僕らの王様(葉瀬中ver.)









「あ、ちゃん。ちゃんも王様ゲーム、やらない?」

今日もいつものように囲碁を打とうと、理科室にやってきた。

数少ない葉瀬中囲碁部員である。

そんな彼女に話しかけてきたのは筒井公宏。
囲碁部の部長でメガネが特徴の、至って真面目そうな三年生だ。

「いいですけど、ふたりでやるんですか??」

首を傾げて言った。
すると、傾けた頭を後ろからぺしっと何かで叩かれた。

この感触は・・・

「加賀先輩!やめてくださいって言ってるじゃないですか!!」

扇子。
大きく『王将』と書かれた扇子だ。
その持ち主は加賀鉄男。
将棋部の部長なのだが何故か囲碁部に入り浸ってる上、
囲碁部の誰よりも碁が強い。

「まぁそう固いコト言うな。叩くと脳細胞が死ぬって言いたいんだろ?
大丈夫だ。いくら脳細胞が死んだってのバカさはかわらない。」
「もー・・・ひどいです先輩!」
「早く入ってくんない?」

加賀の後ろから不機嫌そうにひょっこり出てきたのは三谷祐輝。
派手なオレンジ色の髪と赤いシャツで、目立つ。

「なんだ、ガキじゃねーか。」
「ガキじゃねーよ。」

すれ違いざまに熱い火花が散る。
彼ら(+筒井)はライバル同士だ。






のことで。





「4人もいれば十分だね。それじゃあ、やろうか。」

ちょっと強引に筒井が言った。
実は、が部室に来た時点では誰も参加者がいなかったのだ。

加賀が、三谷が、異議あり、の表情で筒井を見た。

「なんでこの俺様がそんなコトしなきゃなんねーんだよ。
王様ゲームっつったら誰かに従うんだろ?冗談じゃねぇ。」
「同感。」

こんな時だけは息が合う二人。

「でもホラ・・・たまには息抜きでさ!」









- 加賀side -

息抜きだぁ・・・?

俺には煙草があれば十分なんだよ。

あ、でもまてよ・・・

これで俺が王様を引けば、を彼女にするってのも出来んじゃねぇか・・・?


へぇ・・・





「・・・加賀先輩・・・やっぱりやらないんですか・・・?」

少し寂しそうなに言われ、やる気はさらに上がった。

「しょーがねぇな。俺様もやってやろう。」





- 三谷side -

王様ゲームなんてやってらんねーよ。

だいたいこいつに引かれたらどうすんだよ。

絶対従いたくないね。

あ、でも・・・もし、俺が引いたとしたら・・・

に・・・





「・・・三谷くん?やっぱりいや?」

俯いて考えていた三谷の顔を下から覗き込んでが言った。
想いを寄せていたの顔がいきなり現れたため、少し驚いた。

「い、いや。・・・別にやってもいいぜ。」





- 筒井side -

やっぱりふたりはやってくれないのかなぁ・・・

でもちゃんとふたりでやるとすれば、

僕が王様を引く確率も高くなる。

もし僕が王様を引いたら・・・

だ、だめだめっ!そんな強制的に・・・!





「筒井さん?ぼーっとしてどうしたんですか?ふたりともやってくれるみたいですよ。」

にっこりと微笑みながら筒井に話しかける。
筒井は笑いかけてくれたことが嬉しくて仕方なかった。

「ほ、ほんとに!?・・・じゃあ、始めよう!」










「それじゃあ、王様はこの黒丸のマークにしよう。」

黒丸が描かれた割り箸を皆に示して筒井が言った。
そして自分の右手に持った残りの3本に混ぜ、4人の輪の中心に差し出した。
先ほどじゃんけんで決めた順番の通りに割り箸を掴んでいく。

「それじゃあ、引いて。」

筒井の右手に握られた割り箸達を、4人は一斉に引き抜いた。










- 加賀side -

何で筒井はこんなに張り切ってるんだかはわからねぇが
こういうのもなかなかおもしれえじゃねぇか。

・・・まで楽しそうだ。
こんなコドモの遊びでここまで喜ぶもんなのか。
ホントアホで可愛いヤツだな・・・

さて・・・王様は出たかな・・・





- 三谷side -

ふーん。
けっこうこういうのも悪くないな。
でもがいなきゃ絶対ゴメンだ。

・・・なんでこんなに楽しそうにしてるんだ。
こんな子供騙し・・・
でもそこがこいつのいいところかも。

・・・なんて絶対言えねぇ・・・





- 筒井side -

言い出しっぺだけど・・・すっごい緊張する・・・!
もし王様を加賀に引かれたらどうしよう・・・!
三谷くんに引かれたら・・・??

