| 「い・た・い!」彼女にそう言われても、僕の動きが止るはずもない。
 行為にかなり集中していたし、彼女が痛みを感じているのが、右手で掴んでいる乳房か、歯を立てて吸い付いている乳首か、左の指で探っている膣の中のいずれか判断がしかねたからでもある。
 
 「だ・か・ら、痛いって言ってるでしょ!」
 耐えかねた彼女は、自分の身体の上に覆い被さっていた僕を払い除け様とし始めた。
 かなり腹を立てているらしい。
 
 「どこが痛いんですか?」
 痛む場所を言ってくれればそこから離れたのに。
 
 「アンタが触っているとこ全部よ!力入れ過ぎなんだから!」
 貴女の身体が柔か過ぎるからじゃありませんか?
 
 「そんなに力は入れていませんが・・・それに感じているのでしょう?」
 僕が彼女の中から抜き出した濡れた指先を見せると、彼女の表情は益々険しくなった。
 
 「あのね、女の身体は触られれば濡れるように出来てんのよ!感じてなくたってね!ちょっとばっかり濡れてるからってすぐに『感じてる』なんて言わないでよ!」
 そんな事を言われても。
 
 「じゃあ、どうすれば『感じる』んです?」
 今まで感じているような声を出していたくせに、初めてではないんですから、もう少し我慢しても・・・初めてではないからこそ文句を言い出したのでしょうか?
 
 「・・・その、アソコを舐めてみてよ・・・」
 彼女は少し言い辛そうに僕から視線を外してポツリと呟いた。
 
 「・・・舐めるんですか?」
 アソコを?汚くないですか?
 今日はまだシャワーを浴びてもいないし。
 
 「・・・イヤなの?」
 思いっきり顔を顰めた僕を見て、彼女も怪訝そうに尋ね返す。
 
 正直、気が進みませんが・・・
 「貴女が同じようにして下さるのならば、構いませんよ」
 
 「ええ〜!ヤだ!汚いし気持ち悪いモン!」
 そうでしょう?
 
 「貴女がそう思うと言う事は、私もそう思っているのだとご理解いただけませんか?」
 やれやれ、言い合っているうちに、すっかりその気が失せてしまった。
 今日はもうダメですね。
 
 彼女は僕に向って「ヘタクソ」とか「役立たず」とか罵り声を掛けて来ましたが、一度萎えてしまったものは中々元には戻らないんですよ。
 男性は女性以上にメンタルな部分で繊細なんですから。
 
 
 
 クライスったら酷いよ。
 初めてエッチしてからっていうもの、デートの度にエッチしようとするしさ・・・そりゃあ、知り合ってからキスするまでが長かったし、エッチするまで至ってはかなり、その、お預け食らわせちゃったけど、なにもそんなにエッチするばっかりがデートじゃないでしょう?
 
 デートって言ったらさ、二人で一緒に出かけて・・・クライスはまだ免許持ってないから遠くに出かけられないけど。
 近くでも映画とか・・・クライスとあたしの趣味って合わないんだよね・・・あたしはコメディかアクションが好きで、アイツはSFかホラーが好きなんだもんな。
 
 そりゃあ、学校で毎日顔を合わせてはいるけどさ、学年違うし、行きと帰りくらいしか一緒になれない。
 お昼休みだって、友達との付き合いを蔑ろには出来ないし・・・放課後だってさ、友達と遊びに行く事だってあるんだから。
 
 長い休みは少ないし、折角の日曜デートなんだから、ラブホじゃなくてもっとこう・・・遊園地とかさ。
 うう〜ん・・・でもクライスはやたらとベタベタあたしの身体に触りたがるからなぁ・・・嫌じゃないけど恥ずかしいよね、人前じゃ。
 
 あたしがエッチに対して消極的なのは・・・痛いだけで気持ちよくないから、これに尽きる!
 初めは痛い、ってのは聞いてたけど、何回したって気持ちよくなんかなんないんだもの。
 
 マンガとか小説だとかじゃさ、もの凄く気持ち良さそうにしてんのに・・・クライスがヘタなのかな?
 それともあたしが・・・その不感症とか?
 
 ううん、クライスに触られてもの凄く気持ちよくなるところとかはあるんだもの、不感症なんかじゃない筈、だと思う。
 シアに何気に相談したら、「もっと前戯に時間を掛けてもらったら」って言われた。
 
 女の子はその気になるまで、普通はもの凄く時間が掛かるんだって。
 男の子はその・・・ナニが反応するのが一瞬らしいけど・・・でもダメになるのも一瞬らしいけどさ、この前みたいに。
 
 クライスのこと好きだし、一緒にいてドキっとする事だってあるし、彼の腕の中に抱かれている時幸せだなぁって感じるけど、エッチの相性が悪いのかなぁ?
 
