子に座る自分にもたれ掛っているレンに聞くシンジ。
「そだよー。」
「昨日も言ったけど、僕らはNERVに行ってるからね。」
「うんっ。」
「アスミもちゃんとアルの事みてるのよー。」
「は〜いはい。」
アスカの注意にひらひらと袖を振るアスミ。
「(絶対面倒見るの逆になると思うけど・・)」
と、アルは思ったが言いはしなかった。
流石に人の家で騒ぎを起こすのは憚られるらしい(^^;
先程から少しの時間が経った頃
ピンポーン
「あら、お客さんじゃない?」
「そうみたい。」
アスカの言葉に玄関へと向かうレイ。
暫くすると可愛い女の子の声が聞こえてきた。
『明けましておめでとう御座います。』
『おめでーございます☆』
『あら、マナちゃんにマユミちゃん。
はい、明けましておめでとうございます。』
会話が聞こえるや否やレンはぱたぱたと玄関に向かっていった。
『はい、これお年玉。』
『わぁ〜い。あっ、レンちゃんおめでと〜♪』
『おめでとう御座います。』
『おめでと〜マナちゃんマユミちゃん♪』
程なく玄関のドアが閉まり、レイ一人が戻ってきた。
「3人とも仲良く行っちゃったわ。」
「あ、そうなんだ。上がってくれても良かったのに。」
「えぇ、私もそう言ったんだけど、早く行きたいからって。
なんでも富くじがどうとか言ってたけど・・」
「あーーー!!」
レイの最後の方の台詞に思い出したアスミ。
アルはアスミの飛び上がり具合に驚いてぶっとお茶を吹き出した(^^;
「どうしたんだい、アスミ?」
カヲルの問いにまくし立てるように言う。
「正午まで神社の催しで富くじやってるのっ!」
「あぁ、なるほどね。」
「危なく忘れるトコだった〜。
ほらアルっ、そうと解れば善は急げよ!!」
アルを引っ張り神社へと穂先を向けるアスミ。
「じゃ、いっくわよー!」
「ちょっと〜〜〜・・・・」
情けない少年の声を残して二人はハイスピードで出て行った。
☆
一方、国連会議に参加しているゲンドウとユイは
「シンジの奴はしっかりやっているのだろうか・・・・・・。」
議長の演説も上の空で聞いているゲンドウ。
隣に居るユイはただただ苦笑するばかり。
シンジにレンの写真を頼んではいるが、はっきり言って心配で仕方が無い。
本当ならとっとと第三新東京市に帰りたいのだが、一組織の責任者としてはそうもいかないのである。
『くっ、こんな事なら冬月を一生副司令にしとくんだったな。
こういう時に役に立たずに無駄に年金を貪りおって!』
本人が聞けば胸座を捕まれそうな事を心中に思っていたりする(^^;
因みに他のメンバーはというと
冬月先生:地元で家族とのんびり過ごしている。今年も餅を喉につまらせたとか。
赤木親子:科学者同士の新年の交流会に参加(参加目的の9割はリツコの婿探し(^-^;)。MAGIの管理は日本に来ているキョウコさんにお任せ中。
惣流=キョウコさん:孫二人に会いに日本に来ている。今日はMAGIの管理を受け持っている為本部に居る。
オペレーター3人組:年中無休、しかも出番少ない(Τ▽Τ;)
「明日は一緒に居られるんだから、気にしなくても良いんじゃない?」
対してユイは楽観的。
正月に会えないのは少々残念だが、だからと言って一生会えない訳ではない。
流石はエヴァに取り込まれただけのことはあり、心持ちが格段に違う。(^-^;
「とは言ってもな・・・」
「それより私としてはレンに直接お年玉を渡せなかった方が心残りね。」
ぎくっ!
「(汗)」
「?あなた、どうしたの?」
「い、いや・・・お年玉か・・・そう言えばそんな文化もあったな・・・」
額に嫌な汗を書き始めたゲンドウ。
ユイは旦那の挙動にピンときた。
「・・・もしかして、あげるの忘れたの?
