ラウラの詩
〜前編・6/7〜
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「…ヤン…ロン…ッ」
「マサキ、シュウに脅されているんだろう? そうなんだろう?」
ヤンロンの声、怒ってるせいかな? いつもより荒っぽい。
それなのに、何かすごく優しいな。
『シュウに脅されている』って…。
それって俺の意志じゃないんだって、そう、俺のこと信じてくれてるってコトだよな?
ヤンロン、ちゃんと俺のこと分かっててくれるんだ。
それってすごく嬉しいな。
でも…。
何で今、そんなこと言うんだよ?
そんなこと言われたら、俺の決心がぐらついちまうじゃねぇか。
俺だって、別れなんて言えない。言いたくない。
ここへヤンロンを連れてきた時みたいに、ヤンロンと一緒に帰りたい。
今ここで、洗いざらい全部をぶちまけちまいたいよ。
「ヤンロンの目を治したくて、シュウにこんなコトされてるんだ」って。
「言うことをきかないと、ヤンロンの目を治さないって脅されたんだ」って。
言ったら、ヤンロンは「なんて卑劣な手を使うんだ!」って、俺のために、
本気で怒ってくれるかな?
シュウと戦ってでも、俺のこと助けてくれるかな?
言っちまおうかな?
言っちまいたいな…。
でも、言わない。
俺、決めたから。
ヤンロンが今まで俺を見守ってくれたことへの、俺に出来る最後のお礼だから。
ごめんな、ヤンロン。
俺、何もしてあげられなくて…。
俺じゃきっと、ヤンロンの呪いは解いてあげられない。
でも俺がシュウの言う通りにしてたら、もしかしたら、シュウの気が変わって、
呪いを解いてくれるかも知れない。
…だから、俺、シュウの言う通りにするよ。
ヤンロンが死んじまうなんて、俺、絶対にイヤだから。
ほんの少しでも望みがあるなら、俺に出来ること、全部しておきたいから。
「目…治って、良かったな…」
「マサキ、怒らないから正直に言うんだ。
シュウがお前を無理矢…」
ヤンロンのバカ野郎。
なんでこんな時だけ、そんなに優しいんだよ…。
そんなの、俺、すごく辛くなるじゃねぇかよ…。
「…これ…で、借り…返したから、な…ッ」
ヤンロン。
今までありがと、な。
涙が止まらなかったけど、シュウにしがみついて、全部シュウの服に吸わせた。
「これで分かったでしょう? ここにはもう用はないはずですから、
帰って頂けませんか? 見られていると、マサキが恥ずかしがって緊張するものですから、
きつくて仕方がないんですよ」
得意げなシュウの声が、俺の言葉を決定的なものにしてる。
「キサ……っ!!!」
「貴男は、マサキがどれほど佳い器か、確認しようとはしなかったようですね。
何でしたら、一度くらい試してからお帰りになりますか?」
その、シュウの言葉を聞いた瞬間、心臓が止まりそうにギュッと縮んだ。
「い…イヤだっ! シュウ、嫌だッ!」
抱かれたりしたら、今の俺がどんなに汚いか、全部バレちまう。
俺がこんな身体だって知ったら、ヤンロンはきっと俺のことを軽蔑する。
汚らわしいって思われる。
絶対に嫌われる。
こんなヤツだったのかって、失望される。
構ってやろうなんて、二度と思ってもらえなくなる。
それだけは絶対に嫌だった。
「ヤン…ロンっ! もう…帰れよっ! 早く!」
だから、必死だった。
「シュウ! てめぇも…ッ! 手…ぬいてんじゃねぇ!」
「おやおや、見られている方が感じるんですか、マサキ?
たった3日で、随分と淫らな身体になってしまったんですね?」
はしたなくて見苦しい姿を晒せば、ヤンロンは居たたまれなくなって、
すぐに帰ってくれるかも知れない。
「…うっせ…、も…と、ちゃんと…犯れ…ッ!」
「お望み通りに…」
俺が、シュウの言葉どおり、自分の意志でシュウに抱かれているように見られれば、
少なくとも、俺がどれ程汚いかってことはバレなくて済む。
「あ……、んっ! やぁ…ッ、んッ! ぁんッ!
あ…、シュ…ウ…、シュウッ!」
だから、わざと気の違ったような声を出した。
シュウの動きに、自分から応えたりした。
無我夢中で、目一杯醜態をさらした。
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