オレは気合を入れていた。 ケー番とアドレスを昨日別れる前にゲットしたから、早速メールで誘いをかける。 だが『約束がある』だってぇ? 誰とだよ! あ、妹か、携帯で言ってたし。 そんなら明日・・・あー明日はオレが6コマ目まである日じゃねーか、チッ。 んじゃ明後日か。 明後日って土曜ジャン。 うし!一日中一緒にいられるぞ! 何なら泊まりだって・・・はさすがに無理だとしても。 え?土日はダメ? そ、そんなぁ・・・冷たい・・・ デートと言ったら休みの日だろ? オレとは一日中一緒に居たくないってか? いやいや、それはネガティブに考え過ぎだ。 ポジティブに行こう! じゃ、月曜は・・・おっし!OKもらったぁ! ふっふっふ・・・待ってろよ〜絶対に昨日の雪辱を果たしてやる! なんせ、バッチリ練習したし準備も万端・・・いやいや、ホテルに行かなくたってカラオケでもゲーセンでも、なんならドライヴでもいいよな。 そーだ、いいよなドライヴ。 高校生同士じゃ出来ない大人のデートが出来るぞ。 日曜に車磨いとかないと。 携帯を握り締めながらオレは思わず頬が緩んでいたらしい、通りがかったダチに突っ込まれた。 「なにニヤけてんだよ、カズ、気味悪りぃなぁ」 ほっとけ! 「いーだろ別に。あ、前に言ってたノート、ホレ」 オレは機嫌がよかったので、以前頼まれていたノートを差し出してやると、ソイツは怖い物でも見たような顔をして一歩下がった。 「い、いつもは『ノートぐらい自分でとれ』とか言って絶対に貸さないオマエが!何かの天変地異の前触れか?」 「いらないなら別にいいけど」 失礼なソイツの言葉にオレはノートを仕舞おうと引っ込める。 「いや、いります!貸して下さい!」 立っていたソイツは座っているオレの頭よりも更に低く頭を下げて手を差し出した。 優しいオレ様はポンと気前よくソイツの手にノートを乗せてやる。 「はは、有り難き幸せ・・・コレで次のレポートは完璧だ!ところでホントにどうしたんだ?オマエが他人にノートを貸すなんて。よっぽどいい事でもあったのか?」 「んん?べっつに〜」 そう言いながらもオレは込み上げて来る笑いが止まらない。 いい事ならあったさ。 そりゃもう、テンコ盛りで。 「あ、分かった!こないだのコンパで一番人気をお持ち帰りしちゃってスゴクよかったとか?」 ナンだソレ。 オレは今までコンパに出てお持ち帰りなんてしたことネェぞ。 「違うのか?じゃあ、アレか?この前声を掛けられた金髪美人のお姉さんと上手くいっちゃったとか?」 オレがどんだけ女遊びしてると思ってんだコイツ。 第一、声を掛けてきた金髪美人は正真正銘血の繋がったオレの姉貴だっつーの。 「・・・ノートいらないんだな」 オレが低い声でそう言うと、ソイツは慌ててノートをしまった。 「なんだよ、さっきまで機嫌よかったのに・・・俺、ナンか悪いコト言った?」 言ったとも! でも、自業自得かもなぁ・・・そー思われてんのも。 オレは今までの自分をちょっと反省した。 コンパや飲み会には誘われれば出てたし、女の子を回りに侍らせてよく騒いでたけど、それはその場限りで特定の誰かと付き合った事がないから『一夜限りの恋』をしてるって思われてんだよな。 そしてその噂をあえて否定してこなかったのも事実だし。 生活態度を改めるべきか? いや、改めるまでもなくもう既にオレの時間の優先順位は変わってるけどね。 日曜日、オレは浮かれて愛車を洗っていた。 免許は大学に入ってすぐに取った。 先々必要だと思ったから。 実際、役に立とうとしてるし。 車もクソ親父にねだって買って貰った。 文句も言われずに外車のスポーツタイプを買ってくれた。 気前がいいよな、ホント。金払いだけはいいんだアイツは。 