「・・・どーしてあたしが鬼になるわけ?」
 マルローネは渡された虎縞の衣装をじっと見詰めてからギロリと目の前の青年を見上げた。

 クライスは非難の視線をスッと眼鏡を持ち上げる仕草でかわし、口元を心なしか綻ばせながら答えた。
「今日の主役はやはりコレでしょう?貴女の為に用意した衣装ですよ?」

 クライスの言葉にマルローネは渡された『衣装』を彼の目の前にかざして叫んだ。
「こんなの着れる訳ないでしょ!アンタが主役をやれば!」
 マルローネの差し出した『衣装』は虎縞のビキニ、だった。
 昔のアニメを思い出させるアレである。

「恥ずかしくってそんなの着て外に出られないじゃない・・・」
 ブツブツと文句を言い出すマルローネに
「外?外に出る必要なんてありませんよ」
 クライスがにっこりと笑って答える。
 その手はマルローネのセーターの中に入り込んで下着のホックを外し始める(素早い!)

「?え?だって?」
 クライスの言葉にマルローネは不届きな手を払い除けながら疑問符を浮かべる。

「私がこんな寒そうな格好の貴女を寒空の下に放り出すとでも?」
 クライスの質問に『鳥肌を立てたあたしが見たい、とか言ってそーゆーことしそうだわよ、アンタは』と内心で思いながらも黙って頷いた。

「このスタイルを堪能していいのは私だけのはずですけどね、マルローネさん」
 にっこりと笑ってスカートに手をかけたクライスの言葉にマルローネは真っ赤になりながら、寒空の下でラムちゃんになるのと、暖かい部屋の中で汗をかくのと、どちらが過酷だろうか?と逡巡してみた。
 結論は出なかったが。
「アンタって・・・鬼のようなヤツよね」

 溜息と共に零れたマルローネの言葉にクライスは心外だと言うように眉を顰めた。
「鬼は貴女でしょう?マルローネさん」



 

 

 

 

 


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