地の青龍編

「どうしてダメなの?」

 シリンが尋ねると天真は大きな声を出して
「ダメだって言ったらダメなんだよ!友雅の屋敷に行くなんてとんでもない!絶対にダメだ!」
 と取り付く島も無い。

 訳も言わずに反対する天真にシリンも切れた。
「いいでしょ?あたしだってもう一人で出掛けられない子供じゃないんだから!天真お兄ちゃんがダメだって言ったって行くからね!」

「シリン!」
 強面で引き止めようとする天真の腕を振り切ってシリンは叫んだ。
「何よ!あたしが大きくなった途端に遊んでくれなくなっちゃったくせに、どうして『遊びにおいで』って言ってくれてる友雅様の所に行く時だけ反対するの?おかしいよ」

「バッ、バカヤロウ!友雅の『遊び』ってのはどう言う事だか判ってねぇくせに!」
 何故か赤くなって怒鳴る天真にシリンは不思議そうに尋ねる。

「どんな遊びなの?」
 無邪気なシリンの問いに天真は「うっ、そ、それはだな」と詰まって答えられない。

 黙ったまま、焦れたように親指の爪をグッと噛み締める天真にシリンは更に追い討ちを掛けた。
「第一、天真お兄ちゃんはあたしの本当のお兄ちゃんじゃないんだから、あたしに指図しないで!」

「シリン・・・お前」
 唖然とした天真にシリンは自分の言葉を一瞬後悔したように俯いたが
「天真お兄ちゃんの分らず屋!」
 と叫んで屋敷を飛び出してしまった。


「それでここへ来たのかい?」
 脇息に持たれてシリンの話を聞いていた友雅は苦笑して尋ねる。

「あたし、ちゃんとここまで一人で来れたもの。もう子供じゃないよ、そうでしょう?友雅様」
 まだ少々憤慨しているシリンに友雅はにっこりと微笑んで頷いた。
「そうだね」
 
「友雅様は優しくて色々教えて下さるのに、天真お兄ちゃんがどうしてあんなに怒るのかあたしには判んないよ」
 溜息を吐いて少し俯いたシリンに友雅は手の中で玩んでいた扇をツイとシリンの顎の下に持っていき彼女の顔を上げさせた。

「わたしの屋敷に来ると『大人の遊び』を教え込まれてしまいそうで天真は心配しているんじゃないのかな?」
 上げさせたシリンの顔を覗き込むように自分の顔を近づけながら友雅は優美に微笑んだ。

「『大人の遊び』って?」
 きょとん、と友雅を見詰めるシリンの耳元で彼はそっと囁く。

「知りたければ教えてあげるよ」

 シリンがどう答えたものかと逡巡していると、ドタドタと荒々しい足音が聞こえ『お待ち下さい、まずは主人に先触れを』『うるせー!邪魔すんな!』と言い争う声が聞こえて来た。

「天真お兄ちゃん!」
 シリンは天真の声に友雅から背を向けて御簾の向こう側に視線を移す。

「やれやれ、無粋だね」
 友雅は溜息を吐いて脇息に凭れかける。

「シリン、帰るぞ!」
 天真は御簾をバッと上げて入り込んでくる。

 不機嫌そうな天真からプイと背を向けたシリンは
「あたし、ここに居る。友雅様に『大人の遊び』を教えて貰うんだもん!」
 そう言ったが、天真に体を抱え上げられて「きゃっ」と悲鳴を上げる。

「帰るんだ!」
 天真の肩に抱え上げられて尻をペチンと叩かれたシリンは足をバタつかせて抵抗するが聞き入れられない。
「降ろしてよ!」

「悪いが、こいつは連れてくからな」
 天真は脇息に凭れ掛ったまま苦笑して見守っていた友雅に睨みを聞かせて言い捨てた。

「猛々しいね、天真殿。『大人の遊び』は君が教えてあげるのかい?」
 閉じた扇で隠し切れない口元を緩ませながら友雅が尋ねると、天真は眉を吊り上げて叫んだ。
「お前には関係ねぇ!」


「放してよ!降ろしてったら!」
 屋敷の中を天真はシリンを肩に抱え上げたまま繋いである馬の所まで運んだ。
 シリンが必死になって抵抗しようともビクともせずに。

 どれだけ罵っても天真は何も言わずに黙っている、とても怖い顔をしたままで。
 シリンは馬を跳ばす天真の前に座りながら『友雅様のお屋敷に来たのはそんなにいけない事だったのかな?』と不安になった。

