若竹 presents
トワイライト勉強会
Twilight Study meeting
重力加速度 g |
いつのまにか恒例となっている2人の勉強会。
受験生であるサンジは、理数系教科の克服のために、ゾロと一緒に勉強しようと考えた。
ゾロが理系の教科は自分より良い点数を取ったりしているからだ。体育会系のくせに。
それにゾロなら受験組と違って、大学進学が内定しているので、気をつかう必要もない。
なかなかの名案である。部活が終わったゾロはサンジに誘われて、断る理由も無かったので勉強会という物に参加した。
ゾロとて、卒業のためにはそれなりの成績を残しておかないといけない立場なのだ。
しかしその勉強会とは、結果的にゾロがサンジの家庭教師となることであった。
サンジはゾロに数学やら物理やらの解答を説明させるのであるが
ゾロの苦手分野になると、サンジは「覚えろ。」の一言で済ませてしまうからである。ゾロから見ると「勉強会」というネーミングは間違っている。
ゾロの勉強は全くはかどらないからだ。
しかし、勉強会の後に出されるサンジの料理を前に、ゾロは不満など言えないのであった。今日は物理の日。
(と、勝手にサンジが決めた。)
サンジは問題集を開けて、苦手な公式をああでもない、こうでもない、とこねくり回していると
となりで嫌味なシャーペンの音がする。コツコツカリカリサラサラと聞こえてくる。
その音が気になって、よけいに考えが停滞していると、隣の奴は問題集の後ろを開けて
解答を見てやがる。頬杖をつきながら涼しい顔で解答を見終えた後は、自分の解答を直す
様子もなく、こちらを見た。その視線は「お前、できたか?」と言ってるように見えた、
というか、言っていた。「おい。この問題説明しろ。俺は物理は力学しかできないんだ。」
「は。物理なんざ、全部力学の応用だろ。」
(…そ、そうなのか?)ゾロは面倒くさそうに、説明を始めるが、はっきり言ってゾロの説明は下手だ。
自分では理解できていても、それを教えるのは苦手なようだ。
ただでさえ物理なんてこれっぽっちも興味が無い上、
ゾロの人を見下したような教え方に、サンジはみるみるやる気を失っていた。
顔は説明を聞いてるふりをしながらゾロの持っているシャーペンをぼんやり眺めているだけだった。「あとは、ここで出た値をあてはめたら終わりだ。」
ああ、説明が終わってしまったなー、と相変わらずぼんやりしたままのサンジは
既に頭の中は現実逃避の事でいっぱいだった。
サンジは自分の都合でゾロに物理を教えさせているのだが
ゾロの教え方の下手さや、えらそうな態度が気に入らなかった。
なにやら自分が「負けてる」ような気になるのだ。それは、ある意味正しいのであるが
負けず嫌いのサンジは、この不利な形勢を逆転させたいと考え出していた。
頑張って物理を勉強してゾロを見返す、という発想はとりあえず浮かばないようであった。どうも弱みの無さそうなゾロではあるが、硬派な剣道バカには
ちょっと色っぽい話でもすれば、体勢が崩れるかもしれない!と。
我ながらグッドアイデア!と。
物理を勉強しましょう。サンジ君。
「なあ、お前、キスした事あるか?」
「・・・はぁ?お前、何言ってんだ。突然。」
ゾロの表情が急に崩れるのをサンジは楽しんでいた。
「なぁ。どうなんだよ。
お前、興味無さそうな顔して、実はやりまくってんじゃ無いだろうなっ!」
どうだった?どうやったんだ?どんな風にやんだよ。はははは。」とても楽しそうなサンジに対してゾロはいたって冷静であった。
「…物凄い、現実逃避だな。」
「おいおい、お前、照れてんのかよ。何か思い出してんのか、このクソスケベ野郎が。」
「いい加減にしろ。」
確かにゾロの説明は下手だ。あれを理解するぐらいなら1人で解答を見た方が理解度アップかもしれない。
だからといって、ゾロなりにサンジのためを思って説明してるにも関わらず、このふざけた態度は何なのだろう。
ゾロは腹立たしく感じていた。しかし、ゾロが不機嫌になればなるほど、サンジは自分が優位にたってるような気になって、
余計に調子に乗ってしまった。「あ。もしかして、お前経験無いんじゃねぇのか?あー、そりゃ答えられねぇよなー。
せっかくお前がどんな顔でキスするのか想像して笑ってやろうかと思ったのによ。」勢いに乗ったサンジは、はしゃぎながら言いたい事を言い放つ。
しかし、ゾロの方も言われっぱなしであるはずが無かった。サンジの悪ふざけをどうにかしてねじ伏せたい…。
かといって、サンジに勉強をする意志が無いなら、勉強をどうのこうの言っても始まらないのは当然で。余りにもサンジが楽しそうなのが腹立たしいゾロは、こう切り返した。
「お前、そんなに見たいのか?」
一瞬、サンジは意味が解らなかった。
意味が解らないまま、ただ、なんとなく売り言葉に買い言葉っぽく適当に答えてしまった…。
「見せられるもんなら、見せてみろよ。」と・・・・。