ラウラの詩
〜中編・3/6〜

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「中途半端な同情なら、要りませんよ。 あなた方に返された呪詛程度ならば、治癒魔法で簡単に癒せますからね」

 「この程度のことで、何をそんなに驚いてるんだ、下らない」っていうような顔で、 嘲笑いながら、シュウは俺を見ていた。

 でも、違う。
 いつものシュウの笑い方じゃない。

「俺…、どのくらいここにいた?」
「そんなもの、わざわざ数えたりしていませんよ。 お知りになりたいのならば、さっさとここから出て、自分で確かめたらどうです?  外に出れば、いくらでも貴方に日付を教えてくれる媒体があるでしょう?」
「べつに正確な数字が知りたいんじゃねぇよ。 俺がここにいたの、1日や2日じゃないよな?」
「いい加減に煩わしいですよ、マサキ?  そうだったら何だと言うんです?」

 何だろう。胃の辺りがむかむかする。ものすごく不快だ。

「その間、ずっとお前が俺のこと、世話してくれた」
「………………」
「俺が何も食べようとしないから、お前が食べさせてくれた。 身体も拭いてくれたし、着替えもさせてくれたし…」
「………勝手におかしな夢を見ないでくれますか?  何故私が貴方にそんなことをしなければならないんですか?  私にとって、貴方などただの退屈しのぎで…」

 何で、こんな気分が悪いんだろう。

「ウソ付くなよ!! 俺、ちゃんと覚えてるんだからな!  お前がどんなふうに俺の世話してくれたか、答えもしない俺に、 どれだけ一生懸命話しかけてくれたか…!」

 何で、こんなにイライラするんだろう。

「昨日だって、外に連れてってくれた!  俺に、サイバスターを思い出させるために、わざわざ風に当たらせてくれた!」
「やれやれ…貴方は、 夢の中で随分と私を労働させているんですね」
「ホントの事言えよ、シュウッ! 昨日まで普通に俺に触ってたじゃねぇか!  呪いって、そんなあとから遅れて効いてくるもんじゃねぇだろ!?  今のは、俺たちが返した呪いなんかじゃないんだろ?!」
「もう少し静かに喋ってくれませんか、マサキ。 貴方の下品な怒鳴り声に耐えられるほど、私はがさつには出来ていないんですよ」
「シュウッ!! いい加減にしろよ!!!」

 カッとなって、気が付いたら怒鳴りつけてた。
 シュウは、冷たい目で俺を睨んだだけだった。

「ここでは、そのように静寂を破壊する行為は、最も憎むべきものです。 次はありませんよ?」

 だけど俺の苛立ちだって、そんな脅しめいた言葉程度じゃ収まらない。

「うるせぇ! シュウッ! 俺はお前が許せねぇんだよっ!」
「ほう…? 許せなければ何をすると?  その脆弱な身体で私に向かってきますか? 言っておきますが、容赦はしませんよ?」
「そんなこと言ってンじゃねぇ! 何でウソ付くんだよ!  いつまでも偽物の顔、貼り付けてんじゃねぇよ! 俺はな! どんなに小さいことでも、 お前が自分から『シュウじゃなくなろうとする』なんて、許せねぇんだよ!」

 怒声にして吐き出して、初めて自分の気持ちに気が付いた。
 そうなんだ。俺は、シュウが自分を偽ってるのが許せないんだ。
 あんなに一生懸命『シュウ』であろうとしてるはずのシュウが、 シュウじゃない『シュウ』を演じるなんて、絶対にあっちゃいけないことなんだ。 

「………………」

 怒りで興奮してドキドキ言ってる自分の心臓の音を聞きながら、俺はシュウを見た。
 シュウは、ただ立っていた。何ごともなかったように、無表情で。 でも、その後ゆっくり眼を閉じて、少しうつむき加減で深く溜息をついた。




「貴方を…愛しています」


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