ToHeart-SS
-プレゼントにかけたおまじない-
「誕生日おめでとうな。あかり。」
デートの最後に、いつもの公園で、俺は照れ隠しにクールを装ってあかりに昨日買ったプレゼントの入った紙袋を渡した。
俺は昨日こいつを買うために、洋服店を巡りまくったのだった。
「わ〜ぁ、ありがとう浩之ちゃん♪きっと、大切にするよ」
そんな事に気づいたのか気づいてないのか、あかりは本当に嬉しそうに俺からプレゼントを受け取る。
「中を見てもいいかな?」
自分へのプレゼントだというのに、律儀にそんなことを尋ねるところがあかりらしい。
「当たり前だろう。」
あかりは俺の返事を聞くと、近くのベンチに腰を下ろし、袋を膝に乗せて、袋を開けた。
そして開けた口から中身を確認して、もう一度「うわぁー。」と声を漏らす。
「結構、高かったんだぜ。そのコートとワンピース。」
俺の声が届いているのかいないのか、あかりは冬用のコートと夏用のワンピースを袋から取り出すと、コートをベンチの上に丁寧に置いて立ち上がり、ワンピースの肩の部分を自分の肩に合わせて、俺の前に向き直った。
「どう、浩之ちゃん?似合うかな?」
あかりは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべて俺に尋ねてくる。
もっとも、あかりに似合うと思って買ってきた物なんだから答えは決まっているのだが。
「ああ。俺が選んだんだから当たり前だろ。」
俺の言葉を聞いて、あかりは更に鮮やかな笑顔で俺に微笑んだ。
俺のバイト代がこの笑顔に変わるなら高くはないかもしれないと、ふと考える。
「明日からコレを着てもいいかな。」
あかりは服を大事そうに抱えながら、俺に同意を求めてきた。
『だからー、自分の意志で動けよ!』などと思いつつ、俺は答える。
「別にかまわんが2月にワンピースなんて着てたら絶対に変な奴と思われるだろうな。それでも良ければ何も言わん。」
一瞬、あかりはがっかりした様な仕草をとったが、何かを思いだしたように、すぐにコートの方を手にした。
「じゃあ、こっちのコートは?」
俺はため息を一つついてあかりに答える。
「もう、暖かくなってくるのにコートなんて着てたら、やっぱり変な奴だと思われると思うぞ。少なくとも俺はそう思う。」
あかりは俺の言葉を聞いて、心底残念そうに「そうだよね。」とつぶやいて、大切そうにプレゼントの衣服を畳んで元の紙袋にしまう。
「ねぇ。すわろうよ。」そういって、あかりはベンチにもう一度腰をかけた。俺もその横に座る。
「ねぇ浩之ちゃん。その・・・プレゼントをくれた事はすごく嬉しかったんだけど、どうして着る時期を外した服ばっかり選んだの?」
あかりは、俺に気を遣いながら俺に尋ねる。
俺は、「ははっ。」と笑いながら、プレゼントの入った袋を指さした。
「そいつには、あるおまじないなんだ。」
あかりは不思議そうな顔をしてこっちを見ている。
「おまじない?・・・どんな?」
「今年の夏も冬もそれからもずっと、俺らが一緒に過ごせるためのな。」
本当は、真面目にあかりにそういいたかったのだが、今の俺ではこんな台詞は茶化す様に言うのが精一杯だ。
おそらく、俺の顔は真っ赤になっているんだろうが、あかりの顔も既に耳の先まで真っ赤になっている。
「うん。私もそう願ってるよ。」
あかりは、そっと、つぶやいた。
「ずっと、ずっと一緒に居ようね、浩之ちゃん♪」
真っ赤のまま、あかりはそういって、やっぱり俺にすみれの様な笑顔をみせた。
俺は無意識のうちに、あかりを抱きしめ、そっと耳元でつぶやいていた
『そうだな・・・。これまでも、これからも、どんなことがあっても、ずっとずっと一緒に居ような。あかり。』
いかがだったでしょうか?作者のORATORIOです。
今回の作品はトライアル氏に捧げます。
今回はLeafに移って「ToHeart」を書いてみたんですが、最近はONEとKanonをメインにしていたため、書くのに苦労してしまいました。
今回の作品ですが、牧原敬之さんの歌で、僕が一番始めに覚えた曲である「冬が始まるよ」から作品のイメージをいただいています。
キャラをあかりにした理由を友人から聞かれたんですが、歌詞の中の「髪をほどいてみたり♪突然泣き出したり♪〜」の歌詞を見て速攻で決めました。「あかりしかいない!!」って(笑)
つたない駄文ですが、読んでいただいてありがとうございました。
00.3.19 ORATORIO
感想お待ちしています。
フリーメモに書き込むか、メールをいただけると幸いです。
![]() |
メールはこちら。 olacle@mail.wbs.ne.jp |