未明 SURLENT
  *
SION




  『虚空より来たる者』という、 いずれ私達が闘わなければならない相手のこととか。



  昨日こんな事があった、なんていう、とても他愛のない話とか。






 とりとめのない話をするうちに、シオンさんは子供のように、 座ったままコクリコクリと船をこぎ出す。

「シオンさん、もう休みましょうか」
「・・・・ん、あ・・・悪ぃ・・・大丈夫・・・・」
「大丈夫も何も、今にも寝てしまいそうな顔をしてますよ?」

 『ほら、こっちで休んで下さい』
 そんな親切ぶった口調で、シオンさんを寝室へと案内する。

 いつもはソークと二人で暖めているベッド。
 そこまでの僅かな道のりに、肩を貸す。
 シオンさんは、既に、その意識の半分以上が、眠りに落ちてしまっている。
 案の定、寝室まで辿り着く前に、その意識は完全に睡魔に飲み込まれてしまった。
 私の胸に顔を埋めるようにしてもたれ掛かってくる、その長身を支えながら、 子供をあやすように、彼の頬を飾る金糸に指を絡めた。

「シオンさん、起きて下さい。あと少しですから」
「・・・・・・う・・、・・・・ん・・・・・・・・・」
「仕方がないですね・・・・」

 もう、すやすやという穏やかな寝息しか返してこないシオンさんに、 思わず溜息が漏れる。


 でも・・・・・。

 そう、これは全て計画通り・・・。

 ソークの留守。
 そのタイミングを選んで、私は、止めどない話の聞き役に、と彼を呼んだ。

 否・・・・・。
 聞き役など必要なかった。
 必要だったのは、まさに『シオンさん』その人。

 彼が好んで飲む種のアルコールに、味を邪魔しない程度の希薄な睡眠薬を落とし込む。
 人を疑うことを知らない彼は、何の躊躇うこともなく私の勧めるそれで喉を潤した。
 私は、無駄な話に付き合わせ、彼に杯を重ねさせた。

 そして今腕に抱いているのは、力なく無防備に眠るシオンさん。


 逞しくも細い躯を包む着衣を、少しだけすべり落とす。
 なめらかな肌が着衣の滑落を妨げることはない。
 あっさりと露わになった肩が描く悩ましい曲線に、思わず息を呑んだ。


「・・・・・・・シオンさん・・・?」

 意識の有無を確認するために、顔を覗き込みながら呼びかける。

「・・・・・・・・・・・・・」

 薬が良く効いているらしく、シオンさんからの反応はない。
 口元が緩むのを感じた。



 そう・・・。
 今私が腕に抱いているものは、この上なく私の劣情を掻き立て、理性を雲散霧消させるもの。

 何度この身体を嬲る様を夢に描いたことか。

「・・・・貴方が、あの男を側へ置いたりしなければ、 私もこんなことはしなかったんですよ・・・、シオンさん」



 あの男・・・・・・4勇者の一人・サイゾウ。




 月での死闘より消息を絶っていた彼が、突然シオンさんの前に現れたのは、ほんの数日前。
 現れるだけならば良かったのだが、彼はそのままシオンさんの家に居着いた。
 そして、シオンさんもそれを拒むことなく受け入れた。

 あの男の、シオンさんを見る、汚れた眼差し。
 このまま行けば、シオンさんがあの男に穢されるのは時間の問題だと、目に見えて判った。




「・・・・・容易くは渡しませんよ」

 抱き上げた力無い四肢を、ベッドに横たえる。
 そのまま、その上に覆い被されば、安いスプリングが抗議の悲鳴を上げた。

「だって、今の貴方は、まだ誰のものではないんですから・・・・・」

 下肢を覆うものを剥ぎ取る。

 すらりと伸びる、なめらかでしなやかな脚。
 余分な肉のない、腰から下腹部のライン。
 そして、シオンさんが紛れもない男性だという証明。
 何もかもが、この上なく禁欲的で、しかしそれ故に、寒気を覚えるほどの色香に満ちている。
 目にするだけで達してしまいそうなほどの快感が、私の中心を走り抜けた。

 そっと絹のような肌に指をすべらせる。
 何の躊躇いも、気兼ねもなく、どんな場所にでも触れることの出来るこの瞬間に、 胸が歓喜で戦慄いた。
 唇を寄せれば、日向の匂いが鼻孔をついた。
 舌で確かめれば、ほのかな甘さが神経を痺れさせる。



 その身体の全てを探り、確かめ、味を知る。





 シオンさん、あなたがもし覚醒していたのなら、どんな声を私に聴かせてくれたんでしょう?
 どんなことをされたら、あなたは一番悦ぶんでしょう?
 何に歓喜し、どこに感じるんでしょう?



 あぁ、そうでした。
 急ぐ必要はないんですね。

 時間は、充分すぎるほどにあるんです。




 だってほら、外はまだ、夜明け前なのだから。


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+HOME+ 1996 (C)SQUARE Rudra's Treasure *** 2005 Presented by FU-ByKA
 サー様、どこまで確認しちゃったんでしょうね〜? それは彼のみぞ知る。
 キチクへの第一歩。表における程度に、軽く書いてみました。貴女はこんなサー様でも、OKですか?





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