Private Affair

 これはね、誰にも言えない秘密なんだよ。

 あたしはもう1年ほどコンビニでバイトしてるんだ。
 コンビニのシフトは大体2人なんだけど、お客さんが少ない時はレジには1人で十分だからもう1人は品出し(商品を並べる事)したり、店の出入り口を掃除したり(店内は業者が掃除するから)、交代で休憩したりすんのよ。

 あたしのシフトは平日だと夕方の5時から11時まで。
 6時くらいまでは小学生とか主婦とかが入れ替わり立ち替わり、お客さんの波が途絶えないんだけど、日が暮れると子供の姿は消えて会社帰りのOLやサラリーマンがチラホラ立ち寄る程度。
 お店は駅前じゃなくて住宅地のど真ん中だからね。

 面白いのは8時50分とか9時50分頃になるとチャリを飛ばして来るお客さんがいる事。
 チャリを使わなくても正時前後はちょっとお客さんが増える。
 多分、TVのドラマが終わってお菓子や飲み物が欲しくなった人が駆け込んでくるんじゃないかって思うのよ。
 料理番組の後なんかは特に(笑)
 あと、昔CMであったけど、突然「おいなりさんが食べたくなる」ってパターンもあるのかもね。

 あたしのシフトの時間帯は品物が搬入してくる時間帯じゃないから、品出しする事が多い。
 スナック菓子の補充とドリンク類の補充がメインかな。
 お弁当とお惣菜の入荷はお昼前と深夜だし、パンと牛乳は深夜、雑誌は早朝の時間帯に入荷するからね。

 ドリンク類はご存知の通り、でっかい冷蔵庫に入ってる。
 補充は前からじゃなく、後ろにあるウォークインからするのが通常。
 ここはね、夏は涼しくていいんだけど、冬はねとってもとっても寒いのよ〜
 スタジャンやダウンを着なきゃとてもじゃないけど耐えられないくらい。

 今年も暑くなってきたな〜
 店内は冷房が効いてるけど、お客さんが出入りするから忙しい時はレジを打っているだけでも汗が出てきちゃう。
 だからお客が疎らになった時を見計らって
「あ、あたしドリンクの補充してくるね♪」
 シフトが一緒のナタリエにそう言ってそそくさとウォークインに向かう。

 ウォークインの入り口は常温のストックルームの中にある。
 ストックルームの奥にはトイレがあって、以前は店員専用だったけど、今日びの流れでお客さんにも使えるようになってる。
 あんまし表立ってアピールしてないけどね。

 お〜涼しい〜あれ?健康飲料の新製品がないぞぉ、アレ今日は良く出てたのに。
 スットクルームから補充しなきゃダメか・・・ケースって重いんだけどなぁ、今日の相方は女の子だし、頼めないなぁ。
 やれやれ、と思ってウォークインから出るとトイレに行くお客さんとぶつかりそうになっちゃった。

「あ、すみません」
「いえ、こちらこそ」
 おや、この人は最近よく来るちょっとクールなカンジのメガネのお兄さんではありませんか。
 真面目そうで寡黙な感じがいいなぁ・・・と思っていたのですよ。
 へへっ喋れちゃったい♪

 うんしょ、うんしょっと!
 暑くなってくるとドリンクの売り上げが凄いんだよねぇ。
 判るけどさぁ、補充するほうの身にもなって欲しい。

 そんな作業中、あたしはケースに躓いてしまった。
 ああ〜〜っ!
 倒れる!
 と、思って目を瞑ったのに、痛みが無いぞ?
 ほぇ!さっきの彼が支えてくれてる!

「あ、ありがとうございます」
 いや〜ん!これがきっかけでコイバナになったら・・・ちょっといいかも♪
 なんて浮かれてたら、メガネの彼はあたしを後ろから抱き止めたまま離さない。

「あの・・・」
 もしもし?

「あっん!」
 ち、ち、ち、ちょっとぉ!どこ触ってんのよ!
 今、思いっきり胸を揉んだでしょう!
 思わずヘンな声が出ちゃったじゃないのよぉ!!

「黙って、マリー」
 耳元に低い声で囁かれてあたしは驚いた。
 どうしてあたしの名前を知ってるの?
 名札なんてつけてないのに。
  
 彼の手の動きは大胆になってきて、あたしの身体を弄りながら胸をキュッキュッと揉みながら、あたしの首筋に顔を埋めてきた。
 や〜ん、吐息が髪の毛を揺らしてくすぐったいよ〜

「ん・・・んふっ」
 黙って、と言われても声が漏れてきちゃう。
 このストックルームはスイングドアで店内と仕切られてるだけだから、他のお客さんが入ってきたらバレバレだよぉ!