 身体中をベタベタ触られて、胸をギュウギュウと揉まれて、アソコの中をグリグリ引っ掻き回されてるだけじゃ、痛いばっかりで全然気持ちよくなんてならないんだもの。
 
 マンガや小説であるように、もの凄く気持ちよくなって二人の気持ちがもっと強くなるような・・・そんなステキなエッチがしたいんだけどな・・・あれはやっぱり話の中だけの絵空事なのかな?
 
 舐めて欲しいって言ったら、クライスもして欲しいって言ってたし・・・ヤなんだけどな・・・アレってなんだか気持ち悪いんだもん、ちょっとグロテスクで。
 未だにあんまり良く見た事ないし。
 
 ううっ・・・でも、みんなやってるよね・・・マンガとかでもさ・・・やっぱりクライスにもしてあげた方がいいのかな?
 やってあげた方が良いんだろうなぁ・・・男の人は気持ちいいって言ってるもんねぇ・・・あう。
 
 まずは、最初にシャワー浴びれば汚いってのはクリア出来るよね。
 でも、クライスってば「今日はウチに誰もいませんから」って家に連れてくるし・・・他人の家のお風呂に入りたがるのってヘンかな?
 
 「お風呂に入りたい」って言ったらクライスもヘンな顔してたし・・・そりゃあ、もう汗をダラダラかくような季節じゃないけどさ・・・でも決めてた事だから、強引に押し切っちゃう!
 
 髪は洗わなくたって構わないけど、身体は念入りに洗わなきゃ、特にアソコは・・・こんな事なら自分の家で入ってくればよかったかな?
 でもさ、急に予定を変更したのはクライスだし・・・気にしないことにしよう、うん。
 
 
 
 家に連れ込むと、いきなり「シャワー使わせてよ」と彼女が言った。
 シャワーだけならすぐに使えますが、一体何の為に・・・まさか、そんなに舐めて欲しいんですか?
 
 そんなに痛いんでしょうか?
 今まで痛みを訴えていたのは慣れていないからだとばかり思っていたのですが・・・確かに僕も慣れていない分、彼女を思い遣る余裕がなかったのかもしれない。
 
 シャワーを終えた彼女はきちんと服を着ていて・・・これから脱ぐんですから、無駄じゃありませんか?
 それでも自分が使い慣れたボディソープの香りにドキッとする。
 
 慣れ親しんだ香りでも、彼女が使うと違うものみたいな・・・僕は自分がとても汚れている気がしてきて、彼女の後にシャワーを使う事にした。
 もしかしたら・・・彼女にもして貰えるかもしれないし。
 
 昼間、まだ日が高いうちにシャワーを浴びて、石鹸の香りをさせたまま、ベッドに倒れ込む。
 「あんましジロジロ見ないでよ、恥ずかしいんだから」
 いつも勝気で元気な彼女が顔を赤くして恥らう姿は可愛らしい。
 
 お互いの裸を何度となく見ている筈なのに、彼女は僕の下半身から視線を逸らそうとするし、自分の胸元もよく手で覆い隠している。
 いつもその姿に挑発されて、ついつい性急になってしまうのだが、今日は彼女に『痛い』と言わせないようにしないと。
 
 「あ・・・んん・・・」
 赤い顔から白い肌へ、滑らせた指を辿るようにキスで跡を残す。
 彼女は首筋の付け根と脇の下が感じるらしくて、身体をピクリと震わせて声を漏らす。
 
 ピタリと合わさった脚の間に指を潜り込ませると、ぬるりとした感触がある。
 これで『感じてない』とは・・・確かに挿れるとキツクて苦しそうな表情をしていたが・・・女性の身体は複雑だ。
 
 彼女の標準より大きめな胸に触れる。
 その柔かい感触に、いつもは指を強く食い込ませたり、歯を立ててむしゃぶりついたりしていたのだが、彼女が痛がらないように、その反応を見ながら触れていく。
 
 乳房をゆっくりと揉み上げる・・・大丈夫そうだ。
 乳首を軽く吸い付くのは・・・これも平気。
 両手で大きく揉み回すと・・・「んん・・・」と眉間に皺が寄って来ている。
 揉む手に力を入れると、その皺が深くなった・・・これはマズイらしい。
 
