第10話「陽電子砲」

スーパーコンピューター<マギ>による、使徒殲滅確率は9.2%・・・しかし信長ははっきり言ってこの数字はまったく信用していなかった。

自分のの過去を振るかえると・・・

戦なんてものはやってみないとわからない。今川義元との戦いなどこれよりもっと勝てる確率は低かっただろう。それが義元の油断と天候が幸いして勝ってしまったのである。

逆の時もあった。長島攻め。もはや敵の兵糧は尽き100%近く勝てると思ったのだが、死ねば極楽にけると考えていた彼らは死人となってもう反撃をくらい、事実上引き分けにされてしまったのだ。

リーダーの首さえ取ってしまえば、他の部隊など関係ない・・・。今はそのリーダーが使徒のコアに変わっただけのことだ。あれさえ攻撃できれば必ず勝てる、信長はそう考えていた。

作戦の準備は完了した。信長が本作戦についての詳細をパイロットに説明する。だが、このポジトロンライフルなる物どう素人目に見ても野戦向きじゃない。盾の方も間に合わせだ。

「レイはオフェンスを、シンジはディフェンスを担当しろ。それからシンジ、盾の持つ時間は約17秒だ。仮にレイの第一発射が外れると20秒再充電に時間を要する。敵も撃ってきた場合、残りの3秒はA.T.フィールドで防いでくれ。」

「了解しました。佐藤作戦部長。私が確実に決めます。」

エヴァ初号機・零号機が出撃のため、双子山の頂上にリフトで上がるパイロット。二人の横にはエヴァがスタンバイしていた。

「綾波は、なんでこれに乗るの?」

「絆だから・・・。エヴァは私のすべてだわ。他は何にもないわ。」

「相変わらずだね綾波。でも絆はEVAだけじゃないよ。信長さんの言うとおり、もっと人に接していけばそれはわかるはずだよ。間違っても僕・・・。」

時計のアラーム音がなる。作戦開始の合図だった。陽電子砲のために周りの電気はすべてストップし真っ暗になる。レイがシンジに短く別れの言葉を言うと二人ともEVAに乗りこむ。

EVAが出撃するなり、細かい調整を行なうとさっそくレイは陽電子砲を撃った。だが同時に使徒も零号機に発射。シンジは前に出てレイをかばう。

レイのはなった陽電子砲は使徒に読まれていたのか・・・あっさりとかわされてしまった。急いで再充電を開始するNERV職員。だがどんなに急いでも20秒の時間を要する。

初号機に直撃した使徒のビームはみるみるうちに、シンジの元はスペースシャトルの外装部分用に作られた盾を溶かして行く。シンジはA.Tフィールドを発生させた。

「初号機からA.Tフィールドが発生してます。シンクロ率も43%から55%に上昇しました。」

実は今までシンジはA.Tフィールドは練習では一度も発生させられなかった。どうも今のシンジのレベルでは極限状態でしか発生させられなかったようだ。

使徒のビームは強烈で、A.Tフィールドでも3秒止めれるかどうかもひやひやだった。ただシンジのシンクロ率が高まったせいか、どうも今までシンジが発生させたA.Tフィールドより今日の方が威力があったようでなんとかこらえた。

「レイ、第2射、スイッチを押せ。」

信長の声にレイはあせることなく冷静に使徒に的をあわせ、スイッチを押した。放たれる陽電子方のビーム。攻撃に集中していた使徒は不意をつかれた。

使徒はそのビームに対し、まったく避ける事ができない。初号機への攻撃もストップしてしまう。レイの撃ったビームはそのまま使徒のコアに直撃した。

使徒はもがくことすらできず、一瞬にしてピカッと大爆発した。幸い、住民の非難は完全に完了していた為、第3使徒の時と違い被害がないと言う、うその情報を流す必要はない。

もっとも信長はどうせ、一般住民にもある程度情報は流れてしまうので、そんなことする意味はない、むしろ公表した方がNERVに対して好感情を抱くのではと思っていたが。

初号機はところどころ機体が破損しているものの、パイロットのシンジに怪我はない。もっとも修理費がけっこうかかってしまうため、冬月とリツコは頭が痛かったが、まあこれくらいは仕方がない。

レイと綾波は自力で歩いてNERVに戻っていった。二人で何か会話しながら歩いている。レイは微笑していた。彼女がゲンドウ以外の人間にほほえむことは始めてかもしれない。

