Holiness Aspect 〜a restart of Power〜

【Story002  異端世界】



『で・・・・・・こうなわけよ、つまり・・・』

張り詰める青空。

すがすがしい新緑の中に。

不満そうな顔をした将士と額に汗を浮かべたアスティーがいた。

先刻。

彼とフィーリアは突如として現れたアスティーという女性によって、この青と緑の星『ラクティア』に連れてこられていた。

その理由はアスティーが数年間探し求めていた、【光と奇跡の聖剣】と呼ばれる力、【ヴァリキュアス=スペンディー】であった。

その力がラクティアでなく地球にあった。

だからその「 力 」をラクティアに連れてこようとした・・・のだという。

・・・・・・が、結果のほどは・・・・・・

将士『・・・ぅ〜〜〜(汗) なんで、いきなりこんなことになるかなぁ・・・』

じとっとした視線をアスティーに送りつける。

ここは『ラクティア』の“サティスの森”と呼ばれるところである。

アスティー『・・・(汗) だから、「VS反応」の発生源の力“だけ”を摘出するつもりだったんだけど、何かの大きな力の反応に遮られた。
 で、失敗して力の媒体もろともこっちに引っ張り込んじゃった・・・って言って謝ってるじゃないの・・・』

本当にすまなそうな顔をしながら弁解するアスティー。

将士『・・・でも・・・なぁ・・・』

釈然としない彼を遮るように。

『お兄ちゃん!アスティーさんを責めちゃ駄目よ・・・』

彼らの背後に広がる草原から声。

そこには一人の、満面の笑みを浮かべた、一人の少女が立っていた。

フィーリア『・・・ここはいいところじゃない♪ 風も気持ちいいし、空もきれい・・・・・・って、私はここに住んでたんだけどね』

照れ隠しのように、はにかみながら言う少女。

その少女を見て、彼は疑問をひとつ尋ねてみた。

将士『・・・そういえば。「VS反応」の力だけをラクティアに連れてくるつもりで、失敗して僕がここにいるのはわかるんですけど・・・

・・・何で、フィーリアまでここにいるんですか?』

アスティー『ん? ああ・・・それはね・・・』

そういいながら、彼女は宝石を袋から3つ取り出した。

アスティー『いい? この宝石が、ラクティアに住んでいる人。で、こっちの宝石が、それ以外の星に住んでいる人だとするわね・・・』

赤い宝石を二個、緑の宝石を一個。 彼女の手のひらに置く。

アスティー『それで、さっき説明した「時空転紗」・・・つまりテレポートよ。 それはね、物体を転移させる際に

「時空珠(じくうせき)」っていう玉がある一区切りにつき、ひとつ必要なの。・・・・・・そして、その区切りは・・・』

言うと同時に、手の赤い宝石だけを握りしめた。

アスティー『同じ世界に住む者――で一区切りよ。』

将士・フィーリア『・・・・・・・・・・は?』

彼らの頭の上に“?”マークでも浮かび上がったかのような声を上げる二人。

アスティー『・・・例えば、私とフィーリアは“ラクティア”出身じゃない?・・・これでまず「一区切り」ね。 そして将士は“地球”出身

じゃない?これで「二区切り」よ・・・』

少しの間を置いてフィーリアが言う。

フィーリア『・・・でも、だとしても・・・どうして私まで連れてこられたんですか?同じ世界の出身者なら何人でもいいんですか?』

アスティー『あ、それはね・・・私が“時空転紗”を使った位置から、半径1km以内にいる人間を“強制的に”五人まで転紗できるの。

で、あの時私の近くにいたのは将士と、フィーリア・・・貴方よ。だから私はあの時“時空珠”を二つ使ったのよ。“ラクティア”の人間

と“地球”の人間がいたから・・・』

言いながら宝石を懐にしまいこむアスティー。

将士『う〜ん・・・わかったような・・・わからないような・・・』

首をかしげる将士。

アスティー『・・・とにかく、貴方はこの星に来たのよ。“ヴァリキュアス=スペンディー”の使い手として・・・ね』

彼女の一言に将士はさらに悩み、言う。

将士『あの・・・その“ヴァリキュアス=スペンディー”って何ですか・・・?』

アスティー『・・・あ、そうそう。・・・忘れていたわ、大切な事を・・・』

彼女は将士に近づき、彼の右腕をとり、その手に向かい詠唱をはじめた。

アスティー『・・・天を指する風の源生よ。今、汝の力を礎に・・・・・・』

詠唱とともに彼の右腕を包み込むかのように風が集まりはじめた。

将士『・・・えっ!?何・・・!?この風・・・・・・・・・・・・・・・!?』

アスティー『・・・じっとしてなさい!!』

ものすごい剣幕で怒鳴りつけるアスティー。

アスティー『・・・・・・今、この力を基に奇跡の力を呼び起こす鍵となれ!!』

――カッ!!――

一筋の閃光を放った後、彼の右腕に風がまとわれ、次第に消えうせた。

将士『・・・・・・・・・・・・・・・・・・?』