 ここが危険な場所だと彼も気づいたのか、あたしを後ろから抱きかかえたままウォークインに入った。
 ひやりとした空気がちょっとのぼせた肌を冷ます。
 冷静になれあたし!ここだってドリンクの隙間から見えちゃうよ!

「や、やめ・・・」
 彼から逃れようと抵抗し始めたあたしに、彼が囁く。
「ずっと・・・ずっと貴女に触れたいと思ってました。こうして側でこの腕の中に抱く事が出来たらと・・・」
 そう言った彼はあたしの首筋に吸い付いた。
 やぁん!

 そんなにあたしの事を?
 ・・・嬉しくないと言ったらウソになるけど・・・
 ここで?はちょっと・・・マズイんじゃない?

「あ、あの・・・あたし11時でバイト上がるから・・・それからじゃダメ?」
 お伺いを立ててみる。
 ダメだと言われても困るんだけどね。

「判りました。11時に店の前で待ってます」
 そう言って彼はあたしを解放してくれた。

 ふぇぇぇ〜
 あんなに大胆に身体を触られたのは初めてだからビックリしちゃったよぉ〜
 思い出すとウォークインの中にいても顔が暑くなって来る。

 で、でもさぁ・・・いきなり触るなんて・・・ちょっと危なくない?
 前からあたしの事が好きだったのかもしれないけど・・・ホントかな?
 単なる衝動的なものだけじゃない?
 わかんないなぁ・・・

 取り合えず、バイトが終わった時に、彼が待っていてくれたら・・・
 彼の本気が信用出来るかもしれない。
 ・・・多分、ね。

「どしたの?マリー!顔色が悪いよ?」
 補充を終えてウォークインから出てきたあたしを見てナタリエが叫んだ。
 確かにあたしは今、鳥肌が立つほど冷えている。
 うう〜ん、ちょっと中で考えすぎちゃったかな?

「もう帰んなよ!後はあたしがやっとくからさ」
 ナタリエはあたしが震えているのを見かねてそう言ってくれた。
 ごめん、ありがと。お言葉に甘えさせてもらう。

 ちらりと店内を見渡すとさっきのメガネくんは雑誌のコーナーで立ち読みしている。
 あたしたちの話し声が聞こえたのかチラリとこちらを見ている。
「ごめんね〜この借りはいつか必ず返すからさ!」
 あたしはナタリエを拝み倒して制服(ってもエプロン一つなんだけど)を脱いでバッグを持って店を出た。

 そして店の入り口からは死角になってる角で待ってると、すぐに袋をぶら下げたメガネくんが店から出てきてキョロキョロと辺りを探している。
 あたしは少し前に出て手を振った。
 やだなぁ〜これってまるっきし恋人同士の待ち合わせじゃない?

「あ、あのさ・・・あたしマリーって呼ばれてるけど、ホントはマルローネっていうんだ」
 何を言っていいのか判らないから取り合えず名乗ってみた。
「アンタはなんてゆーの?」
 ホントは彼の名前が知りたかったからなんだけどさ。

「私はクライス、クライス・キュールと言います」
 クライスと名乗った彼はちょっと俯いてメガネを持ち上げた。
 なんだか気まずそう・・・さっきあんな事して後悔してんのかな?

「あ、あの、あのさ・・・あたし、ちょっと寒くって・・・お風呂に入りたいんだけど・・・」
 初夏とは言え、夜の風はちょっとまだ冷たい。
 冷えた身体にはこたえるのよ。

「私のアパートが近くですから寄って行かれますか?」
 え?いきなり彼の家に行くの?それはちょっと・・・
 場所を聞くとな〜んだあたしんちの方が近いじゃん!とゆー事であたしのアパートに。
 でも、これって・・・あたしが連れ込んだ事になるの?

「ええ〜っと・・・好きにしててくれていいから、悪いけどお先にシャワー浴びさせてもらうね?」
 あたしは彼を自分の部屋に置き去りにしてお風呂場に駆け込んだ。
 だって風邪引いちゃうもん!

