目が合ったことが始まりでした。










be eye to eye






  
  好きなモノは、囲碁。
  今日から、院生。

「えーでは、今日からさんが、新しい仲間になります。
みなさん、仲良くしてくださいね。」

皆、珍しそうにを見たが、すぐに自分達の碁盤へと視線を戻した。
も、碁盤を見つめていた。

でも、ふと視線を上げると、目が合った。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

  どき。

鼓動が、妙に大きく聞こえた。

相手は、男の子。
年齢は自分と同じくらいか、ちょっと上。
茶色いちょっと癖のある髪型で、迷彩柄の服を着ていた。
初めて見るけど、よく似合っている。

「では、始めてください。」

部屋中に、挨拶をする声が広がった。

(・・・・・・なんか集中出来ないかも・・・)















「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

予感は的中。
結果はの6目半負け。

(・・・一番最初から、縁起悪いな・・・)

アマでもかなり実力のあるが打てなかった理由。
彼が強かったから。
そして、

彼が気になったから。

何故気になったかはわからない。
でも、確かに気になったのだ。

碁石を集め、検討が始まった。
相手は何事もなかったかの様に石を並べていく。

「・・・・・・ここ。」
「あっ、はいっ。」
「ここが、失敗じゃないかな。」

ある一点を指して、言った。

「こういうときは、こっちに打った方がいいと思う。」

それは、も気付かなかった一手。

「あっ・・・そうですね。・・・気付かなかった。」
「だろ?うん。でもあとは、だいたい良いと思うぜ。お前結構強いよ。」

にっこり笑って彼は言った。
その笑顔は、太陽みたいで、眩しい。

  どきどき。

鼓動が、さらに大きく聞こえた。

「えーと・・・だっけ?」
「(呼び捨てないでよ・・・。)そうです。」
「オレ、和谷義高。よろしくな。」
「あ、よろしくお願いします。」
「じゃ、他の奴らの適当に回って見てみ。面白いぜ。」
「わかりました。ありがとうございます。」

  ・・・・・・・和谷って言うんだ。

何か不思議な感情が芽生えたのは、明らかだった。

























「義高ーっ」

あれからしばらくして、と和谷は、周りからうらやましがられる程仲が良くなっていた。

「ね、順位表見た!?私とうとう義高を抜いたよー!やったね!」
「なっ、先月はちょっと調子悪かっただけだよ!今月は、絶対負けねぇ!」
「私だって負けませんよーだっ。
もうこれからずっと先、義高の前を行きますからねっ」

ふたりは1組の上位にまで躍り出た。
今は、どちらがより上の順位に立つか毎月競い合っている。

「仲いいな、ふたりとも。」

ちょっと呆れ顔で突っ込んできたのは伊角慎一郎。
ふたりと同じく、彼も1組上位者だ。

「お前ら付き合ってんじゃねーの?」

いつも冷やかしてくるグループがいた。
そのリーダー格の少年は、のことが好きなのである。
まるで小さい子のように、いつもいつも、愛情の裏返しで
そして、関係を否定する言葉を本人から聞きたくて、いつもと和谷を冷やかしている。

「そ、そんなわけないじゃん!」

否定はしたけどしたくない。
確かに最近特に和谷が気になっていることは嘘ではない。
でもこれは、恋愛感情ではない、と思いこんでいるのだ。

「そうだぜ、冗談よせよっ」

いつものように笑いながら少年をつつく和谷。
は、複雑な心境を隠すので精一杯だった。

  ・・・付き合ってる?
  だって私達は、『トモダチ』であって『ライバル』
  付き合うわけ・・・ないじゃん。
  別に恋とかそういうんじゃないし。たぶん。

  でも。

和谷がいつも冗談を言うノリで、否定したのにはショックだった。
恋愛感情なんてないとは思いつつ、
自分は恋愛対象にも見られてないのかと思ってしまったから。
肯定して欲しいって言うきもちも、どこかにあったから。





  このきもちは、なんですか?