遠慮なく乗り回しているオレが言うのもナンだけど。 大金をクソ親父から引き出す為にねだった車だったけど、実はとっても気に入ってる。 夜中に高速とか飛ばすと気持ちイイし、いい憂さ晴らしになるから。 加速がいいんだよな、コイツは。 「ご機嫌だね兄貴」 調子付いて思わず鼻歌なんぞを歌っていたオレは弟の声に振り返った。 見れば弟の靖治が不貞腐れた様な顔をしてオレを睨んでいた。 「そーゆーオマエはご機嫌ナナメだな、ノブ」 まったく、コイツは昔からすぐ顔に出るんだから判り易いったらないぜ。 多分、原因はこないだのパーティなんだろう。 お目当ての女の子がまた来てなかったらしいから。 静香が笑いながら教えてくれた情報によると。 「どうだっていいだろう?俺の機嫌なんか」 あらら、相当ご機嫌ナナメなのね。 折角、希望通りの大学に入ったばかりなんだから、もっと大学生活を楽しみゃいいのに。 いつまでも同じ女の子なんか追っかけてないで・・・って今のオレには言われたくねーかな? 「ま、そー不貞腐れんな。しょーがねーだろ、新入社員の研修合宿じゃ」 ノブのお目当ての女の子は親父の会社の社員の娘で、昔から社員の慰労用に開催されているパーティで知り合ってから後をついて回って追いかけていたらしいんだが、ここ数年参加してこなくなった。 でも、今年新入社員として親父の会社に入ったから今度こそ絶対に出てくると踏んでいたノブだったが、残念ながら研修合宿期間と重なって不参加と相成ったらしい。 「ち、違う!俺は・・・そんなんじゃなくて・・・いつまで兄貴がリタイアした振りを続けるのかと思って・・・」 顔を真っ赤にしながら叫んだノブの語尾が小さくなっていく。 リタイアした振りねぇ。 「オレはとっくにリタイアしてるつもりだけど」 クソ親父の跡を継ぐつもりなんてねーし。 オマエだってオレが卒業した後、どーするつもりなのかご存知のはずでショ。 オレがいる学部をどこだと思ってんの? 経済じゃないんだぜ法科だぜ法科。 「・・・それは・・・兄貴がそのつもりがないのは知ってるけど、親父は諦めてないんだよ。俺の進路について文句を言わなかったのがいい証拠じゃないか?それに・・・」 ノブの言葉の歯切れが悪い。 「ナンか言われたのか?」 あのクソ親父に。 「・・・見合いしろって言われた」 ほぉ、それはまた。 「資産家の跡取り娘で、俺が婿に入れば兄貴の為にもなるって・・・なぁ、親父にはお見通しなんだよ。兄貴が遊び歩いてる振りをしてるのなんて。だからもうそんな振りはやめてくれよ!成績を落とした事もないくせに遊んでるだなんて誰も信用してないんだからさ」 う〜ん、するとナニか?ノブが腹を立てているのはオレが遊びに熱中している振りを続けている事なワケ? 愛車を磨いてるだけでそー言われるとは、オレも大概信用がねぇなぁ。 でもさ。 「オレが真面目になったところでオマエの見合い話がなくなんの?」 ノブは言葉を詰まらせた。 そーだろ? オレが真面目な振りをしておベンキョに励めば、また周りが煩くなるだけじゃねーの? 「見合いが嫌ならはっきり断れよ。オレもオマエも跡を継ぐつもりなんてネェってはっきり言ってやれ!もう一人のヤツに継いでもらえりゃイイだろ?」 そのおつもりでいらっしゃるようですし。 「でも、親父が今まで一度も俺たちに期待した事なんてなかったから・・・育てて貰ってるし」 ふざけた事を言い出す奴だな。 「育てて貰ってるだと?金を出しただけじゃねーか!アイツは自分で義務と責任があるって言ったんだぜ。オレ達が独り立ちするまで思う存分金を出させりゃいいだろ?それで気が済むんだろうしさ」 オレは思わず熱くなってしまった。 ダメだな・・・オレもまだまだだ。 