 指で襞の淵をなぞるように行き来しているが、彼女の反応は今一つ。
 少しづつ息を切らせ初めながらも彼女は「クライス・・・」と僕の名を呼んで促す。
 
 僕は覚悟を決めて、彼女の両足を肩の上に抱え上げた。
 腰を高く上げさせて、脚の間に顔を近づける。
 
 マジマジと女性の性器を見るのは僕も初めてだった。
 肉の襞は複雑怪奇な形をしていて、グロテスクと言えなくもない。
 
 僕は指で襞を広げて舌を突き出した。
 「あっ・・・ああっん・・・ひゃっ・・・」
 彼女の身体が今まで以上にビクビクッと動く。
 
 その反応に驚いて彼女の表情を窺うと、眉間に皺は寄っているが、シーツを握り締めて痛みとは違う感覚に震えているように見える。
 舌を動かす度に声は大きくなっていくし、その表情も・・・今まで見た事が無いようなそれはとても・・・背筋をゾクゾクさせるような・・・そそられるものだった。
 
 そんな彼女の反応を見逃したくなくて、もっと見たくて僕は舌を夢中になって動かした。
 膣から溢れてくる滑りは吸い上げてもなくならないし、上部にある突起に舌を絡ませると、彼女の反応は一層激しくなった。
 
 「ああ・・・クライス、そこ・・・気持ちイイ・・・」
 陶然とした彼女の表情に、僕はその場所を強く吸い上げた。
 すると彼女は息を一瞬止めてしまって、身体をピクピクと弛緩させてしまった。
 
 息を荒くしてグッタリとしてしまった彼女は所謂『イッテ』しまったらしい。
 こんな彼女は今まで見た事がなかった。
 
 つまり、今まで彼女が僕とのセックスで『感じて』いなかったいい証拠と言う訳だ。
 そんな彼女を見ていた僕も限界に近かった。
 
 「マルローネさん、いいですか?」
 そう尋ねながらも、僕はぐったりしている彼女の返事を待つ気がなかった。
 『ダメだ』と言われても止められない。
 
 ゴムを着けるのさえもどかしかったが、これだけは彼女の為にも自分の為にも絶対に怠ってはいけない事だと思っている。
 軽い失神状態に近い彼女の中に入り込む事は、今まで以上に抵抗がなかった。
 
 そして僕をいつも無我夢中にさせる暖かさに包まれる。
 一心不乱に抽送を繰り返していると、彼女がグッと口元を引き締めているのに気付く。
 
 「痛みますか?」
 動きを止めて、尋ねると彼女は僕を見てニッコリと笑った。
 そして僕の頬に掛かる汗を拭って「大丈夫だよ」と答えた。
 
 僕はそんな彼女を見て、恥ずかしくなった。
 どうしていつも自分の事ばかりに夢中になって彼女の事を思い遣る事が出来ないのか?
 
 動きをゆっくりと再開しながら、彼女の表情から視線を外さない。
 まだ挿入に然程慣れていない彼女の中はキツくて・・・それが僕には快感だが、彼女にしてみれば身体を裂かれるような痛みがまだあるのかもしれない。
 
 女性の方が男性より痛みには強いと言うけれど。
 一度、軽くイッたくらいでは、ダメなのだろうか?
 
 僕は彼女の身体にゆっくりと触れていく。
 辛そうな彼女の表情を和らげたくて、その顔にキスを降らせながら。
 
 そんなに我慢しないで下さい。
 「マリー・・・」
 
 彼女は僕の囁きにちょっと驚いたような顔をして、僕の背中に腕を回して僕を抱き寄せた。
 「クライス・・・大丈夫だよ、あたし」
 
 ああ、マリー・・・そんな事を言われたら、僕は自分自身を抑える事が難しくなってしまう。
 夢中でキスを交わしながら、腰の動きが速くなっていく・・・もうダメだ!
 
 お互いの息を整えるようにベッドに仰向けになって手を握っていると、彼女がギュッと強く手を握り返してきた。
 「クライス・・・ありがと、その・・・今日は気持ち良かったよ」
 えへへっと笑いながらも、恥ずかしそうにそう言う彼女を思わず抱きしめてしまいそうになる。
 
 年上なのに僕より子供っぽくて、女らしさに掛ける彼女が時折見せる可愛らしい姿にとても強く惹かれる。
 思いが通じて、身体を合わせられるようになったからと言って、それだけで満足していてはいけないのだろう。
 自分だけでなく彼女も満足させられなければ、折角手に入れられた存在も手放してしまう事になる。
 
 「この前、言ってた事を覚えてますか?」
 僕の問いに彼女はキョトンとした顔をする。
 忘れてしまったんですか?
 