転機はある冬の日に起こった。

東京で珍しく雪が降っている日、忘れ物をして研修室に戻ろうと思った時。

エレベーターから降りて、自動販売機の側から和谷達の笑い声が聞こえてきた。
普段は気にしないだったけど、立ち止まらせる台詞を聞いてしまったから。





「そういや和谷ってさ、のこと好きなわけ?」





  本来ならこんなの全く気にしない。
  でも、気になる。

  なんで?
  なんで?
  なんで?





  ねぇ、はやく、答えを言ってよ。
  心臓が、破裂しそう。










「・・・別に、好きとかそういう風には思ってない。ただの友達!」










  頭を、鉄パイプのようなモノで殴られた感じでした。





  でも私は和谷のこと好きでも何でもない。
  好きでも何でもない。
  好きでも何でもない。
  好きでも何でも・・・・・・





  ないの?





  ないんだったらどうして





  こんなに胸がつまるの?















少女漫画で良くあるパターンのように、バッグを落とす。
ドサッと言う音が響いて、和谷達の視線はエレベーター前に向けられた。

「・・・・・・・・・」

その声に我に返り、視界がぼやけていることにやっと気が付いた。
瞬きをすると、視界が少し晴れ、でも、頬に冷たい線が描かれていく。

和谷達は驚いた表情でを見つめた。
和谷は、頭が真っ白で。

は走り出した。

和谷も、後を追いかけた。




















ふたりは、階段を駆け下りる。
息が上がる。

「・・・なんでっ、泣いてんだよっ・・・!」
「・・・・・・なんで?そんなの、っ義高のせいに決まってるじゃない!
好きな人にただの友達なんて言われたら・・っ!
興味持たれてないってわかったらっ・・・誰だって泣く!」

和谷の足の速さにはも勝てなくて、すぐに捕らえられた。





そして、が振り向いた瞬間。

彼女の後頭部をしっかり捕まえ、抱き寄せた。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





長い、沈黙。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

























「・・・・・・・・・んっ・・・・・・ん」





だいぶ息が苦しくなったのか、は和谷を離そうとしたが
和谷は離れなかった。

「・・・っはあ・・・」

やっと唇を離し、和谷はを強く抱きしめた。
そして、耳元で、囁く。

「・・・好きなら好きって、早く言えよ・・・」

耳元に和谷の吐息がかかり、眩暈がするような動悸に襲われる。





「オレだって、が好きなんだ。」





  え?





「・・・じょ、冗談言わないでよ。さっきただの友達って・・・」
「人前でホントのこと言えるかよ」
「・・・・・・まさか。」
「ホントだよ。初めてあった時から、目が合った時から、ずっと好きだから。」

また、泣き出す
和谷は、少し焦り、の頭をゆっくりなでた。

「・・・意外と泣き虫だな。」
「るさいっ・・・嬉しいんだからしょうがないでしょっ」
「嬉しいんだ?」
「嬉しいわよっ」

真っ赤になりながらふてくされる
そんなが可愛くて、和谷は思わず吹き出した。

「何笑ってんのっ」
「・・・いや・・・オレも嬉しいなって。」
「・・・・・・・。」

不満そうな表情ではいるものの、嬉しさで胸が破裂しそうな
和谷も、満足げにを抱きしめていた。















「・・・和谷のヤツ、気持ちバレバレだよな。」
「ああ。」
「それに気付かないも鈍いよな。」
「な。」
「・・・あーでも・・・弟弟子に先越されたなー・・・」
「はは・・・」

独り者同士、淋しく語り伊角と冴木だった。










fine.

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また微妙な作品でスイマセン。
とりあえず、ちゅーを書きたかったんです。(変態
終わりが特に痛いですが。
ちなみに自販機の前で和谷と話をしていたのは伊角さんと冴木さんです。
そしてさんを好きな少年はいったい何のために出てきたか謎です。
・・・スイマセン。(涙

030103

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