「・・・もっとも、オマエが好きな女を諦めて親父の望む通りに見合いがしたいってゆーならオレは止めるつもりはネェけどな。好きにしろよ」 オレはそう言い放ってノブに背を向けた。 ノブはガタイがデカく育っちまったが少し気が弱くて優しいヤツだから、あんな親父でも育てて貰ったなんて恩義を感じてるんだろう。 確かに今まで親父はオレ達に期待した事なんて一度もなかった。 小中と学校は指定されたが、高校からは進路について何も口を出さなかった。 試されていたと言われればそうかもしれないが、オレの時もノブの時も受験した学部についても文句を言わずに金を出した。 自由である反面、何も期待されていないと言う寂しさがノブにはあったのか? オレは・・・オレは嬉しいのか? ノブが言った『兄貴の為にもなる見合い』を親父が言い出したのが? 今まで一度も親父本人から跡を継げだなんて言われた事がなかったのに。 そのつもりなのか?親父は。 いや、オレには跡を継ぐつもりなんてないんだ。 来年には司法試験を受けて弁護士か検事になるつもりだし。 ダメそうなら公務員だっていい。 とにかく卒業したらこの家を出て行くんだから。 オレはこの時、ノブの見合い話はオレには全然関係無い事だと思っていた。 なにしろ相手が誰だかノブははっきり名前を出して言わなかったし、その後もオレの機嫌を損ねるのを恐れてその話題を二度と口にしなかったから。 月曜日、オレは少々緊張しながらまたしても校門の前で彼女が出てくるのを待っていた。 車で待ってた方が良かったかな? でも、路駐はマズいだろ? コインパーキングに止めてある車まで彼女が来てくれるかどうかわかんねーし。 逃げられたら困るし。 オレの心配を余所に彼女はこの前と同じように1人で校門を出て来た。 ツルむ様な友達がいないのか? 余計なお世話か。 「よっ!」 この前と同じように手を上げると、今度はちゃんとオレを無視せずにこっちに来てくれた。 オレを見て笑顔になった訳ではないしこの前と同じ無表情だけど、なんだか嬉しいぞ! 「車で来てんだけど、どっか行きたいトコとかある?」 お嬢様のお好きな所へとお連れしますよ、自慢の愛車で。 チャラチャラっとキーを振ってアピールしたのに。 「この前と同じ所へ行くんじゃないんですか?」 え?いきなりソレですか? いや、最終目的地はそのつもりですけど、もっとこうデートっぽい事をしませんか? 「ドライヴしたくない?」 海とか山とか・・・山は今日は無理だろうけど海ならなんとか行けるぞ。 「別に」 相も変わらぬ無表情でそう仰る。 そ、そーですか。 「カラオケとかゲーセンでもいいんだぜ」 キミの好きな場所へ付き合います。 「どちらでも」 あっそ、どっちもキョーミなさそうね。 「なら、行くか」 この前と同じ所へ。 さすがにこの前と同じラブホというのも芸がないので、もちっとシャレた所をチョイスしてみました。 可愛い内装と風呂がご自慢のファッションホテルとかゆーヤツ。 「シャワーどうする?先に入る?それとも一緒に入る?」 オレは内心の緊張を悟られないように茶化す様に明るく訊ねた。 2回目とはいえ、まだ少し慣れてないからな。 心臓はバクバクだぜ。 「では、お先に」 あ、やっぱ一緒はダメですか。 ちょっとだけ期待したんだけど。 じゃあ準備でもしときますか。 携帯に財布をポケットから出してベッドの傍に置いて。 この間は用意しそびれたブツを、ええっと・・・やっぱベッドサイドか?枕の下か? 風呂場からは水音が聞こえる。 ダメだ、落ち着け! そーだ!ビールでも・・・飲んだら乗れねーよ! それに酒臭いって嫌われたらどーする! はぁぁ・・・それにしても彼女がホテルをご所望とは・・・そんなにこの前最後までしなかったのが不満だったのかな? それとも、オレが遊んでるように見えるからそれなりの付き合いだとでも思ってんのかな? この恰好が軽く見えんのか? 