 藤姫の屋敷に着いてからも天真は黙ったままでいる。
 シリンは強い力で腕を引かれながら、沈黙している天真に恐れをなしてその腕を振り解けずにいる。
 しかし、シリンを部屋まで連れて来ると腕を放り投げるように放して立ち去ろうとした。
 それにカッとなったシリンは背を向けた天真に怒鳴り散らす。

「何よ!いきなり連れ戻しに来てあんな!友雅様にも失礼だよ!」
 友雅の名前を聞いて天真はシリンの目の前まですばやく取って返し、低い声で詰め寄った。
「お前、友雅に教えて欲しかったのか?『大人の遊び』を」

 『大人の遊び』が未だにはっきり判らないシリンは思わず後図去った。
「・・・天真お兄ちゃんが代わりに教えてくれるの?」
 友雅様は帰り際にそう言っていたけど。

「・・・お前は俺に教えて欲しいのか?」
 一瞬の逡巡の後、天真はシリンにそう尋ねる。

「う、うん・・・」
 シリンは天真の気迫に押されて頷いてしまった。
 でも、『大人の遊び』がどんなものでも天真お兄ちゃんと一緒にいられるのなら・・・シリンの胸中にはそんな思いがあった。
 友雅様に『教えて欲しい』と直に返事が出来なかったのは、あの時の友雅様がちょっと怖く感じられたからだけど、天真お兄ちゃんなら怖くない。

「よし!教えてやるから服を脱げ!」
「え?」

 天真の言葉にシリンは呆然となる。

「『大人の遊び』をするつもりなら裸になれ!つまりはそう言う事だ。判ったなら二度と友雅の屋敷には行くな!いいな!」
 天真はそう言ってシリンに背を向けた。

 しかし、シリンは立ち去ろうとした天真の腕に縋りついた。
「教えてよ、天真お兄ちゃん。『大人の遊び』を、あたしに」

 驚いてシリンを見返す天真は彼女の瞳に怯えもからかいも見出せなかった。
 ただ、真摯な青い瞳がじっと自分を見上げている。

 シリンは立ち止まった天真から離れて一歩下がると、その場で帯を解いて着物を脱ぎだした。
「シ、シリン・・・」

 着ている物を全て取り払って、天真に向かって両腕を差し出したシリンは少し頬を染めながらも真っ直ぐに視線を向けて
「あたし、天真お兄ちゃんに大人にして貰いたい」
 と言った。

 呆然と立ち尽くしている天真の胸にシリンは飛び込んで
「遊びでもいいから」
 と小さく囁いた。

 天真は投げ出された白い体を抱きしめた。
「そんな事が出来ないから、悩んでたんだぞ!俺は」

 シリンは硬く抱きしめられて聞かされた天真の言葉に驚いた。
「悩んでたの?」

「そうだよ!泰明のバカがお前をいきなりこんなにデカくしちまうから、俺は、俺はどうすりゃいいのかと思って・・・お前は可愛いもう一人の妹のはずだったのに!」
 天真の叫びにシリンは彼の背中に腕を回して彼の体を抱きしめる。

「でも、あたし、妹じゃないし、もう小さい子供でもないよ」

 シリンの呟きに天真は溜息を吐いた。
「そうだな、お前が友雅と一緒に居る所を見た時、ヤツを殺してやりたくなった。本当の妹ならそんな事は思わないな」

「天真お兄ちゃん・・・」
 苦笑する天真の胸に顔を埋めたシリンの髪を唇で掻き上げながら、天真は彼女の耳元で「お兄ちゃんはよせ」と言った。

「うん、天真!」
 輝くような笑顔を向けたシリンの顔を両手で挟み込み、天真は彼女の唇を塞いだ。

 軽く唇を重ねただけなのに、それはとても熱くて、そこから体中に熱が伝わっていくように熱くなる。
「シリン・・・お前は俺がずっとそばに居て守ってやるからな。他の男の所になんか行っちゃダメだ」
 天真は腕の中の存在を抱きしめながら呟いた。

 素直で愛らしくて無邪気で、ただの幼子だったはずなのに、一瞬にして美しく花開くように成長してしまった。
 元々の姿を思い返せば男達が放っては置かない、魅力的で危険な存在。
 それをこの手に留めて置くには、嫌な男が取ろうとしていた手段と同じ事しかない事が嫌だったが、それはとても魅力的で効き目のある手段に思えて、天真には効し難い。