 暖かいお湯に打たれながらやっと息を吹き返す。
 あったか〜い♪気持ちいい〜♪

 ん?でも、待てよ?
 部屋の中って・・・かなり散らかってなかった?
 男の人を通すにはちょっとマズかったかも・・・いいんだ、それがあたしなんだから、ヘンな幻想抱かれちゃっても困るし!
 と、あたしは開き直る事にした。

「フン、フンフフン・・・」
 思わず鼻歌なんか口ずさみながらシャンプーをつけてゴシゴシ擦っては流し、コンディショナーをつけては流し、タオルで髪を纏めてから、ボディソ
ープをつけて身体を洗ってると・・・ウチのお風呂場って鍵が掛からないのよね、折畳式のドアだから・・・ガラッとドアを開けてクライスが入ってきた。

「へ?ちょ、ちょっとぉ!」
 彼の存在を忘れていつも通りに髪と身体を洗っていたあたしに業を煮やしたのか、クライスは裸で乱入してあたしの背中にぴったりと身体をくっつけ
てきた。

「焦らしてるつもりですか?」
 後ろから耳元で囁かれてドキドキが止まらない。
「そ、そんな事・・・」
 考えてないよ〜クライスの事ちょっと忘れてただけで・・・ 

「あん!」
 さっきと同じように胸を鷲掴みにされる。
 さっきと違うのは服を着てないってトコで・・・つまりはダイレクトに彼の手の感触が伝わってくるってコトで・・・多分彼にも同じように・・・。

「やぁっ!ハァン!」
 ボディソープで泡だらけのあたしの背中にクライスの体が擦りつけられる。
 背中に伝わる彼の硬い体とその熱・・・腰に当たる更に熱くて硬いモノの感触。
 あたしの胸と身体を動き回るクライスの指が足の間を探り始める。

「あっ・・・ダメぇ!」
 そんなに掻き回さないでぇ・・・
 なんにも考えられなくなっちゃうよぉ・・・気持ち良過ぎて。

 以前から顔は見知っていたとはいえ、まともに口を利いたことも無くて、名前を知ったのもさっきだし、それにきっかけはあんな・・・だし、このまま進んじゃっていいのかな?
 彼に触られててイヤだとか嫌悪感とか沸いてこないけど・・・いいのかな?

「ああ・・・マリー、マルローネ」
 クライスがギュッとあたしを抱きしめて漏らした言葉にあたしはドキッとする。
 さっきも名前を呼ばれた時に同じようにドキッとした。
 ああ・・・この低くてセクシーな声は好き。
 この声で囁かれたら言うなりになっちゃいそう。

 彼はあたしを欲しがってる・・・あたしは?
 あたしは・・・クライスが・・・欲しいかも。
 ちょっと不埒で大胆でセクシーな声の彼が欲しい。

「クライス・・・ん」
 あたしは首を捻ってあたしの肌に吸い付いている彼の顎をそっと上げて、その顔を上げさせた。
 そして唇を合わせる。

 身体も向かい合い、正面で抱き合いながらあたしはクライスの首に腕を回した。
 2人で泡だらけになりながら抱き合ってキスしていたあたし達は、クライスが手探りで探し当てた蛇口によって洗い流され、あたしの髪に巻いたタオルも落ちた。

 シャワーのお湯に驚いたあたしがクライスから顔を離すと、じっとあたしを見詰めている彼の視線にぶつかって思わず微笑んだ。
 何も言わない彼に小さく頷くと、クライスはあたしの左足を持ち上げて硬くて熱いモノを押し当てた。
 あたしより少しばかり背の高い彼に合わせて、ついていた右足を爪先立ちにすると、彼の手が場所を探し出して入り込んでくる。

「ん・・・はっ・・・んん・・・」
 立ったままって、やっぱりちょっとツライかな?
 でもここで止めると彼がツライよね、きっと。

 余り上手く動けない体勢にクライスはあたしから一旦離れると、あたしに背中を向けさせてバスタブの淵を掴ませた。
 ちょ、ちょっとぉ!
 あたしに腰を突き出させてスルつもりなのぉ?

 左肩を後ろから押されて上体が上げられないあたしは、バスタブに両腕をついたまま、クライスに後ろから突き動かされる羽目になった。
 や〜ん、屈辱的な格好だわ〜
 あんましバックからってやったことないのにぃ。

「ん・・・ふっう・・・んん・・・ぁはぁん」
 んん・・・でも後ろからだとさっきより奥まで入ってる感じがする。
 クライスの動きのスピードも上がってきたし。

「あっ、あっ、あん・・・ああん・・・やぁっん、やん」
 腰を突き上げてくるスピードが上がって、あたしの身体はガクガクと揺さぶられるようになって、ゆらゆらと揺れる胸がギュッと後ろから強く掴まれた。

「や、ああん・・・」
 お風呂場に2人の荒い息遣いが響いてクライスの動きが止まった。
 ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとお〜〜〜!