右腕を上げ、まじまじと見つめる。・・・無論、外部に異常は見られない。

将士『・・・あの・・・・・・一体なにを・・・・・・・?』

少し息を荒くしているアスティーに尋ねる。

アスティー『・・・ふぅ・・・ああ、“誓いの風”のこと?』

傍らにいた少女が口を開く。

フィーリア『・・・誓いの・・・・・・風・・・?』

アスティー『そう。誓いの風、それは・・・・・・』

将士『・・・それは?』

アスティー『“奇跡の剣”を呼び覚ます風。VSの力を少しずつ内部で抽出していき、やがて内部で増幅された力が耐え切れずに

外部に剣となって現れる・・・のよ』

将士・フィーリア『????』

アスティー『(汗)・・つまり・・・平たく言うと、自分の中から剣が出てくるのよ。・・・この世界を救える剣

“ヴァリキュアス=スペンディー”(VS)がね』

その説明で二人は納得したらしい。

アスティー『・・・まぁそれはともかく、早く出ましょこの森』

将士『・・・で、どこに行くんですか?』

アスティー『とりあえず、ここから東に進んだところにフィーリアの実家がある街があるから・・・とにかく、そこに行くわ』

フィーリア『・・・私の住んでいた街・・・』

何かを探るような面持ちで、空を見上げるフィーリア。

将士『・・・じゃあ、行きますか?・・・・・アスティーさん、その街の名前は?』

言いながらも一向は東に向かい歩き始めた。

アスティー『ん?・・・それならフィーリアに聞きなさい。ね?』

ちらり−視線を送る。 その視線をうけ・・・

フィーリア『アース・・・・・・アースティアだよっ、お兄ちゃん♪』

満面の笑みを浮かべながら、彼女は言った。


一行は、森を東に抜けて、徒歩にして約30分前後の距離にある街、アースティアに到達していた。

この街は、ラクティア5大公爵の一人“アルバート=アスペクト”が治める街である。彼の政治が

よいものであることは、この街の活気を見れば一目瞭然であろう。

将士『・・・うへぇ・・・賑やかな街ですね・・・・・・』

あっけにとられた表情で隣のアスティーに言う。

アスティー『当然よ。“緑と善政の街”の呼び名は伊達じゃないわ』

喧騒を見ながら言う。

フィーリア『・・・私が・・・住んでいた街・・・帰って・・・きたの・・・・・・』

感動を表に出し、思わず泣いてしまいそうになった時・・・

????『・・・アスティー!?』

彼女らの背後から声がした。 アスティーはすぐに振り向き。

アスティー『・・・久しぶりね。クライア』

言い、クライアと呼んだ女性と握手を交わす。 すると・・・

『・・・おねえ・・・・・ちゃん・・・・・・?』 か細い声。 涙をこらえているような声。

その声に、握手をしていたクライアという女性の手がピタリ、と。

クライア『・・・・・・・ま、さ・・・・か・・・・・』 驚愕の色。

声の張本人に近づき、顔を覗き込む。

−麻のような茶色の髪−

−上半身を覆う、ピンクのストール(類似品)−

−そして、その純真無垢な瞳−

それらを確認してすぐに彼女は、確信して言った。そして、フィーリアもまた。

クライア『フィーリア!』

フィーリア『おねーちゃん!!』

互いに名を叫びながら抱きしめあう。 二人の瞳からは大粒の涙がこぼれていた。

その光景を見ながら、ぽつりと。

アスティー『・・・・・・やっぱり、ね』

将士『・・・やっぱり?』

アスティー『フィーリアのことよ。最初から知っていたわよ、クライアの妹だってことも・・・』

将士『・・・どうして・・・・わかったんですか・・・・・?』

アスティー『・・・・・・それは・・・・・・・・・・』

将士『・・・・・・・・・・・・・・・』

アスティー『アスペクトっていう名前、そうそうあるものでもないし』

将士『・・・そうなんですか?・・・・確か、五大公爵家なんでしょ?』

アスティー『そうよ。・・・・・・もう、その財力たるやすごいのなんのって・・・』

感動をひとしきりに終え、姉妹がこちらにくる。

クライア『アスティー、将士さん・・・お二人を家へ招待したいのですけど・・・』

アスティー『ええ、ありがとうね』

将士『・・・いや・・・・そんなあつかましいこと・・・・・』

間髪いれず、そんな彼に抱きつくフィーリア。

フィーリア『来て・・・・・・くれるよねっ♪』

満面の笑み、その笑顔の迫力に負けて首を縦に振る将士。



アルバート『ようこそいらっしゃいました。私はこの館の主、アルバート=アスペクトと申します。以後、お見知りおきを・・・』

きらびやかな館の一室に将士たちは通されていた。 フィーリア姉妹の父に対面するためである。

アスティー『こちらこそ。私はアスティー=インクリスと申します』 一礼。

将士『あ・・・えっと・・橘 将士です。はじめまして・・・』 戸惑い。

“ピクリ”一瞬、アルバートの体が将士の名を聞いた瞬間、反応した。

