僕が勤めていた会社の得意先に、西成区は釜ヶ崎(愛りん地区)の 簡易宿泊施設があります。日雇い労働者がよく利用するホテル、通称 「簡宿」と呼ばれるホテル数十件が夏の暑い盛りに、消防設備の メンテナンスなどで一斉に仕事がはいってきます。 「赤痢に注意」などの張り紙を横目に3畳ほどの部屋を1件ずつ点検していくわけですが、住んでいる人達の大半が親父です。親父達が三畳間の部屋に一人ずつ、6階建ての木造のホテルに蜂の巣の如く密集しあっています。 部屋の扉をノックして、「こんにちわー。火災報知器の点検ですー。」と挨拶をして、中の住人からどーぞとばかりに扉を開けてもらうと、中から天王寺動物園のような香ばしい匂いが漂ってきます。出会う人が親父ばかりなので、あまり楽しくありません。なかでも突然の訪問の為に部屋の内部で、僕の予想だにしない事を繰り広げている住人もいます。 部屋に立ち入ると、炙りと書かれた箱があり、中に白い粉末が入ったパケットが大量に入ってたりします。その部屋の住人に「ここで見た物、人に言うなやぁ?」とか言われて、「僕なにも見てないですよ」と大変チキンな返事をしなければいけない事があります。 冷静に対処できる出来事なら全く困らないのですが、僕の笑いのツボをダイレクトに刺激してくる出来事は、かなり辛いものがあります。大爆笑したくても出来ない状況です。 部屋の住人に一通りの挨拶をして「勝手に入ってきてー」と了解を得、扉を開けると僕のお父さんぐらいの年齢の男性が2人、布団1つ共有してました。2人とも上半身は裸。下半身は掛け布団の為に見れず。クーラーのかかっていない部屋で、夏の暑い盛りに2人して僕を見つめています。 まだ大丈夫!心の中で呟き笑いを堪え冷静になろうとします。ひょっとしたら僕の勘違いで2人はただの仲がいいおじさんだろう。そう考えて心を落ち着かせ、2人から視線を外すその先に薔薇族が積み重なってます。 「ブシューッ!」と僕は笑いを堪えた勢いで、鼻水を勢い良く吹き出してしまい、怪訝な顔で見つめているであろう2人を尻目に「異常なしです。」顔を見ず震える声でそう告げ、慌てながらその部屋を後にしました。 本物でした。勝手に入ってきてーじゃないやろ!取込中やったら断れよ。なんで俺が慌てなあかんねん。1人毒吐き、残りの部屋を考えうんざりしながら1日、愛りん地区で作業をしてました。 |
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