身も心も凍りそうな冬の雨の最中、平野区にある某マンションの消防設備点検がありました。冬のマンションでの仕事は大変厳しく、吹きさらしの廊下での作業はシベリアの強制収容所を彷彿させます。 今回4名でチームを組み、廊下作業組み2名、部屋内作業組み2名と分かれて作業をしていきます。メンバーの振分けはジャンケン。勝てば暖房の効いた部屋内をまわり、負ければ極寒の廊下でのメンテナンス。幸いにも僕はジャンケンに勝利し点検棒片手にマンションの各部屋内を点検することになりました。 マンションは2LDKの8階建て。1号室から24号室まであり、かなりの規模があります。築年数がかなり経過しておりマンション内は、ちょっとした下町のような雰囲気がありました。最上階から開始した仕事は順調に進んでいき、昼過ぎには全体の2/3を終え休憩タイムになりました。 休憩が終わり3階から作業が始まります。1件ずつ部屋の火災感知器を点検していくと、正常に作動しない感知器が出てきました。ある1件を境に全ての感知器が働きません。どうも天井裏で電線が切れているようでした。原因となっている部屋がすぐに判ったので復旧作業は大変楽です。 原因とされる部屋の住人に了解を得、電線の断線箇所を調査します。まるで我々を歓迎するかのように愛想のいい70歳前後の初老の老人が世帯主のようで、部屋の様子から察するに1人暮らしをしていました。断線箇所が判明し天井裏で電線を結線しないといけません。老人と世間話をしている相方にサポートを頼み天井裏に侵入するために押入れを空けました。 押入れを空け天井に上る為の足掛けを探すと、押入れの下段に人!!!!!人がうずくまっています。全身が総毛立ち悲鳴を押し殺すので精一杯です。幸いにも老人は別の部屋でまだ世間話をしています。落ち着いてもう一度見ると2度びっくり、ダッチワイフでした。このダッチワイフかなり精巧に作られており、本当に女性そのものでした。しかも外人女性型の金髪、服も着ています。後日調べてみると10万円以上する代物でした。 さすがにこの襖を開けっ放しで天井裏に進入するわけにもいかず、「天井裏、開きませんでした」と何も見なかった振りをするしかしょうがありません。 老人が見守るなか作業は続きますが、彼女の使用目的がたいへん気にかかります。やはりごく一般的に使用するのか、それともテーブルを囲んで共に食事をするのか。彼女と共に夕御飯を食べる老人の図を想像して物悲しい気分になりました。 復旧作業が完了し笑顔でお礼を言う老人を見て、おそらく寂しかったのだろうという結論に達しましたが、なぜ外国人モデルだったか疑問が残ったままです。 |
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