その戦闘終了直後、すぐに信長が冬月副指令の部屋を訪れる。兵器追加の要望をするためだ。

「冬月副指令、あの陽電子砲、常時配置できませんかね?いや、コストがかかるのはわかっているんですが、長距離兵器として有効なあれがなかったために人類滅亡になっちゃ困りますからね。」

「しかしだな信長君。わかるだろあまりにもお金が・・・。」

なにせ、日本中の電力をストップするのだから、電力だけでもすごいコストだ。停電の為の経済活動のストップやあの電力に耐える為の陽電子砲の修理となると、最低兆単位の金になってくる。

「別に常時電力をためる必要はありません。今日使った陽電子方を修理して、発電徴収直前のとこまで準備してくれればいいです。充電するのに時間かかってしまう欠点はありますが、ないよりかなりマシだと思います。」

「だがな、あれは戦略自衛隊に返さなくちゃいけないんだよ・・・。われわれも対人間戦には弱いから適当なとこで妥協しないとまずい事になる。彼らにも誇りがあるからね。」

「なるほど、わかりました。その件は私にお任せ下さい。かならず説得して見せますよ。」

信長は翌日、酒井など昔の親しかった戦略自衛隊の仲間を通して説得にかかった。もちろんいくら信長が人望があるといってもこれだけではうまくいくはずがない・・・。

そこで適当に信長は戦略自衛隊とNERVの話し合いの席でおおっぴらにNERVの詳しい情報をちらつかせ、結局最後には、信長が知る、(加持リョウジから教えて貰ったものを除く)情報ほぼすべてを流したのだ

NERVの情報はある程度流れてしまっていたが、さすがにこんなことを公式の場でやれば運が良くて独房行きである。まあその前に普通こんなことする奴はいないのだが。

だが、信長の能力を買っていたNERV上層部はお構いなしの命令を諜報部に出していた。

はっきりいって、信長が知っている情報など、詳しい事は冬月しか知らない、碇ゲンドウが立てた計画のカモフラージュに過ぎなかった。

この辺の事は信長も想像はついていた。まさにたねきの化かし合いというやつである。

「そういうわけで、以上の理由から、陽電子方をNERVに譲っていただきたいのですが、よろしいでしょうか。」

「陽電子本体及び完全に電力徴発権を譲れば、秘密組織NERV本部内に戦略自衛隊の監視兵3人を認めるか。う〜ん、わかりました、契約を受理しよう。」

元々、NERV本部内にだってどうせ、戦略自衛隊のスパイも潜んでいると見て間違いない。

そんなことより、戦略自衛隊としてはおおぴっらにやれるということで、内外へのアピールができるので満足したのだろう。

「ところで、信長さん。家のJAの発表会に来てみてくれませんか。日時などの詳細はこちらの紙を見てください。」

この新しく戦略自衛隊の長井元帥(総指令)になった男はかつての信長の部下だった。この男が昔から信長を尊敬していたことも、交渉のうまくいった大きな原因だった。

信長もさすがにこういう席では敬語を使ったが・・・、交渉のテーブルにつく少し前までは、この男に先輩口調で話し、この元帥も完全に部下の言葉で話しをしていたのである。

「なるほど、だが正直これじゃとても使徒は倒せませんな・・・、どうです、ついでにEVAとエミュレータ戦もやりませんか。」

長井元帥の顔はとたんに厳しくなった。信長に対して怒りを感じたからではない。戦略自衛隊の切り札JAでは使徒が倒せないと確信したからだ。

・・・信長はめったなことでは、物の力量を見誤ったりはしない。明確な証拠が合るからこそ言っているのだ。

「なぜ、そう思われるんですか?」

「今この場で言うよりも、エミュレータ−戦の後で言ったほうがよくわかりますよ。百閧ヘ一見にしかずですよ。」

新しく、戦略自衛隊の上層部に入ってきたの中には、一部信長を恨みの目で見ているものもいたが、大半の人はそれほど怒っていなかった。

彼らもまた、昔の事から信長の物を見る目には信用さぜるを得なかったのである。

「そうですね。準備しときましょう。ところで信長さんもう一度我が戦略自衛隊に来るつもりはありませんか?」

信長を自分の直属の部下にすれば、信長独特の方法でEVAに対抗し、戦略自衛隊の力のみで使徒を倒せる有効な兵器を作っくれるかもしれない。

・・・あるいはそこまでうまく行かなくても、苦しい予算の面などでうまくやりくりできるだろうと長井元帥は考えていた。

「お断りしますよ。2度も変えたんじゃ信用がねえ。でも、NERVのスパイって事なら喜んでやりますよ。」


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