真面目なカッコしたら真剣に付き合ってくれんの? オレが悶々と悩んでると、彼女が風呂場から出て来た。 うん、相変わらずイイ身体してるよな。 「お先に失礼しました」 おお、さすがお嬢様。 ご丁寧なご挨拶、痛み入ります。 ベッドに腰掛けたまま動かないオレに彼女は「シャワーを使われないんですか?」と聞いて来た。 そんな彼女をチョイチョイと指で呼び寄せてベッドに押し倒す。 「今回はオレがシャワー使わなくてもいいよな?」 今日はあんな事して欲しくないし、それに第一待ちきれません。 緊張と欲望でオレ、もう限界に近いし。 いきなり押し倒されて眼を見開いていた彼女だけど、黙って頷いてくれた。 「葵・・・」 やはり緊張して身体を固くしている彼女に優しく名前を囁いてキスをする。 ん〜コレです、コレ。 柔らかくって甘くって酔っ払いそうな彼女の唇。 キスを何度も繰り返しながら彼女のバスタオルを外した。 あらら、やっぱりコレだけってワケじゃないのね。 しっかり下着は身につけてる。 ま、そりゃそーか。 それでも露わになった胸へと手を伸ばす。 んん〜デカイよな、相変わらず。 やわやわと揉んで柔らかくて弾力のあるその感触を楽しむ。 舌を絡ませるキスをしながら。 彼女は慣れたのか、キスの最中も苦しそうにはしていなかった。 上手く息継ぎが出来てるみたいだ。 それでも興奮してきたのか、顔が赤く息継ぎも苦しそうになってくる。 もっと感じて、気持ちよくさせたげるから。 「はぁっ」 大きく息を吐く彼女の胸へと舌を這わせる。 この前も感じてた乳首へ吸い付く事はもちろん、感じやすそうな脇も舐めてやる。 「やん!」 くすぐったいのか彼女が短い悲鳴を上げる。 『やん』だって『やん』! 激プリだぜぇ!! よーし、もっと!と思ったけど、彼女は身体を捩り出した。 やり過ぎはよくないな、程度をわきまえないと。 この前と同じように上半身をよく愛撫してから舐め回す。 彼女の息が荒くなってくる。 そっと下着を脱がせてアソコに手を伸ばせば、確かに濡れている感触。 尻から太腿に手を這わせば彼女は何も言わなくてもそっと脚を開く。 うん、覚悟が出来てるって事だよな。 オレも覚悟を決めねーと。 でも、やっぱりちゃんと濡らして一度イカせてあげるからね。 じゃないと痛いって言うしさ。 まずは指でね。 オレもさすがに戸惑うことなく指を滑らせて愛液の源泉とポイントを突く。 彼女の身体がビクビクと敏感に反応してくる。 気持ちイイ? もっともっと気持ちよくなって。 ホラ、指だけじゃなくて舌でも触ってあげるから。 好きだろ?コレ。 「ん・・・んんっ」 彼女は健気にもハシタナイ声を抑えようと口元に手を当てて堪えてる。 もったいない。 「聞かせろよ、声」 彼女の口を押さえてる手を持ち上げて外させると困ったような顔をする。 だからさ 「恥ずかしがらずに聞かせろよ、声」 すっごくそそられるから。 堪らないんだからさ、その色っぽい声と表情が。 「オレしかいないんだし」 オレだけに見せればいいから。 つーか、見せたくねーし。ぜってー見せねェから。 オレは彼女の両手を掴んだまま、舌での愛撫を再開した。 肩で器用に彼女の脚を開かせながら。 「あっ、や・・・ダメ、そんな・・・」 や、じゃないでしょ? 「気持ちイイならそう言って」 それでも彼女は恥ずかしがって唇を噛み出した。 あーあ、それじゃ折角の可愛い唇が切れちゃうぜ。 もう、頑固だな。 オレは舌の動きを速めた。 ビチョビチョと派手に音を立てて。 「ああっ、やぁ〜〜っ!」 うん、軽くイッてくれたかな? ベッドで弛緩している彼女を見ながらオレは漸く着ていたものを脱いだ。 