復讐の神子
参の章
フランスはパリにあるこの館。
此処に表向きは『Carmen』という一流のレストランがある。
だが本当の顔は『Hell=And=Heaven』のフランスでの隠れ家である。
また、此処は九大熾天使が一人ラツィエルが経営している店でもある。
・・・・・・因みに彼の本名はレオン=ド=クィエルである。
金色に輝く長髪に、青く透き通った瞳。
スラリとした長身で、常に白の法衣を身につけた男だ。
さて、此処にいつものごとく唐突に現れたシン(今回は厨房)。
彼が突然現れたにもかかわらず、レオンはただ優雅に笑みを浮かべ一礼したのみ。
レオンの部下達もまた同じく一礼して作業に戻る。
これはシンが命じた事であり、彼等は料理よりもシンの言葉を聞きたかったのだ
が、
シンは『俺よりも客を心配しろ。曲がりなりにも此処は一流と謳われている店。
客にはそれなりの敬意を表せよ。俺への対応はその後だ』と言ったらしい・・・。
「我等が至高の玉座の真王よ。本日は我等に何のご用でございましょうか?
我等に出来うる事であれば、如何なる事とて致します」
レオンの言葉に笑うシン。
「いや、今日は碇家へ赴いたのだが、其処の娘に心を見透かされたようでな。
気分を変えるために今回は此処に客として来たのだ」
シンの言葉を聞き、顔を驚愕に彩らせるレオン達。
だが、それもすぐに消え、表面上は何事もなかったかのように作業を続ける。
・・・・この辺りが教育の徹底ぶりを表している。
内心の動揺を隠し、笑顔でシンに問いかけるレオン。
「まさかそのような者がいようとは・・・・。
それはともかく我が店で食を取られるならば最大のもてなしをしなくては」
レオンとその配下の者等は至福の笑みを浮かべシンを最高の客席へと案内した。
食前酒はシェリー酒の『Fino(フィノ)』。
前菜は『Betteraves marine(ベトラーブ マリネ)』と言う『赤かぶらの酢漬け』
より
始まり、スープには『Potage veloute Milanais(ポタージュ ブルテ ミラネ)』
と言う『ミラノ風ポタージュ』。
メインは肉料理の『Poulet saute a la Washing(プレ ソテ ア ラ ワシント
ン)』と言う
『鳥の白ソース煮』であり、
サラダには『Chou chinoise salade(シュ シノア サラド)』と言う『白菜のサラ
ダ』
最後のデザートには
『Orange pudding(オレンジ プディング)』と言う『ミカン入りプディング』
が出てきた。
食後酒にコニャックを飲み、その全てを堪能したシンはレオンに言う。
「なかなかに見事な味付けだった。
だが、『Poulet saute a la Washing』の味付けが少し濃かったな」
シンの言葉に頭を下げてレオンは言った。
「申し訳ありません。『味付けには注意するように』と言っておいたのですが・・
・。
以後気をつけさせて頂きます」
レオンの言葉に少し驚くシン。
「ほう。お前以外にこれだけのモノを作れる奴が居たか・・・・・誰だ?」
少し考える仕草を見せて答えるレオン。
「確か、ジン=カグラと名乗っておりました」
それを聞き考えるシン。
「会ってみたいのだが・・・・・会えるか?」
「当然でございます。この店には貴方様が会おうと仰っていらっしゃるのに、
それを無視する者など居りません」
そう言うと、厨房へと歩みだしたレオン。
しばらくして、後ろで束ねられた黒く長い髪に黒の瞳。年の頃は十代半ば。
背の高さは176cm程度であろうが、その瞳には強烈な意志が垣間見える。
彼はシンの前まで来て自己紹介を始めた。
「初めましてシン様。私の名は神無ジン。神に無と書き片仮名でジンと書きます。
以後お見知り置きの程を・・・・・ルシファー様」
ジンの最後の言葉に、眉をひそめるレオンと微笑むシン。
「お前だったのか。久しぶりだなジン。・・・・いや、我が左腕サタンよ」
シンの言葉に驚きを隠せないレオン。
それもその筈。『サタン』とは『ルシファー』の左腕として君臨している者であ
