■2001/11/30(金) 背中は綺麗なんだな。

「背中は綺麗なんだな。」

気がつくとサンジはゾロの背中に触れていた。
触れると言うよりは指でなぞるような微かな感触で背中の凹凸を確かめていた。
包帯を少しずつ解くと見えてくるゾロの背中。
打撲の跡はあっても、いわゆる「斬られた」傷は全くない。
体の表と裏ではまるで別人だ。

『背中の傷は剣士の恥だ。』
出会った時にゾロが吐いていた気障な台詞を思い出す。
それと同時に動転していた自分も思い出して、自嘲気味に笑った。

「…おい?」

背中を向けているゾロが少しだけ首を動かして、手の止まっているサンジを呼びかける。
サンジが新しい包帯を手際よく巻きかけると、ゾロは再び安心した様子で前を向く。

・・・こいつは、自分の体に傷をつけるのが好きらしい。
俺の知らない間に足に傷を付けていた…。
しかも自分でやったらしい。お釣りがくるほどのバカだ。

だが、背中だけは…。

俺が守ってやる。

再会した時、こいつは、笑えるくらい血を流していた。
ケガの状態が尋常じゃないって事くらい、パッと見でわかる。
しかし、そんな事を気にする暇もなく敵に囲まれた。
お前は俺に背中を預けた。
俺はお前の背中を守った。


・・・・たったの2秒だったけどな。

「てめぇ。俺に感謝しろよ。」
「ぁあ?てめぇで勝手におせっかい焼いてんだろ?」

こいつはまた、的外れに答えてきやがる…。
いや…。あながち外れちゃいねぇのかもな。
サンジの含み笑いも知らずに
ゾロは、背中を放り出せる安心感から
ゆっくりと瞼を落としていった。





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