そしてポケットから取り出したものを装着する。 う〜ん、コレって情けないカッコだからタイミングが難しいよな。 まさか着けて貰うワケにもいかねーだろーし、見られるのもヤだし。 「大丈夫か?葵」 茫然としている彼女に声を掛ける。 頬を撫でればオレの方を向いて反応するが、その動きはやや緩慢だ。 「最後までスルけどヘイキ?」 彼女がイヤだと言えばオレは我慢して見せるぞ! メチャクチャ辛くなるけど。 コクンと頷いた彼女の脚をオレは大きく開いた。 そこに自分の身体を入れ込んでから、彼女の下に在ったバスタオルに気付いてそれを腰の下にずらす。 「身体の力、抜いてろよな」 そうは言っても難しいだろうが・・・オレは準備万端な自分のナニを彼女への入口へと擦り付ける様に当てた。 彼女は目を硬く閉じて身体を強張らせている。 まだダメかな? オレは彼女の上にそっと覆いかぶさってキスをした。 驚いた彼女が目を開ける。 「緊張すんなよ、大丈夫だから」 絶対優しくするから、絶対後悔させないから。 オレはキスを繰り返した。 触れるだけの優しいキスから段々と激しいものに。 お互いの息が上がって苦しくなっても続ける。 そう、キスに溺れてそれだけに集中してて。 彼女の腕がオレの首に回された時、オレは彼女の太股を持ち上げて擦り付けていたソレを一気に差し込んだ。 キッツ! 千切れそう・・・ 「っ・・・い」 緩み掛けていた彼女の身体が声を漏らして再び硬直する。 オレは腰を動かさずに硬直した彼女の身体を撫で回した。 「動かないから力を抜いて」 優しく緊張を解す様にゆっくりと頬や肩を撫でた。 大丈夫、無理強いはしないから・・・って今十分にしてるか? 「大丈夫ですから、動いても」 彼女に入れたまじっとしていたら気を遣ってくれたようだ。 でも、オレも痛くて動かせません。 アソコの締め付け強過ぎます。 「もう痛みはありませんから」 ホントか? 無理してんじゃねーの? しかし、オレもそろそろヤバいかも。 「んじゃ、わりぃけど・・・」 動かせていただきます。 キツくて痛むけど、まぁ確かに気持ち良くないワケじゃない。 つーか・・・やっぱマジ気持ちイイかも。 「っ・・・い、葵!」 背筋がゾクゾクとして射精感が募る。 ヤバっ、また早いのか? マズイだろ? ええっと、そーだ! 民法第一条私権は公共の福祉に適合しなければならない・・・ってヤバっ!! ダメだ! 「・・・くっ」 ・・・出ちゃいました。 早過ぎるって呆れてないかな? いや、初めてだから早いのかどうかも判んねぇかな? オレとしては激しく後者希望です。 「・・・大丈夫か?」 まだ息が切れてるけど、彼女の様子を窺う余裕は何とか出来た。 ゴムの後始末をした時には覚悟していたとはいえやっぱりちょっと驚いたけど。 彼女の身体の下に敷いたバスタオルにもちょこっと付いてるし。 「まだ痛むか?」 彼女のお腹を擦ってみる。 や、裂けたのはココじゃないって解かってるけど、気持ち的にさ。 「・・・大丈夫です。さすがに気持ち良くはなれませんでしたが。初めてですから、こんなものでしょう」 淡々と感想を述べる彼女。 スミマセン、気持ちよくさせてあげられなくて。 さすがに処女をイかせまくるほどのテクなんぞは持ち合わせちゃいないからなぁ。 「ゴメンな。痛かっただろ?」 ホントにスミマセン。 せめて後戯で頑張らせていただきますから。 オレはバスタオルでまだ付いている血を拭ってから、傷を癒す様に舌で舐め出した。 ん〜ん、やっぱちっとはすんなゴムの味が。 「あ、もう・・・止めて下さい!そこまでしなくても・・・」 ん、でもさ、こうすっと気持ちイイだろ? 次第に彼女の中も濡れて来たし、味も気になんなくなったし。 