小丑的抒情詩
3/3
0.index
「そんな虚言に僕が乗るとでも思ったのかっ?!!
キサマが無理矢理マサキを暴行したんだろう!!」
怒鳴りながら掴みかかる。
見せつけるように、シュウの身体が動いた。
マサキの身体がしなる。堪える寄る辺を求めて、シュウの首に縋り付く。
「マサキの意志ですよ。そうですね、マサキ?」
宥めるように、しがみつくマサキの髪を撫でる仕草が、手慣れているのが癪に障る。
だが、怒りよりも、マサキの答えの方が気になった。
マサキの意志などであるはずがない。
違うと言うんだ、マサキ。
お前が一言そう言ってくれれば、僕はお前がこの男から受けた苦しみを、何倍にもして返してやる。
「…ヤン…ロン…ッ」
シュウの首筋に顔を埋めたまま、マサキが呼びかけてきた。
その声は、痛々しいほどふるえている。
「マサキ、シュウに脅されているんだろう? そうなんだろう?」
「目…治って、良かったな…」
「マサキ、怒らないから正直に言うんだ。
シュウがお前を無理矢…」
「…これ…で、借り…返したから、な…ッ」
「……………………!!!」
ちょっと待て。
待ってくれ、マサキ。
それは…どういう意味だ?!
僕の目を治したかったのは、単に…貸しがあるのが嫌だっただけなのか?
「これで分かったでしょう? ここにはもう用はないはずですから、
帰って頂けませんか? 見られていると、マサキが恥ずかしがって緊張するものですから、
きつくて仕方がないんですよ」
「キサ……っ!!!」
「貴方は、マサキがどれほど佳い器か、確認しようとはしなかったようですね。
何でしたら、一度くらい試してからお帰りになりますか?」
「い…イヤだっ! シュウ、嫌だッ!」
はっきりと拒絶する言葉。
頭に昇った血が、しんと冷えた。
…マサキ…、お前にとっての僕は…。
「ヤン…ロンっ! もう…帰れよっ! 早く!」
「……………………」
「シュウ! てめぇも…ッ! 手…ぬいてんじゃねぇ!」
「おやおや、見られている方が感じるんですか、マサキ?
たった3日で、随分と淫らな身体になってしまったんですね?」
「…うっせ…、も…と、ちゃんと…犯れ…ッ!」
「お望み通りに…」
「あ……、んっ! やぁ…ッ、んッ! ぁんッ!
あ…、シュ…ウ…、シュウッ!」
シュウに責められて苦しむどころか、マサキは反対に痴態を晒した。
たどたどしくも淫らに腰をくねらせ、恥ずかしげもなく濡れた嬌声をあげる。
ただ、かけがえのない程に大切なだけだった。
抱きたいと思った事がないと言えば、嘘になる。
だが、それ以上に、お前が大切だった。
僕の欲で汚すなど、思い付きもしないほどに。
シュウよりも先に、お前を抱いていれば、僕はお前を失わずに済んだのか?
シュウではなく、僕を選んでくれたのか?
それとも、お前にとって僕は、最初から選択肢にも上らないような存在だったのか?
僕が掴んで放さなかった腕を放せば、お前はもう泣いたりせずに幸せになれるのか?
もしもそうならば、僕は…。
僕は道化役に甘んじよう。
だから、僕のいないところでも、お前はいつも笑っていてくれ。
お前のために。
僕のために。
::: 了 :::
大切すぎて、想いの伝え方が分からなかった。
でもそれで君が幸せなら、それでいい。
ヤンロンはとても優しくて、そしてとても不器用だっただけです。
1996
(C)BANPRESTO
/WINKY SOFT
2006
Presented by
FU-ByKA
0.index