KanonSS
少女は静かに目を閉じて・・・。
「祐一さん。なんでここにいるんですか・・・?約束したじゃないですか。誕生日を過ぎたらもうあわないって・・・。」
私の問いに、祐一さは一言だけ「どんな結末のドラマでも、見たくなっちまう性分なんだよ。俺は。・・・それに、最後の瞬間までお前といたかった。」そうつぶやいた。
「カッコつけすぎですね。」
私は、そういって笑った。でも体中の痛みで自分が笑っていたかはわからない。
「かもな。」
祐一さんは、そういって、ベッドからでた私の手をそっと握りしめた。
私も握りかえそうとするけれど、既に手に力が入らない。指を軽く曲げるのが精一杯だった。
握っている彼の手は冷たかった。
「今日は学校だったんじゃないんですか・・・。」
私はふとカレンダーの方に目をやって、その後視線を彼にあわせる。
「なんかやる気が起きなくてな・・・。サボった。今日は熱だしたことになってる。」
祐一さんは、最後の一言だけ私の耳元で小さな声でささやいた。
「仮病ですか・・・。進級できなくなりますよ・・・。」
私の声は、この病室の静けさの中で無ければ届かなかっただろう。
「栞にその言葉をそっくり返してやるよ。」
祐一さんは苦笑しつつ、私を茶化す。
「そういう事言う人・・・嫌いです・・・。」
私は、尖った口調で言葉を返す。少し音になっていない言葉があった。
でも、祐一さんには通じたようだ。
「それが聞きたかったんだ。」
祐一さんがつぶやいた。だから、もう一度言ってあげる。
「ひどいです・・・。そういう事言う人・・・嫌いです。」
今度ははっきり届いたと思う。祐一さんは時折見せる、あの優しい瞳で私を見ていた。
ズキ!
突然大きな痛みで、私の顔が苦痛にゆがんだ。だけど、私はすぐに笑顔を作る。
「ちょっと話しすぎたかな。少し休むといい。お休み、しおり・・・。」
祐一さんはそのまま私の唇にキスをした。
「家族が見てます・・・。恥ずかしいです。」
私は、本当に小さな声でつぶやいた。
「嫌か?」
祐一さんも少し赤くなっていた。やっぱり恥ずかしいらしい。
「・・・王子様のキスは、目覚めの時って決まってます。」
私は涙をこらえて、精一杯の声で答える。次に目を覚ますのは何時になるのか。
「なら、目が覚めるまで、ここにいるよ。眠り続けるのは無しだぜ。」
さっきよりも祐一さんの声が小さくなった気がする。
「はい・・・。約束・・・です。・・・でも、」
不思議と体の痛みは消えていた。代わりに非常に眠い。
「もしかしたら・・・、いまが・・・夢の中なのかもしれませんね・・・。」
眠気はどんどん強くなっていく。
「・・・そう・・・かもな。」
「もしも夢なら・・・悪い夢さ・・・。最低の・・・悪夢さ・・・。」
初めて祐一さんの声が震える。
ゆっくり祐一さんは私の髪をなでてくれた。
私は静かに、目を閉じた。
「そんなこと・・・ありません・・・。私は・・・祐一さんに・・・あえ・・・逢えましたから・・・。良い夢でした・・・。きっと・・・。」
閉じた瞳から、知らぬ間に涙が流れていた。
「最後に一つだけ・・・お願いを・・・聞いてください・・・。」
「ああ。」
「私が眠るまで・・・頭を・・・撫でていて・・・ください・・・。最後まで・・・。」
いかがだったでしょうか?作者のORATORIOです。
言っておきますが、私は名雪&栞ファンです。誤解されないように言っておきます。
題名は友人参加した演劇のタイトルからもじらせていただきました。
この作品は前半と、後半では文のタッチが違います。それは単に私の心理が途中で変わったからなんですが・・・。
みなさんは、この作品はダークな作品だとお思いになるのでしょうか。?それとも・・・
みなさんはこの後どうなったとお思いになりますか?
それを考えて欲しくてあそこで切っておきましたが、私ならこうします。
『開けてあった病室の窓から、冷たい風が入ってきた。彼女が眠った瞬間に一本の大きな真っ白い羽が舞い落ちた。
そして奇跡は・・・ここから始まる。』
と。
カッコつけすぎでしょうか?でも栞には幸せになってもらいたいですからね♪
それに、彼女はバットエンドは似合いませんから。
00.3.12 ORATORIO
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