若竹 presents
トワイライト勉強会
Twilight Study meeting

トマトリゾットは赤いお粥

しばらくするとサンジは軽い食事を持って2階に戻って来た。
温かい湯気と共に運ばれた赤いお粥はたちまちゾロの意識を食事のみに誘引した。
もともと無口なゾロではあるが、食事中は一言も話さない。
はふはふとリゾットを頬張る音が聞こえる以外はとても静かな部屋で
サンジだけが気まずい思いをしていた。

全身が凍り付く感覚からまだ解放されないで。
頭の中は真っ白で。いや、グレーに近いか…。
何から片付けていいか解らずに、目の前のリゾットだけが現実のような気がしていた。


食事の終わりが勉強会の終わりというのが通例である。
1人だけご機嫌に腹を満たしたゾロは「ごちそーさん。じゃあ、そろそろ帰るとするか。」と
立ち上がった。
サンジは少しホッとして「ああ。」と見送った。


次の日。

同じクラスのサンジとゾロが顔を合わすのは当たり前であるが
ゾロはいつも寝ているので、サンジがちょっかいを出さない限り
2人は言葉を交わさないのである。

勉強会というのも、サンジが勝手に開催してサンジがゾロを誘って成立するものなので
サンジが声をかけない限り存在しない。
毎日毎日サンジがゾロのもとにやって来ては「今日、勉強会来いよ。」だとか
「今日は、俺忙しいから勉強会は無しな。」とか一方的に勉強会のスケジュールを決めるのだ。

ゾロにとっては、1人の方が勉強がはかどる訳であるから、自分から勉強会の話を持ちかけることは無い。
もっともサンジの作る料理が楽しみで勉強会が無いとなると、それはそれで寂しい物だったりするのだが。


昨日の勉強会からサンジのモヤモヤは晴れるどころか深くなるばかりで
ゾロに声をかける切っ掛けを持てないでいた。
他愛もないことだ、と自分に言い聞かしながら、同時に感じる不快感とで混乱していた。
ゾロに対して怒りを感じているようにも思うし
逆に、ゾロを怒らせたような気にもなっていた。
自分が何にひっかかっているのかも解らず、几帳面なサンジは
答がみつからない事そのものにも不安を感じていた。
こんな曇った気分になるくらいなら、勉強会なんてやめちまおう。
そんな結論を出しかけては、いや、それじゃあ解決にならないだろう、と
堂々巡り。



実のところ…。

勘のいいサンジは自分の中に認めたくない感情が生まれた事に
気づき始めていた・・・。



結局、ゾロに声をかけること無く、サンジは1人で帰宅した。

一方、そんなサンジの葛藤を何も知らないゾロは
部活を終えた後、サンジの家に向かっていた。


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