ラウラの詩
〜中編・4/6〜

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「…………え?」

 話がいきなり過ぎて、反応が遅れてしまった。
 そんな俺の様子を気にすることもなく、シュウは勝手に話し続ける。

「貴方を愛しています。今までも、今も、これからも…。 ですが、私が貴方を求めるということは、貴方の心を壊すことなのだと、知りました」
「……シュウ…?」
「ですから、もう二度と貴方に触れることが出来ないように、 私自身に呪いをかけたんです」
「な……ッ!」
「マサキ…、貴方には、私の一方的な感情を押しつけて、 とても酷いことをしてしまいました。それを赦してもらおうなどとは思いません。 ただ…せめて、貴方を想い続けることだけは、許して下さい」
「あ……、俺……」


 どれ程の想いかなんて、俺には全然分からなかった。
 そもそも、言葉で程度を表せるくらいの想いじゃないのかも知れない。

 分かるのは、絶対に自分を偽らないシュウがウソをついたってことだけ…。
 俺のために…。

 なのに、俺、なんてヒドいヤツなんだろう?
 シュウを傷付けようとして、乱暴な言葉をたくさんぶつけた。
 俺の言葉はどのくらい、シュウに心に刺さってしまったんだろう?

 自己嫌悪に駆られてる俺の前で、シュウは伏せていた瞼をあげる。

「これで、満足ですか?」

 ゆっくりと俺の方を見る目は、凍り付いているように、表情がなかった。

「こういう言葉を私から聞きたかったんでしょう?  貴方のご要望通り、言ってあげましたよ。これで気が済んだでしょう?  さっさと出て行ってくれませんか?」
「………………」

 涙がこぼれた。泣いてる場合じゃないと思ったけど、止まらなかった。

 シュウが、泣いてる俺を煩わしそうに見る。
 でも、それさえも演技なんだと分かった。

 シュウは俺のために、俺に興味が無くなったふりをし続けてる。
 俺が自分を責めたりしないように、「シュウが全て悪いんだ」っていう逃げ道を作ってくれている。

 不器用に、本当に不器用に、シュウは優しかった。

 今だけじゃない。

 今までだって、そうだった。

 乱暴だったのは、本当に初めだけ。

 状況は俺にとって辛いものばかりだった。
 たくさん、冷たい言葉を浴びせられたりした。
 でも、その中でだって、ちゃんとシュウは俺を大切にしてくれてた。

 ただ、俺がそれを受け入れようとしなかっただけで。

 俺はすごく強く深くシュウに愛されてたんだって、やっと気付いた。

 それなのに、俺は、頑なに心を閉ざして、そんなシュウの想いを見ようともしなかった。

「…ごめ…ん…、シュウ…俺…ごめん…ッ」
「……何です?」
「俺…約束したのに…、シュウのこと…好きになるって…、 なのに…」
「あぁ。あの馬鹿馬鹿しい約束ですか。 あんなもの、最初からまともに取りあってなどいませんよ」
「……え?」
「やれやれ…どこまでも知能が足りないようですね。 考えてごらんなさい、マサキ? 人は、約束や義務で人を愛するものではないでしょう?  ですから、あのような約束は、最初から不履行が前提になっているんですよ。 そんなことも分からないんですか?」

 態度は高圧的だった。
 俺をバカにするような言葉ばかりだった。
 でもその下で「約束のことなど、気にすることはない」って、そう言ってくれてる。

「俺…シュウのこと…、嫌ってなんかない…」
「……マサキ、いい加減にしつこいですよ?」
「俺…ずっと、お前の背負ってるもの、 少しでも代わってやれたらって思ってた」
「…………」
「お前のこと誤解してるヤツがいて、お前を悪人呼ばわりされると、 すごく腹が立った。お前はそんなヤツじゃないって、すごくすごく…」
「それはそれは…ありがとうございます、マサキ。 こんな私のために憤ってくれて」
「そんな言い方するなよ!」

 いつまでも皮肉っぽい、ひねくれた反応しか返してくれないシュウに苛立った。
 そんなコトしないで欲しい。
 もう、自分を偽るような真似、やめて欲しい。
 そうやって、自分じゃない自分を演じることが、どれ程シュウ自身を傷付けてるか分かるから。


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