+LOVE is the sin..+ chapter of DUNE 5 |
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シオンは、一言も交わすことなく、方舟に乗るとそのまま客室へ閉じこもった。 ・・・・・当然だ。あんなことした俺と、二人きりになりたいわけがない。 分かってるけど、心を切り裂かれるような哀しみを、消すことが出来なかった。
「ラミレス、月へ行ってくれ」 例え扉で隔てられているといっても、シオンと同じ場所にいるなんて、息が詰まって気が狂いそうだ。 俺は、一刻も早く月に着くことばかり考えていた。
「しかしヘンじゃのう? いつもだったらシオン殿もここへ来るじゃろう?
どうかしたのかのう?」 曖昧に応えると、後はラミレスが何を聞いてこようと黙りを決め込んだ。 俺が詳しく話したくないのだと悟ったらしいラミレスも、2、3質問した後黙った。 「では、月までヒトッ飛びと行くかのう」
地響きのような音をあげて動力部を稼働させると、後はラミレスの意識によるオートドライブだった。
今の俺に操縦を任せるのは不安だという、ラミレスの判断だろう。 「任せておけ」と言った割りに、ラミレスが余りスピードを出していないことに気付いたのは、 いくらも行かないうちだった。
「おい、ラミレス」 ついカッとなって怒鳴ってから、後悔した。この苛立ちは、ラミレスに対するものじゃない。 自分自身に対するものだ。俺の身勝手さに、俺自身がイライラしていた。 それをラミレスにぶつけてしまった。
「悪い・・」 うなだれる俺のつぶやきに、ラミレスは軽い笑いで応えた。 その後に続いた、諭すような、でも労るような言葉は、 張りつめていた俺の心を一気に弛める。
「シオン殿と話してきなされ」 情けないくらいうわずった声だった。 でも嗚咽を殺すのが精一杯で、声なんか気にできなかった。
「一体シオン殿と何があったんじゃ?」
ラミレスが、驚くこともなく返した来たことに、俺の方が驚きつつも、黙って頷いた。
「何でまた、男のシオン殿に・・・・?」 自分で口走って、初めて自分がシオンに許されたいと思っていたことに気付く。 何て・・・・何て図々しい人間なんだ、俺は・・・・!
「ダメだ・・・・許してもらおうなんて思っちゃいけねーんだよな。
自分のしでかしたことをずっとちゃんと背負って行かなきゃ・・・・。
そのくらい、当然の報いなんだ」 ラミレスの、困ったような溜息混じりのつぶやきが聞こえる。 「だ、そうじゃよ。何とか許してやってもらえんかのう、シオン殿?」
愕然とした。思わず顔を上げて、反射的に入り口の方を見てしまう。 「・・・・・・・・お前は、多分、サイゾウと一緒なんだな・・・・・」
思いもよらないくらい静かで穏やかな声だった。俺に対して、何の怒りもないような・・・・。 「怒ってないと言えばウソになる。でも、憎んではいねえ。 ・・・・・・・・だから、そのうち許せると思う」 それだけ言うと、シオンはきびすを返して出ていった。 「・・・・・・・・・・シオン・・・・・・・・・」
有り得ないと思っていた言葉が、事も無げに、しかもこんなに早く聞けるなんて・・・・。 「おお、デューン殿。そろそろ月に着くぞい。シオン殿に知らせてやってくれんかの?」
呆然としていた俺を、現実に引き戻す一言。
シオンは、月に着いたらきっと何も言わずに方舟を下りる。
俺が今ここで、シオンの後を追わなければ、何の言葉も交わせないまま別れることになる。 「シオン!」 シオンはすぐそこにいるのだというのに、とてつもなく遠くに離れているように思えた。 この、距離を詰める時間ですら、もどかしかった。 「・・・・何だ?」
当然、笑顔ではない。でも、迷惑そうでもなかった。もちろん、歓迎してもいないだろうが・・・。
「え・・・・・と、その・・・・・・・もうすぐ、月に着く」 辛うじて出来たのは、ラミレスの伝言を伝えることだけ。 「そうか」 シオンは興味のなさそうな顔つきでぽつりというと、客室へ戻っていく。
「あの・・・・シオン・・・」
シオンに聞いてもらいたいことは、山ほどあった。それを抑えきれずに思わず呼び止めると、
シオンは無気力な眼差しを、無言で俺に向けた。
「あ・・・あのさ・・・・・ありがとう・・・・・」 ふいと顔をそむけると、客室の扉の向こうへ姿を消した。
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一応[situation 1]の方が、最初からあった「Love is the sin」の続編なのですが、
別のヴァリエーションとして書いてみました。
そのせいか、「結局、何だったのよ?」な話でスミマセン。
すごい、未完っぽいですね、コレ(汗) ぽい、っていうより未完そのもの。
隊長とシオンの間に何があったのかは、秘密・・・つーかバレバレですね。 |
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