ちゃんは・・・すごく楽しそうだ・・・。
自分が引けなかったらどうしようとか考えないのかな・・・
でも、そんなところも・・・

・・・うわ、ぼ、僕は何を考えてるんだ!?










「・・・えーと、なんか筒井さんは妙に緊張しちゃってるので、私が言いまーす。」





「王様だーれだ!」





「はーい!」





そういって手をあげたのは
だった。










- 加賀side -

か・・・

・・・なんかお約束な展開だよな。

でも、待てよ?

これでが選んだヤツはもしかするとの好きなヤツかもしれないってことか?

へぇ・・・なかなか面白いじゃねぇか。

もちろん、俺を指名するよな?





- 三谷side -

かよ・・・

まぁ、こいつじゃなかっただけいいけど・・・

あれ?・・・そうすると・・・

が選んだヤツはが気に入ってるヤツかもしれない・・・?

そうだよな、人間こう言う時は最も親しいと思ってるヤツを選ぶモンだもんな。

・・・、俺を選べよ・・・





- 筒井side -

ちゃん・・・!?

ま、まさかちゃんになるなんて・・・!

だってきっと、これで選ばれた人はちゃんの好きな人だろう・・・!?

ど、どうしよう・・・!まさかそうだとは思わないけど・・・

ちゃん、僕を選んでくれる・・・!?










「えーと・・・どうしようかなぁ・・・」

ひとりずつ、じっくり、見る。
その瞳は、まさに真剣そのものだった。

3人はそんなを見つめていた。

(((誰を選ぶ・・・!?)))

そう思った瞬間。

「きーめたっ!」

すごく嬉しそうにぽんっとてのひらを合わせた。

「だ、誰にするの?」

筒井が言った。

「えーとねー・・・」





そこへ

「あ、もうみんな来てるよ、ヒカル」
「あーホントだ。」

やって来たのは同じく囲碁部員、藤崎あかりと進藤ヒカル。

「あかりちゃん、進藤くん。」
「なにしてるの?」
「王様ゲームだよ!」
「へーおもしろそうじゃん!俺も入れてよ!」
「いいよ!」

(((え!?)))

3人はの発言に耳を疑った。
今度はふたりを入れる?
と言うことは今までやっていたのは・・・

「なぁ、。今やってたのは・・・?」

ちょっと待ってくれと言わんばかりに三谷が言った。

「うーん、もいっかい最初からやろうよ。」

にっこり、笑顔で言った。

「中途半端すぎねーか?」

加賀が不機嫌そうに言った。

「でも、少しでも多い方が楽しいですよ?」

首を傾げる。
そんな姿に敵うわけもなく・・・

「そ、そうだよね!うん、そうしよう!」
「やった!じゃあやろー!」

筒井が思いっきりフォローしてしまった。

((こいつ・・・!!))

加賀と三谷が睨みつけた。

(ご、ごめん・・・!!)

「それじゃ、じゃんけんで引く順番決めよっか!」

朗らかな笑顔。
お気に入りの笑顔。






そう、僕たちはこの笑顔に引かれたんだ。



だから、君の笑顔には敵わない。



でもこの笑顔でいて欲しいから



いまはやっぱり従うことにしよう。





僕らの王様の君に










fine.

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はい。葉瀬中ver.です。
いかがだったでしょうか。
けっこう院生ver.が好評だったので、構成とかはあまり変えないで書いてみました。
三谷が難しかったですね。
どういう言葉遣いかがよく分からなくて・・・
なので似非度一段と高いです・・・。
今度研究しておきます。はい。

では、ココまで読んで下さってありがとうございました。

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