私、あなたも別にあげるって言ってたから自分の名前しか書いてないわよ。」
この後ゲンドウはひたすら孫にお年玉をあげなかった言い訳を考える事になる(^^;
しかし、それすらこの後に起こる事件に比べれば些細なものだといえるだろう。
少なくとも子供たちにとっては。
4.〜ある屋台での遭遇・驚愕〜
鳥居をくぐった階段を仲良く歩いているのは、可愛らしい三人の女の子。
レンを挟んで左右に先ほどの友人二人がいる。
「ねーレンちゃん、宿題もうやった?」
赤地の振袖を棚引かせて言う、赤褐色の髪を持つ少女。名前を霧島マナという。
父親は戦略自衛隊において陸将の階級を持つ。
そして、極秘に開発されている陸上軽巡航艦『γライデント』のパイロット候補だったりもする。
「んーん。まだ残ってるよん。マユミちゃんは?」
今度はレンが反対側にいる子に問う。
「えぇ、全て終わらせておきました。
嫌は事は早めに済ませるのが一番ですから。」
そう言いニコッと微笑んだ彼女の名前は山岸マユミ。
詳細は、追って連絡(^^;
神社に入ると先ずは手水で手を洗う。
これは参拝する際の儀式なのだが、レンたちはそうとは知らない時から行っている。
小さい頃神社で遊んだときに手を洗っていたのが始まりで、以後その習慣がついたのだった。
正式な洗い方はマユミが後に二人に教えた。
手水舎に行くとちょうど二人の男が先客で居た。
彼らの名前はゼーレ残党TとI(^^;;
ぱちゃぱちゃ<手を洗っている音
「手筈はちゃんと憶えてるよな。」
「あぁ、ばっちりだ。」
ぱちゃぱちゃ
「ゼーレの底力、NERVに見せ付けてやらないとな。」
「そうだ。この一戦には『大儀』が掛かっている。」
拭紙でしっかり手を拭き、場を立ち去ろうと振り返ると三人の少女が居た。
「「(ギクッ!!)」」
が、その内一人を見て一瞬凍り付く。
言わずと知れた現代のファーストチルドレン、碇レンだ(^^;;
「?」
レンはレンで自分を見て冷や汗を掻く二人組みを不思議そうな顔で見た。
「如何いたしましたか?」
レンに代わってマユミが二人に問うてみた。
「い、いや・・・ま、待たせて済まなかったね」
「ど、どうぞ・・・。」
二人はそう言うと逃げるように去って行った。
「・・・ふぅ、危なかったな。」
それを遠くの山から観察していたゼーレ残党B。
傍らには仁王立ちのAが一人佇む。
『(ジタバタジタバタ)』
いや、よく見ると他にも数名転がって暴れている。
服装の型からしてネルフ保安諜報部の皆さまのようだ。
が、それには全く触れずにAとBの会話は続く。
「少しビビり過ぎだと思わんか、Aよ。」
「それ程この作戦に意気込んでいる証拠だろう。
ヘラヘラされる方が困るよ。」
「それはそうだが。」
「不安を持つより他にするべき事がある。
我々の最後の弓矢は放たれたのだ。もはや二本目の矢は放てん」
-「・・・そうだな。」
☆
参拝の順番を待っている三人。
いつも静かな神社も、今日ばかりは様子が違う。
「人いっぱいいるね〜。」
レンはそう言いきょろきょろ辺りを見回した。
目の前の行列だけでも数十人はいる。ひょっとしたら百人を越えているのかもしれない。
それに加えて左右両側にも、おみくじ場やらお守り売り場やらにワラワラと人が屯している。
ふと後ろを振り返るマナ。
「わっ、もー後ろにもいっぱい並んでる〜。」
つい先程、最後尾に並んだばかりなのに、今は前方の半分くらいの人数が列をなしている。
「お参りが終わったらど〜する?」
レンが二人に問い掛けた。
時間がありそうだったので、この後の予定を考える事にしたようだ。
「おみくじやりたい〜」
「ん〜、マユミちゃんは?」
「私は構いませんよ。
そう言えば、お二人は去年のおみくじはどうでしたっけ?」
その言葉に、レンとマナは同時に答えた
「「もちろん大吉☆♪」」
☆
「アスミ〜、ちょっと待ってよ〜」