「ヤダ!」
 中に出しちゃったわねぇ〜〜

 あたしはハァハァ言いながらもシャワーのヘッドを手繰り寄せてお湯を出して流し始めた。
 こんなんで効くとは思えないけどさぁ。

「すみません、つい・・・」
 謝って済むなら警察は要らないのよ!
 このアンポンタン!
 ええ〜い!お湯をかけてやれ!!

「ちゃんと責任はとりますから」
 あたしのシャワー攻撃に苦笑しながらクライスはそんな事を言い出した。

 責任?責任って何よ!
 アンタみたいな若造に責任なんて取れんの?
 このアホゥ!

 あたしはプリプリしながらお風呂場から出た。
 タオルで髪を包んで、身体を拭いて、下着と服を着てから、髪をドライヤーで乾かし始める。
 帰って来た時、冷えていた身体はシャワーとクライスのおかげですっかり温まったけれど、今ではお腹の中まで怒りでカッカしている。

「マルローネさん」
 服を着たクライスは真剣な顔をしてあたしに話し掛けてくる。
 あたしはドライヤーの音が煩くて聞こえない振りをする。
 つん、つ〜ん、だ!

「僕は本気です、真剣に貴女と付き合いたいと思っているんですから」
 僕?さっきは私って言ってなかった?
 やっぱり若造じゃないの、アンタってば。
 あたしはつ〜ん、と無視したまま。

「聞いて下さい!」
 焦れたクライスはドライヤーをかけるあたしの手を掴んであたしの顔を彼に向かい合わせた。
 あたしはビックリしてドライヤーを落としてしまう。

「本気だと言ったでしょう?突然あんな事をして申し訳ないとは思いますが、今夜だけの事だとは思っていませんよ。僕は貴女の事をずっと見ていたんですから」
 そう言ってからクライスはキツイ眼差しをフッと緩めた。

「ずっとこうして貴女に触れて・・・貴女を抱きたかった。そして僕だけのものにしたいと思っていたんです」
 クライスはあたしの頬にそっと触れてあたしの唇に軽いキスを落とした。
 そして・・・こう囁いた。
「僕のマリー・・・」

 あたしはクライスの低い囁きにドッキドキだった。
 顔も赤くなっちゃってたかも知んない。
 こんなこと言われて墜ちない女なんていないでしょ?
 え?いない?
 そ、そーかも知んないけど、あたしには決定打だったの!!!

 でもね、素直に許す言葉が上手く出せなくって・・・あたしはクライスに軽いキスのお返しをしてあげた訳。
 そしたらクライスってば嬉しそうにまたあたしに圧し掛かってきちゃったのよ!
 ま、今度はベッドが近いからいいけどね。

 それにしても・・・仕事中にいきなり胸を鷲掴みにされた時は驚いたけど、実はホンのチョット気持ち良かったの♪
 こんな事、誰にも言えないんだけど、ね?



Postscript

タイトルは「ないしょ」
マリーのバイト先でのラブアフェア♪

私のバイト経験を元に書きましたが、私がコンビニでバイトしていたのはxx年前(2桁に注目)なので、今も同じかどうかは自信がありません(特に場所の名前は「保冷用ストックルーム」の事を別の名前で言っていた気がしますが思い出せません・・・でしたがよもぎ様に教えていただいたので訂正しました「ウォークイン」と言うのです)
私ってばホントに人生切り売りしてます(苦笑)
私がバイトしていたのは「あなたとコンビニ○ァミリー○ート♪」で、その当時の制服はエプロン一つと言うお手軽なものでしたが、今は黄色と黄緑の上着で違うみたいですね。

防犯カメラの死角はたくさんあります。
でも仕事中はマズイっスよねぇ(そーゆーシチュ多く書いてますけど)
仕事中に名乗りもせずに(触ってるだけだけど)いきなりえっちなことに及ぶ・・・ホント、男性向け創作の読みすぎですねぇ。
クライスくん、痴漢と代わりません。
最初はもっと過激に進ませようと思いましたが、場所柄だけにマリーが抵抗しました(当たり前だよ)

仕方なく部屋に移動して・・・どっちの部屋にしようかと思って、いきなり初めて男の部屋に行くのは不味かろう、慣れない風呂を使うのは面倒だし、と言う事でマリーのお部屋に。

今回、バックに拘っているのは、某方の最近のイラストが後ろからのモノが多くて・・・影響され捲くりですね(笑)

2004.6.19 UP

 

 

 

 

 

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