Sonnet de clown
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同じ想いを抱く者ならば、その些細な言動から相手を感情を量ることは容易だ。
見る限り、ホワン=ヤンロンの、マサキ=アンドーへ向けられた感情は、
私と同じ種類のものだった。
マサキに対して、言葉にすることはなかっただろう。それはマサキを見ていれば、判る。
しかし、彼がマサキを愛していることは、間違いなかった。
不必要なほどに構い、叱り、すぐに手の届く距離からその無鉄砲を見守り…。
なのに…。
あれだけ近い距離にいたというのに。
マサキは…、まだ「男」を知らなかった…。
「抱けるものを、抱かなかったと…?
それほどに愛している、と…?」
何故、あなた方はそうまでして、私の想いがあなた方に遠く及ばないことを突きつけるのですか?
私とて、これほどに想いに苦しめられているというのに…。
まだ、足りないのですか?
どうしてそこまで私を責めるのですか?
好きだというだけでは、いけないのですか?
ただ一途に想い続けるだけでは、駄目だというのですか?
これ以上、私に、どうしろと言うんです…?
どうしようもない。
この上更に何をすればいいかなど、もう私には分からない。
全て手に入らないのならば、一部だけでも手に入れれば、もうそれでいい。
ホワン=ヤンロン。
貴男がいけないのですよ。
私に勝ったりするから。
私よりもマサキを愛していたりするから。
だからマサキが、こんな酷い目に遭うんです。
拒絶を叫ぶ声は、全て無視した。
慣らしもせずに無理矢理交わる。
傷が酷くなれば、魔法で癒し、弱って意識を失えば、薬で強引に体力を回復させる。
汚れを知らなかった身体を、思うさま曝き、犯し、蹂躙した。
3日もの間、一度もこの腕から放すことなく。
その間、マサキはただ痛みに苦しむだけだった。
一度として悦びを表すことなく、泣き叫び、声を嗄らすだけだった。
しかし…。
3日目の朝。
唐突なほど突然に、マサキは、私と共に上り詰めた。
「は…ぁ…、…う…ッ?」
「ようやく悦んで下さいましたね、マサキ?」
「…え…?」
自らがした行為にも怯えるように、マサキはおそるおそる自分の下肢を確かめた。
「…あ…、そんな…俺…ッ」
「果てる貴方の顔は、とても綺麗でしたよ」
言葉で嬲るためではなく、愛おしさを伝えるために優しく囁く。
ようやくマサキから身体を離し、私の情欲に汚れた身体を、上掛けでそっと包む。
「あ…、う…ッ、うぅ……ッ」
「すみませんでした、マサキ。
ですが、これも全て、貴方が愛しくてしたことなんです。分かってくれますね?」
マサキは、私の言葉に答えることなく、頭まで上掛けにくるまり、
うずくまるようにして震えている。
そんなマサキを宥めるように、そっと背中を撫でた。
「マサキ、少し休んで下さい。
その後、彼をここへ呼んで、目の治療を…」
「………………ッ」
「……マサキ?」
小刻みに震えていた身体が、一度びくん、と大きく跳ねた後、突然弛緩した。
どこかただならない気配を感じて、咄嗟に上掛けを剥ぐ。
ぐったりと身を投げ出して、険しい表情で瞑目するその口元に、赤い糸が見える。
「…マサキ…? …マサキ!
貴方、まさか舌を…ッ!?」
強引に口を開かせた途端、おびただしい鮮血が溢れ出た。
その赤さが、初めてマサキを犯した時の赤と重なって見えた。
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