「辛い風邪」
楊ゼンが風邪をひいた。
理由はというと・・・
まさに、彼らしいと言うか・・・彼らしくないというか・・・あれは、昔々・・・っつーか
昨日―――中国全土は、異例の雷雨に見舞われていた。
黄河は増水し、紂王を討つどころではなくなってしまった。
しかし、楊ゼンは増水どころでも、紂王を討つどころでもなかった。
今日は、好きな同人作家の出る、アンソロジーの発売日。
もちろん楊ゼンの好きな同人作家とは、「楊天」を専門に描く作家。
そのアンソロジーにも、当然「楊天」漫画が出るはず。
というわけで、楊ゼンは城下町の書店へ出かけたのだった。
西岐城から出た楊ゼンは、一刻もはやくアンソロジーを読みたいがために、雨がっぱを着た。
傘を差すよりも走りやすいからだ。
まだ、西岐には増水の被害は無く、楊ゼンはうはうは気分で書店へ走った。
そして、無事アンソロジー購入。(ついでに数冊の楊天同人誌も購入)
しかし、書店から出ると、道には天然の浅いプールが広がっていた。
空からは、バケツをひっくり返したような大雨が降り注いできた。
楊ゼンは、アンソロジーの入った紙袋に自分の着ていた雨がっぱをかぶせ、
雨の中をいつもの道衣一枚で西岐城まで帰還した。
そして、西岐城帰ってくるなり楊ゼンは、玄関で倒れた。
すごい熱で、太乙真人作の体温を計る宝貝が壊れてしまったほど。
まあ、豪雨の中を薄い道衣一枚で走ってきたのだから、風邪をひくのは当然だろう。
昨日はずっと昏睡状態だった。そして、昏睡状態のまま、一夜が明けた。
朝、楊ゼンはいつものように目が覚めた。自分の部屋の寝台の中で。
目が覚めるなり、天化の寝顔が寝ぼけなまこの視界に入ってきた。
天化は、一晩中看病してくれていたようだ。
寝台にひれ伏して小さな寝息を立てている。
楊ゼンは、天化を天化の自室に運ぼうとして立とうとしたが、
めまいに襲われまた寝台に寝そべった。
まだ熱が有るようだった。
「ごめん・・・天化君。もう一眠りする・・・」
とつぶやき、瞳を閉じようとした、次の瞬間――どっか―――ん!!!
すさまじい破壊音と共に、楊ゼンの部屋のドアが吹っ飛んできた。
「楊ゼ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!」
西岐城中に響く大声。
声の主は明白だった。
「道徳真君さま・・・」
楊ゼンは寝たままため息まじりに呟いた。
「おお!よく分かったな!しかし、俺だけじゃないぞっ」
確かに、道徳の周りには、数人の見覚えのある仙人達が立っていた。
道徳の両サイドに、太乙と雲中子。
太乙の隣に、玉鼎。
雲中子の隣に、普賢。
『こいつらが居ると絶対やっかいなコトになる仙人ランキング』で
いずれも上位に立つ仙人達だ。
「楊ゼン君が風邪をひいたって、白鶴から知らせが来てね。みんなで看病しに来たんだよ。」
太乙がにっこりと笑いながら言った。
「・・・・・天化君、あれだけの騒ぎでも、ちっとも起きないね。」
普賢が、まだ寝ている天化に近づきながら言った。
そして、天化の寝顔をのぞき込んで、頭をなでた。
「僕と同じくらい可愛いエンジェルスマイルだね。さっすが道徳の弟子♪」
などとワケのわからんコトを言いながら楊ゼンにもにっこりと笑いかけた。
楊ゼンも、頭の仲を?マークでいっぱいにしながら作り笑いを返した。
普賢の微笑みは、可愛らしいながらも、警戒しなければならない。
微笑みながら宝貝をぶっ放す。それが普賢なのだ。
しかも、楊ゼンと同じく天化狙い。
楊ゼンと普賢の仲は『恋敵』。
どうとっても、警戒しなければならない。「さてと・・・楊ゼン、私達が君の看病をするから・・・とにかく、ちゃんと寝てなさい」
と玉鼎が言い、楊ゼンに布団をかけ直した。
楊ゼンは、心の中で
「別に師匠達に看病されなくても、天化君が居るんだからいいのに・・・」
と呟いたが、せっかく師匠に甘えられるんだし、と気を取り直して、目をつぶった。
しかし、この仙人達がそんなに静かに看病なんか出来るはずがなかった。
太乙と雲中子は、壊れた扉を直す。
道徳は、声を掛けながら筋トレをしている。
玉鼎は比較的静かだが、天化の頬をなでたりして楊ゼンの気にさわっている。
普賢は、勝手に本棚から天化受け本を出し、勝手に読んでけらけら笑っている。
うるさいったらありゃしない。
頭の中でトンカチの釘を打つ音やノコギリで板を切る音がこだまする。・・・・・。
・・・・・。
楊ゼンは、眉の間にしわをよせて、耳をふさいでいた。
頭の中でなにかが切れる音。
「うるさい!!!」
気が付くと、大声で師匠達に一声叫んでいた。
楊ゼンの、かすれ気味の声が部屋中に響く。
仙人達は、びっくりして楊ゼンに注目した。
しかし、楊ゼンは寝ながら叫んでいるので、どーもすごみがない。
どちらかというと可愛らしかった。(・・・楊ゼン受け・・・?