いや、逆にちょっと興奮するかも。 なんせオレの初めての、オレが初めての場所だもんなぁ。 ま、彼女のだから、とゆーのが一番興奮する要因ではあるよな。 オレの大切な人だからな、彼女は。 「あ・・・も、もう・・・やめて・・・」 痛みが遠のいたのか彼女も素直に感じて来たみたいだ。 うん、も一度イッとこうか? 彼女の中には何も入れずに一番敏感な部分を舐めしゃぶる。 「あっあ・・・はっ・・・はあっ」 うう〜ん、いろっぺぇ声だ。 ゼヒ、もう一回戦お願いしたくなるけど、無理だよな。 「イッて!」 オレはそう言って吸い付いた。 「ぃやっっっ!」 ガクンと彼女の身体が大きく揺れた。 オレはその弛緩した身体をそっと抱き締める。 「葵・・・」 可愛いよ、サイコーだ。 汗で額に貼りついた髪を掻き上げる。 白い肌に紅潮した頬、ぼんやりとした表情すら愛しい。 唇でなぞる様にその可愛い顔に触れていく。 ホント、もう手放したくない! ずっとこの腕の中に閉じ込めておきたい。 「この次はイカせてやるから」 って大見得切ってどうすんの?オレ! 噂のGスポットとやらを探すのか? でも、アレはない女もいるって言うぞ。 もっと持たせるとか? 民法じゃなくて刑法とか憲法とかのほうが良かったかな? 「この次・・・ですか?」 え?ないの? 「・・・これで終わりにしたいのか?」 バージン捨てられればオレはもう用無しなの? もう二度と会いたくない? 痛かったから? ヘタだった? オレは思わず顔が強張るのを隠す事が出来なかった。 やっぱ、ドーテーではダメですか。 「終わりも何も、私達は何かが始まっていたんですか?」 彼女に突っ込まれて気付く。 そーでしたね。オレ、ナンにも言ってなかったかも。 「オレとしては始めたいんですけど。これからもこーゆーお付き合いを」 彼女はどう思っているんだろうか? やっぱ、イヤなのかな? こんな軽そうな男と付き合うのは。 内心ビクビクもんで答えを待ってると。 「こーゆーお付き合いですか?」 疑問符付けないで欲しいんですけど。 つまりはさ。 「そ、時間が出来たら会って、気持ちイイことして」 出来るだけ時間を割くからさ、もっともっと気持ちよくさせたげるし、だからオレと付き合ってよ! 前戯は悪くなかっただろ? 全然気持ちよくないってコトはなかったよな? これからもっと精進しますから! お願いしますよ! オレの必死の願いが届いたのか、彼女は承諾してくれた。 「・・・そうですね」 ビミョーな答えだったけど。 でも、オレとしては天にも昇る気持だった。 「ヤだなぁ、葵ってば。素直じゃないんだから・・・オレに惚れたならそう言って!」 つい浮かれてそんな事を口走ったのだが・・・アレレ?彼女はオレから顔を逸らせて・・・もしかして赤くなってんの? 「あ!葵ってば照れてんの?もしかして図星だった?」 願望を込めてそう言うと、彼女は顔を背けたままベッドから出ようとして・・・座り込んでしまった。 あ〜慣れない筋肉使ったから。 「無理すんなって」 座り込んだ彼女をベッドへと抱え上げた。 そして腰とか足とか下半身を撫で擦ってやる。 「オレは葵のコト気に入ってんだよ。可愛くって抱き心地が良くってサイコーだもんな」 なんせオレが初めてその気になった女性ですし。 こんな気持ちになったのも初めてなんだぜ。 「もっとオレと気持ちイイ事しようぜ」 そして、もっとオレを好きになって。 オレは葵の気持ちをちょっとでも窺えた様な気がして有頂天になっていた。 このまま付き合っていけば、いつかきっとあの聖母の様な微笑みをオレに向けてくれるんじゃないかと期待したりして。 その時、無粋にもオレの携帯が震えた。 チクショー!電源切っとくべきだった。 