 「僕にもして下さいとお願いした筈ですけど」
 彼女は僕から視線を外して、どう言い逃れようか画策しているようだ。
 
 「ええっと・・・今?で、でも・・・今は必要ないんじゃない?」
 チラリと僕の下半身に視線を投げた彼女は、もう堅くなり始めている僕のモノをみてそう結論付けたようだ。
 
 「・・・してくれないんですか?」
 握っていた彼女の手を僕のモノに触れさせる。
 
 「あ〜え〜う〜う〜ん・・・手じゃダメ?」
 上目遣いでこちらを窺ってくる彼女は愛らしいけれど・・・
 
 「私がちゃんと貴女のお望み通りにしたのに、ですか?」
 ちょっと意地悪をしてみたくなる。
 
 「・・・判ったわよ」
 彼女は諦めてゴソゴソと僕の腰の辺りまで移動した。
 
 僕は上半身を起こして、ソレを軽く握っている彼女を黙って促した。
 彼女は渋々と、舌を出してペロリと舐め始める。
 
 
 
 うううっ・・・ヤだなぁ・・・やっぱ気持ち悪いよぉ・・・
 でも、クライスはちゃんと舐めてくれたし・・・スゴク気持ち良かった、アレ。
 身体がビクビクするほどカンジちゃったもん。
 
 その所為か、入れられてもいつもほど痛くなかったし・・・クライスも途中であたしの事、気遣ってくれたし。
 そうだよね、クライスもあたしの事、気遣ってくれたんだから、あたしもクライスにしてあげなきゃ、ダメだよね。
 
 でもなぁ・・・ううっ、鼻で息をするのを止めて匂いを嗅がないようにする。
 舌で舐めるだけで許してくれないかな?
 
 チロリとクライスを見るとニッコリ笑いながら先を促している・・・ように見える。
 うう・・・もうこれだけ硬くなってるんだからいいじゃないの〜!
 
 パクッて口の中に入れる・・・って全部入らないよぉ・・・ううう・・・もっと奥まで入れるのぉ?
 ふぇぇ・・・息が出来ないよぉ・・・くるし・・・
 
 「ああ・・・マリー・・・」
 クライスの声に驚いて彼を見ると、顔を赤くしてスゴク気持ち良さそう・・・そんなに気持ちイイの?
 それなら・・・もうちょっと頑張ってみてもいいよ。
 
 あたしが舌を絡ませながら口を上下させるとクライスの息遣いが荒くなってくるのが判る。
 ヤダ、可愛い!
 
 じゃあ、もうチョット頑張ってみようかな?
 袋のトコロを触ってみたり、舌を伸ばしてみたりして・・・あ?感じてる?
 
 ん、じゃあコレは?
 あん、ヤダ、頭を押さえつけないでよぉ・・・ウソ!ヤダ!グゥェェェェ〜!
 
 「すみません・・・」
 クライスは謝ってたけど、酷いよ〜!
 
 あたしは裸でバスルームへと駆け出した。
 気持ち悪い・・・口の中に出すなんて・・・ゲェ・・・・
 
 そう言えば・・・マンガや小説でコレ飲んでる女の人いたなぁ・・・
 あたしは吐き出しちゃったけど・・・美味しいの?アレ?
 
 次に確かめてみる?
 ・・・ううん・・・まだその勇気はないなぁ・・・
 
 「大丈夫ですか?」
 クライスが心配そうにあたしの様子を見に来た。
 
 「・・・平気だけど・・・もう止めてよね、押さえ込んで、いきなり・・・ってのは」
 そうよ、急だったから逃げる事も出来なかったのよ。
 
 「すみませんでした・・・でも、貴女も楽しんでいたみたいでしたよ?」
 そ、そりゃ・・・それはアンタの反応が面白くってつい・・・
 
 「で・も!出す時は言ってね!喉が詰まって死ぬかと思ったんだから!」
 ホントに苦しかったんだよ!
 
 「ではまたして下さるんですね?」
 嬉しそうに言わないでよ!
 
 「私もまたして差し上げますから」
 そ、そんな風に色っぽく囁いたって・・・またしてくれるの?アレ。
 ・・・なら、考えてあげてもいいかな?
 
 「交互にするより、一緒にしてみたらどうでしょう?シックス・ナインって言うんですよ?知ってました?」
 クライス、アンタって・・・そんな事まで詳しいワケ?
 
 「他にも色々な体位があるって知ってますか?試してみましょうか?」
 あのね・・・
 
 「興味本位で試すのヤメテ!」
 あたしの身体が持たないじゃないの!
 
 「でも、貴女だって興味はあるでしょう?」
 ううう・・・判ったような顔して笑わないで!
 そりゃあ、あたしだって興味はあるけどさ。
 
 「私は貴女と気持ち良い事ならば試してみたいですね、マルローネさん」
 だ・か・ら、そのクラクラするような笑顔で言わないで!
 言い成りになっちゃうでしょ!!
 
 「気持ち良くなきゃ、ヤだかんね!」
 コレだけは譲れないんだから!
 
 「勿論です」
 ホントに判ってんのかな?
 
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