そのころ惣流姉弟は、御参りもそこそこに神社周辺に出ている屋台を見て回っていた。
当然アルは荷物持ち(^^;、片手にたこ焼きやら綿菓子やらモロコシやらを抱えている。
アスミはそんな弟を引き連れ、尚且つ気に入った場所を見つけると持ってきたデジカメで己の美しい容姿を写させるといった具合だ。
「もうっ、ちゃんとキリキリ歩きなさいよねっ!」
「そ、そんな事言ったって〜・・・」
「泣きゴトを言わない!オトコでしょ!!」
そんな微笑ましい姉弟の戯れ(アスミ視点)を、草葉の陰から見据える二つの光。
ピッ
「・・・目標、発見しました。」
光の正体である双眼鏡をそのままに、隊長Aに連絡を入れる残党N。
『解った。只今13:22をもって第一段階に入れ。』
「了解。」
ピッ
☆
アスミとアルは、神社と背中合わせにある公園で休んでいた。
ま、休んでいるのはアルだけで、アスミの方は全くもって疲れていない。荷物を持つのはアルだけだから(^^;
「さてとっ、今度はどこに行こっかな〜。」
チラシを片手にうきうき気分のアスミ。
反対側の神社はセカンドインパクト以前より全く変らない、歴史のある大きな神社なのだ。
さらに近くにはNERVも出来た。
遷都計画も進んでいるこの市の人口は、もはや数十年前とは彼我の差があるのである。
その為、初詣にやって来る人数も相応に大きくなり、それを見越した屋台やら各種イベントも盛り沢山にある。
アスミが持っているチラシのように、案内図まで出回るくらいだ。
「(いい気なもんだよ・・・)」
アルはベンチに腰掛け、買ったたこ焼きを頬張っている。
いろいろ愚痴もあるだろうが、それで我慢してくれ(^^;弟とはそんなもんだ。
公園は、暖かい季節なら森林浴にもってこいなほど木々が生い茂っている。
今は雪で覆われているが、それはそれで味がある。
ただ、今はその事が逆に違和感となった。
周囲の喧騒が嘘のように、園内静かであるという事が。
アスミとアルが公園に来て十分ほど経った頃だろうか。
ててててててて
何処からともなく聞きなれない音が聞こえた。
「「?」」
二人が耳を澄ませて音の方向を探る。
そしてその方向に目を遣ると
『トンテケトンテケテケテケトン〜♪』
和風な音を発しながらアスミたちの方へと向かってくる
ゼンマイ仕掛けのからくり人形。
「「(な、なんなのこれ・・・)」」
明らかに自分たちに向けられる不気味な笑みを湛えた人形を前に、
惣流姉弟は戦慄した。
てててててててて・・・
果たしてアスミとアルの運命やいかに!?
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1.〜前哨戦〜、2.〜いちがついちにち〜 | HIRO様の『Blue sky』へ投稿 |
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3.〜出発〜4.〜ある屋台での遭遇・驚愕〜 | トマトスパイス様の『戦国+エヴァ小説』へ投稿 |
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5,〜不明〜6.〜スクランブル!〜 | JD-NOVA様の『HALPAS』へ投稿 |
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7.〜三人〜8.〜脱出〜 | ken様の『奇跡の果てに・・・』へ投稿 |
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9.〜羽織袴と機関銃〜10〜その後〜 | Xeno様の『A STEP FORWARD INTO HEAVEN』へ投稿 |
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