ブルブル震える携帯を取ろうとしてオレは財布を叩き落してしまった。 携帯の電源を切ったオレは財布を拾ってくれた彼女に礼を言おうとした。 「あ、サンキュ。わりぃね」 彼女は落ちた瞬間にバラ撒いてしまったオレの免許証や学生証も拾ってくれている。 そして、オレの学生証をじっと見ていた。 「あ、驚いた?オレってば実は意外と優秀なんですけど」 なんせオレが通っているのはブランドとしては最高峰の大学だからな、えっへん。 見えねー!ってよく言われるけど。 これでちっとはオレのコト見直してくれたりするかな? オレは正直、彼女からの称賛の声を当てにしていた。 ま、悪くても『見掛けによらず』とかなんとか。 だが、彼女の言葉は思ってもいないものだった。 「ナミキさんは波生さんと仰るのですね」 あ、そっち? そーいや、携帯に登録した時は『カズハル』だけだったしな。 「そ、ちょっと珍しいでしょ?」 「・・・ご兄弟がいらっしゃいますか?」 あ〜そういや静香が出た学校に通ってるんだったか?静香のコト知ってるとか? 「ああ、弟と妹がいるけど・・・」 妹は葵の先輩だよ、と続けようとして遮られた。 「弟さんのお名前は靖治さんと仰るのですか?」 え?ノブ? 「ああ、靖治は弟の名前だけど・・・」 ナニが言いたいの? 「では、私が今度お見合いする方かもしれませんね」 彼女はいつもの何も窺わせない表情でそう言った。 オレはスーッと血が引いて手足が冷えていく気がした。 ノブが言ってた『資産家の跡取り娘』ってのがまさか彼女だったなんて・・・ バカだなオレ。 どうしてノブに確かめなかったのか? あの親父が用意した縁談だぞ? 成島以外に考えられるのか? ハハッ、すっかり忘れてたよオレ。 親父がどんだけ成島に執着してたのか。 成島の娘と自分の息子を結婚させてまで成島と縁を繋ぎたかったのか? 「・・・すんのか?見合い」 オレの声は震えていたかもしれない。 やめると言ってくれ! 「・・・私はずっと家の跡を継ぐべく育てられましたから。それに相応しい人と結婚するつもりです」 それって・・・ 「あなたとはこれっきりにした方がいいのでしょうね」 彼女はそう言って少し笑った。 それはオレがずっと欲しかった慈愛に満ちた聖母の様な微笑みなんかではなく冷たい笑みだった。 サイアクだ! |
こ、これでやっと『未来予想図』に繋げられる・・・ホッ。 カズ兄、2度目の雪辱戦は何とか無事に終了しました(苦笑) いきなりデートでもいいかな?と思っていたのですが、彼の学生生活の風景や弟との絡みも入れてみました、伏線の一つとして。 カズ兄と葵ちゃんだけしか登場人物がいないのも寂しいし・・・でもカズ兄のお友達には名前がない。 実は最初からカズ兄が跡を継ぐのはどうか?と思っていました(現代版だし) 『未来予想図』を書いた時は継がせるつもりでしたが、今回は跡取りから外れて頂く為に経済ではなく法学へ行っていただきました。 モデルにしている大学は、経済もそれなりに有名ですが文系なら法学部。 最初は手堅く公務員、と思っていましたがアソコならやっぱり司法試験受けないと勿体ないかな? カズ兄はオバカではないですけれど、努力の人なので超が付くほどの天才ではありません。 もし、在学中に司法試験に合格しなければ(司法試験制度も新しくなった事ですし)サッサと諦めて家を出る事を優先的に考える事になっていましたが、さてどうするか? 既に3年になっているので転科も出来ないし、どうする?うふふ(主人公苛めてどうする私) 非常に中途半端な所で終ってしまってますが、これは『未来予想図』へ続くのでここで一旦切ります。 どん底に突き落とされたカズ兄の明日はあるのか? 2009.7.16 up |