る。
・・・・ただし、顔を見た物は『ルシファー』と『パンドラ』以外には居ない。
「シン様。ま・まさかこの方があの『真紅の魔皇・サタン』と呼ばれる方ですか
?」
レオンの言葉に眉をひそめるジン。
「此処では敬語は使わないで頂きたい。表と裏の顔は使い分けるべきと思うが?」
ジンの言葉に平静を取り戻したレオン。
それを見つつ、ジンは楽しそうに言う。
「まあ、此処に居たのは我等が真王に会うためですが」
それを聞き口を開くシン。
「お前なら俺を捜し出すのに数分とかかるまい。何故だ?」
シンの言葉に楽しそうに笑うジン。
「俺に名と仲間を与えてくれた貴方に、今までの礼と未来永劫変わらぬ忠誠を込め
て、
貴方より教わった料理を御馳走したかったんだ。
まあ、味付けはまだまだ未熟だったけどな」
微笑むシン。
「礼などいらん。俺はお前に道を示しただけ。全てはお前の功績だ。
まあ、料理の味はなかなかのモノだ。これからも精進するが良い」
「そいつはどうも」
嬉しがるジンと驚くレオン。
それもその筈。シンは料理に厳しく、
今までに誉められたのは、『パンドラ』と『九大熾天使』のみである。
・・・・・因みに抱きしめられたのは『パンドラ』のみである(当然ではある
が)。
数分世間話を楽しんだ三人。
シンがまず口を開いた。
「さてジン。お前はこれからどうする?出来れば碇セイジを警護して欲しいのだ
が」
ジンは答える。
「貴方がお望みと在れば俺はこの命と魂ある限りそれを成す。
・・・・・あの時そう申し上げた筈だが?」
微笑むシン。
「そうだったな。彼にお前の事を伝えておこう。
それと、レオン・・・・いやラツィエル。お前は今後も此処で活動を続けろ。
後五年もすれば、ある少年を此処に連れてこれるだろう。
その時には其奴に料理と剣技を教えてやってくれ」
それを聞いて頭を下げるレオン。
今のシンの言葉は自らの料理と剣技を九大熾天使一と見たからに他ならない。
シンが連れて来るのだから、少年はシンの関係者であろう。
その少年を一時期とはいえ任され、
自らの得意とする料理と剣技を教えてやれと言うのだ。
これを喜ばずして何を喜べと言うのか。
「承知いたしました。我が料理と剣技の全てをその少年に授けましょう」
レオンの言葉に満足げに頷き立ち上がるシン。
「では俺はもう行こう。ラツィエルよ・・・他の九大熾天使に告げろ。
『これより五年の間はゼーレの監視等を続けろ。
五年後に我等の最大の計画【冥府】を始動する』とな」
そう言い残すとシンは黒き外套を翻し、消えた。
頭を垂れ、敬意を表する二人を残して・・・。
此処より流れ出したのだ。
青年の計画が、全ての罪の精算が・・・・・・。
後書き
レンでございます。
今回はカッコを付けて料理の話を多少持ってきましたが、
全くと言っていいほど資料と知識が私になかったので、
作中にあるように出鱈目な組み合わせになりました。
また調べがついたら改訂するやもしれません・・・・・多分。
今回は、九大熾天使が一人『ラツィエル』を出してみました。
彼の容姿は『フルメタル・パニック』のカリーニン少佐(だったと思う)
を参考にいて下さい(知らない人は御免なさい)。
それでは次作でお会いしましょう。
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トマトのコメント
『フルメタル・パニック』のカリーニン少佐……実は私知らない。
どうも、この話しはEVAと言うより、オリジナルのような感じがするんですが。
でも、「戦国+エヴァ小説」の投稿規定は18禁以外ならなんでもいいのです。
料理については何もコメントできません。
…知識がまったくの0なんですね私。
なんだか自分の知識の無さをさらけだしたコメントでしたね。
では、フランス料理のメニューなどを話されたい方は、
ぜひレンさんに感想メールを送ってください♪
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