「いいんだな?」
 最後に確認するようにシリンに尋ねると、彼女は躊躇いもせずに「うん、いいよ。天真なら」と答えて彼の唇にそっとキスを返して来た。

「・・・こんな事は他の男にやっちゃダメだぞ」
 吃驚した天真は、一瞬唖然としながらも窘める様に睨んで叱る。

「天真だけに、だよ」
 シリンの蠱惑的な微笑みに、天真は行く末の恐ろしさを知る。
 ついこの間までは天使のように無垢で純粋だったのに・・・女は恐ろしい。

 天真は天使の衣を脱ぎ取りながら、彼女を守る方法があの男と同じしかない事に苛立ちながらも、それはとても魅力的で抗い難いものである事も知っていた。
 次第に露になっていく白い肌と体はまだ未熟さを残しながらも、女性として強く性衝動を促してくる。

 そっと触れただけでは、その柔らかさに存在感を疑ってしまうほどで、つい力を入れてしまう。
「痛いよ、天真!」
 ギュッと胸を強く握られたシリンが思わず声を上げてしまうほど。

「わりィ」
 悲鳴を上げて睨んできたシリンの膨れっ面を見て、天真は悪戯心が沸き上がってくる。

「でも、こんなんで痛がってたら大人になんてなれないぜ、シリン」

 シリンは天真の言葉を怪訝そうに聞く。
「・・・もっと痛いの?」

「ああ、我慢出来ないならやめとくか?」
 天真の言葉に気の強さを刺激されたシリンは「平気だよ、もっと強くったって」と返す。

「そうか?それじゃあ」
 シリンの胸を形が変わるほど強く握り締め、その先に噛み付く。
 柔肌に歯を立てると、体の中から甘いものが込み上げてくる。

「ひゃん」
 それはシリンの嬌声によって益々煽られる様で。

「・・・拙いな、止められねぇ」
 天真は独り言ちてからシリンの体に貪る様に手を伸ばす。

「あん・・・あはっん、天真・・・」
 成長したとはいえ、まだまだ自分よりも大きい彼の下では小さくて、触れられる度に体の芯が熱くなっていくのをシリンは感じていた。

 これが大人になるって事?
 ずっと自分を可愛がってくれていた天真に大人にして貰う。
 彼は痛みがあると言ってたけれど、こんなに熱が上がってしまうと痛みなんか感じられるんだろかとシリンは思った。

「んん・・・天真・・・あたし・・・」
 息を荒くして膨らむ胸を上下させているシリンは天真に何事かを訴えようとするが、それをどう言葉にしていいのか、分らない。

「シリン・・・我慢してろよ」
 指で推し量っていた天真は彼女の足を大きく開かせて自分の体を割り込ませた。

「やあっ・・・ん」
 体は熱く熱を持ったまま、引き裂かれるような痛みをもたらしたが、シリンは見開いた視線の先に天真の気遣うような視線を感じて微笑んで見せた。

「大丈夫か?」
「うん、平気だよ」
 青い眼の淵に涙を浮かべながらも健気に微笑むシリンに天真は後ろめたさを感じつつも安堵した。

「これでお前は俺のものだ、一生大事にしてやる」
「うん、天真。一生傍に居てね」 
「ああ」

 二人は熱い体を固く抱き合いながら、もう言葉を紡ぐ必要のなくなった唇を貪り続けていった。

 

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こっぱずかしい言い訳


 警告ページにもありましたが、これはチャットで出来たお話です。
 が、ログを取っていなかったので(ウチのチャットはそれが出来ないので)私の記憶だけを頼りに再現いたしました。
 去年の10月ごろから1ヶ月くらいかけて続けたシリーズでした。
 実はチャットでは単純に呪が掛けられてから10年経った時、が設定でしたのでシリン14歳、天真27歳のはずでしたが そうすると他の方でチョット問題が・・・なので泰明さんに頑張って貰いました。

 チャットでは天真は27でしたので町でお姉さん達とそれなりに遊んでいるという設定で、シリンがそれにやきもちを焼く、と言う展開でした。
 少将のお屋敷から奪還する下りもチャットのままですが、だだチャットではもっと先に進んでいる所に踏み込むという(蹴・殴)
 少将の屋敷の使用人も天真の腰にぶら下がって必死に引き止めようとしていました(ギャグです)

 この天真編はチャットでやっていて二人共非常に気に入ってしまいまして、2・3回続けてしまった記憶があります。
 新婚さん編とか、シリン不倫編とか(ドカバキ)

 天真は詩紋と違ってそーゆーコトになった後は「お兄ちゃん」と呼ばれる事を嫌がっています。
 詩紋は全然気にしない、と言うよりも返ってその方が萌えるとか(爆)
 ロリータの読み過ぎです、反省・・・。

 ・・・頼久編といい、この天真編といい、チャットと設定を変えたのでちょっと長くなってしまいました。
 無理があるのは・・・眼を瞑って下さい、スミマセン。
 ラストも・・・時間が出来たら書き直します(涙)

 


 

 

 

 

 

 

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