「なにが看病しにきたですか!あんた達が居るからうるさくて眠れないんですよ!」
楊ゼンは、だんだん興奮し、次第に寝台の上で立ち上がっていた。
しかし、すぐにめまいで前につんのめりそうになった。
どさっと寝台に膝をついて、
「帰ってください。」
と言った。
仙人達は、無言で部屋から出ていった。(笑「・・・・・う・・・ん?・・・よーぜんさん?」
楊ゼンの大声に気が付き、天化がふいに目をさました。
「あれ・・・、ごめん、天化君。起こしちゃったか。」
楊ゼンは、膝をついたまま天化に言った。
「あ!よーぜんさん!!だめさ、寝てなきゃ!!!」
そう言って、楊ゼンの額に手をやった。
「まだ、熱あるさ!」
と言い、楊ゼンをムリヤリ布団のなかに押し込んだ。
そして、どこから持ってきたのか、濡れた手ぬぐいをさっきまで手のあった場所に置いた。
楊ゼンは、うるさい師匠達も帰ったし、何か強引な展開だが、コレはコレでいいと思っていた。(いいのか?
楊ゼンは幸せだった。この幸せがずっと続くと良いな、と思った。
しかし、幸せと言うのは、あまり長続きしないものだった。
コンコン・・・とドアからノック音が響いた。入っても良い、と承諾を得る前に、その人物は部屋に入ってきた。
その人物とは、
「太公望師叔・・・。」
楊ゼンがその人物の名を呼んだ。
「あ、スースv」
天化も、一拍遅れて太公望に飛びついた。
楊ゼンは、焦った。
天化が看病してくれると思ったのに、急に最大の恋敵が現れた。
天化には、ずっとここにいて欲しい。しかし、もう遅かった。
「おお、こんなトコにいたのか、天化。捜したぞ。」
太公望が静かに口を開く。
「黄河の増水をくい止める。手伝ってくれ。」
「えーっ!まだ雨降ってたさぁ!?」
天化はそう叫ぶと、楊ゼンの寝ている寝台の上に勢い良く膝をつき、カーテンを開けた。
天化の膝は、楊ゼンの腹に見事に命中。
楊ゼンは動かなくなった。というより、動けなくなった。
窓の外は、雨。
雨、雨、大雨。
天然のプールは、もっと深くなっている。
「しょーがないっさ!西岐の為に一肌脱ぐさ!」
天化は、子供のようにはしゃぎ、太公望と部屋を出ていった。楊ゼンは、精神的ショックのため、その後5日間自室から出てこなかった。
『こいつらが居ると絶対やっかいなコトになる仙人ランキング』で上位をキープする
仙人達に騒がれ、太公望に最愛の天化を取られた。
これは楊ゼンにとって、かなりの精神的ショックだったのだ。
_END_
何で、こーわけのわからんモノを書くかね、自分。
だって、別に道徳達は居ても居なくても良いじゃん。
この話のバアイ。でもー、ビミョーに出したくなった。ビミョーに。
まー、でもコレを書いて、猛烈に普天が書きたくなったので
いつか書く。よっしゃ!
封神の絵描けないからもっと描けない小説で頑張る・・・
見ててくれよ!!師匠!!!
俺はもっとハナシ書きを上手くなって帰るぜ!
・・・×千年はかかるでしょう。