飛行機雲









今日も無事手合いが終わって、仲間達とも別れて、ひとり、駅に着いた。

忙しいのか少し早めに歩く疲れた表情のサラリーマン。

派手な格好で仲間達と楽しそうに話している女子高生。

これから塾へ行くのか母親に駅まで見送りに来てもらっている小学生。

故郷へのお土産が入っているであろう紙袋をたくさんぶら下げている外国人。

そして





6年前、離ればなれになった愛しい幼なじみにそっくりの少女。





「・・・・・・・・・・・・・・?」

思わず名前を呼んでしまった。

彼女がこんな所にいるわけがない

だって確かに6年前、10年は帰って来られないと言って旅立ったのだから・・・



だけど、少女は反応した。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・義高くん?」










「うわぁー!懐かしい!」

久しぶりに再会した二人は、幼い頃よく遊んだ公園へ行った。

「ねぇねぇ、このジャングルジム!まだあったんだ!よく登っておにごっこやってたよね」
「ああ。いっつも俺が鬼だったけど、すぐ捕まったよなー」
「うわ、なんでそんな余計な事まで覚えてるの!?」

かーっと赤くなって髪を手でとかした。

変わってない。

恥ずかしい事があると真っ赤になって髪をとかす。

小さい頃からのクセ。

「って何やってんだよ!」
「何って登ってるの!」
「おまえ・・・スカートでそんなことすんなよ・・・」
「うわ、義高くんえっちー!」
「なんでだよ!」
「私のぱんつを見ようとしたね!?」
「ちがっ!警告しただけだろ!?」
「あっ、そーなんだ?」

あははっ、と笑って頂上まで登りきる。

変わってない。

勘違いを指摘すると、こう言って笑う。

小さい頃からのクセ。

「義高くんも登ってきなよ」
「俺も!?」
「うん。ほら、早く。」

手を差し出される。

白くて細い、ガラスみたいな手。

「さんきゅ。」
「どういたしまして。」

登り切ったらの横に座る。

は頂上から下を満足そうに見下ろしている。

、一時帰国?」
「ううん。これからまたこっちに住むの。
おばあちゃんがさ、あんまり具合が良くなくて、
面倒見れるのお母さんしかいないから帰るとか言い出して、
私もあっちよりこっちのほうがスキだから、ついてきちゃった。」

重大な事のはずなのに、けろっと言う。
それでも、嬉しそうだ。

「あ、飛行機雲だ!」

夕日で赤く染まりつつある空にかかる、一筋の飛行機雲を指差した。

「昔から飛行機雲好きだったよなー・・・」
「うん、大好き!こう見ててすごく綺麗でしょ?だけどすぐ消えちゃうじゃん?
その儚さがまた綺麗なんだよー」

飛行機雲が大好きな事は、昔から変わってない。

でも

表情が変わった。

無邪気だった子供の表情から、

少し憂いを秘めた女の顔に変わっていた。

「大きくなったね、私達。」
「・・・・・」
「昔はさ、この頂上に登ったらすっごい高く感じてたじゃない?
いまは、5歩もあれば登れちゃって、大して高くも感じない。」
「そうだな。」
「もう高校生だもんね・・・」

すると、自分のごつごつした固い手が、のガラスの様な手に触れた。

昔は同じ、柔らかい感触だったのに、全然違う事に驚いて、さっと離す。

お互い、違いを意識してしまう。

「・・・悪ぃ・・・」
「へ、へーき。」

どき どき どき どき・・・・・・・

昔と同じだけど、違う。

時間は6年経っていた。

「・・・さっきは変わってないとか思ったけど、義高くん、変わったね。」
「え?」
「・・・・・・・男の人になった。ゴツゴツした手とか、広い肩幅とか、
背が伸びたトコとか、ちょっと声が低くなったトコとか・・・」
「・・・それは、だってそうだろ。」
「私は、変わってないよ。」
「そんなことねーよ。6年前と比べると、すごい大人っぽくなったし・・・・・・・・・その・・・」

勢いに任せてつい言いそうになった。

こんなセリフ、恥ずかしくて言えるか。

は不思議そうにこっちを見ている。






「・・・・・・・・・・・・・・・・きれいに、なった。」





なんとなく、自分の顔が赤くなるのが分かった。

を直視する事が出来なくて、横目で見てみる。

すると

も真っ赤になっていた。

その姿に、胸が高鳴る。

「・・・お、おりよっか!そろそろ日も暮れるしね!」
「そ、そうだな。」

先に降りる。

大した高さではなかったので、ひょいっと飛び降りた。

「うわ、義高くんプロいよ・・・!」

そういっては恐る恐る降りる。

昔から、はジャングルジムを降りるのには時間がかかっていた。

登るのは、凄く早いのに。

「きゃっ!」

棒のつなぎ目から出ているネジにスカートが引っかかり、落ちそうになる。

「あぶねっ!」

慌てて受け止めようとする。



唇が触れそうになった。



どきん、どきん、どきん・・・・・・・・・



はこれ以上赤くなるのは無理だろうというくらい真っ赤になっていて、

その姿がどうしようもなく可愛くて、思わず抱きしめた。

「・・・・・・・・・・よ、義高くん・・・!?」
「・・・・なんかやっぱり、変わってないな。危なっかしくてほっとけない。」

互いの鼓動が伝わってくる。

どっちも同じくらい速くて・・・

「・・・・俺さ、が行く時、言ったよな。」
「・・・囲碁のプロになったら、私をお嫁さんにしてくれるってヤツ?」
「そう。・・・・俺、プロになったから。」
「・・・・・・・うそ!?」

和谷の腕に抱かれたまま、和谷を見上げた。

「ホントだよ。」
「今二年目。まだまだ新米だけどな。」
「すごいじゃん・・・!おめでとう!!」
「さんきゅ。」
「・・・・てことは、私は義高くんのお嫁さんにしてもらえるんだ?」

ものすごく嬉しそうな表情で言った。

「なってもらわないと困るけど。」
「・・・喜んで!」
「・・・・・じゃああと2年、待ってろよ」
「うん。」

そして、をさらに強く抱きしめた。

「おかえり、
「ただいま、義高くん・・・」

そうして、6年ぶりに大きくなって再会した二つの影は、重なった。





赤く染まった空には、飛行機雲がまだ、しっかりと残っていた。










6年前から変わっていない、二人の気持ちのように














fine.

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うわお。なんかひさびさに青春!っぽいものを書いた気が・・・!
いや、どこが青春なんだとか言われちゃいそうですけど、これでもね・・・!
ホラ、手が触れて照れちゃうトコとか・・・!

てかなんだかヒロインばっかり喋ってますね。
・・・スイマセン。
でもほら・・・あの・・・懐かしいジャングルジムの上で好きな人と話をする・・・っていう
シチュエーションは私的に大好きなので・・・!
許してください・・・!(・・・もう何を言ってるのかさっぱりになってきました。)

感想等、頂けると狂喜し、やる気に繋がりますので
もしよろしければbbsに書き込んだり、メールで送ってやったりしてやって下さい。
それでは、ココまで読んで下さってどうもありがとうございました。
次回はもっと良いものを書けるように精進したいです。

020915

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