始めに
私は普通に素人です。
ですので批評というよりはむしろ感想みたいなものを書くつもりでいます(タブン)。もし、それは違うんじゃないの。とか自分は
こう考える。という人がいましたら、BBSにでも書き込んでください。勉強になります。
没後500年 特別展「雪舟」 2002.May
《雪舟について》
1420年に備中(岡山)に生まれ、若くして京都の祖国寺に入り、禅と画の修行を修める。三十代には山口の守護大名・大内氏の
庇護のもと画房を営み、四十代後半の中国留学を経て、日本各地を遍歴後、1506年ころ没す。
《雪舟の作品を見て》
今回の雪舟展は、雪舟の作品を中心に彼が学んだ中国画も展示された。私の水墨画のイメージは、悟りの境地を極めた僧が自然を師と
崇めつつもそれに真正面から対峙し、力強く繊細な筆致で描写することであった。しかしその考えは甘かったようだ。
雪舟の筆運びは作品によって全く異なっている。これはさまざまな中国の画家の筆致を参考に描き分けているためであるが、それに
よりがらっと雰囲気が変わるのに新鮮な感動を受けた。しかしその作品群において、一貫して雪舟らしさは失われていないのが最も特筆
すべき点である。ここで私が何をもって雪舟らしいと言っているかというと、やはりその独特の筆致と画面の構成である。筆致は繊細で
あるというよりはむしろがさつで、荒々しい。そこに見出すのは悟りを極めた僧ではなく生身の人間である。部分部分に丁寧さが欠ける
のに、全体を見渡したときの作品の調和と格調の高さは見事であると思う。
日本を代表する画家の作品に出会ったことによって、もっと日本の画家を知りたいと思ったし、水墨画に非常に興味を持った。有意義で素晴らしい
体験となったことを嬉しく思う。
マルク・シャガール展 2002.June
《マルク シャガールについて》
1887年にヴィテヴスク(現ベラルーシ共和国)のユダヤ人居住区に生まれる。幼少時より画家や詩人にあこがれ、1910年にパリに出て
キュビスムやフォーヴィスムの作品に触れ、その資質を高めていく。その後ベラと運命的な出会いをし、1915年に結婚。
ベラとの生活を通して描かれた彼の作品は愛と情熱にあふれている。
1930年代後半、ユダヤ人であるシャガールの作品は、ナチスによって、「退廃的である」というレッテルが貼られ、ドイツでは多く
の作品が廃棄されてしまう。この頃から、聖書やキリストをテーマとした作品が増えてくる。
第2次世界大戦のさなかに、ナチスの迫害から逃れるためにアメリカへの亡命を余儀なくされる。そしてアメリカでシャガールを
待っていた悲劇が、最愛の妻・ベラの死であった。その悲しみは彼の作品からも見てとれる。多彩な創作活動を続け97歳で没す。
《マルク シャガールの作品を見て》
彼の作品を見てまず思うことは幻想的だということだ。鮮やかな赤、優しい黄色、深みのある美しい青を基調とした強烈な色群が、
効果的に配されている。その色達の中を牛や馬や羊や鶏、ときには人が飛び、画面にまるで夢の中にいるような趣を与える。
想像力豊かな作品には、現実の形式にこだわらずに、自分の内面を表現しようとする作風が顕著に顕れている。そういう作品は抽象的
で意味不明なものになりがちなのに、それでいて見る者を突き放したりせず、むしろ虜にするのはその色彩の絶対的な美しさ故ではない
だろうか。私の父がシャガールを好きなこともあり幼少のころから彼の絵を見る機会があったのだが、作品の意図はわからなくてもその色
が放つ強烈な存在感に圧倒されたのを覚えている。映像が容易に感動を与えるような段階において、作者の意図や構図などについて言及するの
は無意味であり、その絵が「何を伝えたいのか」考えるよりもその絵から「何を感じたのか」について見つめる方が大事なときがあると思う。
そんな絵画の存在意義について改めて考えることができて良かった。