アルバート『・・・・・・・・たち・・・・・・・・・ばな・・・・・・・』

何かを深く考え込む彼だったが、アスティーの目配りによって思慮を止めた。

将士『???』

アルバート『・・・なるほど、異世界の方のようですね。そのいでたち、その名前・・・』

納得するように話し出す。

アスティー『ええ。しかし、もっと驚くことがあります。』

アルバート『と・・・・いわれると?』

アスティー『・・・“ヴァリキュアス=スペンディー”を、彼が持っているということです』

アルバート『!?・・・・まさか!? 異世界の少年が!?』

アスティー『無論、通常ならありえないことです・・・が、もし“アスペクト”家の血の筋のものが彼のそばにいたならば・・・?』

アルバート『・・・フィーリア、ですね・・・確かに、それならば納得できます』

ちらり、横目で将士を見やる。

・・・と、彼の服の下から覗くネックレスに気付いた。

アルバート『な・・・!? これは・・・・!!・・・・これをどうしたんですか!?』

血相を変えて将士に問う。

将士『え?あ、これはフィーリアに貰ったんですよ。十歳の頃に』

チャラ・・・ネックレスを取り出し懐かしげに見つめる。

アルバート『・・・その時、娘は何か言っていましたか?』

将士『え・・・っと・・“このネックレスは、あなたを守ってくれます。・・・・・・いつまでも・・・”って』

その言葉に深く思慮しながら、ついついアルバートは口にしてしまった。

アルバート『・・・・・・天使の・・・・詫譲(たくじょう)・・・・』

そのつぶやきを半分聞いたとき、ふとドアが大きく開かれた。

クライア『お父様!! ・・・門の前に不審な人が!!』

アルバート『なんだと!?』

急いで、衛兵を呼ぼうとしたがアスティーがそれを制した。

アスティー『いえ、私“たち”が行きます!!』

冒険者なのでさすがになれているのか、とっさに身を乗り出しドアから外に出る。

将士『え・・・・・・?・・・私“たち”・・・・・・・・?』

即座に戻ってきて、将士の手を引きながら言う。

アスティー『・・・あなたも、よ・・・・・』


?『・・・・・っっしゃぁぁあっ!!!』

−バキィッ!!−   そんな音があたりに響いている。

アスティーたちが外に出た時には、すでに駆けつけていた衛兵たちは、あらかた殴り倒されていた。

将士『・・・・うひゃー・・・強ぇ〜〜・・・』

その光景を目の当たりにして、思わず感嘆の声をあげる。

アスティー『・・・ふぅん・・・・・結構いい筋いってるじゃない・・・』

何か考えている感じで言う。

その間に、駆けつけてきた最後の衛兵はその男によって倒された。

?『・・・ふぅ。・・・・・さぁ、次はないのかぁ!?』

熱気冷めやらず、といった感じで肩を振る。 と、傍らから女の子が出てきた。

??『もう・・・直ったら・・・乱暴はいけない、って言ってるでしょ・・・・』

将士は今、気付いたのだ。 彼女らの服装が自分のものと大差ないことを。

そして無論、彼女らもそれに気付いたのだ。

直『・・・んなこといってもよ、佳奈・・・こいつらが聞いても答えてくれないからだぜ・・・それに・・・』

言いながら、将士たちを指差して言う。

直『・・・面白そうな奴らもいるしな・・・・』

将士『え?』

アスティー『・・・・ほぅ』

その言葉の直後に、誰も予想していなかったであろう事態が起こった。

屋敷にいたはずのフィーリアが、外に出てきていたのだ。 しかも、直と呼ばれる少年の近くに。

アスティー『な!? 何してるのあの子は!!』

佳奈『直・・・あの子なら答えてくれるかも・・・・・』

少しせきこんだ様子で言う。 うなずき、フィーリアの方に走る直。

将士『!! フィーリア、逃げろ!!』

その叫び声に促されるように後ろを向く、と先ほど衛兵たちを殴り倒した少年が自分に向かって走ってくる。

それを見、その場にしゃがみこみフィーリアは叫んだ。

フィーリア『きゃぁぁああっ!!』

そして、その叫び声は一転するとこうとも聞き取れた。

“お兄ちゃん、助けて”・・・・・・とも。


そこから先は、彼には記憶がなかったらしいが。

今さっきアスティーの隣にいたはずの将士が、800Mは離れていようフィーリアと直の間に割って入っていた。

アスティー『!?・・・・転紗・・・・?』

佳奈『え!?・・・・うそ・・・?』

驚愕の色が見て取れる二人。当然の反応だろうが。

直『お・・・・・・へっ、おもしれぇ・・・』

少々たじろぐ気配はあったが、すぐに切り替わる人。

フィーリア『・・・おにぃちゃん・・・・』

安堵の表情で彼の背を見やる人。

そんな少女の目に。 背中ごしに見る、彼の右腕に・・・

“奇跡の剣”を右腕に携えた将士が映っていた・・・。







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